ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

談ス・シリーズ第0弾「イキ、シ、タイ」@横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール(12/5夜)

 大植真太郎・柳本雅寛・大宮大奨という座組みで始まった談ス・シリーズの新しいツアー、今回は第0弾と銘打って、2009年初演*1の「イキ、シ、タイ」何度目かの再演とのことです。オリジナルメンバーは大植さん、柳本さんと平原慎太郎さんですが今回は大宮さんで。わたしは観るのは初めてです。ほんとはツアー後半のチケットを取っていたのだけど、アフタートークの関係(笑)で急きょ追加しました。いいんだ観たかったから!

 とりあえず初見の印象は、「談ス」だー!!っていう。「イキ、シ、タイ」ができた時にはまだ「談ス」というシリーズタイトルは生まれていなかったけど、でもこれは「談ス」であり、原初の「談ス」という感じだった。談スだし知ってる感じなんだけど知らない、ちょっと荒削りでプリミティブな空気の漂う談ス…わたしが観てきた談スは洗練されてきていたんだなーと思った、何かそういう、磨かれる前みたいな感触がしました。男子の放課後教室後ろでのプロレス感、もしっかり、でもそれが超絶技でできているのも変わらず。柳本さんの関西弁が楽しい喋りも、あー平原さんだったんだなぁとわかる大宮さんソロパートも、さすがの筋肉美を見せつけるような(笑)大植さんバレエパートも、ちょっと不思議な三角形を描く談スのエッセンス満載でした。

 「イキ、シ、タイ」というタイトル*2をそのまま受け取って、循環呼吸から始まる幕開けの、何だかぬるりといつのまにか開演している感じも談スっぽかったです。そういえば大植さんの髪型が普通…というか、頭全体に髪がある状態をもしかしたら初めて見るかもしれない(笑)。

 舞台は正方形に白いマットの敷かれたアクティングエリアで、2辺をL字で囲むように雛壇型の客席が組まれていました。頂点2ヶ所に扇風機が置いてあった。赤レンガ倉庫のホールの造りがちょっと面白くて、ホールに沿って外廊下があったり出入り口が各所にあったりするので、その辺を使った演出?も面白かったです。他会場でどうするんだろうって思ってたらアフトでもちょっと云ってた(笑)。

 ひとりごとみたいなセリフみたいなものを呟きながらぬるりと始まったり、コミュニケーション/ディスコミュニケーションを見せつけるようだったり、やるようでやっぱやらなーい!みたいな「すかし」が随所にあったり、大小の扇子が登場して面白いことを云う*3コーナーがあったり、「談ス」が生まれる前からあった作品なのにすでにとっても談ス要素満載で、正に「第0弾」なのだなぁと面白く、また大好きなシリーズのルーツを観られるのは嬉しくもあるのでした。でも何というか、うん、シリーズ重ねるにつれて洗練されていったのも見て取れる…何だろう、若い…? なのか??

 ローザンヌにNoismにNDTにシルク・ド・ソレイユにピナに、散りばめられた小ネタも楽しくて、笑いもたくさんで、柳本さんの喋りは楽しいし大宮さんの小柄で軽やかな動きや小動物めいた可愛らしさ(笑)も目を惹かれるし大植さんのキン肉マンバレエっぷりももちろんちゃんと堪能できて、とにかくずっとクスクス笑いをしていた感じなのだけど、でも根底に流れているのは生と死だったり、呼吸だったり、大気/空気だったり、風だったり、見えないものに突き動かされる衝動だったり、本能だったり、そんなわりとひんやりとしたものを感じました。生きている体と死体、とか。アクティングエリアから外れた壁際に、開始からしばらくの間座り込んでいる大植さんの身体が、打ち捨てられたように見えたり。そういえば、「遺棄したい」とか「遺棄、死体」とかとも読もうと思えば読めてしまうんだよねタイトル……そこまでの凄惨さは感じなかったけど。でも。

 息、粋、遺棄、生き、行き、したい、死体、慕い、肢体、死、詩、史、師、体、対、他意、袋、如何様にも読もうと思えば読めてしまうタイトルから、何をチョイスして観るのか、によって、見えてくる景色がきっと違ってくるんだろうな。

 ラストの演出が、舞い飛ぶのはアレなのに何だかちょっとエンジェリックに見えて不思議な気持ちでした。赤いのはあれは、何なんだろうか。もう一回次に観たら何か思い当たるかな。次回はもう少し、いろいろ考えられたらいいな。今回は…ちょっと何も考えなさすぎで観てしまった(笑)。

 そしてアフタートークは、未來さんが「この作品を作った振付家」のていで、ダンサー3人から逆インタビューを受ける、みたいな趣向でした。どういう意図だろうと不思議だったんだけど、どうやら海外ではこういう形が授業で取られたりするそうです。観た人が作った人になって自分はこう思ってこれを作った、って云う、それを実際に創った人が聞いてフィードバックする、みたいな。面白そうだけど難しいね…?

