ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「LOVE LETTERS」@パルコ劇場


 行ってきました。中1日で生未來さん、全然違う役でなんて、ほんと、もったいない…まだ全然、アルトゥルの余韻で生きていけるのに、すでに天使にアンディーとは…ひとつずつをじっくり反芻する時間もなくて、何だか本当に勿体無いです。
 初めてのラヴ・レターズでした。四角いファーラグが敷かれた舞台の上に、2脚の椅子と、間に丸テーブル、テーブルの上に水差しとグラスがふたつ。後ろに衝立が立てられて、左右も少し区切られて、それだけの舞台セットは、初演の頃から変わらないのですね。ロビーにこれまでのカップルの写真がずらりと並べて貼り出されていて、ここに未來さんとYUKIちゃんも加わるのかと思うと…その写真販売はないのですか…。
 開演前に、今回の公演のリーフレットを100円で購入しました。今年の公演写真は、来年分のパンフレットに掲載されるとのことで…来年パンフ買わなくちゃ! リーフレットはA3二つ折り4ページ、旧未來FC会報状で、今回の各カップルへのアンケートが掲載されています。ラブレターの思い出とか、相手に一言とか。

 開演後は音楽もなく、本当に朗読のみ、手紙を読むふたりの声だけで進んでいく作品でした。大変静かな作品なので!って開演前の注意が入念だったけど、確かに…周囲の物音がやたら響き渡って聞こえてしまうくらい静かな作品だった。無音部分も含めての作品、だったから余計にね。
 上手からYUKIちゃん、下手から未來さん登場。未來さんはちょっと色の抜けた、毛先が茶色っぽくなった髪を上げてセットして、おでこが全開に(ちょっと瑛太風な感じ)。生成りのシャツにループタイ、黒いジレなのかな?の上にダークグレイのジャケット、生成りのチノパンツ風なボトムの裾をロールアップして、赤みがかった茶色いレースアップシューズ(だけど前部分にファスナー付いてた?)を履いていました。右手薬指にいつもの指輪も。YUKIちゃんはミルクティ色の綺麗なおかっぱボブ(ウィッグだった)に、シャンパンゴールドのふんわりしたワンピース、黒いタイツにベージュのエナメルハイヒールパンプス。リボンネックレスみたいなのしてた。上下からそれぞれ登場して、椅子に座る前に顔を見合わせ、ふたりともにっこり。というか、未來さんがニヤッニヤ止まらないみたいな、抑えても抑えきれない笑みがこぼれていて…良かったねぇ役得だねぇと(笑)。
 お辞儀して椅子に座り、本を開いて読み始める。幼少期の手紙を読むふたりの、子供の声がめちゃくちゃ可愛かったです。覚えたての拙い字で一生懸命、えんぴつ握り締めて書いた初めてのお手紙。まっすぐで訥々として、遠慮も体面もなくただ心の裡を素直に書いただけの手紙、それを読む幼い声…終わってから思い出すと愛しくて泣けてくる、ふたりが一番幸せだった頃…。
 幼い声で読み上げられる幼い手紙が、徐々に語彙を増やし、文章が整うに連れて、ふたりの声も落ち着いていく、成長の過程が声と文章で明らかにされる辺りも好きです。声フェチ的に。
 幼くして出会ったふたりの、生涯にわたる交流が、手紙で綴られていく。手紙を読みながら、ほぼ姿勢を動かさない未來さんと、椅子の上で身体を斜めにしたり、本を持つ手を前に伸ばしたり、本で顔を覆ったり、ウィンクしたり、なYUKIちゃんが、そこは演出だったのかどうかわかりませんが、そのまま生真面目で若干カタブツなアンディーと奔放で芸術家気質のメリッサを現しているように見えました。またYUKIちゃんが、読みながら表情くるっくる変わって可愛いったらない! 対する未來さんが表情もそれほど変えず、淡々と読んでいるので、余計に奔放メリッサと生真面目アンディーの対比になっていました。とにかくYUKIちゃんが可愛くて可愛くて…最近の未來充実っぷりもあってか、未來さんはうん、未來さんだ。と納得した上で、ついついYUKIちゃんをガン見してしまうという…だって可愛いんだもん…。声も本当に、キャンディボイスで、前半はふんわり可愛らしく、後半は大人の色気や毒も含みつつ、そして不安定な部分は聞いてるこっちも不安になるような不穏さを併せ持って、強いけど儚く脆いメリッサという女性を体現する声だった。