サボっている間に
ぼちぼち観てるのですが気分が乗らないーとか体調がーとか寝不足がーとか忙しいーとかだらだらしているうちにどんどん溜まりゆく一方で。せめて観たよメモだけでも。
劇団☆新感線「乱鴬」@新橋演舞場(3/27昼、3/31夜)
とても好き。ド派手なエンタメではないけれど、しっかりどっしりしっとりの大人の新感線でした…って云ってももちろん楽しかったしたくさん笑った*1し、何と云っても脚本が! 倉持さんの御本が…とても好きです…変わり玉みたいにいろんな感情や情念が、様々な色や味で幾重にも重なって、場面場面でじわりと滲みだして溶けて消えて、またその下から違う色が覗いて、でも一番芯にあるのは哀しみ、みたいな。優しい嘘でも嘘は嘘、吐かれた方は傷つく、ってセリフがとても印象的でした…。ほんとは1回だけ観るつもりだったのに、あまりにじんわり良くて急遽三等席で2回目を追加してしまった。クライマックスの花火も美しくて、終わり方もほんと…痺れた…。あと個人的に面白かったのが、ここのところずっと中島かずき脚本に慣れきっていたので、中島脚本の新感線ならここで! こんなピンチで! 間に合うはず……なのに間に合わないー!! だめだーー!!っていうのが。えっここ絶対源さん*2間に合って助かるところでしょ? ヒーロー登場で華麗に敵を蹴散らすんでしょ?って待っているところに、全然間に合わない…この、無意識にお約束を期待している自分をそうはいくかと裏切ってくる感覚、がとても新鮮で…わたしは楽しかったです…その代わりお話はとても凄惨で哀しいことになるけど…。稲森いずみさんが美しくて強くてだからこそ哀しくて、大東駿介くんもとても良かったです。古田さんがスーパーヒーローじゃないのも良かった。あと粟根さん素敵でした…みんな死なないで欲しかったな…。幕間に演舞場の客席で乱鴬弁当食べたのも良い思い出です。客席で膝の上でおべんと広げるこの背徳感…!(笑)
「ブラックメリーポピンズ」再演@世田谷パブリックホール(5/15昼)
こちらはmさんにお誘い頂きまして観てきました。初演に引き続きのブラメリ、今回の再演はアンナ役にしょこたんこと中川翔子ちゃんが新加入しての4兄弟です。始まる前は、初演に比べて〜とか云えるほど初演覚えてないしなぁってぼんやりしていたけど、始まって音楽聴くとああこの曲! このメロディ!って一度しか観てないのにけっこう思い出すものですね。扉開け記憶入れて扉閉めそっと逃げる歌とか、サイレント・ウェンズデイの歌とか*3、印象的なフレーズが多いからちゃんと思い出せる。初演も好きだったけど、改めてこの作品、雰囲気、演出やセットや美術も、好みだなぁと思いました。とてもつらいお話だけど、つらいからこそそれとどう向き合うか、向き合うのか、乗り越えるために必要な準備段階は、みたいな部分が描き出されていて、決して明るく楽しい作品ではないんだけれど、兄弟たちとメアリとの、その先にうっすら光が差し始めるのがわかる終わり方なので、観終わった後はとても…清々しくはないけど、うん、良い作品を観た…ってなります。しょこたんがミュージカルでお芝居!?ってそこも楽しみでしたが、とても素敵なアンナだったし、ほんとまぁ顔小さいし可愛いし、歌い出すと何というか姿というか様子がしょこたんなんだけど(笑)、でもヘルマンとはとてもお似合いで、兄弟の中でもお姫様ポジションがすごくハマってて良かったです。無邪気で傍若無人で可愛くて、ヘルマンに見せるちょっとした態度が所謂ツンデレなんだけど、ツンの中に恥じらいを纏ったデレがちゃんとある初々しさで、だからこそ悲劇性がより高まってしまう…だがしかしそこが良い…。上山竜治さんは東宝レミゼを経てまた一段と歌に響きが増した感じ! 小西さんも良知くんも、もちろん一路真輝さんも、初演メンバーは盤石で、初舞台のしょこたんをがっちり支えつつ輝きを引き出すチームワークだったのではないでしょうか。しょこたん可愛かった!! カテコで涙目になっちゃうのも何か…お母さんみたいな気分になってしまった…初生しょこたん…。
イキウメ「太陽」@シアタートラム(5/27夜)
そもそも評判が良いことは耳目に入っておりまして、ブラックメリーポピンズを観に行った時に、あっトラムでやってるーと認識したら途端に観たい気持ちが具体化して急遽チケットを予約しました。間に合ってよかった…! 何か今日のメモが全部「良かった…」「好きです」ばっかりになってしまって何でもいいんでしょどうせ的な感じになりつつありますが、でも敢えて云う、すごく良かった。観た方がいい。再演とのことなので今更感漂いまくりっぽいけど気にしない。コクーンで蜷川演出版が上演されてたり、今まさに映画版が上映中とのことですが、気にしない。わたしにとってはこれが初。前知識はふんわりとSFらしい、くらいしかなくて、イキウメ自体観るのは初めてなので役者さんも全て初見。冒頭から割とショッキングな雰囲気で始まるので、世界観を把握するまでちょっとんっ?てなったけど、そういうことかと理解すればあとはもう、一気にぐいぐい引き込まれました。ノクスとキュリオって単語に聞き覚えあって、あっこれコクーンでやってたやつ…だよね?ってなった(笑)。背景や設定的なことは詳しく説明されないので、この辺を後から読んで追いつきました。観る前に読んでもいいんじゃないかな、ストーリーには触れてないので。
差別/被差別と区別、線引き、役割分担、できることできないこと、ハンディキャップであるとか、得意不得意であるとか、能力的に得手であるとか、そういうものの「違い」によって起こること全てを含んでいる、とても普遍的な物語です。だからこそ蜷川さんも手掛けたんだろうなー。設定はSF的だけど、中身は人間同士の話だった。答えは全く見つけられないし、正解なんか出せないとも思うけど、ただただそれについて考え続けていくべきなんだろうな、と。どの人の立場だったら、自分はどうするか、を考えると、余計に…答えが出せないな…。観客として観ている方がまだ、こうあってほしい、こうした方がいいんじゃないか、って考えられるけど、それはきっとそのキャラクターに対して自分が望む在り方を押しつけているだけなんだろうな…難しい。でもとても良いものを観た。何となく、「ポーの一族」とか「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア*4」もほんのりと思い出したりしつつ。別にヴァンパイアものではないんだけど…。
鉄彦と森繁の関係性が不器用だけど微笑ましくて、めちゃくちゃ好きです。親しくなる先にある軋轢も、親しくなったからこその証で、だから観ていて悲しいんだけど、それを越えたらきっと…きっと仲良くなれるよね…。結ちゃんの選択とその結果、それを目の当たりにした鉄彦の選択、本当につらいだろうし悲しいんだけど、でもきっと…それはきっと間違ってない、と信じたい。森繁のラストの表情で強くそう思いました。鉄彦は間違ってない…!
蜷川版はお話も登場人物も少し違っていて、映画は蜷川版に近いと聞いて、やはりイキウメで観て良かった、観られて良かったと思いました。森繁…好き…。あと、美味しい紅茶が飲みたくなります。FTGFOP! ブレンド大事!!