ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「オイディプス」@シアターコクーン(10/25夜、10/26昼夜、10/27昼)

 嵐と共に…って印象のオイディプス千穐楽を迎えましたね。お疲れ様でした…何だか不思議な印象の舞台だったなぁ。通えばわかってくるのかな、と思いながらぼちぼち通っていたけれど、数重ねてもあんまりわからなかったな……「わかる」って何なのか、何をもって「わかる」と感じるのか、「わかる」ことは良いことでわからないことは悪なのか、それは本当にわかっているのか、わかったような気になっているのとは違うのか、じゃあわかったような気にならないのは何なのか、とか、そんなことをぼんやり考えています。わかったような気にならない舞台、だったのは、あんまり思い入れを込められる対象が舞台の上に見つからなかったから、かなぁ。最終的にそれは姉妹に落ち着いたのですが。

 わかる/わからないの話でいったら、それこそコンテンポラリーとか抽象表現の方がよっぽど「わからない」んだけど、明確なストーリーがあってキャラクターがいて言葉でセリフを語っているのに「わからない…」って感じるのも面白いな、と。抽象表現はそもそも明確なものがあんまりないからこそ、受け取る側の自由度が高いから、好き勝手に「わたしはこう思った!」「わたしにはこう見えました!」でいい、からかな…。ストーリーもキャラクターもセリフもあるのに共感する相手が見当たらないのは、なるほどわからん。となるのだな、というのも新鮮な発見(?)でした。だって誰にも共感できないんだもの! やっぱり姉妹!!

 でも、共感する宛先が見つからないからといってつまらないわけではないのはちゃんと云っておきたいです。「わかる」かどうかと同じことだけど、共感できる・できないと良い悪いとか面白いつまらないとか、は、全然別ですよね。そこを混同して思い込まないようにしたい。オイディプス、共感できる人はいなかったけど面白かったよ。良い横顔とお声と姿は堪能できたし!! 低い声からオクターブ上がった瞬間の、会場全体の空気が!?って変わるのが毎回、凄く気持ちよかったです。

 各回ちょこっとメモだけ。

 

10/25夜

  • コリントスオイディプスを国王にと望んでおります!」「What?!」これ誰ですか…途中から毎回ここ面白くなってしまった(笑)。
  • 客席にいのうえさんがいらしてました。
  • 上手端っこ上の方席だったんだけど、上手からだと正面顔がたくさん拝めてこれはこれでとても良かったです。
  • が、あのひとだーいたーい目が死んでて面白かった…オイディプスとかイオカステとかほーーんとどーでもいーわ、みたいな顔してるし、イオカステの悲劇的なシーンも「……死んだか」みたいな顔で梯子の上にいて微塵も興味ないんだなっていうのが伝わってきます。好き。
  • そりゃあさっさと会見準備するよう耳打ちもするし、子供たちに逃げられたらチッて顔するわ。興味ないもんね。
  • もしかしたら神にもあんまり興味ないただのやたらカリスマ性に富んだ野心家なのかもしれない。クレオンを介してテーバイを手中に収めることだけが目的だったのかもしれない、なーんて思ってしまったのだけど、でも冒頭の市民の窮状を訴えるところは死んだ目じゃなかったから、神を敬い市民と共に在るのはたぶん本当…。


10/26昼

  • コリントスは、オイディプスを国王にと望んでおります!」「おっおっおっおっ!?」なんだこれ(笑)。
  • リーダー、「もちろん家畜の餌もありません、なのでもちろん家畜はどんどん死んでいきます」どんどんが増えた。
  • リーダー、前半すごい具合悪そうなのに後半になるにつれて元気なの面白いなって。けっこう身体悪そうだから心配になるんだけど、最終的には元気そうだから忘れちゃうんだ。
  • イオカステがアレするの、ストッキング結んでたんですね。ちゃんと素足になってるから脱いだんだなって…神に供える花も寝室にあるやつだし、そこにあるものでちゃんと成立しているんだな。
  • あと、オイディプスに蹴破られたドアがすごい蹴破られててちょっと面白くなってしまった…めきょめきょになってた…。
  • そしてお下げ組!! 確実に泣かせにくるお下げ組!! やっぱり大変良かったです…クレオンの手に手を重ねてるイスメネも良かったし、クレオンからリーダーに代わった時に振り返って三度見くらいして誰この人…って不信感しかないイスメネ最高だし、アンティゴネのスカートをイスメネがぎゅっと握ってるのも良かった…。
  • そうだよねリーダーと接点ないもんね。「だれこのおじさん」だよね…。クレオンは叔父さんだけど。
  • 駆け出す前のアンティゴネにすごい覚悟のようなものが見えて、それは近いものがイスメネにもあるんだけど、イスメネは年上な分ブレーキがかかるんだろうな…と思いました。アンティゴネは覚悟で吹っ切れて走り出せてしまう。同じ思いを抱えて、でも自分は行けなかったイスメネの「アンティゴネー!」があれだけ悲痛に響くのはもうね。当然だよね。
  • と、ついつい姉に思いを寄せてしまう長子体質なのであった。
  • そういえば、昨日(10/25)何となく、あれー何かでかくない?って思った最後のクレオンとリーダーの配信、やっぱり大きく映ってなかったですか。壁いっぱいのアップになってませんでしたか。今日見たのと余白が違った気がするんだ…天井席だったからそう見えたのかなと思ってたんだけどやっぱ違った気がする。
  • カテコで出てきたアンティゴネちゃん、いつも他の出演者にぱちぱち拍手してたけど、今日はちょっと叩いてあっ!て感じにイスメネちゃんと笑って、手をお行儀良くしてたので、拍手しないように云われたのかな。してもいいのにーかわいいから! でも笑ってきちんとしてたのも可愛いからいい!!


