ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「ZANNA」@シアタークリエ(2/21夜)

 行けなくなってしまったeちゃんの代打で、お席座らせて頂きました。ひさしぶりのクリエだった!
 渡部豪太高垣彩陽田中ロウマ上木彩矢、となんとなーくレントっぽいクリエっぽい面子に初めましてなお顔が混ざってる感じのキャストで、前情報ほぼ皆無という状態ながら何となく安心感というか、知ってる感(笑)というか、が面白かった。レントはもちろんBBにも通じるところがあるような「オフ・ブロードウェイ」感もあったり。ただいつもと違ってたのは、ロビーや客席の男子率がやたら高かった! 高垣彩陽ちゃんが人気声優さんとのことで、彼女のファンのようでした。わたしが行く劇場て基本的に女子ばっかなことが多いので、ちょっと雰囲気違って面白かったです(笑)。
 カップルは男性同士/女性同士が普通、アメフト部は学校では日陰者で、学園のスターはチェス部のエース、バーでイキがって飲むのはミロ、という全ての価値観があべこべに逆転したアメリカのある町で、魔法の力とスティックを持つ高校生ザナ(ロウマくん)はいつも恋のキューピッド。そんな学園にアメフト部の転校生がやってきて、ザナの尽力でチェス部のエースと恋仲になったりして。ある日、ミュージカルを上演することになるけどその内容が、軍隊内での男女の恋物語という何ともセンセーショナルかつ大胆なもので*1、賛否両論ながらも大きな話題となりミュージカルは大成功。しかし、ミュージカルで恋仲になる役を演じたスティーブ(豪太くん)とケイト(彩陽ちゃん)は本当にお互いを好きになってしまう。スティーブにはマイク、ケイトにはロバータという同性の恋人がいるにも関わらず! ザナはふたりを応援するけど、それまで仲良かった友人たちが離れていったり、ロッカールームでキスしているのを見つかって校長室に呼び出されたり、卒業式後のプロムに異性同士のカップルは出るなと云い渡されたり、禁断の恋を阻む世間の風は冷たく、ふたりは町を出て異性愛者が集まるというサンフランシスコへ駆け落ちすることを選ぶ。出発前の夜に別れを告げに来たふたりに、ザナは「プロムに出て」と云う。そしてプロムに来ると約束させたふたりを帰し、ザナは危険な魔法を実行する…。
 基本的にビバヒルとかgleeみたいなカラフルでポップなノリで、曲も明るくて楽しい雰囲気ばかりで、コメディテイストなのでアハハと笑いながら進んでいくのだけど、異性を好きになってしまった悩み苦しみとか、異性カップルに対する(滑稽に見える程の)周囲の拒絶反応とか、虐げられっぷりとか、全てがそのままイコールとして現実の同性カップルに向けられているものなのだなぁと思うと、コメディの要素である部分が全て、現実のナンセンスさ不条理さを際立たせていくように感じて…最初は、そのナンセンスさがどんだけ滑稽な、無意味なことなのかまざまざと思い知らされて笑ってしまうんだけど、話が進むにつれてだんだん悲しくなってきてしまいましたよ。曲調が華やかで楽しかったり、舞台の色合いもポップで明るくて、いたるところに笑いがまぶしてあって、そういうのが何と云うか、そうしなくちゃならなかった哀しみというか、コメディタッチにせざるを得ない哀しみというか、笑いの裏に隠れた苦しみや悲しみや、それを笑い飛ばすようにふるまうしかない状況とか、そんなものを勝手に考えてしまってとてもいたたまれなくなりました…。またクライマックスのいたたまれなさといったらもう、ね…辛い。もちろん、ラストはハッピーエンドなので、観後感は悪くないしポップでキュートで楽しかった!ってなるんですが、それだけじゃ終わらないし終わってほしくないし終わらせちゃいけない、いろいろ考えさせられる作品でした。ロウマくんは可愛かったです! がレントの時より一回り…二回りくらい…ムキムキしてませんか…(笑)。個人的にはロバータ役の上木彩矢ちゃんと、マイク役の東山光明くんが良かったなー。彩矢ちゃんはトークショーにも出席してたけど、役とほんっとに変わりなくて(笑)、カッコ良くてあっけらかーんとしててすごくチャーミングだった! 東山くんは繊細な役どころにぴったりなセンシティブな歌声でとてもキュートでした。またロバータとマイクが仲良しで二人ともフラレんぼで、この二人まとめて可愛かったんだ!
 終演後にはアフタートークがありまして、演出家さんとロウマくん・彩矢ちゃん、あとレズビアンカップルのおふたりのお話を聞くことができました。これが…すごく良かったというか…感動してしまった…。舞台はもちろん良かったんだけどね、トークショーでお話聞く機会に巡り会えて本当に良かったです。少し前に、ツイッター上で、東京ディズニーリゾートで結婚式が挙げられるようになったことが話題になった時、同性同士の挙式の扱いがどうなのか問い合わせたところ、「同性同士でも男女カップルに見える服装をすればOK」という回答が来た、という話を見かけました。その問い合わせをされたのが、今回のアフタートークに参加されたカップルのおひとりだった、のです。詳細はこちら↓を。
私たち同性カップルも『ディズニー・ロイヤルドリーム・ウエディング』ができますか?
東京ディズニーリゾートで、ウエディングドレス×ウエディングドレスで結婚式ができます!

