ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「VESSEL」@ロームシアター京都(9/3)

 初回観終わりました。…すごかった、ほんと凄かった。凄いものを観てしまった感でしばらく言葉にならなかった…。初めから終わりまで、脳が舞台上にあるものを人体と認識できる瞬間がほぼなかった。顔以外の部位であんなに「表情」を表現できるものなのか、っていう驚きも。見ているうちにだんだん、肩胛骨周りを顔認識するようになってくる不思議な感覚も味わった。舞台装置も音楽も、なにがどうなってそんなことになってるのかさっぱりわからないんだけど、とにかく美しかったです。真っ暗闇の中に徐々にうっすら、ぼんやりと浮かび上がってくる白い…台座? ステージ? が、不定形に形を変えて蠢く冒頭、台座の左右に配置された塊を覆っていた幕…膜?がゆっくりと剥がれ、中から現れる肉の塊。太古の海の命のスープから細胞が発生して生命体になり陸に這い上がっていくような、人間の細胞の微細な営みを顕微鏡で見るような、頭のない未知の生き物の生態を覗き見るような。もしくは、この世ならざるものたちの饗宴に紛れ込んでしまったような。漆黒の闇に浮かび上がる肉体の持つ神秘性、ある種の原初的な神性とも呼べるかもしれない、秘匿され聖別された「何か」の持つ特殊な存在感。エロスとタナトス、生命の起源とその最果て、生まれる前と死後の世界、命の源の水と死体が溶けた海、生と死すべてを内包して揺らめく黒い水面、いつのまにか覆い尽くす白い雲の様な泡。物凄く赤裸々で生々しい筈なのに、生も性も超越した非人間的な肉体。息苦しい程にダイレクトな命の塊。そう、身体ではなくて、肉体でもなくて、でも生命の塊だった。どこが何なのか、どこまでがひとりなのか、そんな枠を取り払って息づくしなやかな命の宿る塊。物言わぬ雄弁な、躍動する塊。蠢き、重なり、合体してまた分裂する、連鎖球菌みたいなアメーバみたいな、でも確かな肉を持つ塊。そんなものを見せられた60分でした。凄かった、いろいろ吸い取られた…。
 最後まで顔は見せないで通すものだと思っていたから、生まれ落ちてまだ膜を被ったままみたいな未來さんの姿があらわになったのが、逆に衝撃的だったり。どこにいるのか探すことはしないと決めて観たけれど、案外わかるものなんだなぁ。足の親指とか背中とか手指とか、あっ知ってる身体(?)って思ってしまう(笑)。
 音楽と音響もすごい良かったです。あの低い音をあの音圧で響かされて、嬉しくならないわけがない! 始まる前から微かに、謎の生物の呼吸音みたいなのが聞こえていた…ような気がするのは、機構の何かが出す音だったのかな。いつの間にか舞台上を埋め尽くしていた泡とか、どろっとした液体? 半固体? 片栗粉を溶いたような白いドロドロとか、素材的にも気になるものがいろいろでした…。
 とりとめのない印象を連ねただけだけど、初回の印象でした。いやもうとにかく…凄かったよ。息苦しかったよ。肩とか首とか痛くなったよ! 直島であんな静かな優しい声音で洗脳してた人が、同時進行であんな人体超越背筋してたのかと思うと…よ、よくわからないわ…。