ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「みみばしる」@本多劇場(2/6夜、2/17夜)

 J-WAVE30周年×ゴジゲン10周年企画公演舞台と銘打って、劇団ゴジゲン主催の松井大悟さんが、J-WAVEのラジオ番組「JUMP OVER」とコラボして、ラジオのリスナーも巻き込んでお芝居を作る、という何だかすごい企画の舞台「みみばしる」、初日プレビュー公演と東京楽を観てきました。

mimibashiru.com

www.j-wave.co.jp


 わたしは熱心なリスナーではなかった(数回聞いたくらいだし主にタイムフリーだし)けれど、制作側と観客、とか、ナビゲーターとリスナー、とか、発信者と受信者、とか、そういう垣根をそれこそジャンプオーバーする意気込み、してやるぞという創意工夫が随所に見られた、お祭りみたいな面白い企画でした。開演前のロビーで松井さんがラジオ放送(客席にも聞こえる)したりとか、そこにゲストが来たりとか、もそうだし、出演者をオーディションで一般リスナーから選抜したりとか、チラシに掲載するキャッチコピーをリスナーから募集したりとか、打ち合わせの様子をラジオで放送したりとか、いろいろ…実験的であり、文化祭的手作りお祭り感もあり。反面、正直なところ、完成度としては果たしてどうなのかと若干の心配だったり、ラジオを聞いていない人は楽しめるのか疑問だったり、それこそ内輪ノリの文化祭になるのでは…?と思ったり、もあり。そんな感じで、プレビューは割と、様子見みたいな心持ちで足を運んだところがありました。

 が、本多劇場のロビーに入った途端に何か、内輪ノリじゃないの~?みたいな様子見気分は吹っ飛んだ(笑)。もうロビーがお祭りみたいでそれが何だかわくわくして楽しくなってきちゃった…ラジオ始まるしゲストサッシャさん*1だしうわーたーのしー!!ってなってしまった…懸念いらなかった。楽しかった。生サッシャさんでっかかった。

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 これは東京楽のラジオ放送の様子。ゲストは音楽監督の石崎ひゅーいさんでした↑。

 サッシャさん見られたから喜んでるだけみたいですがまぁそれもありますがでもそんなことないよ~。お芝居本編も歌ありダンスあり、笑えたりちょっとヒリッと胸が痛んだり、あーあ…でも気持ちはわからなくもない…ってなったり、ジェットコースター展開で最後は歌の力ってすごいなぁ!と…歌の力技に感じなくもなかったけど、荒削りだし若くて青いな~って感じだけど、でもわかるところもある。のでした。何をやっても上手くいかない元OLが、人気ラジオ番組に送ったメッセージを読まれたことによって自信が持てたり前向きになれたりするのだけれど、読まれる為にだんだん嘘のメッセージを送るようになり、それが読まれてまた嘘を書いて、その連鎖が悪い方に傾いていく…みたいな。そのラジオを聞いているいろんなリスナーたちの群像劇でもあり、劇団あるあるもあり、家族の話でもあり、そしてその人気番組のナビゲーターや制作側の思惑も絡み、大きなうねりがラストに爆発する…そのエネルギーの奔流みたいなものが、歌になって、分厚いエネルギーの壁みたいな歌が舞台から覆いかぶさってくるようなクライマックスが、なかなかのカタルシスでした。熱かった! さすがにプレビューでは、プロの俳優さんではないリスナー出演者さんとか、ちょっと硬かったり緊張してるのが伝わって来たり、がんばれ…!ってところもあったけれど、東京楽では本当に目覚ましい進化で…その成長っぷりにも勝手に目頭が熱くなってしまう…(笑)。

 残念ながらわたしはもう、承認欲求とか、誰かに認めてもらいたいとか、SNSでRT数を稼ぐために話を盛って後戻りできなくなるとか、そういうのに共感できるほどの若さ(…)は持ち合わせていないというか、もうちょっとおとなになってしまったので*2、そこで共感して号泣、みたいなことにはならなくて、あーそういうのあるよねー今、ってその辺は引いて観ていたのだけど、でもまぁあるあるですよね。特に若い世代の方には刺さるんじゃないかなー。って思う辺りがわたしはもうこの物語の対象年齢からは外れている感がして寂しくもあるのですが…でもそう思ったんだから仕方ない。理解はできるが共感ではない。ラジオのハガキ職人でもないし投稿とかもしていないし。でも、メッセージと本人のパーソナリティが違うのとかは、うん…そうね。違う自分になれる、というのはあるのかもしれない。わたしはあんまり、実際とここでもSNSとかでも変わらないというか変わって作るの面倒くさいというか、会うと大体そのまんまだーって云われる方なので、別人格を形成みたいなことはしていないけど、でもそりゃあ悪い印象よりは良い印象を持ってもらいたいとは思うし、カッコ悪いことは敢えて云わなくてもいいよね…そのくらいのかっこつけはあるよね。写真は綺麗に撮れたのだけ載せるよね。かっこつけなのか、マナーの範囲なのか、はともかく。

