ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「変身」虫観察日記12日目/東京千秋楽(改)

 2日経ってしまいましたが、終わっちゃった…という実感がありません。喪失感もあまり、感じていません。これからまだまだ地方があるし、あの非常にシステマティックかつテクニカルな、と同時に溢れんばかりにエモーショナルな舞台を続けていかなくてはならないと思うと、何だか…まだまだ気は抜けんぞ、という気分になります(笑)。わたしは別にだらだらーんとでれでれーんとリラックスして良いんですけど、ね。何となくね。まだまだ終わっていない、という感じが大きいです、今は。本当に、ひとつ間違えると大事故にも繋がりかねない舞台だから…全部終わるまで気が抜けないです。気を抜かずに地方公演の成功を祈り続けます。わたしが気を抜こうが抜くまいが関係ないんですが(笑)。
 そんな、喪失感も虚脱感もゼロな東京楽なのですが、それでも、ル・テアトル銀座からグレゴールとザムザ家の人々は旅立ってしまったわけで…うん、でも、今回は、終わってしまう寂しさよりも、無事にひとまずここまで辿り着いた感慨の方が大きいです。通過点でしかないけれど、でも…なぁ。三点倒立いったん封印とかあったしなぁ。…「あったしなぁ」なんて振り返るほど、前のことでもないんだけど(笑)。とにかく、万全の状態で東京楽を迎えられたことが一番ですね!
 そりでは、東京楽メモ置いておきます。東京楽というか、東京公演を振り返りつつ…な感じで。

 
 
 
★この先ネタバレあり★
 
 
 
 

