ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「仕立て屋のサーカス大博覧会」@ルミネゼロ(5/6夜)

 辻本知彦さんがゲスト出演される、というのは何となーく小耳に挟まっていて、うっすら気になるとは思いつつ……だった「仕立て屋のサーカス」、公演時の写真を見かけたら何だかよくわからないけどすごく素敵そうな匂いを感じたので、急遽チケットを手配して行ってみました。結果、大勝利。めちゃくちゃ良かったのです、素晴らしかったのです、五感全部が喜ぶ美味しさだったのです!! 楽しかった~素敵だった~連休最後の夜でちょっとのんびりしたかったなぁと思わなくもなかった気持ちが吹っ飛ぶ、圧倒的行って良かった感でした…また行きたいし他のゲストさん回がどういう風になるのかもとても気になる…でも辻本さん回で行けて良かったともとても思う……。

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 仕立て屋のサーカスとは、「音楽家×裁縫師×照明作家 による音と布と光のサーカス。」であり、ミュージシャンの曽我大穂さん、ガンジーさん、デザイナーのSuzuki Takayukiさん、照明作家の渡辺敬之さんを中心にしたユニット…でいいのかな。とのことです。が何も知らず、本当に一切の前情報を持たずに行ってしまった(笑)。何が観られるのか、何が起こるのかもさっぱりわからないまま…ただ、開演時間が19時なのに開場時間が17:30で、どういうことだ…と思いつつ開場時間くらいに行ってみましたよ。そしたら! 開場前のロビーというかホワイエというか、に、マルシェみたいなお店がいろいろ出ていて! 美味しそうなものとか綺麗なものとか素敵なものとか美味しそうなものとかがいろいろ…市場みたいに並んでいて! テーブルや椅子のスペースもあって、そこでドリンクを飲んだりフードを食べたりできる、という…なるほど17:30開場の謎が解けた。とりあえずお腹は大丈夫そうだったので美味しそうなお弁当は眺めるだけにして、廃棄されてしまう柚子の実(お料理に皮だけ使った後の)とかグレープフルーツの実がたっぷり入った美味しい廃ボール…じゃなくてジンジャーエールと、いちごを頂きました。実を竹串で突っつきながら飲むと、果汁の味が溶け出してとても美味しいソーダだった…! もちろん残りの果実は食べます。

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 あと、試食を頂いたらびっくりするほど美味しくて辛くてでも美味しかった生の胡椒の塩水漬け、純胡椒を一瓶買いました。すっごい美味しかったー美味しいものに乗せて食べたい! チーズとか肉とか芋とか! 曽我さんが、お店紹介の時に「初めて食べた時に口の中がサーカスみたいになって、世界で一番小さいサーカスです」って云ってたの、本当にその通り…!ってなった純胡椒です。まだ開けてないけど楽しみ。

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 他にも古本屋さんとか、SuzukiTakayukiさんのコートやトートバッグが販売されていたり、ドライフラワーのお花屋さんとか、眺めるだけでも素敵でした。サーカスの前の市場って感じでわくわくした!

 そして客席開場されて中に入ると、足元には巣みたいに布が敷き詰められ(その上は座布団席!)、頭上から放射状に張り巡らされた三角フラッグ、ぽつぽつと灯る電球、中心のアクティングエリアには楽器やミシンが散らばる、何とも素敵なサーカステントになっていました。長時間座布団きつそうかなーと椅子席にしたけど、おざぶ席楽しそうだったな~もし次回行けたらあっちにしよう…。とにかく空間が素敵で、流れている音楽も素敵で、知らないのに懐かしいような、夢で見たことのある場所のような、ずっとここにいたい…って始まる前からなっていた(笑)。あ、写真・動画撮影及びアップロード全てOKです。フラッシュのみNGでした。

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 写真貼ったら長くなったから畳んでおきます。

 

 サーカスの始まりはまず道化師から、なのかどうかわからないけれど、入り口からカウベルのようなものを首からたくさんぶら下げた曽我さんが入ってきて、客席を練り歩きながらお客さんにキャンディーを配ったり。テントの中では黒衣のSuzukiさんが、大きな白い布地を手で裂いたり、ミシンをかけたりし始めている。曽我さんはキャンディーをどっちの手に入ってるかゲームをやったり、投げてばらまいたり、しながらテント内のマイクの前に辿り着くと、ベルをカラカラ鳴らしながらアコーディオンやピアニカを鳴らし、暗いテントが音に包まれていく…ガンジーさんがいつ登場したのかちょっと失念してしまった…けどいつの間にかウッドベースアコーディオンやピアニカやギター? ウクレレ? ちょっと小さかった気がする…や、それらの音をサンプリングした音たちに絡んで、混沌としているけどとても耳心地の良い音が紡がれていきました。布を裂いたりミシンを踏んだりしているSuzukiさんは、その布を、演奏しているふたりの背後から構わずどんどん着せ付けていって、シンプルな白いシャツに黒いパンツ姿だった曽我さんガンジーさんが、どんどんデコラティブな様相に変わっていくのが面白かった。そして静かに、滑り込むように辻本さんが現れて、獣のように四つ足で蠢いたり、箱の上に立って高く指先を伸べたり、そこにまたSuzukiさんが動きに構わず着せ付けていって、羽が生えたようなフォルムになっていくのが…夢のようだった…。白い柔らかい布を襷状に背中に括り付けていってから、白いチュールの塊みたいなものをその襷に結わえこんで、束ねてあったチュールをほどいてその端を大きな裁ち鋏で切り落としていく、パフォーマンスに近いスタイリングが面白くてかっこよくて仕上がりがどんどん、ファンタジックな不思議なフォルムになっていくのも素敵で目が離せなかった。裁ち鋏が閃いてシャキン!って小気味良い音がするのかっこよかった…。照明も明るくなったり暗くなったり、ミラーボールが回ったり、ぽつんぽつんとランプだけ灯ったり、すごく幻想的でノスタルジックな空間を作り上げていて、ドキドキしながら心休まるという不思議な…でもひたすら居心地の良い空間でした。ほんとずっといたい。泊まりたい。滞在したい。

