ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

シティボーイズミックス PRESENTS「西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を」@世田谷パブリックシアター(4/12夜)

 毎度恒例のシティボーイズミックス、今回も無事観に行くことができました。初老の男たちが汗水垂らしながら必死の形相でオモシロいことをする様相を見守るのです。が、今回はけっこう…ヘヴィだった…めちゃくちゃ面白かったけど、それ以上にずっしり来た…でもそこが、笑いだけでは済まない毒気こそが、良いのですシティボーイズは。むしろそっちこそが本髄なのです。
 今回は作・演出が宮沢章夫さんで、これまでの雰囲気とはまたちょっと違って面白い。シーン間の暗転もほとんどなく、場面の切り替えもいわゆる転換ではなくてじんわりと移行していく、そのじんわり具合もしりとり状だったりグラデーションであったりな感じで、短編コント連作、というよりはより演劇に近い印象を受けました。いつものが「アルバム」なら、今回は「DJ」というか。曲間が絶妙に重ねられていつの間にか次の曲になっている、みたいな。もしくは、反復される度に少しずつ変わっていくミニマルな世界。レコードの針が飛んだようなスキップと反復、繰り返しから始まる違った時間軸。風邪薬のくだり、意味はわからないんだけど面白かったなぁ。
 そういう外郭ももちろん面白かったけど、今回は本当に…中身に打ちのめされる観後感で…全編に渡って、大きなことから小さなモノまで、さまざまな事象に対する怒りと違和感を、笑いもしくは嗤いをまぶして笑いにしている感じで。笑いながら、いや笑えないし、とか、これってアレだよなぁ…とか、うわぁそれ云っちゃう!?いやそう思ってはいたけど!?とか、ヒヤヒヤしたりあわあわしたりお腹の底が冷たくなったり吹き出してから恐ろしくなったりと、相当ヘヴィでしたよ。でも観られて良かったし、今までシティボーイズミックスを見続けて来て良かったと心底思った。怒れる男たちの怒りに、僅かでも自分が同調できて良かったし、怒りを新たにもできた。鉄骨が四角く組まれた舞台セット、開演前にはそこに思い至れなかったのだけど、観ているうちに気づいたというかもうあからさまにアレ以外の何ものでもなくて、それにすぐに気づけなかった自分を恥じた。いかんいかん。
 もちろん基本は可笑しいのですよ。すごく笑ったのですよ。痛快でもあるのですよ。例の文言*1さえ含めば何を云っても許されるのとかいやぁヒドかった(笑)。でも笑った後に残るのは一抹の恐怖感。いつも以上に、死と絶望に色濃く縁取られたような笑いだった気がする…のは、もしかしたら、観るこちら側の変化の所為なのかもしれないけど。少なくとも震災前と今とじゃ全然違う受け取り方をするようになった自覚はあるし。いや、そのものズバリな表現も多々あったからそこは、もう、そう受け取るしかないのだけどね。
 西瓜割りの棒を構え目隠しをして、割るべき西瓜を探しさ迷う斉木さんの物悲しい姿が、それまでと全く違ったものに見える瞬間。お花見のブルーシートが、飛び散る割れた野菜果物たちが、色と意味合いを変える瞬間。それまでの、ある種緊迫したシーンの連続*2から一転した、突き放されるような終わり方も、一瞬にして凍りつく空気も、全てがすごく貴重な演劇的体験でした。はぁ怖かった、でももう一度見たい。本当に、いろっんなところ*3に喧嘩売ってるので、正直、WOWOWさん今度こそは放送してくれないんじゃないかしらと覚悟しましたが、きたろうさん曰く、聞こえない部分はあるかも知れないけどカットなしで全編放送してくれるはず、とのことらしいです。がきたろうさん曰く、だからどうだろう(笑)。
 観劇後、続けて大きい地震があって、改めて、目隠しで振り下ろされる棒って地震のようだと何となく思ったり。棒の下ではじけ飛ぶのは西瓜か南瓜か白菜か、はたまた。

*1:にせんにじゅうねんおりんぴっくをTOKYOで!

*2:個人的にはガジラの緊迫感に近いと思った。思ってても口には出せない・出さない部分を抉り出される感じ

*3:西新宿の上の方とか緑のロゴのコーヒーショップとかネズミとかウサギとか