ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「SONAR」@赤レンガ倉庫1号館3階ホール(9/25夜)

 

 事前情報がほぼ何もないまま初日を迎えた「SONAR」行ってきました。スタンディングでチケットに整理番号もなし、手荷物は預けるようにとアナウンスがあったので、直島の「in a silent way」っぽいのかな?と思っていたけど、そういう感じだった! 会場内を自由に動き回って観られるパフォーマンスでした。なので開演時間に間に合えば大丈夫です、早く行って並んで場所取り~とかそういうのは必要ないというか意味がないです。どこが正面とかも全くなく、がらんと広い体育館みたいな空間の、どこで何が始まるのか、予測不能な感じ。けっこう人口密度は高めだけど、人だかりの雲を蹴散らすように動いたり、人混みの中に紛れ込んだり、観客をかき混ぜるような感覚も直島みたいだなと思いました。が直島よりだーいぶ人が多いから若干重たそうな気もした…直島が快適過ぎたんだ…。

 会場内は長方形の空間で、入ると周囲の壁に沿うようにぐるりと光の帯ができていて、壁沿いには細長いスピーカーが何本も立っていて、光の帯というか道というか、を、ヨンさんと未來さん(はどっちもトレーニングウェアみたいな格好)が静かに、対角線上くらいの位置関係で歩いている、という。開演前の諸注意アナウンスも未來さんとヨンさんの声だったんだけど、ちょっと面白いので聞き逃すともったいないです(笑)。そのうち、対角線上に向き合うように立ち止まった未來さんとヨンさんが、どちらからともなくハミングのような、一定の音程の音を発すると、もうひとりがそれに合わせる…のだけど数ヘルツって感じにピッチをわざとずらしていく。お互いにいろんな高さの音で、いろんな場所に動きながら、音を交わすのを何度も繰り返す、から始まりました。

 この同じ音程を重ねてピッチをずらすのが、何かとっても耳馴染みが良いというか懐かしい気持ちになる…のは、弦楽器のチューニングが基本こういう音だったからだなぁ。でもぴったり合わせないで、わざと少ーしずらして終わるから、毎回んんんーっってなってしまう(笑)。でも、ほんの少し違う音が重なる、その差異が、ハモるとはまた全然違う、波長としての音の波がはっきり聞こえるようで、見えないんだけど「音の可視化」感を覚えた。差音とか倍音が出てるわけじゃないと思うんだけど、何かね、音の波長が今正にぶつかってる瞬間を味わわせてもらってるような…日常で、偶然そういう音を耳にする瞬間はあるんだけど(踏切のカンカン音の向こう岸とこっち岸が重なった時とか)、音としてそれ自体にじっくり耳を傾ける機会はあんまりないよなー。面白かったなー。

 他にも、ぶつかり合う2音の波形を体現するかのように、走ってきたふたりが正面からぶつかったり、ぶつかって弾き飛ばしたり、ぶつかって綺麗に跳んだり、はたまたぶつからずにすれ違ったり、とか、人混みに紛れた互いを声を掛け合って探す…けどその声は互いに届いていなさそうに呼応していなかったり、存在そのものを問いかけたり、なかなか出会えなかったり、とか、やっと出会えたと思ったら今度はぴったりくっついて、鼻~口を覆った両手をお互いに密着させて、互いの呼気と吸気を互い違いに組み合わせるように吠えたり(あれ声の振動が肺とかに直に伝わるんだろうか…)、かと思えば目を閉じてクリック音を出して、エコーロケーション?で動き回ってみたり、もちろん身体的にはいっぱい動いていたしフロアワークもコンタクト的な動きもあったし、ただヨンさんと未來さんがあっちとこっちに離れていることが多いので、どっちかを観ているとどっちかが観られないのが…どっちも観たい…(笑)。

 音もすっごく心地よかった、低周波音がぐわーんと鳴ってくると勝手に頬が緩んでしまう(笑)。未來さんとヨンさんふたりの声と、通奏低音のような、もしくは上に重なってくる、スピーカーからの音たちがあちこちから聞こえて、真ん中で目を閉じて聴いてみるのも、角度や方向を変えて聞き耳を立てるのも楽しい。クリック音がスピーカーからも聞こえてきたの、ちょっとびっくりした…あれスピーカーからだったよね? 惑わされて危なくない?って一瞬思ったけど、いやそこまで影響ないよな…いるかじゃあるまいしな…。

 やっと再会できたふたり*1が、今度は額をくっつけるようにしながら、再び声を重ねてピッチをずらす最後が、なんとなーくハッピーエンドな印象でした。今日は、なのかも知れないけど。明日以降、どう変わるのか、変わるのか、わたしの感じ方も変わるのか、また楽しみです。

 個人的に、先日『暗闇の中で「耳をつくる」』というワークショップに参加してきたのですが*2、その時にオーガナイザーの山川冬樹さんがお話されていた、ハンセン病回復者で全盲の方が、本来人間には不可能なエコーロケーション的なもので「見て」いる話とか、完全な暗闇の中で聴いた超低周波音と超高周波音とか、誰かに自分が存在していることを届ける為の「遠吠え」とか、自分の中で勝手にリンクするファクターが散らばっていて、何だか不思議に面白かったです。全部つながっているように感じてしまう!

 とりあえず初回のざっくりとした感想というか印象でした。ここからどう変わっていくのかなー!

*1:っていうイメージだった

*2:これについてはとても面白かったので改めて書きます