ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「ムサシ」@さいたま芸術劇場(3/28)

 井上ひさし×蜷川幸雄×藤原竜也×小栗旬、この字面を見ただけでチケット争奪戦のすさまじさがひしひしと感じられ、実際「一般前売りが80分で完売」なんてニュースにもなる程だった「ムサシ」。完全に他人事というか、あらまぁすごいわねぇ、なんて云っていたこの舞台を、ご縁あって*1観にいけることになりました。藤原くん、鈴木杏ちゃん、吉田鋼太郎さんは「オレステス」や「SISTERS」で観たことがありましたが、舞台の小栗くんは初見です。映像で観た「カリギュラ」が物凄くて、これ生で観なくて良かった*2…なんて思いつつ、いつか機会があったら、舞台でのお姿を拝見致したく思っていたところの、まさに機会到来でした。
 さい芸でお芝居を見るのはもしかしたら初めてかも知れない。ラ・ラ・ラ・ヒューマンステップスとか、ヤン・ファーブルとか、コンポラ系ダンスを観に行くところ、という気がしてしまうんだなー。でもいいホールですよね、サイドのあみあみな手すりは邪魔だけど(笑)。あれもうちょっとシンプルな形状にしてくれたら見やすいのになぁ。あと周囲に何にもないのはちょっと困りませんか。サイゼと安楽亭とコンビニくらいしかないよ…スタバとは云わないからマックくらいほしいなぁ。それはさい芸が悪いんじゃないけどね!


 のどかな埼京線に揺られて向かいました。電車の中の中学生くらいの女の子たちに、「今、与野本町*3小栗旬藤原竜也いるんだよ」って云ったらどんな顔するかなーとか思いつつ。絶対知らないだろうなー(笑)。てくてく銭湯前なんか通過して向かったホールは、いつもより華やいだ雰囲気で…いつもギョーカイジンみたいな方々ばっかりの印象だから余計に。物販には長蛇の列で、パンフは稽古写真バージョンと舞台写真バージョン、どちらも販売されていました。いいねぇそのシステム、切り替えるよりいいよねぇ。
 お席は上手側バルコニー後方、ちょっと上手の端が見切れるけど、観劇には支障ない程度。幽玄な笛の音が響く中幕が上がり、上手に大きく真っ赤な夕日、舟島(巌流島)の戦いの場面から始まりました。有名な「小次郎敗れたり!*4」のところね。舟島での戦いで敗れたことに納得のいかない小次郎が、6年後に鎌倉の小さなお寺の寺開き禅*5に参加している武蔵のもとに現れ、再度決闘を挑む。決闘は籠り禅が開ける三日後に決まり、小次郎も武蔵と共に禅に参加することになり、寺の大檀那*6である木屋の女房や筆屋のお嬢さん、将軍家の剣術指南役にして能狂いの柳生何とか*7、住職のへーしんさん、沢庵和尚らと三日間を過ごす、その鎌倉の山奥の小寺で流れる三日という、限られた時間の中で繰り広げられるあれこれ、という。果たして3日の禅が明けた時、小次郎と武蔵は再び闘うのか…? 勝負の行方は…??
 的な。これくらいならネタバレにならないです大丈夫です。これでネタバレにならない、のがある意味ネタバレなのかもしれませんが! パンフ買わなかったのでとにかく役名とか地名とか年代とか漢字とかサッパリです(笑)。日本史の授業受けたことないしなー!*8
 ネタバレというほどのものもありませんが、一応畳んでおきます。
 
 

