ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「怒り」※ネタバレ有り※

 そしてネタバレしまくる方~。核心に触れまくるので未見の方はご注意下さい。

 


 
 
 映画「怒り」ネタバレします。
 
 
 
 もういいかな。
 
 
 
 とりあえず、我々には何というかイージーモードでしたね! 開始5分で誰が犯人かわかるよね!! だって!! 知ってる身体だもん!!(笑) 身体つきと、立ったときの手の形とか、シルエットのフォルムとか、仕草とか、ねぇ…ちょっと、違う人バージョンで観てみたいんだけど…違うってわかるかどうか試してみたい。全裸で歩く後ろ姿の影とかもう完璧に未來さんじゃんね…あの太腿のラインとか他の2人にはないやつだよね…。冒頭の犯行シーンで、わーーみらいだーーってなってしまったので、逆にちょっと混乱してしまったり。未來じゃなくて犯人だからそれ…ほっぺにホクロあるから…。

 そしてまぁ犯人は田中なわけなのですが、冒頭でわかっちゃうとは云え身体はそうでも実は違うかもしれないし、と途中はけっこうドキドキしました。田中さんじゃないといいなぁ、でも田代くんでもないといいし、直人くん…でもないよね…?とけっこう揺れた。だって田中さんめっちゃ…素敵なんだもの…見た目サバイバル原人だけどさ。あんな兄ちゃんにあんな笑顔で…ってさっきも書いたな。ほんとにわたしも無人島で知り合って懐きたいよ~ってなる。し、田中さんのところに遊びに来た泉ちゃんの可愛らしさといったら、そりゃ田中さんだってあれは可愛いだろう可愛がるだろう。ほんっと泉ちゃん可愛い。辰哉くんも可愛い。辰哉くんだって、あんなお兄ちゃんいたら嬉しいだろうしすっかり懐いてたし懐かれて田中さんだって…可愛いはず…なのになぁ…。田中さんのことがわからなくて困ってしまう。

 他人の怒りに対して嘲笑するような田中の冷め方と、「怒」という字に込められた怨念に近いような強烈な怒りの感情、辰哉の告白を聞いて涙を流し*1、自分の無力さを心底恥じるような田中と、それを「ウケる」と嗤う田中、味方になるって云っただろと泣く辰哉を「何でそんな簡単に信じるの? お前、俺の何を知ってんの?」と冷淡に突き放す田中、辰哉を抱きしめる田中、首を絞める田中、カチャーシーをふらふら適当に踊る田中、突然破壊的な衝動に駆られる田中、そのひとつひとつに、整合性がまったく見出せなくて混乱する。というか、整合性を見つけようとしてしまうのが、そもそも違うんだろうな、とはうすうす感じているのだけど、どうしても因果関係というか、理由が欲しくて、探してしまうのだけどなにも提示されていなくて、それが欲しくて原作も読んだけど原作はさらに、田中視点というか、3人の視点からは何も描かれていなくて、全ては彼らをとりまく周囲の人の視点からしか語られず、彼ら本人が何を思いどう感じどの言葉に何を受け取りどういう情動があって動いたのか、は何もわからないままなのでした…わからないから余計につらい。田中さんがあんな、人相悪いのか良いのかわからないへらっとした笑顔でご飯なんかおごってくれたりするから、どうしても、あんな事件を起こしてしまった何か大きな理由があるんだ、やむにやまれぬ事情とか、それは仕方ないと思える情状酌量の余地とか、何かがあってほしいと思ってしまう。泉ちゃんに対するあまりに酷い言葉も、何かの計算の上で発したものだとか、そうせざるを得ない何かを探してしまう。どうしても、田中がただの悪人でない可能性を探してしまう…のは、演じているのが未來さんだから、なんだろうなぁ。もし、別の人が田中を演じていたら、わたしが彼をどう受け取っていたのか、知りたいもんだ。

 でも、田中がもし本当に、ただの、他人の怒りを嘲笑い平気で人を殺す人間だったら、壁の「怒」の文字は存在しないはずだし、辰哉に見せた涙が偽物の、嘘の涙だったとは思えない…いや、これは多分に「思いたくない」なんだけど、し、犯人の目撃情報を取調べで供述した男の云った、「生き返ると思ってたから蒸し風呂で何時間も待っていた、そんなことしてたら旦那が戻ってきちゃった」という言葉からも、明確な殺意に基づく快楽殺人ではないのではないか*2、と…うん、わかってる。何とかして好意的に田中さんを観ようと努力しているよわたしは。自覚あるよ知ってる(笑)。

 田中さんの中に、どうしようもなく暴力的で爆発的な衝動があるのは確かだし、それが向けられる矛先が人だった場合はやっぱり殺人という形になるのだろうし*3、怒りの感情を見下し嘲笑う部分と、自分の中にどうしようもない、ものすごく激しいそれを抱えている部分とが、きっと並列に存在して、それに耐えられなくてあの文字を削り付けるのだろうし、辰哉の胸の裡を聞いて涙を流すのもたぶん彼の確かな一部なんだろう、けれど、泉ちゃんの悲劇をウケると嗤う部分もきっと、彼自身の一部なんだろう。あの時、助けることもできずに「ポリス!」と叫んだと辰哉に告げた言を、田中は後で翻すのだけど、わからないんだけど、わたしと、一緒に観た友人には少なくとも、あの声が田中さん*4の声に聞こえた気がして、だからあのシーンでも、あれっ田中さん助けに来る!?と一瞬期待してしまったりもして、だから、辰哉に放った最後の言葉は田中の嘘だったのではないかとか、…とにかく、ただの一片の良心もない悪人ではなく、複雑に混乱し矛盾した内面を持つひとりの人間であってほしい、という過度な思い入れ(笑)がどうしても止められないのでした。困った…。

 あと、これもわたしと友人の共通の感覚だったのだけど、田中さんが米兵が怖くて膝が震えて腰が抜けて何もできなかった、って云うのが信じられない、という(笑)。えっうそだー勝てるでしょ? 華麗に回し蹴りとかで倒せちゃうでしょ? 正義の味方でしょ?って…とても自然に思ってしまった…完全に中の人に引きずられてて、それはいかんな、と笑いました。

*1:これは演出じゃなくて未來さんの涙なような気がした…

*2:ただこの言葉は小説にはなかった

*3:辰哉のペンションでそうならなかったのは多分ラッキーとしか云えないんだろう

*4:というか未來さん