ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

東京アートミーティング(第5回)新たな系譜学をもとめて‐ 跳躍/痕跡/身体

 土曜日、いろいろ出かける予定があったので、だったら早めに出てついでに見てこようじゃないかと、初日の朝から行ってみました。勢いで行かないと行けなくなりそうな出不精なもので…(笑)。

 地下鉄新都心線、清澄白河駅から徒歩で15分くらい、かな。駅を出るとすぐに、MoTの案内が出ているので、それに従っててくてく歩き続けると着きます。下町情緒あふれる、趣のある町並みで、歩いてるのもなかなか楽しかった! 深川めし食べたかったな〜。次回行ったらぜひ試してみたい。
 「新たな系譜学をもとめて」は建物入ってチケットを買って、そのまま奥に進むと左側に入口があります。同時開催中の「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」の入口も向かい合わせにあるので間違えないように(笑)。そっちもすごく面白そうで、共通チケットだとお得にどっちも見られるので、ぜひそっちも行ってみたい。けど今回は時間がないので、系譜学のみです。
 展示は1Fと、エスカレーターで下へ降りてB2Fの2フロア。ダンス/身体表現を取り上げた展示なので、展示方法が映像を画面で見るものが多かった、のでけっこう見て回るのに時間がかかる。時間に余裕があればじっくり楽しめるけど、時間がないともったいないねー。映像展示は、壁にモニターが設置してあってヘッドホンが2〜4つ付いてるタイプと、映像ブースになっているものとがありました。ヘッドホンのは空いてる時はいいけど、人が多いと埋まっちゃうからなかなか難しいかも*1。あとは壁面に直接照射されている映像もあった。かと思うと平面作品もあって、でも絵画でも手法や作品の成り立ちが身体性から立ち上がってるもの、という観点で集められていて、そういう視点での絵画って気にしたことがなかったので新鮮だなぁと。足で直接描いてるものとか、これ足指の跡だよね!っていうのがわかってすごく、こうやって足指で絵具ひっぱって描いたんだなぁと、動きが見える気がする。あとは、演劇の舞台装置の展示なんかもありました。個人的に面白かったのは下にメモしておきます。
 で、談ス組の展示はですね。会場内を一通り回ってみたものの、どうにも見当たらなくて、結局受付の係の方に訊いてみたら、展示会場を出てミュージアムショップの中にあるとのことで。つまり、談ス組の展示だけ見たい場合は、チケット買わなくてもいいんじゃないのもしかして的な(笑)。でも展示いろいろ面白かったから、せっかく行くのなら是非見ることをおすすめしておきますよ…。あとスマホいっぱい使うから、予備の電池とか充電器を持っていくことを強くおすすめします、特にその後にも予定がある場合には! 後で困ることになるから! っていうかなったから!!
 ミュージアムショップでは関連書籍やDVD、あと不思議なグッズとかちょっとアートなものとかいろいろ売っていて、セレクトショップみたいで面白かったです。ワンピースとタイツさんのタイツ売っててびっくりした(笑)。ミシェル・ゴンドリー関連でずっとビョークの曲が流れてたのもちょっと久しぶりで嬉しかったり(笑)。ショップの横にはカフェとかレストランもあって、今回は2Fのベトナムカフェでまぜごはんのランチプレートを頂きましたよ。

 水菜とピーナッツがたっぷり混ぜ込んであるご飯、シャキシャキぽりぽりしてて美味しかったです。サラダとえびせんべい付きで1000円。バタバタしてしまったのでかき込んで出てきちゃったけど飲み物も美味しそうだったなぁ。レストランはB1Fのようでした。
 以下、展示物のメモなどネタバレで。


 展示で印象的だったものを並べておきます。順番は適当なので展示順じゃありません。

エルネスト・ネト

 体験型インスタレーションがあるとは思っていなかったのでびっくりした! 広い展示室全体に、白くて薄い膜みたいなテントの迷路みたいなのがぐねぐねと張り巡らされていて、靴を脱いで手荷物を預けて、その細いテントの中を歩いて進む、という。アフリカのどこかの部族のテントとか伝統的意匠に着想を得て云々と書いてあったような気がする…けどうろ覚え。誰もいなくて、ひとりでのそのそ入ってきたんだけど、なかなか面白かったです。何が面白いってわけじゃないんだけど。狭くてぼんやり白いドーム型の屋根の道を、カーブのところなんて体壁にこすりながらすり抜ける、単純だけど非日常的な体験がやけに面白かった。が転けたら大惨事だよねあれ…破れやすいのでお気を付けてと云われたけど、転けたら間違いなく突き破るね。ああ怖い。あとぐねぐね細いところをそおっと歩いていく感じが、腸内ツアーを彷彿とさせました。時期的に仕方ない!

