ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「死刑執行中脱獄進行中」11/29昼/東京千秋楽

 こんなに愛着?が沸く作品になるとは、初日には正直思っていなかった「死刑〜」、ついに東京公演が終わってしまいました。役に感情移入とか、ストーリー的にどっぷりとか、っていうベクトルじゃないのに、毎回めちゃくちゃ楽しくて、面白くて、観終わったらすぐにお代わり欲しくなって、次の観劇が待ち遠しくなる、不思議なハマり方をした作品です。こういう感覚は初めてだなぁ。個人的に、コンテンポラリーの動きで、ストーリー性のある作品で、バンド生演奏で、適度に具象的だけど適度に抽象的で、しっかりエンターテインメントで、そういうバランスがすっごく絶妙に噛み合って相乗効果で*1面白いものになっている、ように感じます。ダンスじゃない、けど演劇だけではまったくない、ほんと、観たことのないものだった、なぁ。
 体感型アトラクションみたいな90分、作品としての上演時間は短いけど、観終わった後の満足度と疲労感(笑)は2幕3時間の作品と同じかそれ以上のボリュームがありました。短いのに、マチソワ観て帰るとぐったりしてたわ…。収録用のカメラが入ったという情報もあったので、何らかの形で手元に残ると嬉しいのですが、何せ体感型(笑)なので、映像で観てあの楽しさ面白さが追体験できるのかどうか…でも、思い出すよすがもないのに比べたら、ありがたいのですが! なので残りますように〜!!
 これから地方公演が始まりますが、最後まで怪我のないよう脱獄し続けて下さい。大楽に行けないのがほんっとおおおおうに残念だけど、でもその分も含めたつもりで悔いなく観届けられたので、うん。魂飛ばしておきますね。
 カテコの、やりきったような、ちょっと放心したようなお顔が忘れられません。頬げっそりだったなぁ。スタオベしたかったけど、虚脱しちゃうんだよねあのラスト…。

  • 開演前、軽くポンポンぱたぱたはたくような音と、小さな咳払いが聞こえました。
  • タバコを鼻にこすり付けるみたいにして匂いを確かめるの、何かカッコイイんだな(笑)。
  • お水のボトルを開けてから口を付けるまでがすごく用心深くなっている。そりゃそうだよね。
  • コップ出現の瞬間というか、出てくるのはわかってるんだけど、不思議なことには変わりないのだった。2階から観てみたかったなー!
  • 取ろうとしたボトルを落として「あー…」って。
  • ソファの肘かけに置いたコップが何故か持ち上がらない…のところで、ちょっと早めに(笑)ぽこっと落ちてしまった。…え?って感じに拾い上げて、忌々しげに壁に投げ付ける。
  • 猫が出てきたターンで部屋の角度が時計回りに変わっていくの、男のテーブルと椅子は自力(?)で動いてるんですよね。
  • 猫のターンではソファの肘かけのコップはいつも通りでした。
  • ゴゴゴゴゴ…ってなる時に、リモコンがチェストから離れたところに落ちてると、手が大変そうだなって(笑)。
  • バンドさんのマイクって何に使ってるんだろう特に歌とかないのに、って思って、もしかして、と確認したら、やっぱり! 部屋が蠢き始める時の呼吸音を生で出してた! あそことても不穏で好きなので確認できて良かった。
  • 最初の異常が水漏れなのも、最初に囚人の前に現れる怪異がバスタブの中なのも、彼らが水だからですよね。布は水、海。
  • ヨットがちょっとひやっとした…何だろう、布の吊り上げタイミングが思ったより遅かったのかな。
  • 女と本を取り合うじゃれあいがいつもより激しい(笑)。子供の喧嘩みたいにわちゃわちゃしてて可愛かった!
  • 丸めた紙で耳打ちされて「ああ、そっかー」って何か普通に聞き入れてた(笑)。
  • 押しつけられた紙は白紙なのかな。男はくしゃくしゃっと丸めてポイっと投げる。
  • それを拾ってダズルが読むと、ドルチへの述懐、お前は俺の親友だ、彼女が死んでもう5日、とか。
  • その時、男を膝枕している女の影が猫になってるんだけど、勝手にこう、女は猫であると示唆している、みたいな、女の実態は実は猫でした、みたいな方に受け取ってたんですが、何となく、あれ、このシーンの映莉子ちゃんは本当に猫の役なんじゃないの?って…思った…千秋楽にして…。
  • その時点では彼女はまだ死んでなくて、男にとってダズルが読み上げた内容は何のことやらな状態だけど、でもその後彼女は本当に溺れる(ヨットの縁をついーっと滑っていくのは落ちてるのかな?とか)。で、ダズルが読みあげた紙をぽいっと男に投げ渡され、それを開くと顔に押し当ててぬるんと消える、のは、その内容が現実(?)になってるから…とか??