  • そう云えば、幕が上がって最初のグレゴールの動きもちょっと前と変わっているような気がします。あんなに歩幅小さかったっけか。より人形めいた動きになったような。その代り、グレタの後ろから腕に触れるところは肘の張り方が自然になった、ような。
  • 「僕はグレゴール・ザムザ」第一声のトーンが若干低くなったのはいつ頃からだったっけか…。初日の頃はもうちょっと、作ったひっくり返り声みたいなちょっと素っ頓狂(笑)な高さから入ってたから、低く入った日に「お?」と思ったのを覚えている。
  • 「遅くまで起きているな」でちょっと詰まった。牛乳飲みで空気飲んじゃった? ていうかあの牛乳飲みも凄いと思うんだ…わたし3回に1回くらいはゲフッてなる…。
  • グレタの額におやすみのキスをしてから、そっと部屋へ消えていくグレゴールの動きが、より洗練されて…芝居がかった動きというか、「振り」の一環みたいになっていた。人から人でないものへ、人でないものへの変貌に向かい、進んでいく歩みと思うと、その綺麗さも不自然さ*1も意味があるように思えてくる。
  • またゆっくりと台座の上に滑り乗る未來さんの動きがエレガントなんだよ。暗転の暗闇の中で。あそこじったり見るのが好きでした。
  • 頭を打っちゃいけない!って起き上がろうとうごうごするグレゴールが、失敗して後ろ側にぐるんとなるところ、後方の鉄骨に足をかける体勢になるの…最初からだったかな。途中からのような気がするな。三点倒立復活と同じくらいからな気がするな。気のせいかもしれないな。
  • 「そっとしておいてくれええええええ」が寄り目でした。前楽で「具合が本当に良くないんだー」で、って書いた気がするけど間違いです。
  • バグるグレゴールさん。ちょっとセミっぽいよね「しゅにーーーいいんいんいんいん…」とか(笑)。
  • 途中でしゃっくりみたいなのが入ったり、針が飛んだり、ももも、も、もっともっとも、もも、も…とか、何かすごいことになっていたような…「見逃してやって下さい」が時代劇みたいになってたりな。大変なことが起きているのに、そうじゃなくタイヘンなことになっているので、どうしても笑ってしまう…。
  • やっぱり「お母さん」の怖さは鉄板だ。小さいときに見た怖い夢で、「家族が怖いものになってしまう」シリーズを思い出す…大好きなものが恐ろしいものに変貌してしまうのって怖くて悲しくて辛いんだよね…。
  • からだがべしゃっと過ぎて、やはりグレゴールは即死じゃないかと心配になる。物凄い声になってたよ。
  • ミルクが不味くてべーってしてから、ぺしょっと顔伏せるのがやけに可愛い。
  • お食事音が、もうすでに声ですよね(笑)。ガリゴリ音じゃなくてはぐはぐ声ですよね。あと逆さにスープ飲むのとコップに水注いで飲むマイムができません。やっぱあれか、逆立ちして鏡に向かってやらんとダメか。無理だな逆立ちができないもんな!
  • チーズ齧ってるとか、干しぶどう食べてるとか、何となくわかるんだよね…すごいなぁ。
  • お腹いっぱいは腕じゃなくて、鉄骨上逆立ち状態で高く上げたお尻のあたりを上下にふーこふーこさせていた。
  • クリスマス幻想は、もう本当に…胡散臭いほどエレガント。台座を降りる斜めの体勢がたまらなく好きです。
  • あと、音楽学校に行かせる計画を発表した後、はにかんだように嬉しそうに、自分の身体を両手で抱きしめるところ。…これが現実だったらなぁ…。
  • 本当にグレタのエアヴァイオリンが自然になって感慨深いです。欲を云ったら1音=ひと弓、じゃなくスラーかかってるところまでひと弓で行ってくれたら…なんて(笑)。すいません重箱の底のシール跡程度です。
  • 「あんたがグレタの為の金を取ったからだ!」後に部屋に戻されたグレゴール、お父さんが足を踏み下ろす*2のに合わせて、手をガクッ、ガクッと折り畳んでいっていたのが、潰されているみたいでした。影に映るグレゴールの手もすごく考えられてるんだなー。
  • 千秋楽痛恨の…がっかり声を出すグレゴール、タイミング間違えたー。働きに出るというグレタにお母さんが「グレゴールが良くなるまでの話よ」と云うと、お父さんが「それはいつになるやら」と皮肉に応えるところ、「いつになるやら」と云われてがっかりするのが、お母さんの「良くなるまでの話よ」でがっかりしちゃった〜。そこじゃどうしてがっかりなのかわからないよグレゴール!