 結果、同性同士・ウェディングドレス同士もしくはタキシード同士でパーク内での挙式は可能、という回答を得た、ということです。
 …といういきさつがありまして、ああ、この方が!と思ったわけですわたくしは。…何かめんどくさい書き方になっちゃったなー。要するに、この小雪さんとひろこさんというカップルが手をつないで舞台上に現れた時から、お二人がすっごく幸せそうで、素敵なカップルとしてごくごく自然にわたしの目に映ったということと、小雪さんが「ディズニーランドの件で、いろんな人からすごいねとか、よくがんばったねとか云って頂けるけど、全然そんなんじゃなくて、わたしはただひろこちゃんのことがほんとに大好きで、ひろこちゃんとドレスを着て結婚式を挙げたかった、それだけなんです」と云って笑ったのが本当に素敵で、何故だかわからないけど涙が出てしまった、とそれが云いたかったのです。ひとがひとを好きになる、ただそれだけのことなのにね、どうして難しいことになってしまうのかしらね。
 小雪さんとひろこさん、先日挙式されたそうで、ニュースにもなっていました。ニュースにならないくらい当たり前のことになる日が早く来るといいね!
元タカラジェンヌと女性のカップルが、東京ディズニーリゾートで初の同性挙式
 あ、トークショーでちょっと気になったのが、演出家の方が何度も繰り返し口にされていた「マイノリティ・イズ・ビューティフル」という言葉。マイノリティの立場に置かれた人は、マジョリティ側に比べてより多くの痛みや困難を体験しているから、他者に対する思いやりの心を抱きやすい、みたいな感じで使われていたけど、それはそうかもしれないけど、必ずしもマイノリティがビューティフルなのかというのもね、マイノリティ賛美みたいになるのも違うんじゃないかしらとね。違和感を覚えました…がもしかしたら「マイノリティ・イズ・ビューティフル」という言葉にはまた違うニュアンスが含まれているのかもしれないし、わたしがそれをきちんと知らないで直訳した意味だけを考えている所為なのかもしれないのですが。マイノリティだから美しいとか、マジョリティだから美しくないとか、それもある種の差別…とまではいかないけど「線引き」のひとつよね。その線自体が必要ないモノだと思うんだけど、ね。
 客席に、GLBT当事者の方いらっしゃいますか、と挙手を求めた時、けっこうな手が挙がったのも印象的でした。が、手を挙げる/挙げない、も関係ないというか、要するにセクシャリティなんてどうでもいいじゃん個人の自由だし、とみんなが思える世界になるといい。

*1:同性カップルがノーマルな世界なので