10/26夜

  • ソワレは下ろしてる組で無垢と衝動*1でした。アンティゴネの小ささがね…イスメネも幼くてね…ほんとどっちも甲乙つけがたい。
  • コリントスは、オイディプスを王にと望んでおります!」「おっおっ」「マジか」ふたり云ってた(笑)。
  • リーダーの人間味の薄さというか、俯瞰みというか、市民たちのことを思いオイディプスに進言しクレオンに従うんだけどどうにも人っぽくない冷淡さ?が何なんだろうってずっと思っていたのですが、ふと、この人は人間の形をとっているけど「テーバイ」という都市そのものなのかもって思ったら、何かしっくりきた。
  • テーバイそのものだから病んでるし、相当具合悪そうで、市民の窮状を伝え何とか都市の破滅を回避しようとオイディプスに訴えるけど、汚染の源が彼自身とわかるとすっとオイディプスに冷酷になって、クレオンの支配を受け入れて、神とともに美しい国になる。テーバイがそうありたい国に戻る。体調も良くなる。
  • …って思ったらなんか腑に落ちました。あれ人じゃないよやっぱり。


10/27千穐楽

  • 大楽をお下げ組で観られて良かった…! 最終的に、走り出せないイスメネ側に泣くのでした。いやぁ泣かされたよお下げ組…。
  • コリントスは、オイディプスを王にと望んでおります」「おっ?おっ?おっ?」
  • 今日はみんな感情振り幅大きめで、オイディプスはわりと毎回言い回しとかテンションに揺らぎがあったけど、さらにというか特にというか感情的で、イオカステも泣いてたし、ラストの追放前でクレオンももらい泣きしてて、配信時もちょっと感情高ぶってる感じだった。
  • 子役ふたりの熱演がまたね…さらに涙を誘うよね…あれを目の当たりにして目頭熱くしないのは至難の業だよね…。
  • そんな中、愁嘆場を早く終わらんかなー顔で眺め、腕を逃れた姉妹に一瞬苛立ちを見せるリーダーの安定した死んだ目よ。
  • そりゃあさっさと配信準備を命じますよね。彼の「今はただ、見るに耐えない」がほんと切り捨てまくってて大好きです。まったくだ。
  • カテコはいつもの+2回? もっと? 最後、無理矢理出させたみたいな粘り勝ち(?)でした。おつかれのところすみません…ありがとうございました…。
  • 未來さんは最後、いつも下手の扉にハケるところを上手にハケて、柳本さんと肩組んだりダンサー組とわちゃわちゃして、最後にお手振りしていきました。お疲れ様でした!!

 そういえば、羊飼いを呼んだのは、ライオス殺害の犯人が複数だったかひとりだったかを確かめる為だったのにそれは有耶無耶になって(というかオイディプスだったから単独犯で確定なんだけど)、羊飼いはどうして複数って嘘の証言をしたのか?って友達に訊かれて、羊飼いはライオスが息子に殺される予言を知っていたから(イオカステは怯えていたって云ってたし)、単独犯だとそれが息子である可能性が出てしまう=自分が預かった赤ん坊を殺さなかったことが露呈してしまう、からじゃない?って答えたんだけど、これで合ってるの?? 自信ないな??

*1:おさげ組は悲哀と覚悟…と勝手に思ってる