「ネジと紙幣」泥水13ごおおお目(東京千秋楽)


毎日毎日揺られたモノレールの車窓から見える風景も、毎朝こっそり「おはよ」と心中で呟いていたネジ看板も、今日で見納めです。見事に休演日以外行ったなぁ…10日間か。ばかみたい(笑)。こんなに毎日モノレールに乗る生活も、もうないだろうな。また銀河劇場で何かあったらわからないけれど。
とりあえず、東京公演終了お疲れ様でした。本当に、毎日毎回、全身全霊、全力で、ぶつかって抗ってもがいてもつれて絡み合って、ずたずたになりながら、無様で無惨で、それでも美しい、「人間」というものの生を、眼前に叩きつけ投げ出すように見せてくれました。観終わってから、重いため息しか出ない、出口の見つからない迷路をぐるぐるぐるぐるしているみたいな日々だったので、ある種の開放感というか、も少しだけ感じています。ちょっとあまりにも間を詰めすぎた感があるので…その辺りも、やっと一息つける、かな。終わってしまった、という寂寥感もあまりわからないくらい、うん、今は…虚脱してる。テーブルに突っ伏す感じです。…終わった開放感はあっても、軽くはならないのね(笑)。
最後まで「今日もゆきちゃんはダメだったよ…」だけど、でも、何となく…ぼんやりとだけど、輪郭が見えたかな?というところもあったので、今は「自分を褒めてあげよう」にしておきます。
東京千秋楽、メモを。
- ニュープリンセスを「にゅ…何?」と聞き返す桃子に答えるゆきちゃん、「キャバクラだよおおお」とやたら語尾を伸ばしていた。面白かった。そんなの初めて聞いたわ(笑)。
- 桃子の木刀折り、いつもは剣先が折れてぷらーんとなるのに、千秋楽スペシャルか(笑)、今日は完全にぼきっと折れてしまいました。折れた剣先がぴょーんと飛んでいっちゃって、ゆきちゃんも「おおおお!?」ってびっくりしてた。慌てて拾いに走って、回収してから「折れちまったじゃねーか!」ってしてた。
- 小屋に隠れる3バカ*1、飛びだそうとする行人を無理矢理止める草太の手を、行人がぺちん!と叩いて、ちょっと本気で痛そうでした。草太はしょっちゅうゆきちゃんにはたかれたり膝げんこで殴られたりしてたなぁ(笑)。
- 赤地さんと行っちゃいそうになる久留美を見て、ゆきちゃんが小屋の中で「ほらみろ、さっきだったんだよ!」とか襲撃タイミングの文句をこしょこしょ云っていた。一応声を潜めて(笑)。
- ジャンピング撲殺未遂、着地が石段でよく滑ってて怖いんですが、今日もヒヤッとしました。ヒヤッとするのはこっちが勝手に、なんですが。ご本人平気なのかも知れませんが。
- 納品の証拠のメンチカツ。「メンツカトゥ」って何かおかしくなってた。
- マイナスイオンの麦茶吹き。何か、麦茶含むゆきちゃんが一回停止して、改めて麦茶含んだので、何だ?と思ったら…薬缶の口にラップがかかってたようで! 飲もうとしてラップに気づいて、ラップをはがして改めて含んで…でした。セッティングの外し忘れ?かな?
- 「お前は中も外も気持ち悪いな」いつもより低い声でした。低音でした。
- 兼坂家のビールはキリンのラガー。
- 「ありゃー変だ、変態だ」今日も平泉のような秀治のような、違うような。
- ぱんつはハートの方。
- 何となく、和佳ちゃんの「1日1発」の辺りで笑いが少ないと、ああ今日の客席は女性が多いのだな…と思います(笑)。あそこ、男性のお客さん必ず笑うもん(笑)。
- お母さんのピーナッツは失敗。床に落ちたのを和佳ちゃんが拾って、お母さんが「ありがと」っつって食べてた。
- お父さんの片手間激昂で、柿の種が床に飛び散る。
- それをゆきちゃんが3粒拾って食べる。
- 座布団引きずってテレビの前に陣取るゆきちゃん。襟元から中身がのぞけてしまった…すみませんすみません覗けるものは覗いておいた…。
- 輝紀が帰ってきて、つかの間の団欒が破綻していくのが、ボタンの掛け違いが表層化していく様に思えて…ああ、今日もダメか…と…ここからが正に行人の「転落人生」だからな…。もちろん、始まりはもっとずっと前から、たくさん、あるんだけれど。
- 殴った感触ゼロの話。昨日は、「桃子を殺した感触を消したくて行人は執拗に手を洗う?」と書いたんだけど、今日観ていたら、違うことを思いましたよ。木刀握れば手が痛い、バケツを蹴れば足が痛い、殴りかかれば拳が痛い、それが生きるということ、それがリアル。でも、ゆきちゃんは桃子を刺して、どこも何も痛くなかったんじゃないか、と…大事な幼なじみを殺したのに、感触ゼロだったんじゃないか、と…思いました。
- 久留美はあれだよね、お金ない行人より、お寿司おごってくれて「恥ずかしくない最低ラインのクルマ」がブガッティな赤地の方がイイに決まってるよね。
- 桃子の工場で、「あっちぃ…」と仰け反った行人の後頭部が、黄色いプラケースにごちん、と。後頭部から!
- ゆきちゃんの頭の血が…ものすごい勢いで高く吹き上がった(笑)。マンガみたいでしたよ、ぴゅーって噴水みたいに真上に吹き上がったの。びっくりしたよ!!
