ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「Revival/ヤザキタケシ」12/4(土)B・Cプロ、12/5(日)Bプロ

 改めまして。土日の神戸ダンス公演、観てきました。各プログラム、「スペース4.5」「不条理の天使」「ミューザー(沈思者)」の3作品の上演で、Cプログラムだけはすべての作品をヤザキタケシさんご本人が踊る、という趣向。未來さんはBプログラムの「不条理の天使」を踊りました。
 発表された時点では、とりあえず両日Bが観られればいいやと思っていたのですが、創作したご本人が踊られるなら、比較じゃないけど、元々とそれぞれと、見比べるにはちょうどいいんじゃない?と時間に余裕のある土曜日にCプロを取ってみました。ら、うん、やっぱり取って正解だった! 面白かった! 同じ作品が踊る人間によって、どんなに違って見えるか、すごく面白かった! し、Aプロも観てみたかった…と思うのでした。ローザンヌのバレエコンクールなどテレビで見ていると、同じ振り付けでもダンサーさんによって印象がずいぶん違ったり、役柄のキャラクターの性格がちょっと違って見えたり、するものですが、今回は振り付けや演出そのものもかなり、ダンサーさんによって変えてあったので、余計に違っていたし、そうなるとAプロでの演出や振り付けはどうなってたんだろう…とまた気になってしまうのでした(笑)。ううん、勿体なかったなぁ。
 まぁ過ぎてしまったことは仕方ないので、観てきたもののことを。各作品ごとに、2日間・2プログラムまとめて、で行こうかな。「不条理の天使」だけやたらねっちりになりそうですが(笑)。

「スペース4.5」

  • まずBプログラム、ダンサーは西岡樹里。赤いハイネックのカットソー的なものに、サルエルパンツみたいなシルエットの膝の辺りまでの赤いボトム、膝に見えていた黒はサポーターかな。黒い髪を後ろで無造作にひとつに結んで、小柄だけど凛とした印象。
  • 無音の完全暗転から、少しずつ少しずつ明かりが舞台を照らすと、中心に横たわる彼女の姿が。薄暗闇の中で、じわり、と白い裸足の足が蠢動を始める。膝から下の白さが闇に浮かび上がり、そこだけが生き物のように、揺らめくように動き出す。膝下を床からほんの少し浮かせて、足指まで蠢かせながら、ゆっくりとたゆたうように動くけど、両足以外は微動だにせず横たわったまま。
  • 徐々に明るくなるにつれて、無音から不協和音の綺麗なノイズみたいな音が、少しずつ聞こえてくる。その音が、色んな生活音…テレビの音やラジオの音や、「君の名は」や、コマーシャルや、ニュースを読む声や、切れ切れのそんなものを含んでいく。
  • やがてゆっくりと上体を起こし、両足を前に伸ばして座る感じに。そこから、足に操り糸がついていてそれで動かす、みたいな、足を動かすのにいちいち、手で膝や足についている糸を持ち上げて、足を吊り上げて動かすような、動き。で、片膝を山なりに立ててそこに頬杖をついたり。
  • その足を内側に倒して横座りみたいになって、三つ指を突くようにやけに礼儀正しいお作法みたいな動きが…あったり。
  • 熟練の人形浄瑠璃みたいな自然な動きなんだけど、でも、足そのものは動かない、操らないと動かない、みたいな。
  • 立ち上がって指をくるくる回す。トンボを捕まえるときみたいに。そのまま床に手を勢い良く押さえつけて、捕まえた…のかな。
