ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

改めて「THIS IS IT」

 全世界同時公開の、初日初回を、片田舎のシネコンで観てきました。いつもガラガラの片田舎シネコンなのに、満席でした。客層は制服の高校生から初老のご夫婦まで様々、でもやっぱり30〜40代のどんぴしゃ世代が多かったように見えました。あの映画館が満席になってるの、初めて見たわー。


 片田舎のシネコンなのに、上映終了後には拍手が起こりました。そんなのも初めてでした。
 このコンサートが発表された時は、正直、がっかりするんじゃないかと、どうやっても最盛期の輝きには届かないだろうから、やっぱりマイケルも年とったなぁとか、残念なことになるんじゃないかとか、どこかで思っていたのです。もうあんな風には踊れないんじゃ、歌えないんじゃないかと。だからといって彼が凄いことには変わりないし、齢50になって翳りが見えたとしてもそれが彼の功績を何ら傷付けることにはならないのだけど、それでも、どこかしら、老醜を晒して欲しくはないと、もういいじゃないかと、そんな思いが、ないわけではなかったのですよ。だって、時たまワイドショーなんかで見かける彼は、SPやら何やらに囲まれて、細くて薄っぺらくて、歩くのもやっとみたいに見えて、ライブステージなんかとてもできそうになんて思えなかったんだもの。
 思えなかったんだけど。
 吹っ飛ばされた。全部、ぶっ飛ばされた。杞憂に終わったとか、そんなもんじゃなかった!!
 そりゃあもちろん、世界中からオーディションで選び抜かれた超一流の若くてピチピチなバックダンサーたちと比べたら、多少動きのキレとかが、っていうのは、そりゃああるさ。あるけどもさ。そういう次元じゃない、絶対的な華というものが、やっぱりあるのね。持っている人にはあるものなのね。カリスマって、天才って、こういうことなんだね。いや、マイケル相手に今さら何を、って感じですが、改めてまざまざと見せつけられて、若干忘れかけていたものを「ほぉら」って、「だろ?」って、突き付けられた気分です。良かった! 知ってたけど!
 リハーサル映像だけど充分凄いし、リハーサルでこれだからきっと、本番はこんなものじゃなかったんだろうなぁ。「ここで観客を煽る」とか、「ここはみんなを焦らすんだ」とか、客席の反応込みの演出をつけていく姿に、実現しなかったコンサートがもったいなくて悔しくて…せめて1回だけでも、満員の会場で歓声を浴びて欲しかった。KING OF POPの完全復活を全世界に知らしめて欲しかった。「できんの?」とか「もういいよ」とか老醜とか云っていた私を、世間を、余裕の笑みで見返して欲しかった。「やっぱマイケルすげええええ!!!」って、こんな形でなく、云わせて欲しかった…こんな形で「やっぱマイケルすげええええ!!!」って、云いたかったわけじゃないんだよ…。云ったけどさ…。
 とにかく圧倒的でした。ファンだなんて口が裂けても云えないわたくしでも、ほぼ全曲知ってるセットリストで。これを完全な形で見たかった…マイケルが思い描いていた、完全な形で見たかった…。いや、もちろん完成形になっていたら、わたくしなどの目には到底触れることはないのだろうけど、WOWOWとかでいいから…見たかった…。完成することなく消えてしまった夢の舞台、片鱗だけでもあれほど眩しかったんだもの、完成していたら…と考えると、悔しくて悲しくなる。もったいなくてギリギリする。あああのスリラー見たかったよ! どんなんなってたんだろーう! スリラーなんだけど、ゾンビたちが「Ghosts」PV*1みたいなゴスゥな感じで、映像と舞台が融合していくステージングっぽくてめちゃくちゃかっこ良さそうだったんです…。スムース・クリミナルもモノクロ映画な1920年代な雰囲気で…ああほんと完成形が見たい。どんだけカッコ良いことか! そんなんカッコイイに決まってるだろー!!…と、涙流しながら逆ギレ状態でした…あわわわ。
 マイケルの頭の中には、音も絵もすべてが完全な形で、出来上がりがあったんだね。それをスタッフに、ミュージシャンに、ダンサーに、自分以外の人間に、伝えて、自分の頭の中にあるイメージを共有して、そこへ現実を近づけていく、リハーサルってそういう作業の場なんだね。頭の中にあるものを具体化・具現化して現実のものとしていくのって、本人も周囲も本当に大変だと思うのだけど、同じくらいエキサイティングな作業だと思うのです。その作業を見られるってすごいよ…それだけで涙出てくるよ…。本来だったら世に出ることはない、「過程」の部分を、観ることができたのは、こんなことになってしまったからなのだけど。でも、マイケルが、とか、遺作とか、そういうのを抜きにしても、ひとつの作品を作り上げようと闘う過程を追ったドキュメントとして、完成された映画になっていると思います。…だから本番が見たかった…! いや本番になってたら見られなかったんだけど!!
 あとはネタバレっぽいのを。
 