 サーカスは2部構成になっていて、1部と2部の間には15分の休憩が挟まり、後半もやっぱりずーっと素敵なのでした。1幕(?)ではモノクロームの世界に赤一色が差し色のように混ぜ込まれていたけど、2幕ではそこにさらに色彩が加えられて、色とりどりの布をどんどん身に纏わされていくミュージシャンとダンサーたち。やっていることはつまりライブ+パフォーマンス、なんだけど、もっとインスタレーションっぽさというか、空間芸術として全体があるというか、あの場所の要素すべてが五感に干渉し五感で鑑賞するもの、というか。目で見る色かたち動き光、耳に聞こえる音、肌に感じる布の感触や風、食べ物や飲み物の味や匂い、全部が「サーカス」の要素なんだなー、だからこそのライブではなく、パフォーマンスでもなく、「サーカス」なんだなー、と思いました。

 ミュージシャンが音を奏で、ダンサーが動きを添え、照明家が光を操る中、黒子のような出で立ちの裁縫師は着せ付けを終えて、今度はテントの周囲を忙しく動き回ります。切り裂いた布を結び合わせて天井から吊るし、テント状になっている会場の、そのテントをどんどん、引っ張ったり結んだり布を足したりして別の形にしていく。スクリーンのような紗幕が現れたり、頭上や目の前を紗幕が覆ったり(その時だけ見えなくなったけど布越しの光景もまた美しかった)、高く吊り上げられていたテントがだんだん下がってきたり、ゆさゆさ揺れてその影もまた大きく揺らいだり…形を変える、形の定まらないサーカスだった。演者の姿もどんどん変わるし、照明は刻一刻と変わっていくし、会場の姿もみるみるうちに変化する。終盤、裁ち鋏を片手にテントの外周を歩き回る裁縫師が、張り巡らされたロープ状のテントの端をどんどん切り離して、そのたびに少しずつテントが解体されていくのを観ながら、このサーカスが「仕立て屋の」サーカスである所以をなんとなく感じたのでした。始まりは裁縫師の布、終わらせるのも裁縫師の鋏。全ては裁縫師が生み出した幻なのかも…なんてことまでちょっと思わせられる、布の魔法だった…。ミュージシャンとダンサーがどんどん飾り付けられていくのに、裁縫師は黒衣で闇に紛れるように、ただ鋏の音や気配だけを色濃く残して横をすり抜けていく、そんなところも影の支配者(笑)っぽくて…って思ったら、照明家なんてさらに姿が見えなかったな? 実は照明家が一番全てを統べていたりして。どうだろう。でも真っ暗だったら何も見えないしな??

 辻本さんがまた、出てくるたびに息をのむほどに美しくて、畏怖の念を抱くくらいの存在感で、人間には意思の疎通ができない*1高位の存在であるところの「天使」みたいな…ちょっと怖いくらいでした。シンプルな白の出で立ちが、羽を生やしたようなエンジェリックな姿になり、色とりどりの飾りを付けた南国の鳥みたいになって、もしくはカラフルなミノムシみたいになって、でもどんな見た目に変わろうとまったく意に介せずただ存在し続ける…みたいな。同じアクティングエリアに立っていても、音を生み出すミュージシャンとは別のレイヤーにいて、重なり合うけど混ざりはしない、少し異質な感じがして、その異物感のような、ほんのちょっとの違和感が良い作用をもたらしていた、ように思います。本当にね…素敵でね……座布団席のお客さんをゆっくりと跨ぐようにして通り過ぎていくのとか、四つ足で眼前に迫ってくるのとか、間近だったら魂抜かれてしまいそうな、でも絶対あれ目が合わないし見えてないよなって感じの…好き……。

 ミラーボールが光の欠片を撒き散らし、紙吹雪が舞い、そして崩れるテント、大きな布がすべてを覆い隠して消えるサーカス。膨らみきった夢の風船が急速にしぼんでいくような物哀しさと、サーカスというものが持つ儚い、刹那的な寂寥感が、クライマックスの高揚感と多幸感の名残と緩やかに繋がって、余韻まで素晴らしかったです。終演後も立ち去りがたかった…。

 仕立て屋のサーカス、今年はスペイン?と、あと福岡と大阪でやるとのことなのでお近くの方是非体験してみて頂きたいです! わたしもまた行きたい…ゲストが変わるとまたきっと、まったく違う表現になると思うし、どうなるのかも観てみたい…あの空間にまた身を置きたい…!

 最高の連休〆になりました。

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*1:きっと野生動物なら通じられる