ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

柿喰う客「世迷言」@本多劇場(1/31夜)

 女体は何度か行ってるけど、Ust配信でも拝見してたけど、そういえば柿喰う客の本公演を実際に劇場で観るのは初めてでした。初めてだけど、何となく、知ってる空気というか、勝手知ったる感を勝手に抱いてしまうのが面白かった(笑)。
 篠井英介さん、鉢嶺杏奈さん、橋本淳さんに富岡晃一郎さんを客演に迎えての、鬼と猿と人とが交わるおぞましくも哀しく美しい異類婚姻譚竹取物語を下敷きに、因果応報とか鬼退治とか親殺しとか姥捨て*1とか、様々な民話的モチーフがちりばめられた、むかしばなしの暗黒要素モザイクというか万華鏡というか、そんな雰囲気でした。
 とにかくまず篠井さんの存在感が! 舞台の端に居るだけで、後ろを横切るだけで、空気の色が変わる圧倒的な異形というか人智を超えた何か感というか…流石でした。鬼の役なのだけど、この「鬼」というポジション的にも、篠井さんじゃなければ成立させられないある意味悪路バティックな役どころで、そういう意味でも流石です。鉢嶺さんはお人形さんみたい! 衣装やメイクもあってゴス人形そのままでした…禍々しくも可愛かった…。橋本さんはとても素敵、役も姿も…人間の役じゃないけれど、一番素敵な役ですよね。金髪良くお似合いでスタイルも良くて舞台映えするなぁ! お客さんも橋本さん目当てっぽいお嬢さんがけっこう見受けられました(笑)。とみーこと富岡さんは、もう、安心! 安定! どのカンパニーでお見かけしてもほんっと安心と安定のとみークオリティ! ありがたい存在です大好きです。まさに色とりどりな客演陣を迎え撃つ劇団員は盤石の柿フルメンバーで。今年はどうやら、個人での活動が増えるとのことで、全員揃うのは今回の「世迷言」だけだとか…。女優陣は女体でお馴染みだけど、男優さんたちは実はそんなに…明るくないのでした、が、もう大丈夫です! 玉置玲央くん以外もちゃんと把握した!*2
 おどろおどろしくて禍々しくて、眉間にぎゅっと力が入ってしまうお話ではあるのだけれど、ところどころでちゃんと(?)ぷぷっと笑わせてくれるのが中屋敷さんの優しさなのかな。ご本人も云ってらしたけど、中屋敷作品は往々にして女性が辛い目に遭わされるけど、その辛さで泣くのではなく、何くそ!とそこから立ち上がって生きていく強さがある女性を描いている、というのが、先日Ust配信を拝見した「無差別」然り今回然り、とても如実に感じられました。また、辛い目に遭わされる女性役を演じることが多い*3深谷さんが、本当に、不条理な運命に翻弄され理不尽な目に遭わされながらも折れることない芯の強さを体現されていて、その圧倒的な力強さにいつも観惚れてしまうのでした…。そして七味さんの格好良さったらない。悪いのに。かなり酷いのに。格好良かった…。
 舞台セットは女体の時と似た雰囲気の、シンプルで幾何学的で抽象的な感じ。段差と、台と台を繋ぐように下ろされる梯子が印象的でした。彼岸から此岸へ渡ってくるモノ、というか。重心を低めにゆっくりと歩く様も能や日舞の印象でしたが、梯子の様子や客席に対して斜めに作られた舞台も、ちょっとそういう雰囲気に感じた…のは、篠井さんの佇まいや声の影響もあるのかな。照明が派手でかっこ良くて、音楽が今回はダンスミュージック系で、いつにも増してスタイリッシュでした。衣装も色は派手な合わせ方なんだけど、スーツっぽかったりジレだったり、かぐや姫はゴスだったりで素敵でしたよ。スタイリッシュ暗黒民話。
 脚本はさすがの中屋敷マジックというか。日本語の音と意味の重なりや違いをとても美しく面白く使っていくのがとても印象的でしたよ。猿舞と去るまい、とか。ない、ない、とか。まん、まん、満月、とか。
 ただ、わたしが観た回が3ステージ目とまだ早かったのと、あとは好みの問題が大きいと思うのだけど、女体シリーズの疾走感がたまらなく心地よい身としては、今回のじわりじわじわとにじり寄るような展開が少々…集中力が保ち切れなかったです。残念。決して、中盤ダレるとかそういうのではないんですけどね…好みだなぁ。でも観に行ってまん、まん、満足です!
 物販に「失禁リア王」のDVDが出ていたので早速連れて帰って来ました嬉しい〜! ほんと失禁のエンディングはわたしの演劇体験の中でも上位に食い込むシビレっぷりなので絶対オススメなんですよ…めちゃくちゃカッコイイから…。
 「世迷言」は東京公演は終了しましたが、これから地方公演だそうです。金沢公演では中屋敷さんが何やら大サービスしちゃうようだし、大阪はバレンタインイベント開催らしいので、ご興味ある方はこの機会にぜひ(笑)。

*1:姥じゃないけど

*2:玲央くんは失禁の物販で認識した…

*3:気がする。わたしが観た中では