ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

演劇集団キャラメルボックス2019スプリングツアー「スロウハイツの神様」@サンシャイン劇場(3/22夜、3/26夜、3/30夜、3/31昼)

 キャラメルボックス劇団四季東宝レミゼの次くらいにきっと、演劇を観ない層にも知られているであろうお名前です。わたしも劇場に通うようになるずーっとずーーーっと前から、名前だけは存じておりました。あと学生の時に可愛かったからチラシだけもらった記憶が。それが何のチラシかも知らずに。そこで行ってみようとはならなかったんだな~。

www.caramelbox.com

 というわけで人生初のキャラメルボックス観劇でした。お芝居観始めてから早々に阿佐スパとかガジラとか行ってしまったわたくしには、もう近寄れないというか…綺麗でキラキラしていて美しい世界なんでしょ…無理…ってなってしまう(笑)、逆にハードルの高さを感じる世界ですが、でも玉置玲央くんが初演に続いてゲスト出演されるので、これもきっとタイミング!と。ハードル超えてみましたよ。うん、とても、心が洗われるようだった。この、人間の裏や奥に潜む醜いものを引きずり出すようなものをどちらかというと好む性質のわたくしのような者でも、ちゃんと、あたたかい涙を流せたので、たまにこういうのも必要だと思う。し、大切にしたい。汚くて穢いのばっかりじゃ良くないよ~キラキラして努力は報われてきっといつかあなたも…!って云ってもらえるようなものもたまに摂取するとデトックス効果高まるよ~。正直、わたしこれ系楽しめるのかなぁ、と不安というか疑いの眼差しで初日臨みましたが、これはこれでちゃんと楽しめたし、登場人物の誰に一番親近感を覚えるかって云われるとまぁ莉々亜ちゃんなんだけど(笑)*1、でも素直な気持ちで楽しめばいいんだ、と理解したので、2回目からは大変素直に拝見しました。こういう素直さをすっかり忘れていたよね…どこにオチるのかなって思いながら見ちゃったらダメだよね…。

 原作未読*2でしたが、初回はテンポの良さというかスピード感(主にセリフ回しの)にちょっとびっくりした…セリフが早いのは新感線でも柿でも慣れてると思っていたけど、何だかせわしなく感じてしまったのね。あと若干聞き取りづらい部分が…というか役者さんが……素敵だったんだけどセリフだけが……でもそれ以外はとても好ましいのがもどかしい(笑)。原作がけっこうボリューミーなのに、2時間ちょっとに収めてあるのでテンポが速いのとか展開がスピーディなのは納得なんだけど、何故かセリフが「走ってる」(ってセリフで使うのかどうかわかんないけど)感じがしてしまって、ちょっと気忙しかったかな。場面転換とかはすごくスムーズで上手くできてるなぁと思いました。あと、劇中で使われる楽曲が所謂Jポップなのだろうと思われる(知らない…)もので、日本語の歌詞が歌われているもので、けっこうセリフがんがんあるのにバックに流れる曲も日本語の歌詞、っていうのが、わたしはあんまり…好きじゃないというか、歌詞に耳を引っ張られてセリフ聞き取りづらくなる感があるなぁと。これはわたしの問題かもしれないけど。ちゃんとセリフにかぶる時はボリューム下がるし気にしなければいいんだろうけど気になるんだから仕方ない。でも、日本語のポップだったりエモかったりな曲が流れるととても、キャッチーな印象になりますね。テレビドラマか邦画を観ているような感覚になった。それが良いのかどうなのかはわからないけど…でも曲たちはけっこう頭に残ってるしふとした拍子に流れ出したりもして、それは決して悪くない気分だ。とにかく、キャッチーであることに全振りしてあるのだな、と、それはそれで大事なことだろうな、と、普段あんまりキャッチーじゃないものに吸い寄せられ気味な人間は思いましたよ。たまにはいいよねこういう…親切設計なのも…楽しいもん…。親子で一緒に楽しめて、キラキラの笑顔で劇場を出られる作品、とても大切だと思います。どん底まで突き落とされてアワワ…ってなりながら劇場から這い出てくるようなものと同じくらい、大事だよね。どっちが好きかはもう、お好み次第よね。

 長くなったので畳みます。ネタバレというほどではないけどちょこっとあるかも。

 

 新進脚本家の赤羽環と、彼女がひょんなことから経営することになったアパート「スロウハイツ」で暮らす6人のクリエイターとその卵たちの群像劇、が大きな枠組みですが、共同生活を送る仲間の中に大人気小説家がいたり、カップルがいたり、新しい入居者が来たり、出ていく者が現れたり、夢を実現するためにあがいたり、上手くいったりいかなかったり、ちょっとした波風が立ったり、その辺は時の流れと共に点描される情景の連続で、これが一体どうなるんだろう…どうにかなるんだろうか…このままふんわり群像劇なんだろうか…と思いながら観るわけですが、でもところどころに何かちょっと引っかかる部分があって、かと云ってそこまで「えっ今のどういう意味!?」となるほどでもなく、あっそうなんだー(何だろう?)くらいで流していく…と、最後にパズルが綺麗に組み上がる、という。原作のボリュームを相当詰め詰めにしているので、展開早いなーとは思うけど、そのスピード感がラストの種明かし的パートで一気に疾走していてそこはとっても気持ち良い! いや、なかなかそんな、無理だろ(笑)的突っ込みどころはいろいろあるんだけど、あるんだけどまぁそういうのはいったん置いといて楽しもうじゃないか。どうやらまだ残っていたらしい心の綺麗な部分から染み出る涙を流そうじゃないか。斜に見たら何も楽しくないもの。うわーよかったねぇ!!!!で拍手するエンディング、たまにはいいもんです。

