ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

阿目虎南「蝶番」@埼玉県立近代美術館(9/25)

 続いて翌週、同じく「迫り出す身体」展関連イベントで観てきました。そうそう、どちらも無料だったのすごいよね! ありがたいけど申し訳ない…けど税金払ってるからいっか。

 阿目さんは、麿赤兒さん率いる舞踊集団「大駱駝艦」のメンバーとのことで…舞踊を観るのは初めてだったので何というか興味津々でした(笑)。勅使河原三郎さんは観に行ったことがあるけど、勅使河原さんは白塗りされないのであんまり「舞踏!!」って感じもしなかったからなー。コンテンポラリー感覚で拝見した記憶が。白塗り剃髪ほぼ裸、というのは初めてでした。何か…不思議な体験だった…。

 先週と同じ美術館内の講義室みたいな部屋の真ん中に、2m四方くらいの正方形の小さなステージが設えてあり、その周りに例の小机付き椅子が並べてある前に、かぶりつき席のお座布団がありました。椅子の最前列から鑑賞。作品は4部構成になっていて、最後の第4部は講義室から屋外に出て、隣接する公園の敷地内で上演されるとのことでそれもちょっと楽しみな演出でした。

 初めての舞踊はとても…観たことのないものだった! まだまだいろんな世界があるなー! とても不思議ですごい面白かったです。わたしがこれまで好んで観てきたものたちよりもずっと、よりプリミティブでアニミズミックな印象で、でも日本の伝統芸能っぽい香りも感じつつ、そしてものすごくアパッショネイトでもあった…抑制と爆発の振り幅というか。小さな舞台からはみ出すように躍動する肉体を、ほんの数十センチの距離で観ているのは、否応なく鼓動が速まるものですね。白塗りが舞踏に於いてどういう意味合いを持っているのか、不勉強で存じ上げないのですが、何というか依代っぽいというか、人ではない存在に一歩踏み出しているような印象を受けました。精霊とかそっちの方に。ほぼほぼ裸で、目の前に立たれて、迫力とか存在感とかはものすごいんだけど、人っぽさと云う意味での生々しさは意外に希薄というか。抽象化された人間という存在、みたいな在り方を感じました。でも踊りながらどんどん汗ばむ肌とか、汗でだんだん肌の色が透けて見えてくるのとか、生っぽさも確かに強烈にあるんだよな…その辺の揺らぎがまた面白い。

 人と精霊と獣のあわいを行き来するような3部を経て、屋外の公園へ誘導される4部、外はすっかり暗くなって*1、でも普通の公園なので、ポケモンGOしに来ている人とか、犬の散歩の人、子供たちがキャッキャいいながら遊ぶ声なんかもまだ響いていて、とても「日常」な空気で、ついさっきまで目にしていたものとのギャップに少しめまいがする程(笑)。職員の方の誘導で案内されたのは公園内の噴水のほとり、何か水系のポケモンが出るっぽくて昼間は人がたくさん集まっていたところです。照明が1本立てられているだけの噴水の手前になんとなーく数十人立って待っていると、エンジン音を高らかに響かせたバイクが1台ゆっくりと近づいてきて*2、そのタンデムシートから降り立ったのが阿目さんでした。蛹みたいな、がばっとした質感の…皺目のついた紅白の生地?を荒い縫い目でざくざくと縫い合わせたような、蓑虫みたいな衣装を着て、ゆっくりと公園の階段を下り噴水へ近づいて行く、その姿をオレンジ色の照明が闇に照らしだす…遠くからは子供の声、すぐそばをお散歩中のわんことおじさんが通り過ぎる中に、突然現れる非日常のものすごい違和感、最高です大好きです(笑)。特に柵とかも何もなく、ただ遠巻きに観ているだけなので、完全に元々の観客じゃない、通りすがりのおじさんとか犬の散歩中のおじさんとか*3、も紛れ込んでというか巻き込まれてというか、一緒に観ているのも面白かったです。わんこも静かに観てて(?)いいこだったなー。そのうち、噴水のある池の中にざぶざぶと入っていくと、中州…じゃないな、小島状に岩が組んである真ん中に上陸し、そこでまた踊る。のを池のほとりから観る。すごくすごく幻想的で、見知っている風景なのに全く違うものに見えて、のどかな公園の噴水が異界のように感じて、でもポケモンしてる人もすぐそばにいて、となりにはおじさんとわんこがいて、でも目にしている風景は別世界みたいに非現実的で…いやぁ面白かった! 野外公演は初めてではないけど、オープンエアというか劇場が組まれていない場所で、日常と地続きなものは初めて…なんじゃないかな。参加型とはまた違うし。とても面白い、貴重な体験ができました。

 終演もそのまま公園で迎え、そのまま解散になるのも面白い感覚だったなぁ。拍手して、阿目さんをお見送りするみたいな感じだったのもちょっと面白いし、そのまま外だから帰途に就く感じも…「劇場を出る」という行為自体にも、非日常を日常に戻す役割というか、効果があるのかもしれない、なんてことを、非日常とつながった日常をふわふわしながら歩く駅までの道すがらで感じたりしました。

*1:多分18時頃

*2:正直、なんかめんどくさいのいるよー早く通り過ぎろーって思っていました…

*3:おじさんばかりだった気がする