ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

カフカ「変身」

変身 (新潮文庫)
 「虫はイモムシじゃないよ〜」を確認する為に、文庫本をほじくり出してきたついでに、久しぶりに再読してみました。短編だから会社帰りの電車で読み終わっちゃったー、こんなに短かったっけか。
 印象としては、何かもう淡々と救われない話だなぁ、だったのですが、久々に読み返してみて、…淡々と救われない…。登場人物誰に対しても、一切の感情移入を求めていないような文章が、逆にぞわっとします。たまに。あと、イメージ的に虫はGの付くアレ(笑)だったんですが、やっぱり違うんですね、コガネムシとか、カブトムシのメス、みたいな感じ。動きが愚鈍で、胴体部分が丸こく太い…ううううう。どっちにしろ…ううううう。これを未來さんが…うううううう。
 小説では具体的な描写で描かれている「虫」の形態ですが、グレーゴル・ザムザの「変身」という現象は、象徴的なものなのだろうなぁ。…とぼんやりとは思うのだけれど、何の象徴だろうかと考えるとわからない。本人が自分の身に起こった変化を、意外にあっさりと受け入れているのも面白い…というか、奇異。どうやったら戻れるかとか、どうしてこうなった!?とか、そういうパニックは一切ないのね。そこが逆に不気味な静けさにも感じられるのだけどね。「変身」という現象に象徴される出来事はむしろ、グレーゴルを取り巻く人間たち*1の方、なのかも知れない。わからない。
 しかし虫かーーー。グレーゴルの状況は悲惨だし、悲劇だと思うのだけど、その割にはあんまり、読んでいて「かわいそう!!」とは思わないんですよね。文体がそう思わせてくれない、むしろそう思われるのを拒絶しているみたいだから、というのはあるんだけど…やっぱり対象が「虫」だからなのかなぁ。寝椅子の下にもぐり込んでもはみ出すくらいのサイズの甲虫、だもんなぁ。
 未來さんが演じたら、虫かわいそうだああああ!!!になるのかな。どうなのかな(笑)。

*1:家族とか上司とか下宿人とか女中とか