ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

小さくない登山家

 栗城史多という男をご存知ですか。27歳の登山家です。6大陸最高峰を単独・無酸素で登頂成功し、エベレストの単独無酸素登頂に挑戦している人です。
 8000mの山に単独で登るってだけでもちょっとおいおい、なのに、しかも無酸素*1なんて、普通死ぬってのに、栗城くんはさらに、単独で無酸素で登頂している自分の姿をリアルタイムでインターネット中継・配信するんです。昨年のエベレスト挑戦時は政治的な問題で配信許可が下りず、リアルタイムはできなかったけど、それでもカメラで自分の姿を撮り続け、その映像は配信されました。その時は体調不良や天候やタイムリミットや、色々で、エベレスト登頂は成功しなかったけど、断念する瞬間もカメラは回り続け、ぼろぼろのよろよろになりながらひとり下山する姿も全て配信されました。凄かった。意味がわからなかった。吹き飛ばされそうなテントの中で雪嵐の夜を、眠ると呼吸が浅くなって体内の酸素濃度が下がるからとなるべく眠らないで過ごし、這うようにして頂上を目指し、数時間かけて数メートル進み、嘔吐を繰り返し、体力の限界というよりはむしろ生命の限界ギリギリまで使い果たし、頂上がそこに見えるところまで辿り着きながら撤退を決め、号泣しながら暗闇の雪山を下山する、その一部始終が映像として届く。どうしてそんなに苦しんで山に登るのか、理解はできないけれど、とにかく凄いものを見てしまった、と思ったのが去年の秋。
 …なんて云うと、そりゃあストイックで筋骨逞しく常に冷静沈着で怖いものなしの、植村克己さんみたいな人を思い描きがちですが、栗城氏の面白くて素敵なところは、そういうイメージとはかけ離れてどちらかというと…情けない、とか、ダメとか、そっち側の雰囲気がどうにも漂っているところ、です。やってることは本当にものすっごいのに、どうにも凄く感じられない、感じさせない飄々としたダメっぽさ。が、たまらない(笑)。いやいや凄いんだよ、本当に凄いんだよ、なのにどうしてか…凄っぽくないの…でも、その凄っぽくなくてダメっぽい感じの彼が、泣いたり叫んだりしながら凄いことをやっている、そのギャップこそが彼の本当の凄さであったり、強みであったり、するのではないかと。凄いことをやりながら、凄ぶらない感じがね。とても良いんです。…実は本当に凄いんだけど、ね(笑)。
 エベレストの途中で流しそうめんしたり、エベレストの途中でカラオケしたり、どっちもヒッドいことになってたり、可笑しいのは本当に可笑しいんです。悲壮感のみじゃ、全くないの。ていうかバカなの(笑)。そういうところもすごく良いです、ユーモア(というかバカ)を忘れないところも。
 そんな栗城くん、現在はヒマラヤのアンナプルナという山で、8000m級の雪山からスキーで降りてこようという冒険に挑戦中です。「死亡率が41%と世界で最も危険な山」に、ひとりで登って、中継しながらスキーで降りる。やっぱり意味がわからないけど、とにかくすごいことをやろうとしているのはわかります。あ、今回はツイッターで「ヒマラヤなう」もされています(笑)。無線LAN基地構築しながらヒマラヤ登るって…ほんと意味わかんないよ栗城くん…どうか生きて帰ってきて下さい。「下山なう!」を待ってます。

一歩を越える勇気

一歩を越える勇気

 すごく面白かった。吹き出して笑って、号泣した本です。甘露とはちょっと違うけど(笑)。
栗城史多オフィシャルサイト
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*1:酸素ボンベなし