 
順不同で印象的だった点を。

  • 映像撮影中、カメラを覗き込みながらチュッパチャプスを舐めるマイケル。可愛い。
  • プロ意識が普通じゃないというか。目指すところの高さが凄いのがわかる。完璧主義といわれている人だけど、ほんと凄いわ。
  • そのマイケルの意図を汲める、理解できる、すぐに反応できるスタッフもすごい。世界一流ってこういうことなんだなー。
  • スタッフにダメ出しするマイケルが、「怒ってるんじゃないよ、愛なんだ。L・O・V・E」って云ってるのが…うん。凄いわこの人。
  • 「L・O・V・E」って云いながら宙にスペルを描くマイケルも素敵です。名台詞だよ…。
  • 「Black or White」で珍しく! 本当に珍しく!! 曲の段取りを間違えるマイケルが、「今のは僕が悪かった…」てしょんぼりしてるのが何かもう…可愛い。
  • しかしBoWはもうイントロだけでふわああああ!!てなる。スラッシュ*2じゃないけど、金髪美人のお姉ちゃんギタリストがまたかっこよくてー! 彼女のギターソロ時にマイケルが、「ここはキミが主役だから」みたいなことを云うのもまた…くうぅぅぅ! 「一緒にいるからね」って云うの…がっごいいの…。
  • 「Thriller」のゾンビ映像撮影時、墓守り役の人に演技指導を出しながら、出来栄えに手をたたいて喜ぶ。無邪気なの…キュートなの…50歳だけど…。
  • クレーン出るは巨大クモ出るはショベルカー出るはとにかくすげぇ。
  • ジャクソン5メドレーで、ジャクソン5時代の映像も流れて、ぶるぶるした…とりあえずずっとだらだら泣いてたんだけど、いや泣けるったら。
  • 映像監督のオルテガさんに歌詞もじって冗談を云うマイケルがほんと可愛い。何だっけ、I just can't stop loving Ortegaだっけ? ぎゃー!(笑)
  • 本気出させないでよって云いながらついつい本気になってしまうマイケルさん。すごい。
  • ビリー・ジーンかな? ダンサーたちがみんな、ステージ正面に降りてて、すっごい楽しそうにマイケルのリハを見てるのが、こっちも嬉しくなってきちゃうのです。
  • もちろんマイケル本人もだけれど、オーディションで選ばれて泣いて喜んでたダンサーたちも…満員の観客の前でパフォーマンスしてほしかった…させて上げたかった…。
  • ジャクソン5メドレーの最中に、イヤーモニターを外してしまうマイケル。イヤモニで音を聴くのに慣れていないから、自分の耳で音を聞きたいけど、返しの音が大きすぎて自分の声が聞こえない、と苦言を呈す、んだけど…怒ってるというよりは悲しそうで、困惑してるみたいで…何なんだろう。かわいそうになってくるの。「耳に拳を突っ込まれてるみたいだ」なんて云うの…。
  • というか、あの人の周りにいるスタッフは、全力で彼の望みをかなえてあげよう、あげたい、って…思うよな。と思わせる何かが彼にはあるんだ。
  • 「どうしたらいい? ミキサーで調整できることはある?」て訊かれて「音をもう少し小さくしてくれたら…」て小さく応えるマイケルが、すごく心細そうで…何とかしてやらなくちゃ!ってなるよアレは。見てるだけできゅんとなったもの。
  • 何なんだ、不思議な人だ。50なのに。*3
  • マイケルが、「4年後の地球を見ててごらん」みたいなことを云っていて、コンサートは今回が最後のつもりのようだったけど、何らかの…環境保護的なアクションを、4年後を目指して起こすつもりだったのかな…と思った。勝手にだけど。
  • 最後の女の子が地球を抱いて「SAVE THE EARTH」になるのは…ちょっと笑っちゃったんだけど(笑)。でも、そこが一番彼の今伝えたいこと、なんだろうな。
  • エンドロール後の、ムーンウォーカーの足先映像で、一段落していた涙がどばぁっと。最後の最後で。エンドロールまで全部見たほうがいいですよ。
  • しかし本当に、完全形を見てみたかった…スワロフスキーとか、光る衣装とか…サングラスないと着せられない衣装とか! 見たかったよ〜!!
  • もっかい行きます。

*1:これはこれでめたくそカッコイイのでどこかで見かけたらぜひ見てみてください。マイケルが特殊メイクで中年おじさんになってるの

*2:Guns N' Rosesのギタリスト

*3:ってたまに云っておかないとまったく頭に上ってこないんだよ