劇中で2回ほど、ちらりと歌声を披露する場面があって、まさか歌が聴けるとは予想していなかったのもあって、リアルに鳥肌がぶわわわあああっとなりましたよ…凄かった、ふわぁっと溢れてから爆発的に広がる声量に震えた…これだけでも充分チケ代のモト取れると思った…。対して未來さんは、アンディーというキャラクターの性格もあって、あまりこう…大きな感情の揺れや、激しい部分を露呈させない、抑制の効いた声が中心でした。ところどころ、笑いを誘うコミカルなところや、イントネーションが関西なところもありましたが(笑)。青年期の小難しい話大好きなめんどくささから、大人になるにつれて低く落ち着いた声と口調になっていく変化も、地味だけど上手かったなぁ。さすがに、年齢がアンディーの年齢が四十何歳と文章で出てきた時は、一瞬んっ!?となりましたが(笑)。もっと色々、派手なことができるのに、それを出せないのは勿体無いなぁという気も正直ちょっとしたんだけど、抑さえた静かな芝居でじっくり聞かせつつ、その中で微妙な揺らぎを声に含ませていく、というのはすごく難しくて、勉強にもなるんだろうな。
 途中、YUKIちゃんが最初につまずいて読み直した時に、未來さんが小さく笑みを浮かべていたのが…ああもう、この幸せ者めー!!と思いました(笑)。また噛んじゃって読み直すYUKIちゃんがたまらなく可愛いんだ…! 未來さんも、全く噛まないというわけにはいきませんが、でもリカバリーがさりげなくてそこは流石。朗読の流れを止めずにさらりと通すの上手かったなぁ。
 1幕終了は立ってお辞儀してそれぞれ上手・下手に分かれて退場、休憩を挟んで2幕。2幕、未來さんはそのままの格好だったけど、YUKIちゃんがお召し変えしてて! ミルクティ色のおかっぱ頭は茶色の、ボブの毛先をふんわりくしゅっとさせたスタイルに、衣装も黒地にピンクでヴァイオリンのF字孔が前身頃左右に付いているジャケットに、黒の薄いプリーツ生地が重なったミニ丈のスカート、ブラウスが襟元左右に大きなヴァイオリンの立体がひとつずつ付いた、大変斬新なスタイルに変わっていました。登場時にどよめきが起きるくらい(笑)。またそれが…可愛いんだ…。立体のヴァイオリンはブラウスと同じ白で、黒でF字や駒やテールピースがちゃんと模ってあり、おまけに弦は4本、本当に紐状のものが張られていた! 細かいの…YUKIちゃんがその弦をかき鳴らすような仕草をするシーンがあったりして。そんな細工の細かいヴァイオリンが、左右の襟元に、ネックが顔の両側に伸びる感じで付いていました。左側のヴァイオリンの方がちょっと大きくて、そっちのネックは大きくて立った襟を貫通して左耳の横辺りまであったかな。邪魔じゃないかしらと心配になるくらいの存在感だったけど、実際は邪魔そうではなかったです。よく考えて作られてるんだな! 2幕のメリッサは新進芸術家としての第一歩を踏み出しているので、本の表紙・背表紙も緑やピンクや黄色の絵の具で彩られていて、YUKIちゃんの手も絵の具で汚れていました。変化のないアンディーが寂しいくらい(笑)。他のカップルの上演時も、2幕はお色直しするのかな。ロビーに展示してあった過去のカップル写真では、そんな斬新なスタイルのメリッサはいなかったけど…1幕なのかな。未來×YUKI写真は是非とも、2幕を飾って頂きたく思いました。
 物語が進むにつれて、立場も変わり、それぞれに家庭を持ったり、社会的な地位を築いたり、全く違う道を歩んでいくふたり。逢ってしまったことによって、再び離れることになり、逢ってしまったからこそ余計に別離がつらくなる…なりふり構わずアンディーを求めるメリッサと、家庭や地位を捨てられずメリッサから離れるしかないアンディー、どちらの想いも理解できるから、切ない。どんどん、読んでいくYUKIちゃんが辛そうに見えて、自分の頬をこすったり髪に触れたり、そういう仕草が心身の不安定さを現していて、YUKIちゃんがそうなるたびにお腹の底がひんやりした…メリッサの心が壊れていくのが見えるようで。アンディーに必死に助けを求め、「あなたがいなくちゃダメなの」「あなたなしでは生きていけない」とすがるけれど、その叫びに応えられる場所には彼はもういなくて…どこで間違っちゃったんだろうこのふたりは、と、幼い頃の可愛らしい手紙を思い出すと、哀しくて…メリッサの云う通り、あまりにも手紙のやり取りをし過ぎたのか、でもアンディーは手紙なくしては自分ではいられない、手紙の中の自分こそ本当の自分、と云うし…じゃあそもそも、どうしたってこのふたりは結ばれなかったのかな。そう思うのも何か、悔しい。