●白髪一雄

 平面作品で一番印象に残ってる、足で油絵具を引っかき回したようなダイナミックな絵画。絵を見て身体的な動きやダイナミックさを感じるっていう体験が珍しくて、何だかドキドキしてしまった(笑)。
 同じく平面作品で、黒地に白い丸を勢いよく描いたように見えるけど実はすごく緻密に描かれてるものなんだよ、っていうのも面白かったんだけど、それは白髪さんの作品だったかどうか失念しました…。筆で一発描き!!みたいに見えるけど、そう見えるように細かく造りこまれてるっていう…そうなのかーってじっくり近くで見てしまった。

シャロン・ロックハート&ノア・エシュコル

 確かイスラエルダンサーさんだったような。小さめのブースで映像上映されていました。如何に体重を感じさせず、空に上に向かっていくかを追求していった西洋バレエと、正反対の地に足をつけた、重心低めのゆったりとした動きが印象的だった。ちょっとアラブ系の踊りとかも思い起こすような。イスラエルだから、というか、なのに、というか。
 ミニマミズムな壁のセットも面白かった。壁の幅がダンサーさんの腕を広げた幅と同じ、とか書いてあったような気がするけどうろ覚え。でも、何となく均一感というか、踊りと背景にある壁の統一感というか、マッチングはなるほどなーと思った。

ダムタイプ

 これすっごいかっこよかった!! 好き!! 空間も映像も音もすごく…落ち着かないけどぼーっとする心地よさでした。真っ白くて細長ーい空間に、ものすごく横長の大画面が設置してあって、向かい合わせの壁際に白いソファが設置してあり座って眺められます。細長い部屋の両端にはでかいスピーカーがあって、不思議な音がサラウンドで聞こえるの。映像は等高線みたいな地図だったり、波形だったり、文字の羅列が画面を埋め尽くしていったり、もしくはほぼ等身大の男女ダンサーの姿だったり、流れる風景だったり。その向こう側でふわりと動くダンサーの姿がうっすら見えたり。えーと、わたし昔のウィンドウズの、デフラグ画面を眺めているのが好きだったんですが(笑)、その感覚を思い出した。いくつかの映像の反復なんだけど、多分暇だったら小一時間眺めていられるわ…真っ白い空間も好きです。
 で、その巨大な画面が、噂のソニー製4Kビジョンだそうで、すごかった! 圧倒的解像度高輝度でくらくらするわ(笑)。裏側をちょっと覗いてみたら、16インチくらいの小さいピースがどわああああっと並んでて、違う意味でもたまらんかった…あれは裏側も是非見るべきだ。

チェルフィッチュ

 これも映像+音響のインスタレーション作品。ほぼ等身大のチェルフィッチュの役者さんたちが、身体をゆらゆらと動かしながら、それぞれ駅で出会った小さなエピソードを語る映像なんだけど、語っている音声は頭上に吊るされた超指向性スピーカーで流れているので、映像の真ん前に立たないと聞こえない。離れて観ていると、4人がふわふわと踊っている映像に見えるんだけど、近づくと語ってもいて、踊りみたいな動きも話の内容にマッチしているから、身振り有りの語りになる、という。小さな駅での顛末もそれぞれ、特に内容やオチはないけど、あーなんかわかるわかるって感じでちょっと面白かった。
 ブース内にはけっこうな音量で、わたしが入った時にはバッハの無伴奏チェロソナタが流れていて、普通に入るとその音しか聞こえないんだけど、スピーカーの下に立つと、全然大声で話しているわけではないのに役者さんの声がはっきり聞こえて、超指向性スピーカーすごいなぁ。

金氏徹平

 チェルフィッチュと同じブースに展示してあります。舞台「家電のように解り合えない」の美術セットの展示でした。これも面白かった! テレビ…だよね?とか、掃除機…的な?とか、謎の箱(笑)とか。近づくと何か起きたりするので、近づいてみよう。ここもわたししかいなくて、ふーんおもしろーいと近づいたら突然…で、そりゃあすごくびっくりしたわ!