  • 追いかけっこみたいになってる相手は猫ってことですよね。マストに登った猫を追う男。猫は最初は遊んでるつもりなのか楽しげだけど、マストの上に追い詰められて恐怖を感じて姿を消す、とか。
  • …って考えると、後半のヨットで干からびてる時の追加されたセリフ「仲直りの乾杯」の意味が通じるかな、なんて。仲直りの乾杯しよう、って云うことはつまり、その前に仲違いしてるってことだから。っていうこじつけ。
  • この時映莉子ちゃんが被る猫のマスクは、ダズル迷彩が被ってるのとは質感が違うものなんだけど、何なんだろう。ダズルのは折り紙で出来てる感じのいかにも作り物めいたのだけど、女が被ってるのはもうちょっとなめらかで、何か…マスクメロンみたいな細かい凹凸が表面にあるの…毛並みっぽいと云えなくもないかもしれないような…。
  • 這い出て倒れる男。の、右肩の血管とか。微かなアルコールの匂い(笑)とか。
  • 部屋に連れ戻されるところの、美しい悪夢っぽい感じと、不穏だけど美しい音楽と、キコキコ微かに聞こえる鉄枠の軋み、全部の要素が好き。
  • 枠だけの家具にダズルたちが入ってる状態で、バスタブに異様な気配を感じて振り返る男。の時の、バスタブのダズルがめっちゃ出てきててそりゃ何か変だって思うよねって(笑)。
  • 影と入れ替わる前、照明を顔に向けられてすごく眩しそうに目を細める。眩しがっているうちに影が出現する。入れ替わられるのはやっぱり水に釣られて、なんだね。
  • あっ猫もボトル浮かした! いつもやってたっけ? ボトル奪い合いの時にダズルのひとりがやるのは観てるけど(笑)。
  • 猫が持ち出したボトルを追いかけて、追いかけた先でボトルに閉じ込められる。瓶詰めみらいの映像が美しくてなぁ…あれずっと見ていたいし瓶詰めみらいさん欲しい。
  • 男が希求する水は=自由、なのかもしれない。そこにある時は無造作に飲みだけだけど、奪われると追い求める。枠に閉じ込められると窮屈だけど、枠を外すと溢れて形を失う。なくなると生きていけないけれど、満たされても生きていけなくなる。…うーん。
  • ヨット後半。女はバスタブみたいなところに沈んでいく。
  • 親友の猫を食おうとして追い詰めて逃げられて、それで「何もしないから」「仲直りの乾杯だ」なのね。
  • この時の猫も相当フラフラだよね…。
  • 蜃気楼みたいな背景で、乾きに倒れる男。上手でマトリックス的にものすごい背筋からの横向き胎児ポーズ、に移行しながら、溜めた息をひとつ吐いたのがちょっと…せくしーだった…。
  • 倒れて述懐、「あの女のせいで激突しちまった」がちょい噛みで何か可愛くなってた。激突しちゃまった的な。
  • 今日は倒れてる間にまばたきしていました。ゆっくり。
  • くつろぐ女王様素敵です。
  • 触手を腰から伸ばす女王様も素敵です!!
  • ダズルの向こうから顔を出す女、捕まえようと男が手を伸ばすと、その片手だけ食われるのとか…最高です。
  • 彼女の表情がねー無表情から無表情でも怖いになって、にたぁっと笑うとか、踊り狂うのもクールな顔から楽しげに笑うのとか、ほんと完璧なんですかっこいいんです大好きです。
  • 全てを覆い尽くし、全てを呑み込んで、そして一気に収縮する。と、なにもない。
  • 最後のドラム4つでしゅっと消えるのほんと…爽快なほどかっこいいんだ…。
  • 女の怪異が消えると、ほんとに、ただの狭い牢獄なんだな。
  • やっぱり処刑のイントネーションが微妙。語尾が下がるのね。
  • 怪異が消え、狭い牢獄の中で、ある種の安寧を得ている男。
  • でも、逃がさない。男が安全だと思っているその中だって、男の世界じゃない。それを思い知らせるように、男の延長先の自由を奪う女。
  • 出るも入るも、出すも入れるも、結局は女の自在なんだな。枠に閉じ込めたように見えても、女は自由に歩くし、猫も自由に歩く。
  • 途中で四つん這いになるのは、あの時は猫の姿なのかな、とか。
  • ダズルが扉を開けて男を出す先に女がいる、けどそれはするりと入れ替わって目の前には水鏡のダズル。
  • 二人で鉄枠の中で顔に触れあうの、今日はおでこくっついてて! キス寸前で!! もうちょっと!! …のところで上から降ってくるのはやっぱり水鏡のダズル氏でした…(笑)。
  • ダズルと踊る彼女、這い出ようとするけどどうしても出られない男、あそこの爽快な音楽とかもう全部まるまる大好きだー!!