 「までい」という福島県の方言が劇中に出てきて、大切に、とかていねいに、という意味の言葉なのですが、劇中では「両手を使って、ていねいに」と表現されていて、それを頭に入れておくと、ラストシーンがちょっとじんわりしました。あのスポットライトがだんだん絞られて最後に見えるものがね。あと、環の「そこで待ってて、今すぐ行くから!」が、ずっと追いかけていた背中に、追い付いて並んだんだな、と思えてそれも良かった。あとこの時の環ちゃんの衣装とスタイルがはちゃめちゃに良すぎて美しいんだよ…脚本家より女優になりなよ…あっ女優さんだった。そして感動的なラストシーンに爽やかでポップな曲が重なるこのキャッチーさ…これこそが、キャラメルボックスが大切にしてきたものだろうし、だからこその客層の老若男女っぷり*3なんだろうな。毒が皆無なわけではないのだけど、でも本当に一滴の、ほんのちょっぴりのビターで…きっとそのくらいがちょうど良いのでしょう。毒を飲みたければ他にあるからね。

 玉置玲央さんは加納くんという漫画家を目指す優しい若者役を、初演に続き演じておられました。可愛い。加納くんほんとに可愛い。けどつぶさに見ているとあるシーンとかでちょっと…ね。あっなるほど…と2回目以降思いました。身体能力の高さを存分に発揮する役回りではないけれど、でも随所にチラ見せはしていて、きっとアレも本当はすっごく上手くできるんでしょ?と思ってしまう(笑)。まぁでもあそこは桃花ちゃんが凄いからそっち観て!! すごい!! 

 個人的に好きなキャラクターは、加納くんは別として(笑)、莉々亜ちゃんと黒木さんかなー。黒木さんの「ゲス」なところがわたしには救いになる…けどちゃんと人間味ある、お茶目なところも好きです。おとなだしね! 莉々亜ちゃんは、ああいう役どころなので判官贔屓なところもあり(笑)、あと可愛い。天使ちゃんだ。可愛い。環と対峙するシーン、どうがんばっても勝てないしボロボロだしプライドずたずただし、それを自分でわかっているけど引くわけにはいかなくて、環にああいうことをさせるけど、そこまでしても尚、絶対的に「環には敵わない」という構図が出来上がっていて、やればやるだけ自分がみじめになっていく、のも全部わかってて、でもやる…みたいなのが、わたしには大変ぐっときました。また環を見下ろす顔がね…みじめさを理解し噛み締めるような表情でね……莉々亜ちゃんわたしは好きよ……。環はねぇもうねぇスタイルが。とにかく。完璧で。美しい。かああっこいい。「わたしを誰だと思ってるの!?」とか、一生に一度でいいから云い放ってみたいものです…。すみれちゃんは自己肯定感が低いよね…どうしてそうなったのか、個性と云われてるからそうなんだろうけど…悪い男に引っかかるタイプだよと思っていたらまぁ…。スーの穿いているスカートがいつも素敵で、マルチボーダーのとか、淡い茶系の滲んだ水彩みたいな柄とか、「スーの絵は色が綺麗」って云われるだけでその絵は劇中で観られないけれど、そういうところから想像できるというか、きっと綺麗な色合いなんだろうなーと思わせる素敵な衣装です。あと靴下の色も好き。コーちゃんは初回は、だいじょうぶなのこの人…って感じになってしまったのだけど、慣れた(笑)ら大丈夫というか大変愛すべき人になりました。コーちゃんはいわゆるラノベ作家なんだろうなー。そりゃあ「抜ける」って云われるよなー。観劇の帰りに池袋駅に大きく掲示されていたカゲロウデイズ?のポスターを見ながら、コーちゃんきっとこういうの書いてるんだろうね、なんて思いました。個人的には福島の病院の事件についてもっと知りたい。原作読んだら出てくるかな。正義はねぇ…もっとスーを大事にしてあげていれば…だめですか…ねぇ…。桃花ちゃんは天真爛漫で可愛い! わたしは云われるまで気づきませんでした(笑)。芦沢さんも好きです大人の女性だ。スカーフ使いがかっこいいよね。あと図書館の司書さんもとっても好きーパーティのお名前何だっけオレンジのドレスの女性も好きー。2回目の「お久しぶり~!」があんなに生きるとは…すごい、良くできている…。五十嵐くんは、出直しておいで。

 開演前にショートストーリーズと名付けられた、5分程度の短編の上演がある回もありまして、本編で描かれなかった原作にある場面を切り取ったもの、のようでした。2種類あってどっちも観られたけど、本編観終わってからもう一回観たい(笑)。2本とも、本編の時間軸より少し前のお話でした。どっちもかのーが可愛くて良かった…。

 とりとめなく長くなってしまったけど、新鮮で楽しい初キャラメル体験でした。たまにはこういうのも良いね! 綺麗な涙を流したい時にはぜひ!!

*1:そういうところ!

*2:読んでみます

*3:なんですよ親子連れからご高齢のご夫婦、制服のお嬢さんにサラリーマンまで