  • センターラインを頂点に、四角の一辺の長さを肘から手首まで?を使って測るような動き。3つ分、くらいな感じかな。四辺をそれでなぞってから膝を突き、顔は前に向けたまま、手探りで床の上を探る。何かを探しているような。
  • やがて正面センターの頂点を探り当て、そこから床に貼ってあった黒い目隠しのテープを一気に剥がすと、白いラインが現れる。正面センターにむかって頂点がある、正方形。
  • 照明がきっちり、その四角の中だけを照らす。
  • 四角の中で、何かを求めるように手を伸ばす、が届かない? 伸ばした手の先で、指が蠢く。
  • 四角く区切られたスペースの内側から出ることなく、踊る。手指の繊細な動きが印象的。あと、腕を回す振りでは暗闇*1の中に赤い袖と白い腕の軌跡がすごく綺麗に浮かびました。軌跡が綺麗な弧を描いてた。わたしの動体視力が激しく残念なせいもあるかもしれませんが(笑)。
  • 手で口を塞ぐような動作。この時、四角の中だけを照らしていた照明が、四角の中だけを暗く、四辺に沿ってその外側だけをぼんやりと薄く照らす、ように変わっていた。
  • 目を手で塞ぐような仕草、目を覆い隠して、いらついたように片手で腿を叩く。目を覆う手を振りほどきたいようにも、手から逃れようとしているようにも、剥がれる手を捕まえて目を覆わせているようにも見えて、見たくないものを見ないようにしているのか、見たくても見られない状態なのか、どっちにも捉えられる…感じ。
  • 無音の中で苦悶するように、もがくように動く。四角の中も明るくなる。そこに電車が通過する高架下みたいな轟音とミニマルなピアノの音が重なり、赤い照明の下で身を震わせるように踊る。でも四角からは出ない。
  • ふいに音が途切れ、赤い照明も消えて暗転。彼女も消える。
  • だいたいそんな流れでした。感覚としては、「無制限の不自由」とか、「制限される、制約されることによる自由」、「制約に逆らうことによって生ずる自由さ」とか…そんな印象を受けました。すごく印象ですが! 四角いスペースが出現することによって、より制約のない動きを、決して楽しげではないけれど、もがきながらもそれを得ていく、苛立ちを爆発させる自由さ、そんなものを…思った。
  • でも演者の意図は全くわかりません! ストーリーも設定もなにひとつ、正解は明示されない、でもコンポラ観る時ってそれでいいんだと思います。わたしはこんな風に見えた、でいいと思うの。むしろストーリーとか意味とかも探さなくていいと思うの。ていうか探したって正解は出てこないから無駄だと思う…(笑)。むだーなーこーとしーてるーううーってジョアンヌに歌われてしまうの。
  • で、Cプロのヤザキさんバージョンは、わたしは西岡さんほどの悲壮感というか、息苦しさというか、を感じずに観ました。もっと何というか…フィジカルな印象を受ける表現だった、というか。西岡さんのは動きはもちろんフィジックだけど、フィジカルな動きに乗せたメンタルな部分をすごく強く感じたので。
  • 約4.5平方メートルという四角いスペースの中で、いかに自己を表現するか、というのがこの作品の大元だろうと思うので、その「自己の表現」部分の違いがきっと、踊るひとそれぞれにいろんな表現が現れるのだろうな。と思ったらやっぱり、Aプロも観てみたかったし、もっと云ったら未來さんの4.5も観てみたかった…!