  • 彼女を捕えて沈めた男が、これでこの奇妙な世界ともおさらばだ、っぽくやり遂げた顔を見せるのも好きです。がそうはいかなくて自分もまた引きずり込まれる。そうだよなぁ沈めた先がダズルの中だもんなぁ。水の怪異を水に沈めても甦るだけよね…。
  • ダズルたちに囲まれて、女に枠を外されて、転がる背中。死んだ? 執行完遂?
  • 起き上がって不安げに周囲を見回す。悪い夢から醒めた…と思ったけどまだ続いてた、みたいな。
  • 何だかね、襲われていない方が心細げでね。悪夢だけど続いてないと不安そう、というか。まぁ、死刑執行が完了したら死んじゃうんだから続いてないと困るんだろうけど。
  • なので、最後の執行シークエンスは音楽も相まって、何と云うか、明るい…わけではないんだけど、でも生きてる!!って感じがするんだ。死から逃れるための、だからこそ、強烈な生。眩しくて涙が出る。
  • 椅子に座ってテーブルに右手を伸ばす時、左手がすぐ横にあるダズルのひとの頭をねろーんと撫でていたのがやたら印象に残っている…。
  • 最後まで残るダズルが水鏡の彼、というのが良い。けどそれすらも消えるのね…。
  • ほら怪異がなくなる方が辛いよやっぱり。
  • 動きを止めて外れていったダズル迷彩たちが、ひとり動き続ける男をぐるりと囲んで、女も含め全員じいっと見つめていて、その「見てる」感がなんだか…ぞっとした、というか。自分もダズル迷彩たちに混ざって彼を見ているような感じがした。
  • だから舞台上から男以外が消えても、まだ見ている自分(観客)がいるから、彼は逃げ続けなくてはならない、みたいな。でも、逃げ続ける限り彼の生は続くから、ならば逃げろ動け踊れ生きろずっと見てるから、みたいな気持ちになって、何か泣けてきた…(笑)。
  • 客席側に向かって、強い照明が当たっているから、舞台から見たら無数の顔が、視線が、彼に向けられているのがはっきり見えるだろうから、それが怪異の「気配」になるんじゃないかな、と。観客の気配と闘ってる野かも知れない、と、思うラストなのです…。
  • 板上という「牢獄」で、観客の目という「怪異」がある限り、演じ踊り続ける。それが「生きる」ということ。…とか、そんな方向に考えてしまって、いや別にそういうことじゃないんだろうけど、何か…すいません勝手に妄想して勝手に苦しくなった。
  • 暗闇の向こうから聞こえる、床が鳴る音、息遣い、漏れる声、床に体重が乗る音、衣擦れ、微かに白く蠢くものに目を凝らしながら、息を止めてた。動きの気配が止まって、呼吸が規則的になるとやっと、息が吐ける。
  • カテコは3回。1回目出てきて、センターで映莉子ちゃんとちょっとにっこり。
  • 2回目は何か、唇ブルブルってしてた(笑)。笑顔はじける!って感じじゃないけど、何というか…全部出し切った、みたいな、良い表情でした。
  • 3回目はお辞儀で下げた頭を、3カウントくらい前屈みたいにぐいぐいしてから起こした。あー頬肉ぜんぶ削げてるー、なんてすごく思ってしまった…おつかれさまでした。

 終わってしまいました。公演期間が短かったから、すごく駆け抜けた感があるなぁ。行って座って観てるだけだけど、わたしも駆け抜けた10日間でした…おつかれさまでした(笑)。でもまた観たいすぐ観たいもっと観たいあの波に巻き込まれて海風を頬に感じてドラムの振動に内臓震わせたい。ほんと、何なんだろうこの中毒性!
 ほぼコンテンポラリーダンス作品、とか、インスタレーションを観てる気分、なんて初日の感想で云ってましたが、今は全然違う印象なのが面白い。コンテンポラリーの技法(?)を使ってはいるけれど、表現しているものはものすごく具象的だし、具体的な「モノ」を表現している時点で全くコンテンポラリーダンスとは別の表現だよな。ダンスじゃないし。なのでこれは確実に演劇なのだけれど、でも、所謂ストプレではないし、でもお芝居だし、…何なんだろうね。新しいジャンルをひとつ作り上げてしまった、そのくらい見たことのない総合芸術で、でもやっぱりダンスではなく演劇なんだよな…不思議で、面白くて、大好きです。だから、早く! もっと! おかわり!!

*1:わたしにとって