ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「変身」虫観察日記6日目

 昨日の虫休めを挟んで、本日は観察しに行ってきました。復活の金曜日から1日ぶりのグレゴールは、さらにソフィスティケイトされた物腰と、より隙間無く埋め尽くされた虫動作と、おぞましいと呼ぶにはあまりにも美しいシルエットで、ざわざわと蠢いておりましたよ…。
 観劇後にお茶している時、dさんがふと口にした衝撃の一言(笑)が、頭の中でぐるんぐるんしています。そうか…食いだおれ人形…確かに…(笑)*1
 何だか、色々な方法や方向を試してみているように見えました、今日のグレゴール。そこ、そんな風に云うんだ!とか、そんなことしちゃうの!?みたいな、新鮮さがいろいろありました。セリフの云い回しとか、日々変化させるようになった…のかな。初日二日目とその次*2あたりまでは、ほとんど変えていなかったような…。
 
 
 
 
★この先ネタバレあり★
 
 
 
 
 本日の虫観察観察をば。ちょっぴりですが。

  • バグるグレゴール。今日は何か面白かった…遅回しはなかったけど、ねっとりにはなっていた(笑)。そして「最も最近の注文帳」の「もっとも」が、ずーっと「もっともっともっともっともっともっと…」になっていた…さすがに吹いたよ!
  • 頂けませんか、のカが、もう音になってなかった。なっかなか出ない最後に、カッ!って喉の奥が鳴っただけだった〜。主任が次の台詞云うのに、ちょっと戸惑ってるというか、あ、終わった…の?ってなってるみたいに見えた(笑)。
  • 鍵を開けて出てきたグレゴールが、主任を追い出して*3から、母親の元へ近づくところ。いつも、「おかあさん。…オカーサン」って虫声で虫口調で云ってたのに、今日はすっごく普通の声で、「お母さん。…おかあさん、」て、2回目はちょっと笑いながら、呼んでも返事しない母親に軽く焦れているような、反応が普通でない母親に、どうしたの?って問いかけるような、カにアクセントが付く口調で云っていて…怖かった。だって、完全に虫の状態で、相変わらず目はあらぬ方を向いていて、近づきながら、声だけいつも通りで…ホラーだった…。虫声よりぞっとしたわ…。
  • でもグレゴール以外の家族には、キイキイとかにしか聞こえていないんですよねもう。そうか、だから平易でいいのか。でも怖かった…。いや、怖くて良かった、んです。
  • 食事になりそうなものをかき集めてグレタがグレゴールの部屋に放り込むところで、放り込まれた食材が床にドン!と落ちた*4瞬間に、びっくりしたようにアワアワするグレゴール。か…可愛い…。
  • 相変わらずお食事は凄いです。ていうか虫! コップに水注いで飲まない虫!!(笑)
  • お腹がいっぱいになってベッドの下に潜り込むグレゴール。┌┐こういう足の間から顔を覗かせてる「ベッドの下」ポーズなんですが、呼吸をしているっぽく、その┌┐の上辺中央*5が、ふー、ふー、って緩やかに上下してるの(笑)。満腹のお腹を苦しげに上下させているみたいに見えて…わざとやらないとそんな風にならないだろうし、面白くって!
  • とにかく、クワガタの角的な両手の動きが増えて、それがすっごく美しくて、見惚れる。あれはもうね、表現ですね。芸術的表現です。ダンスでもなく、踊りとか振りとかでもなく、もっと原初的な、身体を使ったアート。ダンスの根源ってこういうところから始まったんだろうな、と思うような。
  • 今日、観ていてふと、クリスマスのあのシーンはグレゴールの幻想?と思った、のですが、ていうか今までアレは現実にあったクリスマス、最後の幸せだった頃の思い出、みたいに観ていたのですが*6、アレ?とさっき原作読み返してみたら、まんまと幻想だった…! わー! 覚えてなかった!
  • となると、ラスト近く、グレゴールが死の間際に「ただ、優しさと愛に満ち溢れた家族の顔を思い出した」の家族は、幻想のクリスマス…だったのかなぁ、と思いました。ただ、優しさと愛に満ち溢れた家族の瞬間なんて…そのくらいしか思い浮かばないもの…。
  • 家族の会話や嘆きを聞いて、がっかり声を出すグレゴールの声が、何か…バラエティに富んでいた(笑)。