  • 限られた空間の中で如何に自己を表現するか、と同時に、その境界、境界線の意味も、それぞれの解釈があるんだろうなとも思った。「空間を限られる」「空間を制約される」ことを、どう捉えるのか、みたいな。制限や抑圧と捉えることも可能だし、その内側こそが自分の世界、ホーム的な場所、という捉え方もできる…とか。…どっちも同じような意味か(笑)。学校みたいなもんかな、属することによって得られる安堵と、拘束されることに対する不快感・反発、とか。何の話だ。
  • ヤザキさんの方は、何もない舞台に寝転がって、伸ばした爪先から頭の上までの長さを四方向にマークして、その四点を繋いで白いテープを自分で貼り、正方形を形作るところから始まりました。自分で作り出した、自分のスペース=四角の中、という感じがして、そのスペースはとても居心地の良い空間に思えた。身の丈を知る、じゃないけど、ちょうどよい、みたいな(笑)。
  • ただ、それでは終わらない感じがまた…問題提議?な印象もあって…安穏と狭い世界にとじ込もっていて本当にいいのか?的な…後味が良くない感覚がまた良かったです(笑)。
  • ヤザキさんは赤いトップスに茶色いゆったりしたパンツ、靴下が赤。この赤い靴下がすごく印象的で効果的、と思ったんですが、今考えてみると、靴下では…踊らないよなぁ(笑)。今文字で打つまで、靴下に対する一切の疑問もなかったんだけど。赤い…シューズだったのかなぁ。でも靴下赤かったよなぁ。Cプロは真ん中列センター辺りから観ていたので、そこまでミクロに観てなかった!

「不条理の天使」

  • さてメインディッシュです。舞台転換時に、両サイドの舞台袖部分の緞帳をさらに左右に片付けて、袖まで丸見え状態にしていたのがまず面白かった。舞台めいっぱい使ったもんねー。
  • 土曜日には上手の(露出しちゃってるけど)舞台袖に、1mくらいの高さのライトが置いてあった。日曜日はなかったかな、代わりに上手の袖のもっと奥に低くライトが設置してあったようにも思う。があんまり覚えていない。
  • あ、土曜日は舞台キワのセンターにフットライトがあったけど、観ている間は一度も使われてなかったような。日曜日には外されていました。うん、最前列の前を通る人が当たっちゃいそうで心配だったから、片付けてあってよかったです(笑)。
  • 暗転して、何かのミサ曲であろうミゼレレが荘厳に流れ、天井の照明が薄ーいオレンジ色の光を降らせる。土曜日は気づかなかったけど、日曜日にはその天井の照明バトンが降りてきていて、降り注ぐ感じが綺麗だった。バトン下ろすのに左右の緞帳どけてたのかなぁ? じゃあ土曜日もバトン降ろしてたのかなぁ??*2
  • 一転してタンゴのリズムが流れる。同時に照明が赤い光を投げる。下手奥から、レンタル会議室の椅子みたいな椅子をホールドして踊り出てくる未來さん。タンゴだ! しかも椅子とタンゴだ!!
  • 椅子と踊る、というと、ベジャール・バレエの「Mr.C」というチャップリンを題材にした作品で、小林十市さん扮するネズミが、やっぱりカフェの椅子みたいな素敵な椅子を相手に、優雅に素敵に踊りながら舞台を横切っていかれたシーンを思い出すのです。なので、素敵な人間のお相手と踊らないなら、椅子と踊るのは当然だ、くらい、個人的には理にかなった、納得の選択なのです。椅子。ただ! カフェチェアでさえあれば…! そこだけが惜しい、あんなレンタル会議室の四角い椅子じゃなくてさ、背もたれが曲げ木で華奢な脚がアールを描いているような黒い椅子ならさ…本当にうっとりだったのになぁ(笑)。
  • 話を戻す。未來さんは紺の地味なストライプのダブルのスーツに白いシャツ、赤い細身のネクタイに黒い靴下、黒い靴*3。髪はアルトゥルのまま、整髪剤でかっちりセットせず、ふんわりくるくるしていました。分け目とかはアルトゥルと同じ。
  • 椅子と一緒にタンゴに乗って登場して、小難しい顔で一回り踊ると、センターに椅子を置いて座る。カーテン?を両手で開けるような仕草をして中を覗き、すぐ引っ込める。戸棚? 何だろう、観音開きか、両引き戸な感じ。