  • お父さんのセリフにかぶせて3段階くらい、長いことがっかりしていました(笑)。ていうかこの前もそこやったよ未來(笑)。
  • やはり人間的/虫的、な表情の変化が凄い。もう怖いくらい。
  • 「そんなんじゃ誰が見ても僕が君に噛み付こうと狙ってたって思うよ…」叫ばないで、自嘲を含んだような悲しい声で静かに云っていました…悲しい…。
  • グレタの「わたし、吐き気がしたわ!」だったかな。その辺のセリフに合わせて、鉄骨上に止まっていたグレゴールが、ぺしょっと力なく床に落っこちて…びっくりした…びっくりしたけど、あまりに可哀想で…床に落ちて小さくなってる背中が辛くて悲しくて…千秋楽でそんないきなり…とあわあわしながら号泣コース。
  • ハエ捕食後の腕シルエットも見納めか…と思うとすごく惜しかった。本当に本当に、世にも美しい悪夢のような瞬間なんだもの。人の指が形作っているとは思えない醜怪さと美しさがいっぺんに襲ってくる。
  • 最近、壁や天井を這い回る習慣を身につけたみたい、とグレタが云う時の、下手側の壁面にいるグレゴールの動きがたまらなく好きです。両膝と右手でつかまって、左手を美しく垂らすのとか、両手クロスで捕まって上半身を反らすのとか…。
  • 両手クロスで上半身をぐいーんとさせるのを、密かに「ポールダンス」と呼んでいましたすみません。
  • 前へ後ろへ、後ろへ前へのブランコも、いつもよりぶらぶらしていたような。千秋楽スペシャル的な。
  • 「お母さんに、たまらなく会いたい…」以降の声が…何かへんちくりん声になってしまった…。何だろう、最初に出た声のトーンで最後まで通す、のか?
  • グレゴールの部屋から家具を運び出そうとするグレタと母親に対し云う、「僕の部屋をまるで獰猛な獣が這い回る檻にしようとしている」の辺りの声が、何だかやたら…朗々とした、低い、響きの良い声で、生で聞きながら、え、これ未來の声? こんな声聞いたことないよ?と思った。「僕は僕が誰だか忘れてしまう」とか。「今の、今のこのモノになってしまう!」辺りからは未來の声に戻ってたんだけど…何だったんだあの声。誰だったんだ(笑)。
  • 「それは持っていっちゃダメだー!」後の、突然降ってくるグレゴールが、こう…客席の遠い位置から見ていると、上部のグレゴールも床のグレタと母親も一望できているから、そんなに思わないんだけど、グレタと母親の視点で考えると、それこそ突然目の前にグレゴール虫が降ってくる状態で…それは怖い。と思いました。
  • リンゴは左の背中に被弾。膝を内側に入れて前に突き、お尻を下に付けないまま後ろから胡坐状に両足首を前に持ってきて、背中側に倒れる。いややっぱ無理(笑)。
  • 倒れるグレゴールが、中盤までは苦悶の表情だったのが、倒れ方変わった頃から、虫的な無表情になっていて、とても…虫っぽくて気持ち悪いのです。気持ち悪いは褒め言葉です。
  • 「あなたがあんなに強く投げ付けたから、リンゴは僕の背中にめり込んでしまった…」久々に呪詛っぽいのを聞いた気が。
  • グレゴールが虫になったことによって、強い力を手に入れた父親。皮肉だなぁ本当に。
  • リンゴを投げ付けられてからのグレゴールの衰弱っぷりが顕著になって、痛々しかったです。指先のウゴウゴがよたよたになってた…。
  • 母親の言葉に耳(?)を傾けるグレゴールも、壁際に近づく動きがのろのろで…弱ってた…。
  • で、母親が壁から離れた後に、消えた気配を探すように首を動かすのが…やっぱり泣ける…たまらなくお母さんに会いたいよね…。
  • 春の気配が感じられる頃に、ある朝目を覚ますと、何もかも悪い夢であったことがわかるわ…という母の言葉が、ある意味現実となるのが、何かもう…やりきれない。家族にとっては、そういう展開だよね…。
  • …でも、春の気配が感じられる頃に、綺麗なクロッカスの蕾になるんだもん…春の気配そのものになるんだもん…。
  • 「ペットを飼っています」に足をぽとりと落とすグレゴールが…やりきれない。無表情美人なのも、なのに、そんなだからやりきれない。
  • 「もう、誰も僕のことを口にしない」…「沈黙だけには耐えられない!」とか思い出すと…つらい。
  • 下宿人の食事を邪魔するグレゴールも、何かもう具合が本当に悪そうで…無理して食べないの…でも何か食べなくちゃだけど…。