 とにかく、コミカルで面白くて笑えるんですよ。井上さんだからさもあらん、なのですが。1幕は特に…カッコ良くて素敵なのに何だかどーにも可哀想な小栗小次郎と、飄々と無自覚に黒キャラ(笑)な藤原武蔵の対比とか、すーぐ踊り出しちゃう柳生おじさん*9とか、徳高いのにオチャメな沢庵和尚とか、あわあわはわはわしてるへーしんさんとか、に可愛いおとめちゃんとオモシロまいさんが加わって、座禅組んでてもわちゃわちゃしてるし、説法聞いててもわちゃわちゃしてるし、本当に可愛らしい人たちです…。すぐにでも決闘を開始してしまいそうな小次郎と武蔵を、3日間の禅修行が明けるまでは何とか戦わせまいとする柳生さんの奥義とか(笑)。もうねーわやくちゃでしたよ。そしてお坊さんもそうじゃない人たちも頭ぺっちんぺっちん叩き合ってておかしいったら! まぁ確かに坊主頭というのは思わずぺちんと叩いてみたくなる感じだし、「道元の冒険」の時も北村有起哉の坊主頭をべっちんべっちんと叩きまくっていて、そのたびに観ているわたくしは「ああユッキーの脳細胞が死んだ! また死んだ!!」といらんハラハラをしていたわけですが、ムサシでは坊主頭じゃない人もべちべち叩かれておった(笑)。藤原武蔵は額にスマッシュヒット喰らって痛そうにしておった(笑)。例の5人6脚シーンでは、へーしんさんがやたら舞台のキワの階段まで這い出ようとしてて、それを必死で食い止める藤原武蔵がとても大変そうでした。あと小栗小次郎はえらい開脚させられて痛そうだった…そして足が長かった(笑)。藤原くんが額の汗をぬぐいつつ、「石段から転げ落ちるのだけはかろうじて食い止めましたが、いささか…疲れました」って云ってたのはアドリブかなぁ、ぽかったなぁ。
 禅修行の三日間の間に、乙女ちゃんの因縁の相手が判明してしまったりして、いざ仇討を!ということになる…のですが。せっかく剣客がふたり*10もいるのだから、ぜひ剣術のご指南を…!と請われ、禅修行が剣の稽古になってしまったり(笑)。またこの稽古が…基本はまず足元から、と足さばきの練習から始めるのだけど、何かいつの間にかタンゴちっくになってしまって、音楽もタンゴ調になってたりして…おっかしいの! 和尚さんはさすがに、禅修行の最中に殺生の訓練とは、といい顔しないんだけど、構えの型をみんなが習ってるのを横目で見て、警策で何となーく真似してたり(笑)。で、前半のクライマックスがおとめちゃんの仇討、になると思うのですが、その顛末含め…まさかそういう展開につながるとは…びっくりした…! 2幕のおとめちゃんとまいさんの、通路でのあのセリフで、…え!? ちょ、今何つった!?ってなった(笑)。てっきり話の本筋が、武蔵vs小次郎の再戦と決着にあって、きっとクライマックスは武蔵と小次郎の死闘…なんだろうと…ばかり…。ほんと、あの一言から急激に、わくわくめきめきしてしまいました。ひとり静かに色めき立った(笑)。
 そんな怒涛の終盤を超えて、明らかになるメッセージは、ちょっともうびっくりしてしまうほど超ド真ん中ストレート一球勝負、みたいな真っすぐさで。言葉にしてしまうと、「命を大切に」みたいな、どーしよーもないコトになってしまって、えええええ…となってしまいそうなのだけど、でもそれまでに重ねられてきたあれこれの展開を踏まえた上で、説教くささも理屈こねくりもレトリックもなく、本当にストレートに何のカッコツケもなくそのものずばり云われてしまうと、…うん。そうだよね。と…思わずにはいられない。ものすごい説得力と真実味を伴ってずどんと落ちてくる、というか。こりゃ納得せざるを得ないよね、というか。武蔵小次郎と一緒に、「…ハイ」と説得されてしまうのです。ストレート過ぎて引いてる暇もないというか、これ云われて引く方がカッコワルイだろ、というか、ね(笑)。しかしまさかこういう方向に話が進むとは、全くもってカケラも予想していなくて本当に衝撃的でした…でも面白かった、素敵だった…!
 いろいろあった上で、それでラストがオープニングと同じで終わる、のもすごく好きです。三日間なんて、本当は流れてなくて、武蔵と小次郎はほんの一時、数分とか、数秒とか、そのくらいの間だけ、迷い込んでしまったんじゃないか、なんて思ってしまう。場所もきっと、その辺の原っぱとか、見る影もないぼろぼろの廃寺とかだったんじゃないかなー。へーしんさんの最後の、「これでも、生きていた頃は腕の良い鏡職人だったんですよ」ってセリフが何だかとっても、じんわりしました…。皇位継承18番目でぶっ倒れる小栗小次郎も可愛かったなぁ(笑)。
 初生小栗さんでしたが、この方もやっぱり…真髄は舞台にある方ですね。テレビで見る印象と全然違ってて、ずっとずっと素敵で華がありました。とにかく顔ちっちぇースタイルいーい!と(笑)。カリギュラ様の時のような、圧倒的な存在感と凶暴なまでに放出されるエネルギーでギラギラして、眩しすぎるんだけどそれでも目が追ってしまうみたいな感じとは全く違っていたけど、生真面目でかっこいいのにどうにも間の悪い、ちょっと可哀想な小次郎がとてもキュートでした。めそめそ泣いたりすんの、可愛いじゃないか(笑)。剣術指南時の華麗な足さばきとか、腰の決まり方とかはさすがです。しなやかで爽やかな、若竹のようなポニテ*11姿でしたよ…。たすき掛けの手つきとかかっこいいね、鉢巻巻く時に一旦前にかがんで、前髪逃がして鉢巻するのもかっこよかった(笑)。藤原さんはオレステスを観ましたが、コミカルな藤原さんは初めて見るので、これもまた…新鮮でステキだった(笑)。コミカルな白石さんにコミカルな鋼太郎さん、というのも、見られて嬉しいお得感でしたよ。鋼太郎さんがおちゃめでねぇたまらないですね。前回観たのが杏ちゃんと親子役*12だった「SISTERS」だったので、ふたりともアレとのギャップもまた、何とも云えず…安心しました…。杏ちゃんは個人的に絶対の信頼を寄せている(笑)ので、うん。可愛かった。安心だった。
 ラストシーンで、「ああ、終わっちゃうのか…」と寂しく感じるお芝居は、いいお芝居なんだなぁと思いました。

*1:mnさん本当にありがとうございました!

*2:観てたら拙いことになってそうで…

*3:さい芸最寄駅

*4:負タリ

*5:なんて言葉はありません

*6:檀家?と思ってたらそういう言葉があるんですねー

*7:うはー

*8:そういう問題か…?

*9:

*10:…と云われて俺は?ってなる柳生さんがまた可愛いんだ!

*11:って云うな

*12:というか…