ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「怒り」2回目&パンフ買ったよ※ネタバレあり※

※ネタバレあります※

 映画館で観るのは初めてになる2回目、レディスデーだしと仕事帰りに行ってきました。バルト9で小さめの箱だったけど満席でした。

 やはり映画館できちんと観ると*1音響が全然違ってて良いですね…迫力が全然違うしドルビーサラウンドすごい…ってなる(笑)*2 *3 *4

 初回を観て、原作を読んで、あといろいろインタビューとかレビューとか座談会とかも頭に入れた上での2回目でしたが、ちょっとだけ田中さんの端っこに触れたような気がします。理論や理屈を綺麗に通そうとしたって土台無理なんだよな、そういう事じゃないんだよな、っていうのを前提にした上で、それでも少しだけ解きほぐしたい…という思いで観ていたのだけど、理解できないなりに、わたしの中での田中さんの比較的座りの良い場所が見つかったような。どっちも本当なんだろうなーやっぱり。どっちも本当の田中さんで、どっちもが両立というか並立してしまうからこその狂気というか…嘘ではないと信じています。

 「人を殺すのに動機なんてない、あるのはほんの小さなきっかけだけ」みたいなことを、確か京極夏彦著作の中で読んだ気がする(曖昧すぎて何の参考にもならない)のだけど、その小さなきっかけが訪れるか訪れないか、その差はたぶんとても些細なもので、殺人者とそうでない人の境界線はとても細くてあやふやで、なぜ向こう側に行ってしまったのかなんて誰にも説明できない、動機なんて後付けにしかならない、外側から事件を見る人が、見る人にとって理解しやすい、「だから殺したのか」って納得できる何かが欲しい、ただそれだけの為に提示されるのが動機というものなんだと思う。だから、田中の殺人の動機をわかりやすく後付けることはできなくはないけれど、でもそれはきっと正解ではないんだろう。同様に、廃墟での田中の述懐に意図や整合性を探そうとすることもきっと、決して正解にたどり着くことはできないものなんだと思う。どの言葉も全て、田中自身の内側から出たものなんだと思う。強大な憤怒も、「俺はお前の味方だ」も、ウケるも、きっと全部田中の中の一部で、それを全て抱え込みながらここまで生きてきたからこそ、田中は「まとも」じゃなく見えるんだろう、ね。だいたい人間なんてそんな整合性の取れた生き物じゃないし、誰かを蹴飛ばした足で別の誰かを守ろうと走るし、誰かの為に泣いた目で別の誰かを蔑むし、それでも「まとも」っぽく何とかやれてきているのは、田中さんより少しだけ、やり過ごし方が上手いだけなんじゃないかしら。そうやって、やり過ごせないものを歪に積み上げて、それをぐらつかせながらそろりそろりと歩いてきた彼が、小さな振動で崩壊したのが八王子の事件であり、崩れた上から再び、前よりもっと不安定に積み上げながら辿り着いたのが沖縄であり、出会ったのが泉と辰哉であり、不安定なそれを何とか固めようとしつつ、より強大な激震で全てを崩された、そういう話だったのだ、と…何というか、わたしの中での落とし所が無事見つかって、初回よりスッキリとは云わないまでも、うん、と深くうなずきながら劇場を出られる感じになりました。あの別件で逮捕されて供述した彼が、より一歩田中の奥の方へ近づいていけたのは、彼にもそういう、「普通のひと」より危うい部分があったから、だから田中のことも受け入れやすかったし、田中も彼に話したのかな、とか…犯罪者同士で理解しあえる、という云い方はしたくないのだけど、どこか共感できる部分がお互いにあったんだろうな、と思うのでした。「他人見下してギリ保ってるやつに優しくなんかしたら、殺されちゃうよね」とか、「生き返るって信じてたんですよ」とか、原作にないセリフが彼からぽろぽろ出てくるのも、何か…そういうものなのかな…と。わたしには近づけない一歩二歩を、彼は行ける人間なのだな…*5

 そしてパンフレットも無事購入*6、帰宅後しばらくして読んだのですが、これ…とても…わたしには嬉しいというか、ありがたいというか、これでやっと森から出られるというか(笑)、そんな内容で、必読ですよ!!! いや、特にこう、あのシーンのアレは実はこうなんです!!みたいな具体的なネタバレがあるわけではないのですが、ないんだけど、でも…わたしには充分です…。少なくとも、未來さんが田中をどう考えて演じていたのか、それが知れただけで、わたしの中の田中さんが救われた…いや救われはしないけど少し報われた、かな、という。未來さんのインタビューと、佐久本宝くんのコメントと、広瀬すずちゃんのインタビューと、原作者の吉田修一さんのインタビューと、あと美術さんのコメント、で、わたしほんと救われた。田中さんはともかく、わたしは救われたわ。田中さんの想いと、辰哉くんの想いが、それぞれ一番聞きたい人の言葉で聞けて、本当に良かった。し、もし次もう一度観ると、きっとまた違って感じられるんじゃないかと思います。

 あとパンフに収録されている写真が、けっこう本編に出てきていないものがあるので*7、ディレクターズカット版とか、もしくは特典映像250分とか、期待していますよ東宝さーん!! ブルーレイ後出しはやめてね東宝さーーん!!!

*1:初回の試写会は千代田ホールかな?

*2:特に優馬が直人と出会う直前の辺りとか……

*3:そこか

*4:あそこが一番実感できたんだものサラウンドの威力を

*5:羨ましいかどうかは別ですが

*6:780円でした

*7:裸で髪下ろしてる田中さんとか、何となくアクロバティックな体操みたいなことをしている田中さんとか