 最後の手紙をアンディーが読む前、メリッサがもう本を閉じて膝に置いていて、ああ、もうメリッサが手紙を書くことはないのだな、とそれでわかって…じんわりしてしまいました。最後の手紙を読むアンディーに、本を閉じたメリッサが、初めて彼の方を向いていろいろ、茶々を入れるじゃないけど、言葉を挟むのね。手紙のやりとりの間は、動きは多少あったけど、決してお互いの顔を見ることがなかったふたりだったから…ある意味、メリッサは手紙の呪縛から解き放たれたんだ、とも思えて…それでも、アンディーはまだ手紙を読み続けて、やはり彼は生きること=書くこと、の人なのだ、とも思えて…やっぱり永遠に結ばれないふたりなのかーー。メリッサが初めてアンディーに向かって言葉を「云った」、そこで涙が溢れました。初めて伝えた言葉、でもアンディーには届かない言葉…そこに、アンディーが読む手紙が、幼い日の無邪気な手紙の話だったりするからもう…オズの国には帰れないんだね…。
 メリッサの母に宛てた、でも本当は誰よりメリッサに届けたかった、最後の手紙を読むアンディーの声が聞こえる中、ふたりを照らしていた明かりが徐々に暗くなり、手紙の最後を読み終わると同時に闇に沈む…そんな終わりでした。ハンカチないと困るよ!と云われていたのですが、そこまで号泣にはならなかったけど、じんわりと視界が歪む、そんな初ラヴ・レターズでした…。
 明かりがついて、椅子から立ち上がり、お辞儀をするふたりが…また顔見合わせてにっこりしてて、それが可愛くて幸せそうで、そこで救われた気がします(笑)。だって未來さんが! カテコでにっこにこ!! ご機嫌さんなカテコはまぁたまに(…)お見かけしますが、ここまでニッコニコなのはないよー(笑)。本当に役得でしたねぇ! そして、堪えられない笑顔で片腕をきゅっと曲げると、YUKIちゃんの腕がそこにするりと絡まって、腕組んで退場ですよ…エスコートされるYUKIちゃんが軽く膝を曲げてちょこりとお辞儀したのが滅法可愛かったですよ…そして未來ほんっと役得…。もちろん拍手が収まるはずもなく、腕組んで出てきて、YUKIちゃんが未來に手を差し伸べ、未來がにっこりお辞儀して、鳴り止まない拍手にYUKIちゃんも客席と未來に向かって拍手して、また腕組んで退場。さらにもう一度、今度は腕組まないで出てきて(笑)、お辞儀して、帰りは腕組んで退場。最後の退場の時、腕組んだYUKIちゃんが、ハケ際に片足をぴょんっと跳ね上げるようにしていったのが大変可愛らしかったです。みらいさんはしゅうしでれでれでした。
 朗読劇なので、動きがない分どうかなぁと、動いてよーとか、フラストレーション感じるかなとか、思ったりもしたのですが、そんなことは全くなく。息を詰めてじっと耳を傾ける、非常に濃密な時間でした。2時間ちょっとで40年くらいの年月を辿るんだものね、濃密にもなるよね。いろんな声色を楽しめる、ともまた違う*1、そういう派手さで引き付けずとも、関係性や全てを語られないストーリー、その語られない部分を含めて、そういったところで捕らえて離さない。実際、静かな舞台だけれど、そういう意味でも非常に静かな、静謐な、作品でした。
 本当に、カップルによって全然違ったものを感じることが出来るんだろうなぁ。読み手の年齢によっても大きく違ってくるだろうし。未來さんとYUKIちゃんは、後半の歳を重ねてからの悲哀とか、相手も大事だけれど社会的地位や家族も大事、みたいな、その辺りの哀しさを感じるにはやっぱり、ちょっと若くて可愛すぎたなぁ、と。このふたりならまだ、全てを振り切って逃げ出しちゃうのもアリなんじゃない?と思えてしまうフレッシュさがどうしても見えてしまって…孫とか云われてええっ!?ってなっちゃうよ(笑)。長塚京三さんと樹木希林さん、なんてカップルがやったのも、見てみたかったなぁ!
 穂のかちゃんと金井勇太くん、石井麻木さん、のお姿が見えました。みゆき社長もいらしてたそうです、あと久保ミツロウ先生も!

*1:いや多少は可愛いところもあったけどね