ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

別に何というアレでもないですが

 会社のおっさんというかむしろもうおじいちゃんというか、まぁそんなご年配の方が、どうやら風邪なのか花粉なのか鼻炎なのか何なのか、でね。鼻ぐずぐずなんです。で、頻繁に鼻をかむ。や、それはいいんです。かまわないんです。どうぞ心ゆくまでおかみなさいな*1
 しかしね。その音がね。
 ぶーっていうの。ぶーーって鼻かむの! 今このペットロストならぬバットロストな日々の真っ最中に、そんな、ぶーーっなんて音で鼻かまれたらさ! 瞼の裏に浮かぶのはただひとつのお顔じゃないですか!!*2
 泣きべそかいて鼻かんで、眉尻下げて眉根寄せた、わざとらしいしかめっ面でしおらしく鼻かんだハンカチ返却しようとする牙のとんがった半分色素薄い愛しいあの子の顔が浮かんで浮かんで…どうしてじいさんが鼻かんでる音聞いてこんなニヤニヤしてんだろ私、と思わぬでもないが、しかしニヤニヤしてしまうのでした。しかも毎回。
 電話の受け答えで「ハイそうです」とか云った日にゃ階段駆け上がるロングコートが浮かぶし、昼前に「お腹が空いた…」と呟けば「まぁ!」と驚く声が聞こえるし、ああもうわかったよすっかりアイツにイカレてますよ。むしろアタマがイカレてますよ。いいんだ!
 でも何か不思議なのは、初演後はそういう小さなきっかけで呼び起こされる舞台の記憶が、全てこう、失意と絶望のうちに思い出され、思い出して浮かぶのはじんわりとした涙ただそれのみ、だったのですが、今回はね。思い出すとニヤニヤしちゃうんです。嬉しくなっちゃうんです。もう二度と会えない子を「可愛かった…」と涙ながらに思い出すのが初演アフターでしたが、今度の休みにはまた会える子を「可愛かったねぇ!」と満面の笑みで思い出すのが再演アフターです。どうしてだろうこの違い。
 明日もじいさんが鼻かむ音聞いてニヤニヤしよう。

*1:なぜ上から目線

*2:おじいちゃんには背を向ける席なので音しか聞こえないの