  • グレタのヴァイオリンの音に、ぐったりしていたグレゴールが首を持ち上げるのが、「音楽を聴く耳だって持っている!」に繋がってて…でも具合は悪そうで…悲しい…。
  • ここのボウイングは…いいですかすいません(笑)。
  • 「ああ、もうそんなに経つのか…」でぬるーんと部屋から出てくるグレゴール、また眼鏡がずり落ちた。完全に鼻の下まで落ちたから、何かもう心配になって…でも絶対直さないもの未來さん。
  • 下宿人を追い払おうと、スカートの隙間から突進していくグレゴールが、千秋楽だけ本当に突進していて、びっくりしました。最後の力を振り絞って、豚野郎からグレタを守ってやるんだという気迫と気概に満ちていて…訪れなかったクリスマスの夜を胸に抱いて、家族を守ろうとしているんだよね…。
  • グレタが父親にぶたれてから、余計にグレゴールが怒ってるように見えた。それ以降突進が始まったような。
  • …しかしあのサイズのばっちい虫があのスピードで迫ってきたら、それはかなり怖い…なぁ(笑)。
  • なのに、最後の力を振り絞って守ろうとしたそのグレタに、「アレを始末して!」と云われる。そりゃあもう…生きる力も弱くなるよね…。
  • それを云われた瞬間、グレゴールの両手から力が抜けて、その場にへちょりとくずおれたのが…悲しくて可哀想で…千秋楽に来ていきなりですか!?その2というか…ずるずるにされた…。
  • もう、もう聞かないで! 聞いちゃダメ! 耳ふさいでよグレゴール…!!って思ってた…。
  • でも、全ての言葉を聞いてしまって、よろよろと自分の部屋へ戻っていくグレゴール。途中で2回、よたっとなるんだけど、そのよたり方がいつもより全然激しくて…べちょっとつぶれるみたいにバランス崩して…可哀想で見てるのがつらかった…。こんなよろよろなのに、あんなに一生懸命闖入者を追い出そうとしてたんだねグレゴール…。
  • 部屋に戻ってももちろん眼鏡ずれたままで…セリフ云いにくくないかなとか、そんなこともちょっと心配になったり。
  • 「自由に…自由に…!」…あああ、最後へんてこ声で終わってしまったか…こればっかりは、綺麗な声の方がいいなぁ…。
  • クロッカスは本当に美しくて、美しいから余計に悲しくて、でもやっと救われた、という深い深い溜息も出てしまう…そう、開放感が、どうしてもある。悲しい開放感、もしくは脱力感がある。解き放たれた…。
  • カーテンコール、幕が上がる前に拍手が起きた。わたしが観た中では2回目でした。…どちらかというと、再び幕が上がるまでの静けさを、余韻として味わっていたい方です、わたしは。止めていた息をそっと吐く時間なのです。
  • 幕が上がって、センターに立つ未來さん。眼鏡はずり落ちたままで。
  • あの美しい腕の動きで、久世さん永島さん穂のかちゃんを呼ぶ。久世さんが未來さんと顔を見合わせて、にっこり笑っていました。
  • 小さく上手に手を差し伸べて、丸尾さんと福井さんを呼んで、低く下手に手を伸べて音楽のお二人を呼んで。充実感にあふれた表情、お辞儀、がぶよぶよの視界の向こうで揺れていた…。
  • 2回目のカテコ、今度こそ眼鏡外してくるかな?と思ったら、そのまま鼻の下メガネで…そこで直さないってことは、もう直さないのねあなた(笑)。
  • ハケ際でお辞儀、顔を上げてからもう一度、客席を見渡すようにして、ちょっと頷くようにして消えていきました。
  • 3回目で立ちました。真ん中辺列の真ん中辺席だったので、ちょっと待っちゃった(笑)。走り出てくる姿がかっこいい。
  • 4回目、久世さんが大きく手を振ってらっしゃったのが印象的でした。
  • ハケる時に、後ろ手に手を組んで、とてとてと、ぽてぽてと歩いていくのが…たまらなく可愛らしかったです。何だか面映そうに、ちょっと俯いて、つま先を上に向けるみたいに歩いていました。出てくるのとは違う、奥のカーテンの向こうへ消えて行きました…おつかれさまでした!

 そんな東京楽。とても良い楽でした。まだ続くけど、少しの間だけしっかり休んで、また変身を続けて下さい。会場が変わるといろいろと変わる段取りとか、セッティングとか、あるのだろうな…あのセットを他の舞台に組むのも大変だろうなぁ。日本全国に、あの凄い舞台を、ばら撒いて…違うな、点を置いて、来て下さい。小さいけど、鋭くて深い点を穿ってきて下さい。また会いに行くから!

*1:人間として

*2:影でグレゴールが踏みつぶされるような感じ