ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「死刑執行中脱獄進行中」初日

 初日、ついに謎の舞台の全貌が明らかにされました…謎だったよねインタビューとかいくら読んでも全く想像つかなかったからね。すごかった…観たことのないものを観た90分でした。演劇とコンテンポラリーの融合、ではあるんだけど、何かもっとすごい…いろんなものを観た気がする。もちろん芝居だしコンテンポラリーの要素は全編に渡っているけど、サーカスっぽさも感じたり、手品みたいなトリッキーなことも起きたり、海や船の表現は舞台美術なんだけどそれ自体がひとつの芸術作品というかインスタレーションみたいだったり、音楽はライブの音圧だし、でもそれらを一度に同じ舞台の上に持ってきて、それで成立するのはやっぱり演劇ならではなんだなー。だから広義の「演劇」に戻ってくる、のかもしれないな。でも観ている最中の、わたし個人の見方というか観る姿勢は、演劇というよりはインスタレーションを観ている感じに近かったし、受ける印象や抱く感想もそっち寄りだった。いわゆるキャラ立ちした役は出てこないし、ストーリー性も原作に比べて*1薄まっているというか抽象化されている印象で、あそこの展開からのあのセリフに感動!!ってタイプではまったくなかったので、そういう方面とか、原作漫画の舞台化、2.5次元舞台として期待して行くと、うん。ぜんぜんちがうよ。もっと、口ぽっかーんと開けて瞬き忘れて見入ってる90分だった。脳味噌の普段使ってない部分をぐいぐいぎゅむぎゅむ圧されて、使ってない感性ぐりぐり押し広げられる感じ…で、90分とは思えないほど終演後につかれました…(笑)。いや、演じてる方こそおつかれさま過ぎる舞台だったけど! ほんっと最後まで怪我やアクシデントのないよう祈っております…とにかくものすごい運動量、そして身体能力あますところなく見せつける舞台でした…。
 身体と動きが語るから、セリフは必要最低限って感じで。前にインタビューで、「たとえば男のセリフをダンサーが云ってもいいかもしれないし」みたいなことを未來さんが云ってるのを読んだ気がするけど、うん。未來さんのそういうのって大体後で「あーあの時云ってたのこれのことかー!」ってなるよね(笑)。「ドルチ~」と「死刑執行中~」の2作品をどう混ぜるのかも気になるポイントでしたが、不思議な混ざり方をしていた…夢のような…夢といっちゃずーっと奇妙で綺麗な悪夢を見続けているみたいな舞台だったけど。
 荒木作品っぽさは、わたしはあーんまりわかりませんでした。多分原作漫画ファンなんだろうなーっぽい、いつもの未來さん舞台ではあまり見かけない感じのお客さん*2をたくさん見かけたけど、どうだったんだろう…わたしのお友達のジョジョ好きさんは、「女がとても荒木先生キャラっぽかった」と云ってました。が荒木作品ぽさはほとんど感じなかったそうです。ジョジョ立ちみたいなポーズもたまに見かけはしたけどね…。ただ、直線的で構造的で無機質な線が、揺らいだり伸縮したり蠢くことによって有機的で不安定なものに変化する気持ち悪さ、みたいなものは、原作を読んでいる時に感じた気持ち悪さと通じるような気は、した。
 未來さんはもうほんと、今日本でこれができる俳優はひとりしかいないです。圧巻の身体能力。もちろん、周囲のダンサーさん方に拠る部分も多いでしょうが、とにかく最後まで怪我のないように、それだけを祈るしか。ドルチの存在というか、出方は意外でした。初音映莉子ちゃん、スタイル良くてしなやかで存在感あって素敵だったし、異様さもあって怖くもあった。その怖さがまた良い! 途中めっちゃ怖かったけどかっこよかった。ドルチ側の世界に切り替わるというか、一気に世界が移る演出すごく良かった…反復で徐々に仕組みというか現象の謎がわかってくる造りも面白かった! 蜂のシーンはちょっと長く感じたけど。布の表情ってものすごく豊かなんだなーというのも改めて感じました。音楽は生バンドなのでほぼライブ音量でした。両サイド前方席だと、スピーカーが近くて音圧かなり高いので、耳が弱い方はちょっと気をつけた方がいいかも。ドラムとかけっこうガンガン来ますよ。
 パンフはA4サイズで1500円、グッズいろいろありました。タイツとか! スマホケースとか! ランダムで6種類くらいが出るチャームとか!

*****この先ネタバレ含みます*****


 ラスト、行く先を幾重にも阻むように塞いでいたダンサーたちが、ひとり、またひとりと離れて動きを止め、脱獄の障害は薄くなり、最後にはすべてなくなるのに、障害が消えても男は同じ動きを繰り返して、抗い続けるのが、終わることのない脱獄、何から逃れているのか、逃れるべき対象を失ってもなお逃れようともがき続ける男の姿に、執行されている刑の重さを感じると共に、生きるということはすなわち死から逃れ続けることだよな…なんてことも思ったのでした。1日生きることは、1日死から逃れること、そう考えたら生きとし生けるものすべて、この瞬間が死刑執行中よね、なんて。
 明日以降舞台がどう変わっていくのか、わたしがどう感じるようになるのか、楽しみです。…ちょっと頭あんまり働かないまま書いてるのでいつもに増して支離滅裂だな。眠い!

*1:そもそも原作もキャラの誰かに感情移入して楽しむストーリーの作品ではなかったけど

*2:男性の集団とか!