 ラジオ制作側の顛末も、特に昨今の番組制作にありそうな…番組を「面白く」する為にどんどん過激化していったり先鋭化していったり、やらせとか仕込みとか、モラルの範疇を超えて暴走してしまうのが、ありそうな話で。また今はリアルタイムで視聴者の反応も見えるから、煽り煽られみたいなことになりやすいのだろうな。ナビゲーターのダッシュ小池役の玉置玲央さんがまた良いお声でとても素敵なのだけど、まぁうん…大変だ…。EarEarth、凄い番組だな…伝説の放送だよな…。吐いた嘘の責任を取るひとつの形ではあるけれど、それもまたSNSで良く見かける構図で、観ていてあーあ…ってなってしまうのでした。ばかだなぁ。でもダッシュさん好き…。

 劇中に音楽がたくさん流れるのだけど、ワタナベシンゴさん生歌で生ギターで、それがとても聞きごたえありました。やっぱり人の歌声が持つパワーってすごい。主演の本仮屋ユイカちゃんも、ミュージシャンのタカハシマイちゃんもソロで歌うシーンがあって、どっちもとても素敵でした。ふたりとも声がやわらかくて綺麗だった…カレーライスの歌もスキキライスキの歌も、とても耳に残る。劇中に出てくる劇団サワシステム、独自メソッドとかありそうななさそうな(笑)でオモシロかったんだけど、サワシステムのお芝居がどんななのかも気になります。あのカレーガールの一場面だけ観る限り、どんな話なのかさっぱりわからないし、妙子ちゃん(主人公)が観て感動して仕事辞めて制作の手伝いに入るくらいの前回公演もどんなだったのか非常に気になる。とてもそんな風には見えな…あばばばば(笑)。

 玲央さんはじめ市川しんぺーさん、本折最強さとしさん、目次立樹さん、村上航さんらプロ俳優組は流石の屋台骨っぷりで、若くて青い座組をしっかり支えて安定感。しんぺーさんとさとしさん楽しかったなぁ、タクシーの後部座席は武道館くらい広い(笑)。

 東京楽はカーテンコールでユイカちゃんが早々に泣き顔になっていたり、舞台上に呼び出された松居大悟さんが一番号泣していたり、もらい泣き続出だったり、何だかとっても熱くてあったかい、素敵なカテコでした。アフタートークには別所哲也さんが登場して、こちらも感無量で言葉が出ない…!ってなっていて、その言葉にならない感じがとてもわかる…ってなりました。圧にあてられる楽のラストだった…何か、一歩引いて観てる感想ばっかり書いてるけど、ほんと楽のラストは圧倒された…歌ってすごい。別所さんはJ-WAVEで朝のナビゲーターをされていて、番組を届ける側からの「みみばしる」感想が聞いてみたかったのでとても興味深いお話でした。J-WAVEにはダッシュみたいな横柄なナビゲーターはいません!!って云ってた(笑)。わたし何となく、EarEarthってJ-WAVEの番組として想定されているのかなーって思っていたんだけど、ではないみたいね(笑)。J-WAVEのニュース音源(本物)でダッシュさんのニュース流れたりしたし自社だったらやらないよね…。それはともかく、ナビゲーターをされていると、きっと番組制作側のアレコレもわかる部分とか、我々視聴者よりもさらに一段、胸に来るものがあるんじゃないかなーと、興奮冷めやらぬ別所さんを観ながら思いました。

 ラジオや演劇の枠も、発信する側と受信する側も、出る側と観る側も、ラジオ局の垣根まで飛び越えた*3、何だか不思議に面白い現象を巻き起こした「みみばしる」、東京公演は終わりましたが福岡と大阪はこれからです。

 個人的に気になったのは、ダッシュさんが番組中に曲をかけて、曲の間にディレクターが「サビ終わりで次のメッセージ行く?」みたいなことを云うんだけど、プレビューでかけた曲が坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」で、戦メリのサビ終わりとは…? デッデッデッデデデッデッデッデデに行く前くらい…?ってなったこと…戦メリのサビってどこだろう…。東京楽ではCHAIの「Fried」でした。選曲玲央くんだよねこれ(笑)。

*1:J-WAVEナビゲーター。わたしにとっては我らワールドツールドフランスJスポーツ中継ネタ)…!

*2:インターネット老人会の方だから仕方ない…ジオシティーズでテーブルタグ手打ち世代だから仕方ないんだ…

*3:他局の番組で「みみばしる」を取り上げたりとか