ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「3人いる!」@リトルモア地下(昼)

 3人一組の演者が12日間、日替わりで36人が、ひとつの演目を演じる、という前代未聞な「毎日が初日そして千秋楽」状態の「3人いる!」、前楽*1を観てきました。8/2に続き2回目です。が初回です。不思議です。本日の出演者は小駒豪・ハリーナップ・堀川理緒の御三方でした。
 受付で予約しておいたチケットを受け取って、皆さん整理番号順に並んでいるのでどの辺か知らんときょろっとしておりましたら、「整理番号お伺いしますー」と可愛らしい女の子の声が。振り返るとそこにいたのは…くればやし! くればやしだ!! 白いモケモケのぬいぐるみみたいな帽子を被った、紅林大空嬢が客入れお手伝いをされていました(笑)。もう何かぎゃーってなってしまった。可愛かったです。ギャルギャルしかったです。でも彼女の凄いところは舞台に上がるとただのギャルギャルしいギャルではない存在感を放つところ…! 8/2ご出演の宮本さんブログ*2を拝読しまして、他の日のキャストさんが受付や客入れや荷物預かりのお手伝いをされているらしいというのを知ったのですが、まさかいきなりそんな(笑)。じゃあ他のスタッフさん…と思っていた方も、みんなどこかの1日のキャストさんだったのかな…なんて思いつつ並んでいたら、伊集院もと子嬢のお姿も見え、さらに宮本聡氏のお姿も…おおお。わたしが観た3人がいる! 開場前から勝手にひとり盛り上がっていました(笑)。
 そして本日の「3人いる!」、やっぱり全然違う、別物になっていて…面白かった! セリフやディテイル、出てくる3人の関係性などが微妙に、ものによってはガラリと変わっていて、筋や仕組みはわかっていても、また違った方向ですごくスリリングでした。セットも変わっていて、8/2は女の子のおもちゃ箱をひっくり返したような室内だったのが、今日はシンプルでスタイリッシュな、オシャレインテリアなお部屋になっていました。壁の落書きも消えていたし、飴屋さんが投げる演出もなかった。けど、8/2にはなかったモノローグというか、抽象的ではあるけれど、客席に問いかけるような台詞が最後にあってびっくりしました。
 8/2バージョンでは姉・妹・父だった3人の登場人物が、今日のバージョンでは大学生・サークルの顧問・同じサークルの女の子、の3人でした。最初のひとりが小駒豪くん、現れる二人目がハリーナップさん、という…二人目登場の時点ですごいインパクトですよハリーさん! ええっ外人さん!? どーなっちゃうの!?という…多分、初見の方とはまた違う意味でハラハラできたと思います(笑)。でも、結果的に云うと、誰がどこの国の人とか、何語の人とか、ほとんど意味をなさないんですよね。芝居が進んでいくにつれて、演者のそういうパーソナリティというか、属性というか、目に見える個性がどんどん剥離していく感覚がすごく面白い。ハリーさんがどこの人に見えようと、小駒豪が男に見えようと女に見えようと、関係ない、どうでもいい。そういう感覚で観ている自分が面白い、という…ちょっと不思議な体験でした。3人の登場人物を、3人の役者が、随時入れ替わりながら演じていくから、役者本人の外的特徴は意味を為さなくなるのね。8/2の「女子2名+男子」という座組より、「男子・外国人男性・女子」という3人の属性がよりバラバラな座組の所為で、その感覚がよりいっそう強かったように思います。8/2は男子含め違和感なく観られたけど、今日のはその違和感、ギャップこそを楽しむ、みたいな。
 あれだけ流動的に役柄が入れ替わっているのに、今どれが誰なのか、ほとんど混乱なく観られるのもすごいです。脳みそが残念なわたくしでも大丈夫だったので、脚本と演出、あと役者さんが素晴らしいんだろうなぁと。入れ替わる瞬間もさりげなく、でもちゃんとわかって、位置関係できちんと状況を見せてくれるのも親切。なので逆に、3人が上手・下手・センター奥、と三角形の各頂点に座って、そのままの位置で入れ替わっていくシーンで若干の混乱が生じました…すごい必死に、セリフひとつ毎に「今のは誰」って確認しながら観てたよ…追いすがったよ…。
 演者は3人しかいないけど、仕組み的には瞬間最大人数6名で、でも4人であり3人で、でもキャラクターは3人で…ほんと、良くできた芝居だなぁ。そしてラスト、前回見た時はあまりピンと来ていなかったことがわかってしまいました(笑)。ひとりしかいないけど4人いて、そして誰もいない舞台上、だけど「3人いる」…空っぽの部屋を観て、ぞくっとしました。そして萩原朔太郎の「死なない蛸」を思い出した…。
 客席に問いかけるように発された、「あなたは今日、何人の人に会いましたか」「あなたは今日、何人の人を見ましたか」「あなたは、何人の人を覚えていますか」に、一瞬、自分と他人、他者Aと他者B、そんな対人認識の境界線が、水彩絵の具で引いた線の上に水滴を落とされたような、おぼつかなく滲む感じがしました。真夏の昼間に、真っ暗な地下で、微かに外の蝉時雨が聞こえて…そんなロケーションも作用した、かな。面白い体験でした。
 で、やっぱり軽く脳みそマドラー攪拌状態で、軽くふらつきながらお外に出たら、預けた荷物を取って下さったのが宮本聡さんで、くればやし嬢に続きオォゥス!となってしまったのでした。
「3人いる!」特設サイト

 ああおもしろかった。12チーム観たかったなぁ(笑)。「12チーム見た!」方、いらっしゃるのかしら…うらやましいなぁ(笑)。

*1:にして初日初回

*2:はてなで書かれていて…コメント拝領してびっくりしました