●ダグラス・ゴードン&フィリップ・パレーノ

 サッカー選手ジダンの試合中の姿をひたすら追いかけた映像作品が、大きめのブースで上映されていました。音響もすごくて試合中の歓声とかが、周りを取り囲まれているみたいに響き渡るの。…あんまりサッカーに興味なくて申し訳ない(笑)。

Dentsu Lab Tokyo & Rhizomatiks

 スポーツとしての身体能力を映像・作品化したものなら、こっちの方がわたしは好みでした! さよなら国立競技場的PVみたいなのは、作りがいかにもCMっぽいというか、あーなんか東京オリンピックの宣伝ですよねーハイハイみたいな感じで、アート作品としては違和感あったんだけど、カール・ルイスの走りとかブブカの高飛びとか、国立で生まれた世界的な記録の映像を元にモーションキャプチャーで3Dデータを取って甦らせる、みたいな、やっていることはとても興味深かったです。いかにも〜な感じじゃなければもっと面白くなったのにもったいない。
 もう一作品、フェンシングの太田選手の試合中の心拍数とか踏み込んだ足が生む負荷とか、眼球の動きや剣先の軌道なんかを数値化・可視化した映像作品もあって、こっちはすごくかっこよかったです。短かったけど見ごたえあった! わたしはこれの方が好みだなーもっと見たいし他の競技でも見たい。

インバル・ピント&アブシャロム・ポラック・ダンスカンパニー

 インバル&アブシャロムは、展示としては1990年代のダンス作品の映像と、あと手描きのスケッチが何点かのみでした。メインは「ウォールフラワー」上演ってことですよね! でも、スケッチの中に100ねこの舞台全景があったのは嬉しかった!

●資料展示

 能や狂言の古い写真が画面でスライドショー展示されていたり、1950年代のアングラ劇の資料が展示されていたり。球場で屋外オペラ上演してたり、ワーグナーの野外オペラ?で本物の馬に乗ってる騎乗兵出てきてたり、白黒映像で面白いものが見られました。
 そして改めて、美術や音楽や演劇は形が残る*2から、歴史として系統立てて語られてきたけれど、バレエや伝統芸能以外のダンスは本当に、残す術がなかったのだなぁということが目に見えて感じられて、すごく、何と云うか、切ないような気持ちになりました。受け継ぐシステムが確率されていない、文字でも音符でも書き表せない、残せない芸術なんだなダンスって。だからこその良さはもちろんあると思うのだけど、映像で作品を残す技術ができたのなんてほんのここ60年ほどのことだろうし、実際残されていないから今回の展示でも、写真とか舞台美術スケッチとかから想像するしかないし。非常に個人的なものでもある*3から、振り写しで受け継ぐものでもないのかもしれないし。それを云ったらもちろん、音楽だって演奏家によって同じ曲でも全然別物になるから同じことなのかもしれないけど、それを飲み込んだ上でそうやって「演奏」によって伝えられてきた音楽と、そうではないダンスとの違いは、やっぱり記譜の可否だよなー。でも演奏よりもさらに、個人の肉体と作品が密接に繋がっているものだから、そういうものでもないんだろうなぁ、譜面通りに演奏するのがひとまずの正解である音楽とは、多分、違うものだよなぁ。
 なんてことをもちゃもちゃと考えさせられた資料展示でした。

●チョイ・カファイ

 で、そんなもちゃもちゃをちょっと晴らしてくれた、というか、今となってはそういうテも有りかもしれない!と一石を投じてくれたのが、こちらの展示でしたよ。すっごい面白かったし興味深かったからここは次回行った時に映像全部見たい!!
 ピナ・バウシュ土方巽など、伝説的なダンサーの筋肉の動きを電気信号化してそれを記録し、他人の体にその電気信号を流して筋肉の動きを制御し、同じ動きを再現させる、という実験みたいなパフォーマンスの、映像展示でした。肉体の記憶を移植する、みたいなことが書いてあった。これって要するに、ひとつのダンスの起譜法ですよね。全身に低周波治療器みたいな電極を貼り付けたダンサーが、バチバチッとかカカカカッとかの電気信号音に合わせて身体を動かされる、その後ろにはオリジナルのダンサーの動きが映像で映し出されている。すごく奇妙で人工的で、ダンスとしてこれって有りなのかどうなのかもわからないけど*4、でもすっごく面白かった。そんなこともできちゃうんだーっていう好奇心と、何なんだろうこれ??っていう疑問符でいっぱいになりました。でももっといろいろ見たくなる。すごく惹かれる。
 土方巽の動きをトレースした記録でその動きを再現しているパフォーマンス映像も見たけれど、動きを移植される側のひともダンサーさんだし、いくら筋肉の動きは微弱な電気信号であるっつってもいきなり素人にその記録を流しても同じ動きには…ならないよねー(笑)。ダンサーさん側の技量がどのくらい影響しているのか、どの程度まで電気信号のみが制御しているのか、オリジナルの動きを全く知らずに動かされる分だけで、どのくらい再現できるのか、もうちょっとちゃんと知りたい。とても興味深いです。今調べたら2011年のフェスティバル・トーキョーでパフォーマンスしてたみたいで…うわーん観たかった!!
 あと電気流されて痛くないんですかね…。

