ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「Te ZukA」日本公演初日

 終わりました。凄かった、Te ZukAと手塚の波に呑み込まれるようだった。五感全部フルに掻き立てられる感じ、でもとても追い付けない多重構造の情報量で、でもその波に放り込まれて巻き込まれるのがすっごく心地良くて…わたしはこの作品、大好きです。特に1幕、ぐいぐい引き込まれて楽しかったー!!*1
 未來さんは、森山未來が、とか、そういうのを全く意識せず、カンパニーの中のひとりとして完全に機能していて、それがすごく…嬉しかったというか。モリヤマミライだよ!ていうの抜きに、でもちゃんと、ダンサーとして語り部として、カンパニーに溶け込んだ上での存在感をしっかりと感じさせてくれて、見ていて本当に気持ちよかったです。未來が踊ってるよ!!て、特別に思わなかったの。カンパニーが踊ってる、その中に未來もいるんだよ、て感覚。だから、群舞の中から未來を探し当てても、彼だけをオペラグラスで追いかける気にはならなかった。カンパニー全体として、舞台全体、作品全体を観たいと思った。そう思える作品だったのが、なんだかすごく、嬉しいです。
 1幕はとにかく、ワクワクが止まらない感じで。手塚治虫の漫画の世界に引っ張り込まれるようでした。ダンサーたちは時にマンガのキャラクター、時に筆の穂先、もしくはインク、ペンのストローク、漫画のコマ枠、そんなものたちへ次々と姿を変え、立ち顕れては消えていく。スクリーンに映し出される漫画と、舞台上の演者の境界がどんどん曖昧になっていく不思議な感覚。その水先案内人みたいに、静かな声で語り出す未來さん。ナレーションは数人の演者が受け持って、未來以外はフランス語だったり英語だったり、同時に日本語ナレーションが流れたり、日本語字幕がスクリーンに映し出されたりでしたが、基本的に舞台上ではダンスというかムーヴメントが続いているので、字幕追うのとか大変っつかほぼ無理でした…(笑)。聞こえてるけど意味が流れていってしまう〜!
 冒頭、3/11の震災と福島原発事故に言及し、そこから原爆、日本人が負った「トラウマ」がフィクションの表現世界にまで及ぼした影響、なんてことが語られて、軽く身構えたりしましたが、1幕はそこはわりとすんなりと通過した、かな。わたしは。その後のアトムの善悪判断の話とか、BJとピノコ*2が語るバクテリアの話とか、もうぐいぐい引っ張られて…特に発光するバクテリアのところが、未來さん含めたダンサーの動き、BJとピノコの語る声、スクリーンに映し出される漫画BJのセリフ吹き出し、生演奏で奏でられる音楽、語られているバクテリアの不思議な生態の話の内容、繰り広げられている要素の全部がまとめてすっごく良くて、素敵で、何だかよくわからないけど涙がぼろぼろ出ました…すっごい嬉しい顔して泣いてたよ(笑)。
 とにかく観るもの全てが新鮮で、たんのしーい!な1幕から、2幕は少しずつ色合いを変えていく感じで…最終的な着地点が、そこなのか、というか、そこしかない、というか。正しく現在の日本で創造された作品、現在の日本でなくては創造できなかった作品、でした。それはすごく悲しいことで、それを外側…と云ったら語弊があるかもしれないけど、日本の、日本人の内側からではない視点から見た上で提示されると、何だかすごく…つらかったというか、胸が苦しくなった。ので、最終的には少し塞ぎ込む観後感*3。救いがないわけではない、けれどそれは薄い霞のようにしか提示されなくて、そこに縋りたいような、縋れる希望が持てないような。バクテリアの話がそこに結びついてくるとも思ってなかったし、アトムが象徴的に使われるのは当然というかさもありなんだけど、まさか最後にそういう持ってき方をされるとは…思っておらず。個人的には凄く突き刺さる、痛くて苦しい終わり方でした…。1幕のバクテリアとは
全然違う味の涙がこぼれたよ…。
 痛くて重くて、まだどう処理したらいいのか、現実的にも作品的にもわからないのだけれど、それでもこの作品をわたしはすごく好きです。西洋から見ると日本と他のアジア文化圏は一緒くたにされてしまいがちよね(笑)とか、日本人は外国の方がイメージするほど、それほど習字に思い入れも親しみも感じてないよとか、やっぱりジャポネスクってそうなっちゃうのな、とか、思うところもありますが、そういう気になるところを差し引いても充分、あまりあるくらい、好きです。素晴らしい世界を目の前に作り出して、繰り広げて下さって、本当に感謝そして感動しています今。もちろん全然未消化だし、取りこぼしや勘違いもたくさんあるだろうけど、少なくとも1回観た今の時点では、凄いものを見せてもらった満足感でフワフワです!
 未來さん個人は、何のキャラクターだったのかなーと思ったり。予想では、フードかぶってしゃがんだままヒョコヒョコ歩く感じとか、ヒョウタンツギかしらなんて思っていますが。ラスト近くの、本を読む彼が手塚治虫に近づくのをキャラクターたちが拒絶するようなシーンで、フード被った未來さんもキャラクター側にちんまりいたので、やっぱり何らかのキャラなんだなーというのは感じました。あのシーンも何だか、2次元/3次元の越えられない壁、みたいなものを感じて切なくなった…思わず越えたがる彼を含めて、切ないなぁ。
 あと気になったのは、「人間昆虫記」のシーンで顔隠してる虫の足みたいなのの中に未來さんがいたかどうか(笑)。Perfumeっぽい3人が違うのは恐らく確か(笑)だけど、あの中にいたのかなーわかんなかったなー。語りのシーンでは話しながら動く手の饒舌さも美しかったです。ムーヴメントはもう、完全に、ダンサーとして溶け込んでいて云うことないわ。お習字のむ、可愛い字だった(笑)。
 あとは個人的に、ヴァイオリンの生演奏が嬉しかったのと、MWのみちお役をやってらした方がえらく綺麗だったのが今日の印象深かった点です。
 客席も豪華で、古田さん入江雅人さん高田聖子さん、麻生さん伊賀さんご夫妻、熊川さんに首藤さん、石井麻木さん、などなどをお見かけしました。ビュッフェでは生ハム生カット500円、ひとくちパスタ500円、パフェなんかもあって華やかな雰囲気(持ち込みもOK、ロビーでなくそちらで飲食して下さいとのことでした)で面白かったです。
 明日からもまた、変化していくのでしょうか。違いが追えるかどうかはわかりませんが、きっとわたしの感じ方も変わっていくはずなので、そこは見落とさないように、丁寧に感じていきたいと思います。
 とりあえず、今は、ありがとう、これに尽きます。テヅカ、大好きだ!!

*1:2幕から少しずつ色合いが変わるので…それはそれで、すごく、ずしりと頂きました。受け止め切れてはいないけど

*2:がまた…可愛いんだ!

*3:なんて言葉はないけれど