  • で、めっちゃ力入ったカックイイお顔*4で、左手で右手首をぎゅっと掴み、同時に左足を斜めにピン!と突き出して、右手の指をカッコ良くにぎにぎさせる、のを反対側も、速いリズムに合わせて。手術前の天才外科医みたいな(笑)。ちょうかっこよかった(笑)。
  • 座ったまま、今度は両足をビシッと伸ばし、両手を揃えて高く掲げる決めポーズ。これがまためちゃくちゃかっこよく姿が美しく爪先から指の先まで完っ璧な造形美でしたよ…ひとつひとつの動作に移る時のスピード、キレの良さったらまたたまりませんよ…。
  • 膝を揃えて座り、両手をウェーブみたいに動かしたり、ええとモテキのパフュームダンスの最後の方みたいな手と腕で四角を作るみたいな動きをしたり。
  • 左手の人差し指と中指を揃えて立て、腕全体をカクカクと時計の針みたいに動かしながら、同時に2本の指先も細かくピッピッと動かす。長針と秒針みたいなイメージ。
  • が、両手になってカオスになる。時間に追われてわけわかんなくなる、みたいな。
  • そこからきちんと座り直し、にゃーんって目が横線になってるお顔でPCに向かう。両手でキーボード打って、右手でマウスをクリック。
  • 右側に右手を伸ばし、リンゴかパン?のような丸そうな塊を掴んでひとかじり、ふたかじり。そのまま完食してもぐもぐ。古いチーズを食べるグレゴールを思い出します。そしてものすごい顔です(笑)。
  • またPCに向かいカタカタお仕事。右手でタバコを振り出してくわえ、くわえタバコで火をつけて一服。何口か吸ってから、そのままタバコを…ポッキーみたいに食べちゃった! 先っぽを口の中に入れながら手が熱そうだった。口もちょっと熱そうだった(笑)。飲み込んで「…っあー…」と満足そうな一息。
  • 右手でマグカップを取る。コーヒーかな? 飲んで、口に含んでうがい(笑)。右のほっぺでくちゅくちゅしながら目がきょろーんと左向いて、左のほっぺでクチュクチュしながら目が右にきょろーんと動いて、その目がめっちゃ可愛いわ綺麗だわ…ちょうかわいかった…。
  • 盛大にぐちゅぐちゅしてゴクリ。日曜日のうがいはとっても激しかったです。
  • 手に残ったカップを見て、…ガブリ。カップの持ち手を持ったまま本体をかじってる感じが、持ち手と反対側のカップからかじり始めててすごく…大変そうなんだけどそうなるよねぇって感じだった。
  • 前歯の間に何か挟まったご様子。爪楊枝でそれを取って、爪楊枝も美味しく頂く。
  • ふと右上前方を見上げ、立ち上がって優雅に一礼。定時退社かな? 誰かと待ち合わせかな?
  • そしてまた赤い照明とタンゴのリズム。椅子持ち上げてタンゴを踊る。
  • 椅子の持ち方が、椅子の手前の脚の内側に右腕を通して向こう側の脚を持ち、左手は肘を張って、とってもタンゴのホールド位置っぽくて素敵でした。
  • 舞台全体を自在に使ってタンゴ。振り向ける顔とかほんとかっこよくて綺麗だった…きらきらしてた…そして一生懸命だと口がとんがり気味なのも相変わらず…。
  • 椅子をセンターに戻し、座ると、ちょっとお行儀良く膝を揃えて、片手を伸ばし、お花を摘む。何か若干しなを作ってらっしゃるような(笑)。人差し指と親指でそっと摘む、3本くらい。匂いをかいでみたりして。
  • それから両手で抱え込むみたいに摘む。丸太くらいの太さを抱えて、腰を入れ、一気に全部むしり取る。一抱えの花束に顔を埋めるようにしてふんかふんかと香りを楽しみ、そのまま…食べちゃった…。
  • 満腹…と、突然ハライタ的なすごい顔になった(笑)。口がOの字になっていた(笑)。お腹なでなでして大丈夫。
  • 今度は誰かをマッサージ。両手でもみもみして、肘を突いて手首をぶらぶらさせたり、腕を伸ばさせて?もみもみしたり、脚も伸ばさせて?もみもみしたり。
  • 今度は相手のおでこを片手で支えて、首をマッサージ。あれ気持ちいいんだよなーいいなーとか思った途端に、支えていた頭をてっぺんから丸かじりー!
