ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

劇団M.O.P.「リボルバー」@紀伊國屋ホール(昼)

 来年の公演を最後に解散が決まっている劇団M.O.P.の、解散いっこ前公演「リボルバー」を観に行きましたよ。ゲストは有起哉さんと、キャラメルボックスの岡田達也さんです。岡田さんは演劇モバイルでの連載が好きだったのですが、実際拝見するのは初めてでした。声が爽やかで素敵ですねぇ!
 明治維新直後の横浜で、女主人マダム・お篠が営むホテルを舞台に、そこに集う人々が、一丁の回転式ピストル*1をめぐり繰り広げる人間模様…と云ってしまえば一言で終わってしまうけど、そこは時代が維新直後。江戸から明治へという、おそらく日本史上最大の転換期を迎え、市井の人でも否応なく呑み込まれた激動の波に、逆らおうとするもの、為すがままに流されるもの、その先を見ようとするもの、変わらないもの…この時代、ただ生きているだけで、それが激動であり歴史である、そんな頃だったんだなぁと、「歴史」の下にも生活は営まれていたんだなぁと、当たり前だけどなかなか見えてこないことを思いました…。何だかよくわからないんだけど、1幕途中から、常にじんわり涙腺が弛みっぱなしの状態で…だらだら泣くのではなく、ずっと目の縁がじわじわしてる感じで…何なんだろう(笑)。キムラ緑子さん演じるホテルの女主人・お篠が、強くてかっこよくて切なくて気丈で弱くて…とにかくイイ女で! お篠さんが本当に素敵で、お篠さん素敵だなぁイイ女だなぁと思うたびに、ちょっとだけ目が潤むという…お篠さんに限らず、この芝居に出てくる女はみんな、強くて気丈でかっこよく、か弱くて悲しい、のですが。その凛とした美しさと悲しさが露呈するたびに、じわん…となってしまうんだ…。
 そんな女たちに比べると、男共はみんな、ちょっとだけ情けなくて、でも「生活」や「生きる」ことに根付いている女たちよりも、自由で身軽で夢見てて…江戸からほんの少ししか時間が経っていないのだから、女性が自由に身動き取れないのは仕方がない時代なのだけど、だからこそ、男たちがみんな、子供みたいに愛しくなる。
 舞台がホテルというのも、象徴的というか効果的というか。人が集まり、集まった人が必ずいつか、旅立っていく場所。ほんの一時そこに留まり、ささやかな関係を築いてまた、別れる所。誰かの人生と、他の誰かの人生が、一瞬だけ交差して、また別の方向へ伸びていく、交点。そんな、ささやかな、でも愛しい出会いの連鎖が、セピア色の1枚のポートレートとなって、横浜のどこかの写真館に今も残っているんじゃないかと、そんな気がしてしまう。記念写真の撮影を上手く生かしたラストシーンも、すごく美しくて…それぞれに旅立った彼らがひとりずつ、加わるたびに、やっぱりじわじわしてしまって…流石に最後はじわじわの間隔が狭まってぽろりといきそうになりましたよ(笑)。
 カーテンコール?の生演奏はびっくりしました。え、皆さん楽器できるの!? M.O.P.初めてなのでただただ驚いたんですが、いつもあんななの? すごいなぁトランペット吹けるんだドリさん! かっこいい! 客演陣もがんばらなくちゃなんですね〜、有起哉さん楽しそうに太鼓叩いてたなぁ。
 有起哉さん演じる一馬は、どーしよーもないヤツだけど、どーしよーもないのにどーしても憎めない、根本にイイヒトが透け透けに見え見えで…愛すべきバカで、またその憎めないバカを演じる有起哉さんが、この上なく魅力的で可愛くて…こういうのやったら鉄板だわー。でもグレコとか、ピラティスじゃなくって何だっけオレステスの…とか、かっこいいのをやるとちゃんと大変格好良くなるのがすごいんだなぁ。相変わらずごろごろぐねぐねは健在でした。出てくると引っ掻き回して、場を持って行くよねー(笑)。
 対する岡田さんは、本当に「対する」な存在を、誠実に理知的に爽やかに演じられてました。佐伯くん素敵だった…*2
 新堀さんもサニーの旦那(笑)も政吉っつぁんもトンビの鉄五郎さんも、トイレ借りに来る巡査も、みんな愛しくて。ツルさんや新堀さんには、時代の波にハッと気づかされもして。キクさんの顛末には涙して、新堀さんとお篠さん、サニーサイドとお篠さん、どっちもイイ男とイイ女で、泣けてきて。マキノさんの作品は、「青猫物語」もだったけど、ほんと…みんなが隅々まで愛おしいんだ…。あ、ホテルの名前が「青猫亭」なのは、「青猫物語」がこの「リボルバー*3の派生というか、だからなのですね! いろいろ納得でした。もともとはホテルじゃなくてカフェーの話だった、とか。しかし有起哉さんは青猫づいてるんだな!(笑)
 で、このホテル青猫亭、またセットが素敵洋館セットで! 勝手に上手側の階段は旧岩崎邸のを思い浮かべておきました(笑)。回転ドアーに半円窓、ギリシャ風の柱に吹き抜けの廊下…この建物見に行きたい…。バスは猫足バスタブの筈だわ! 泊まりたい!
 フランス人旅行客と佐伯くんのフランス語会話が聞き取れて良かったです。発音はピエール氏もフランス語じゃなかったけど(笑)。あとユモレスクのヴァイオリン演奏、かっこよかった〜! なかなかああは弾けないもんです、流石です。

*1:リボルバー

*2:だからこそ葉書は、やめて聞きたくない!!と思った…

*3:の元になった作品