 未來さんはジョッパーズ風なシルエットの、グレージュな色合いのグレンチェックっぽい織り柄パンツにレースアップのレザーシューズ、薄い黄緑と生成りと焦げ茶が大きく色分けされたざっくりニットに、最初はヘアバンドで髪を上げていたけどすぐ首に下ろしていました。アフト中ずーっと、組んだ左足の足首をぐるぐるぐねぐね回していたよ(笑)。

 アフトも本編同様に何だかぬるっと始まって面白かった(笑)。終演直後の拍手も早々に、舞台上はアレが舞い散りっぱなしで、椅子もまだ出てきていないうちに未來さんも出てくる(笑)。大植さんに紹介されたりしているうちに椅子やマイクと柳本さん・大宮さんが出てきて、いつの間にか座ってスタート。とりあえず今日の出来を訊かれる「振付家(なていの)」森山さん、2日前に稽古場で観た時よりも、よりクリアになってる、と。でも初日挟んでちょっと横道に逸れてきてるところもあるからそれを正したい、みたいなことを(笑)。ちょっとダレるところを切りたいっぽかった(笑)。振り付けたのに初日にいないってどうよみたなことを自分で云っていたのが可笑しかったです。そうねー普通は初日こそいるよねーまぁ振り付けてないからねー(笑)。

 「振付家」森山氏曰く、この作品は寝屋川の事件をとても意識して作られたとか。もうタイトルも「寝屋川殺人事件」でいいんじゃないかってくらい(「熱海殺人事件みたいに」)、だそうです。寝屋川は柳本さんの地元で、柳本さんが犯人役(?)とか。けっこう未來さんはこの作品をネガティブ、と云ってしまうとニュアンスが違う気がするんだけど、仄暗い方向性を強く捉えているんだなというのが垣間見えて面白かったです。わたしそこまで…しんどく観てなかったなぁ。根底に流れているものが何だかひんやりするなぁとは思っていたけど。

 ダメ出しってほどではないですがダメ出しっぽいことも云ってました。大植さんがたびたび、マイクを使わずに話すのを「マイク使って下さい」って都度注意して*4、その流れで作品中でも喋るなら喋るでちゃんと届くようにしたら?的なアドバイスをしていました。が、聞こえないならそれはそれでいいくらいの内容ならまぁいっか、みたいなところに落ち着いていた(笑)。わたしもちょっと気になってたんだー何か云ってるのに聞こえないよーって、聞こえないから余計に気になるところがたまにあったので…席が後方だったのもあるけどね…。しかしマイク不使用を注意する未來さん、っていうのが、いやマイク使ってって前に良く云われてたよね(笑)って思って可笑しかったです。あなたが云うか(笑)。

 もう一個あったあなたがそれを云いますか案件が、大宮さんのちょび髭を「それ剃った方がいい」「おぼこい感じがもっと出てギャップでもっと面白くなる」って云ってたやつね(笑)。あなたのひげにもずっとおもっていましたーってなりました。が今はすっきりつるんとしてるからいいです! アリはアリでだーいぶかっこいいって思うようになった…懐柔された…(?)けど、やっぱりないに越したことない派です。

 この後名古屋でやる話になって(ここで「名古屋ではどうやるの?(赤レンガ倉庫の特殊な造りを使った演出について)」って話になって、名古屋はビルの3階?なので下の階から階段使ってやる、って云ってた。マジか!)、昨日今日横浜で明日明後日名古屋というスケジュールを殺人的だよねって云ってる柳本さんと大宮さんが可愛かったです。で、未來さんが大変だーみたいなことを云ったら大植さんが「スケジュール組んだのあなただから」とか云って振付家氏「あーまぁ…(笑)」みたいなことに。振付家がツアースケジュールまで組んでるんですか(笑)。全般的に、前提が「振付家」で進むので、たびたび「…あー…まぁ…(笑)」みたいなことになっていました。L字客席にした意図は?とか大植さんに訊かれて「あー……いや別に……?」みたいな(笑)。知らんがな的な。ですよねー! ちなみにL字客席配置に関しては、大植さん的にあんまりだったみたいで、もしかしたらこの先変わってるかも知れないっぽい印象を受けました。わたしは。どうでしょう。

 あとは大宮さんが、今回平原さんの代わりとして入って、どうしても平原さんの後を追いかけてしまう、平原さんを演じようとしてしまうところがあったんだけど、稽古を観に来た未來さんにもっと大宮さんでいいよみたいなことを云われて楽になった、と云っていたのが印象的でした。確かに平原さんだったんだなここ、って観ていてすごく思えてしまうポジションだったけど、でも大宮さんはまたキャラがだいぶ違うから*5、きっと平原さんバージョンとはずいぶん印象が違ってるはずです。見比べてないからわからないけどきっと。ここで未來さんがひげのことを云ったんだっけか。あと大宮さんが途中で、扇子を使ってそばを啜ったりお寿司食べたりする振りがあるんだけど、あれいる?って突然切りたがる振付家森山氏(笑)。あれ音声と連動してるからなくすの大変なんだよね…って大植さんが云っていました…うん扇子の使い方の説明の時に言及されてましたよね。しかしあの説明音声謎だった。未來さんが、人前で頭を叩かれるのはとても屈辱的だとか、だから扇子で頭を叩くとか扇子なしで頭を叩くのはセンスがないとか何かそんなことを音声が云っているところ*6でブフッと吹き出していたのが印象的でした。あとどこか、コンタクトの最中にも吹き出してたんだけど、普通に観てても別に面白いところじゃなくて、たぶんあれはやってる人にしかわからない「そんなところでそんなことしちゃうんだ(笑)」みたいなことなんだろうなーって思いました。わたしには笑いどころがわからなかった。そこで笑ってたの未來さんだけだった。

 最後に、「僕たち(大植・柳本・大宮)の5年後の展望を」と訊かれた森山さん、うーん…と少し考えてから、ずっとブレずに…ブレてるようでブレてないから、このままブレずにいけるんじゃないですかね、みたいなことを。そうねー5年後また別の談スが観られると嬉しいなーとわたしは思います! そこに未來さんが入ってるととっても嬉しいなー!!

 鼓舞を「こまい」と云っていた大植さんが可愛らしかったです。

*1:ショートバージョンで上演

*2:がまた無限ミーニングな感じで大植マジックなんだよね~!

*3:これ多分日替わりですよね

*4:ありがとうございます聞こえなかったよー

*5:可愛かった/笑

*6:何か多分間違ってる