  • そのまま全身全部食べちゃった…丸呑みする蛇のような勢いだったわ…がに股に脚ふんばってさ…。
  • 再びPC作業。と、ノートPCの蓋をパタンと閉めて、四角を持ち上げて…端からがりがりぼりぼり。
  • 残ったマウスは、あーんと高く持ち上げて口の中でコードをトグロ巻かせてペロリ。
  • っと、口から出そうになって、おえっぷ…と留める。土曜日は口を膨らませて飲み込む、だったけど、日曜日はおえっぷと頬が膨らんだ時に人差し指を口に当ててた。でごっくん(笑)。
  • 食欲が満たされると眠くなるのは生物の生理上仕方ないことです。椅子の上で意識が遠退き、おっと、と覚醒しすぐにまたふぅ…っとなる、のを繰り返す。ああなるとツラいよね…(笑)。ああいうひとたまに電車にいるよね(笑)。
  • 音楽が、とても眠いというかむしろぐー…ぴよぴよぴよ…と寝ている音がしている歌になっています。「Un Fantome Asthmatique」という曲でした。
  • 船漕ぎがだんだんひどくなる。がっくんがっくん揺れるわ、肘ついた膝から肘は落ちるわ、白目向いて仰け反るわ、椅子から落ちそうになるわ。
  • ついに椅子から転げ落ち、床の上でシャチホコみたいになって寝る。変形倒立みたいな…ヒップホップの決めポーズで床に頭付いてるみたいな。そこで音楽が止まる。
  • 無音の中、ゆっくりと腹這いから正座に起き上がる。照明が青い光になる。下手の前方から、ふ…と上手の方を見遣り、一瞬空虚な表情。時が止まったような。
  • 椅子を上手へ移動させ、そこでジャケットを脱いで椅子の背にかけ、ネクタイを外して床に置き、靴を脱いで、靴下も脱ぐ。シャツのボタンをひとつ外して襟元を寛げる。椅子ごと上手に移動した辺りから、「Loulou」が流れてる。
  • シャツ姿になって、ふらりとセンターに立つ。と、そこから、右手だけが勝手に動き出しちゃって引っ張られていくようなダンス。自分の右手に引きずられて振り回されるような。
  • ここからかなりフリーな感じのダンスパートになる。昼は手に引っ張られて下手まで行って、そこから後ろ向きにわたたたたっと逃げるように、もしくは突き飛ばされたように走ってきて、上手で背中ごろん!と倒れる。そこから後転みたいに床上を転がって起き上がり、ジャンプ連続。踏み切り足を空中で入れ換えて同じ足で着地したり…パ・ド・シャ的な? 空中で足が<>こんなんなって静止してたり。トンボを切るように空中回転しながら舞台を一周したり。
  • 日曜は、右手に引っ張られるのは同じだったけど、空中ターンで盛大にキラキラを撒き散らしていたのが印象的だった…。あと下手の奥から上手の手前に向かって、何かを追いかけて捕まえるみたいに走ってきて、両手をぱちん!と合わせてから、そっと中を見ると何もなくて舌打ちしたり。そこからクラシカルな雰囲気で踊り出し、床をごろんと転がったり、走り込んで逆立ちから前転、みたいなことをしたり。ジャンプの種類と回数も変わっていて、土曜日は3回くらいあった<>ジャンプが、日曜は1回しかなかったり。
  • 照明がスポットライトに変わり、その輪の中で空虚な表情で一瞬佇む。センターの奥に向かい歩いていき、上を仰ぐ。後ろ姿が綺麗。
  • で、照明が赤くなりタンゴが始まる。と、音に合わせてクルッと振り向きニヤリ顔。ここおもしろかっこよくて素敵でした…! 超ニヤリだった!