- 桃ちゃんの治療で、ゆきちゃんの髪がもっしゃもしゃになった。しばらく面白い頭になっておられた。
- 何となく、行人と和佳と永太郎は、この世界で「異物」な感じがする、と思いました。永太郎さんはもともと、この「世界」の人じゃないから当然だけど…行人と和佳はすごく似た者同士な感じがするし*2、何か…異質だな、と。町工場の空気に、匂いに、馴染めていない、と。何となく思いました。…そこも悲劇の発端だよな…。
- 脇が弱い輝ちゃんはやっぱり可愛い。毎回可愛い。
- 下手側の洗濯物、いつもびしょびしょのじょろじょろになっちゃう辺りの、が変わっていたような。ピンクの花柄タオルと青系チェックのタオル、昨日まで違うもの*3だったような!
- 桃子が投げつけた封筒が、行人の足下にぶつかって跳ね返り、ちょっと離れた手前に落ちた。ので、いつも封筒拾ってから云う「始まりはどこか」の話を、封筒拾わずに云う行人。
- 脱ぎっぱなしのサンダルに乗っかって*4、封筒を拾い上げて座り直し、あぐらはかかずにそのまま数えていました。
- 「つくづく嫌んなるよなぁ、貧乏ってのは」いつもがなるように云うけど、今日はわりと静かめに云っていました。何か…悲しくなる…。
- 靴が汚れた。「ひっでぇな…ドロドロじゃねぇか」えっドロドロ!?とやたらどっきりしてしまった(笑)。いつもは「べとべと」です。
- 乱闘シーン。下手の作業台に飛び乗る行人、いつも電気スタンドをぐいっと曲げて避けて飛び乗るけど、今日はぐいっと曲げた拍子に、スタンドの電球がぽーん、と飛んでいきました。ピンポン球みたいに見えた…。
- あと足がスタンドに引っかかったりして怖かった。
- 最近の桃子は明らかに、行人に刺されに行ってるよなぁ。
- ここを目指して来ているのだから、当たり前で仕方なく当然なんだけど、それでも、…ああ、今日もダメだったか…と、どこかで思ってしまうのでした…。出口のない無限ループを繰り返す「行人」という役がつらくてたまらない。…って、芝居というものをそもそも間違ったとらえ方していますが。明らかに。いや何度観ても変わらないからそれは。
- 悲劇観てもキッツいの観ても、そんな風に思ったことないんだけどなー。どういう心境なのか自分でもよくわかりません。
- 桃子を刺して金を奪い、何事もなかったように自分の家へ戻ってくる行人。「刺し殺した」という行為が、現実感を伴っていないんじゃないかと、思えた。
- それに行人自身が戸惑っているようにも。
- ロッカー前で着替えながら、鳴り響く赤地の携帯に「うるせぇなぁ」って云うところ、「めんどくせぇなぁうっせぇぞ」って…アレ?(笑)
- 桃子を殺して、殺したのに、兼坂部品ではいつもと同じように栗尾が座っていて、何も変わらない日常が続いていて、5時になれば時計が鳴り出して、だから自分は手を洗う。殴ったら拳が痛むし木刀握れば手が痛むしバケツ蹴れば足が痛むし、だったら幼なじみを殺したらどんな感触が返ってくるのか。…なのに、何一つ感じるものがなくて、どこも痛まなくて、どんな感触もなくて…リアルな実感がなにもなくて。いつもと同じように手を洗いながら、桃子を殺したのに何ともないことを、行人自身が不思議がって、わからなくて、戸惑っているように見えました。
- それがつまり、「タイミング」で、殴った感触ゼロの…殺し、ってことかなぁ。空振りで肩痛める代わりに、内側壊しちゃったんだろうなぁゆきちゃん。
最後までずっしりな重さで、千秋楽だから、という華やいだ気分にもならず、深く座席に沈み込むような気分で拍手をする、のはいつもと同じ劇終でした。スタオベとか出来ないです、重くてどこも持ち上がらない。がっくり肩が落ちる。
でも、そうは云っても千秋楽です。2回目のカテコで、いったん一列に並んだ中、ともさかさんが笑顔で未來さんに何やら話しかけました。そしたら未來さん、すたすたと下手袖に向かって歩いて行ってしまい、でもキャストの皆さんはみんな笑顔で、アレレ? 何か出てくるの?と思ったら…倉持さんが! センターの未來さんポジションに倉持さんが入り、未來さんは下手側の、高鹿さんと吉川くんの間にちゃっかりお邪魔してニコニコしていました。で、みんなでお辞儀…してたけど、いつも真ん中できっかけになってる未來さんが端っこにいて、タイミング合わなくて笑っちゃってたり。いつものように上下に別れてハケて、未來さんとともさかさんが上手袖でお辞儀するのと同じように倉持さんとともさかさんがお辞儀していました。未來さんはそのまま下手へ入った。
もう一度呼び出されて、今度はちゃんとセンターに入る未來さん。お辞儀して、ともさかさんの後ろから上手にハケて行きますが、袖に入る直前でともさかさんの肩を軽くつかんで、くるっとこちらを向かせて、ふたりで一緒にお辞儀。二人とも笑顔で…ほんと、ほっとするというか…可愛いんだ! お姉ちゃんといたずらっこ弟みたいなんだ!
重たい身体を引きずるようにしてロビーに出て、椅子に座ってぐったりしていたら、dさんがお隣に来てくれました。何か…ほっとして、「ゆきちゃん今日もダメだったよぅ」って、泣けてきちゃった(笑)。
とにかく、重くて、救われなくて、全然すっきりしない、でもこの重さこそが醍醐味な、何とも困った芝居でした…終わったけど、まだどっぷりぐるぐるできそうな(笑)。しばらく、迷路をふらふらしていそうです。
1日置いて仙台、富山・名古屋・大阪と、まだもうしばらく続いていく「ネジと紙幣」、どうかケガなく事故なく最後まで走り抜けられますように。それだけです。