  • 額縁を動かす母とグレタを阻止しようと、天井を伝って出てくるグレゴール。天井部分に乗っかった瞬間、左足がわずかにバランスを崩したというか、がっちり鉄骨の上に乗れなかったみたいで、ほんの一瞬ぐらっとしたのが…ひゃっ!!ってなった…気をつけて下さいお願いだから!!
  • リンゴを投げ付けられる時の、壁を登るグレゴールの位置が、上手側にちょっと動いて、軽く斜め向きになっていた、ような…前もっとどセンターで真正面じゃなかったでしたっけ? 違ったっけ?
  • 「リンゴがまだ僕の中にある!」「リンゴを取ってくれ!」ともがき苦しむグレゴールの動きが、木曜日以前のぐねぐねっぷりに戻っていました。前回まではもうちょっと、腰を浮かせない感じだったから…良かった、復調の証と思っておきます!
  • あと↑の台詞の声が、芝居がかった感じじゃなく、平易というか普通というか自然というか、な云い方になっていた。全体的に、ナリは虫でも言葉は平易、という方向になっていたなぁ。
  • 下宿人のお食事中に色んな音を立てるグレゴール、のフォローをする家族のところで、母親がグレゴールの咀嚼音?を真似してゴリゴリゲホゲホするのに、下宿人氏が「ママ〜!」とツッコミを入れた(笑)。ちょ、お母さんのこと「ママ」って云ったのあなたが初めてですよ下宿人さん!
  • オナラ的音*7をグレタの所為にするところは、「クサイな君は〜」っていうのが固定になったようです。…お年頃のお嬢さんにはひどい仕打ちだ!
  • グレゴールを指して「アレを始末して!」って、「(アレをグレゴール兄さんだと)信じ込んでいたことが諸悪の根源なの!」って云うグレタの言葉が、グレゴールに届いているのがつらい。グレゴール耳ふさいで!聞かないで!って思った…。グレタを音楽学校に行かせる考えを捨てていないグレゴールが、それを聞いて、自分から部屋に戻る…傷ついた身体を一生懸命引きずって、のろのろと部屋に戻る、その悲しみ、惨めさ、怒り、無力感、何か、とにかく…辛かった…。
  • グレゴールの最期の言葉、「自由に…自由に…!」が、今日はすっごく力強かった。その先に明るいものが待っているように聞こえた。消え入りそうに呟くのではなくて、歓喜に震えるような「自由に!」だった…。
  • …うん、その方が…だって、綺麗なクロッカスになるんだものね…死は悲しいけれど、閉じ込められたまま虫として続ける生の方が幸せなんて、私は思えないもの。
  • カテコ。家族がそろって、笑顔になるのが、どうしてこうなれなかったのかな…と思ってしまって泣けてくるのです…いやもう家族じゃなくなってるんだけど、さ…。
  • いつものように、美しい仕草で久世さんを呼び出して、今日は反対側、永島さん側へも、あの世にも美しい振り付けのような仕草で…両手を差し伸べました…。
  • 毛皮のマフを差し出す女の人の絵より、両手を差し出すグレゴールの絵の方が額装したいなぁ(笑)。
  • 丸尾さん福井さんを呼ぶ時にも、ちょっと低めに差し出して、笑顔でした。充実したいい笑顔!
  • 2回目のカテコで、ハケ際にひとりでお辞儀でした。とにかく、あの、上手袖に向かって歩いていく未來さんの背中〜肩〜首〜腕が美しくて! あんな風に美しく肩が開いてて下がっている立ち姿歩き姿、めったに見られないよ…!

 舞台は一回一回が一度きりで、毎回違って見えるから面白い、けれど今回の「変身」は、日替わりネタもないし、きっちり作りこまれているし、そういうアソビを含ませているものではないと思っていたのですが、いやいや。まだまだ。進化の糸口をさぐるが如く、虫は蠢動を止めていないのですね…! 声音ひとつ、イントネーションやアクセントやテンポひとつ、で、変わっていないはず台詞の意味や印象が、がらりと違って届く…やっぱり、演劇っておもしろい。森山未來っておもしろい。目が離せない。

*1:グレゴールにちょっと似てない?ってことです。眼鏡、髪型、色違いだけどしましま、ぎくしゃくした動き…プププ

*2:に私が観た時

*3:追い出したわけじゃないけど、逃げちゃったんだけど

*4:太鼓の音で

*5:つまり未來さんのお尻の辺り

*6:それにしちゃグレゴールはまだ発表していないっぽいことを云うなぁと思ってはいた

*7:虫ってオナラしないよねぇとか野暮なことを云ってみる