  • タンゴが鳴り響く中、下手の椅子に近づき、ジャケットを着直してまたキメ顔(笑)。笑っちゃうんだけどカッコいいんだ(笑)。
  • 椅子をセンターに運んできて、椅子の背に巻いてあるらしいロープをぐるぐると外す。日曜はロープを外す前に、天井を見上げて梁の確認をしていた。
  • 手にしたロープを新体操のリボンみたいにくるくるしたり、わっるい顔して鞭みたいにピシピシしたり。それから縄跳び、まずはふつうに、それから二重飛び、クロス飛び、綾飛び、で走り飛び。走り飛びの時の跳ね上げた足の爪先がいちいちピンッとしていてそんなところまで美しいなんて…と笑った。
  • 時計回りに舞台を一周してから、下手前方でロープの端を首にかけ、ネクタイを締めるみたいにかっこよく締める。カッコつけてみたりして。ご機嫌です。
  • 長い方を持って椅子に上がり、反対側を天井の梁に投げ掛け、結びつける。ジャケットの前を留めて、身支度を整え、何度もロープを引っ張ってみてはちゃんと首が絞まることを確認。
  • 土曜日はわりと、そのままニーンというすごい笑顔を浮かべて、椅子から一歩を踏み出す瞬間に暗転、だったけど、日曜日は飛ぶ直前に一瞬、すごい虚ろな顔をしたのがとても印象に残っている。それから改めて、ニーンな笑顔を作ってから、一歩で暗転。
  • 暗闇の中にグレゴリオ聖歌が鳴り響く。明るくなると、舞台上に残された椅子と靴、靴下ネクタイが。それをスタッフさんが回収していかれたのですが、あたかもそこまでが「後始末」的な、作品に含まれているんじゃなかろうかと思えてしまう雰囲気でした。事務的に片付けるスタッフさんの佇まいが余計にそう思えてしまった。
  • 初回の感想は「またしんだーー!!」でしたよええ。記録更新。
  • 以上がBプロの未來さんバージョンでした。Cプロのヤザキさんバージョンと比べて、一番差違が少ないというか、あそび部分が少ないというか、きっちり作り込んである作品だった。フリーで踊る部分くらいしか大きな違いはなかったかな、ってくらい。
  • ヤザキさんの時は、左右の緞帳が避けられてなかったのと、照明バトンが降りなかった、最初から赤い照明が点いたかな? ダンスというよりは演劇的な面が強いので、要素としてはほぼ同じでした。あ、最後に跳ぶ時、ヤザキさんは両手を大きく広げて昇天のイメージで跳んでた。未來さんはそのまま…手どうなってたっけ…広げてはいなかった。顔ばっか見てたんだなわたし…。
  • あ、一番大きく違ってたのは、上手でジャケットやらを脱ぐ前、未來は空虚な顔で上手を振り返っていたところ、で、ヤザキさんはスーツの内ポケットから写真?を取り出して、大切そうに袖で汚れを払い、キスをして、下手の椅子の前に飾ってた。大事なひとの写真なのかな。
  • あと、ヤザキさんの時は、最後のタンゴの時点でグレゴリオ聖歌がもう流れ始めていて、タンゴとかぶっていた。未來さんの時はかぶってなかった。
  • 印象としては、ヤザキさんの方が何だろう、グロテスクな怖さがあった…。未來さんはどこか硬質な印象があるので*5、グロテスクにはならないけど、人間離れした異質さみたいなのはあって、そういう意味で奇妙な感じで怖いんだけど、ヤザキさんのは怪物って感じがした。未來のは怪物…じゃあないんだな、異質なんだけど。綺麗だから(笑)。
  • と同時に、未來にはほぼ感じなかったセンチメンタルさをヤザキさんには覚えました。跳ぶ前にちょっと悲しそうな、切なそうな表情が伺えたので…写真の効果もあったし。