野村萬斎

 総合アドバイザーであり今回の展示のアイコン的な役割でもある野村萬斎さんは、入口入ってすぐのブースにアーカイブ的な映像の展示、あと地下のものすごく広い壁面に、「三番叟」の映像が巨大照射されていました。このブースがおそらく、「ウォールフラワー」及び「ボレロ」「三番叟」上演の会場になるのだろうなと。すごく広くて天井が高い空間でした。舞台的な段差は特にできてなかったけどどうなるのかな。

●大植真太郎+森山未來+平原慎太郎

 はい来ました真打(笑)。前述のとおり、展示会場内ではなくミュージアムショップの白い壁面に、QRコードが並べられ、その下には「盆踊り」「コンテンポラリー」「シアタージャズ」「カポエラ」などなど、様々なダンスのジャンルがタイトルのように付けられています。自分のスマホタブレットの他に、貸出用のタブレットが数台用意してありましたが、わたしが行った時は準備中になっていました。で、各々スマホで壁に貼られたQRコードを読み取ると、リンク先はYouTubeやらvimeoやらの動画で、ダンスのタイトルが付けられているけど全くダンスとはかけ離れた映像が再生される。それらの映像のいろんなモノや人の動きが、僕らにとってはそんなダンスに見えてくるんだけど、というインスタレーションでした。なるほどー(笑)、ってものから、ええっこれ!?(笑)ってものまで様々で面白かった! タンゴなんかすごくわかりやすいし、カポエラも何となく、頭がどっちだかわかんないみたいな感じでなるほど〜って感じだったな。シアタージャズが、そう来たか! でも何かわかる気がする!っていう。個人的に、日本舞踊のタイトルで挙げられていた動画が、とてもとても好きなバンドのPVだったので、ふわわわわっとなってしまった…まさかこんなところでブリクサの声を聞くとは思っていなかったよ…さいれんすはせくしーですよ…。
 日常のあらゆる場面はダンスになりうるかもしれない、それをダンスと捉え選ぶ感覚こそが、その人自身の個性であったり、その人自身を培ってきたものの発露であったり、そんなものたちの積み重ねが「ダンス」という表現を生み出す源であるのかもしれない、なんてことを、音を消したスマホの画面をふふふと眺めながら思ったり、思わなかったり、でした。タバコの煙が日本舞踊、なんて、くそ、かっこいいじゃない。
 不思議だったのは、スマホQRコード読み取りアプリを立ち上げてかざすと、QRコードまでたどり着く前のタイトル文字の時点でもう、リンク先が表示されるの…はどうしてでしょうか(笑)。文字だけでも最近はリンク先認識させられるんですか? テクノロジー??

 と、ざっくりのつもりだったけど時間だけはかかってしまったメモでした。全体的に自分で眺めて、身体性とテクノロジーが結びついているようなものに興味を示しているなぁと。なんだろうね、手の届かないものを少しでも引き寄せられる手がかりになるのが技術なのかな、わたしにとって。いや、テクノロジーとか全くわからないので手がかりも何も、なんですけど。あれかなー感覚で理解できない文脈を数値化とかデータ化してもらうと安心するのかな。インプットもアウトプットも理論派な固い頭なものでな…。

*1:そんなに混まない前提なのかなー…

*2:演劇は上演自体は残りにくいけど台本は残るし

*3:その作品を踊る人も込みでひとつの作品として成立する、みたいな

*4:だって電気信号に動かされてるんだよ!?意思とか感情とか関係ないんだよ!?ただの筋肉の反応なんだよ!?