  • あと、これは云うべきことでもないのかも知れないけれど、やはり実年齢から受ける印象の違いが大きいというか。そりゃ当然と云えば当然なのですが。ぴっちぴちトゥヤットゥヤの26歳と、お年いくつか存じませんがキャリアを積んでベテランと呼ばれる域に達した方とでは、そりゃ同じ振付踊っても違って見えますよね。それは体力的な衰えとかそういうことではなくて、若者が踊ればそれだけで躍動感や生命力に充ち溢れて見えるものも、年を重ねると円熟するとか、重さや深みが出るとか、そういう味の違いであって。何もぴっちぴち新鮮ジューシィが最高、とは限らないしな。…と、そういう辺りでやはり、同じものを踊り演じ同じ結末を迎えても、受ける印象はずいぶん違うのだな、と思いました。
  • なので、未來さんのハンギングはすごく思い付きっぽいというか、得体の知れない思考経路を辿った結果どうしてそうなる!?みたいな恐怖、意味のわからない怖さを感じたのに対し、ヤザキさんのハンギングはすごく悲哀を感じたのでした。可哀想…って、未來ver.は全然思わなかったんだけど、ヤザキさんのは少し悲しくなったよ…。
  • 差というか何というか、さすがにヤザキさんは本家本元なので、とにかく見ていて安心感があったし、わかりやすかった。何もかもクリアーに明確に呈示されていて、正直土曜日の時点ではわたし、未來さんが花を摘んでるってわからなかったよ(笑)。ヤザキさんのを見てはじめて、ああお花摘んでるんだ!ってわかって、日曜にもっかい見たら未來さんも花摘んでた(笑)。未來さんはやっぱり、どうしても力抜けない、頑張ってるよ!感が抜けてないのね。そういうプランだったのかもしれないけど。まぁタンゴだしテンション上げていかないとだし、どうしたってお顔に力入るわな。力入ったお顔は美人さんになるので好きなんだけどね。しかしやはり比べると、ヤザキさんの力の抜けた自然さと安定感は素晴らしかったです。
  • あ、でも、冒頭の椅子に座って決めポーズの決まりっぷりとキレっぷりは勝ってたよ! キレッキレだったよ! 若さの勝利だよ!(笑)
  • ヤザキさんのはグロテスクな、でも可哀想な怪物という印象。未來のは、この世のものじゃないのに紛れ込んでしまった異質な、姿は美しいけど意思の疎通ができない宇宙人、みたいな感じ。どっちも異質で違和感あるんだけれど、恐怖の種類がちょっと違う、そんなふたりの天使でした。

「ミューザー(沈思者)」

 …ミューザー…すっごく面白かったんだけど…すいませんちょっと今日は無理です…ある意味一番わっくわく楽しんだんだけど…ええと、動きと音のマッチングで遊ぶ、みたいな。振り向くとか、歩くとか、手を動かすとか、視線を向けるとか、そういう何気ない動作ひとつひとつに、すごいスペイシーでカッチョイイ擬音というか効果音が付きまくるという…それだけじゃないんだけど、ちゃんと(?)コンポラ的な素敵な動きをするパートもあるんだけど、でもそっちのインパクトがすごすぎて(笑)。お腹抱えて笑う勢いで面白かったです! わたしも着地時にずごおおおん!!って云いたい(笑)。

*1:背景も黒いカーテンでした

*2:天井仰ぐ余裕なんかなかったみたいです初回

*3:この靴、2幕の正装アルトゥルさんの靴に似てると思ったんだけど違うかなぁ!

*4:カックイイんだけど力入ってるので若干アゴ出気味

*5:本人にも、ダンスの雰囲気にも。しなやかさはもちろんなんだけど、ガラス質の透明度と共に硬質さを覚えるのです。動きが固いってわけじゃなくね