ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「ビロクシー・ブルース」@パルコ劇場

 4月末からお世話になる…けど残念ながら「通い詰める」と云える状況ではない、パルコ劇場さんに久しぶりに行ってきました。えーと、「SISTERS」ぶりかな。今日はB列下手端の方席だったのですが、やっぱりXはともかくYZはあんまり見やすくなさそうだなぁ。「最悪な〜」時はXでも見やすい気はしなかったしなぁ(笑)*1 *2。A列から段差がしっかりつくので、A以降の前の方がよさそうです。…いや、席のえり好みしてる場合でさえないんですけどね! 入れるかどうかの瀬戸際に常に立たされている状態ですからね!!
 そんな下見的なことも多少考えつつ。そういえば千秋楽だったような気もするけどどうなんだろう…あ、やっぱり千秋楽でした。でもこれから地方がずいぶんあるんだよねー。大したことは書けませんが一応畳んでおきます。
 
 
 とりあえず忍成修吾さん初舞台! しかも佐藤隆太主演!ということで、こりゃ何としても行かねばならんとチケットを取ったわけですが…忍成くん何の心配もなかった…。正直、話を聞いた時に、「ええっ忍成くん人前*3で芝居とか出来るの? 舞台で声とか張れるの?」と、勝手に心配などしていたわけですが…そりゃそうだプロだもんな。失礼致しました。まぁ堂々と格好良くかつ繊細に苦悩する青年でしたよ…違う意味で心配されるのも仕方ないくらいにな…。
 第二次世界大戦中、ミシシッピー州ビロクシーにある新兵訓練所へ入隊した6人の青年たちの群像劇、というストーリーで。軍隊群像モノはけっこう観たり読んだりしている方なので、ストーリーやそこで起きる事件や出来事、役のキャラクター的配分、そういうのは…大体わかるというか、ああ、うん、そうだよね、という感じで、特に新鮮な印象ではなかったけど、逆に云えば安心というか、揺るぎようのない布陣で…なじみやすかったです。入りやすかった。この上なく不条理で意味がわからなくてわけもわからなくて、まるで人間の扱いじゃない新兵扱いも、でも軍隊ってそういう所だよね、と私は思えた。正に、「一滴ずつ人間性を失」わせていく為だけの行為。上官の命令が不条理だろうと理に適ってなかろうと、命令に絶対服従する使い捨ての道具を作るための場所だからね。
 そんな中でも自分を見失わないようにもがく作家志望のユージン(佐藤隆太)、不条理には絶対に従わないと酷い罰則にも耐え自分を貫くアーノルド(忍成修吾)、気が小さくて歌が上手いカーニー(尾上寛之)、乱暴で単細胞なウィコウスキー(中村昌也)、お調子者のセルリッジ(瀬川亮)、冷静で公正な混血児ヘネシー(南周平)、6人の若者たちの訓練所生活を通して、人種差別やセクシャル・マイノリティ差別、淡い恋や将来の夢、戦闘への不安、仲間同士の確執や交流と裏切り、そんなものたちが描かれておりました。テーマとしては普遍的だと思うんだけど、似たような軍隊群像モノがたくさんあるってことは、そんな状況におかれていた若者の数がそれだけ多かったってことで。その時代の若者たちの多くが、ああいう経験をしてきた、という事実の方が何というか、重いです。…って、その時代の日本の若者たちはそれどころじゃないというか、そんなもんじゃないというか、だったんですけどね! ダンスパーティ!? 戦時中に!?みたいな*4
 主人公はユージンなんですが、彼はやっぱり傍観者ポジションというか、記録を残す方で…クリフとかマークみたいな、傍観者の苦悩をやっぱり背負うことになって…ああとっても知ってるその苦悩、と思いました(笑)。でもユージンは飛び込んだもんね! で、話のメインは…すいません欲目かもしれないけどやっぱりアーノルドに見えたわ…忍成美しかったし…。鬼軍曹の非人間的なやり方に反抗して、目ぇつけられて、仲間内からは連帯責任取らされる所為でつまはじきにされたりして、先輩兵からはリンチを受け、でも決して曲げず折れず、時に笑顔でトルストイドストエフスキー*5を語り、誰よりも繊細で誰よりも頭が良く、その所為で軍隊的には要領悪くて、…ああ美味しいキャラだ…! 最初、登場一発目はどこにいたのか見つけられなかった*6上にああいうこと*7になっていたので、そういうキャラなのかと思っていたのに…。でも、虚弱なくせに上官に楯突いて、ハラッハラでしたよ観てる方は。だって絶対大変な目に遭うのがわかってるのに…! でも曲げないから…気分は「あーあ…*8」でしたよ。
 あとカーニーが良かったです。地味だけど素敵だった、歌声もすごく良かった。特に1幕終わりの、歌声が暗転していく中に小さく響くのが…じんわりしました。彼が一番…可哀想かな…。ヘネシーの顛末はまさかの事態でびっくりしましたよ。アレは…あの事件のアレってことでいいんです…よね? わたし混血だってことがバレたのかなーとか思ってみたんですが…そうじゃないですよね? そっか…。ウィコウスキーはもうちょっと、こう…愛すべきところがちゃんと描かれてたらよかったのになぁと思いました。何か…ただの乱暴者みたいに見えちゃって、損だなぁと。セルリッジもなーところどころ可愛かったんだけど、そういう印象よりも何か腹黒い感じが勝っちゃって、なー。彼も損だなー。
 損と云えば、逆に大得だったのが羽場さんの演じるトゥーミー軍曹ですよ。鬼軍曹の鬼っぷりが、もう憎たらしくてたまらないんですが、たまらなかったからこそ、彼とアーノルドのエピソードが一番…すみませんもう少しで号泣でした…(笑)。がんばってこらえたけど! あんなに目ぇつけて、ことあるごとにいびり倒して*9たアーノルドを、あの夜呼びつけたこと、彼を相手に選んだこと…アーノルドのことを多分、本気で憎んでいたと同時に、どこかで買っていたんだろうなぁと、認めていたんだろうなぁと、でも認めるなんて思うのも腹立たしかったんだろうなぁと…。退役軍人になるくらいなら、軍法会議にかけられた方がましだと思ってしまうくらい、彼は軍人としてしか生きられない、それ以外の生き方を知らない、そういう人なんだよね。Cカンパニーの前でのまさかの腕立て伏せ、5ドル「貸しにしておいてやる」、何かもう…軍曹…!! 泣ける!! 好きだとは云えないけど泣ける…悲しい。すいません軍隊モノのこういうのに弱いんです(笑)。
 というわけで羽場さんの鬼軍曹に一番持って行かれたのでした。さすがだ…! 憎ったらしい分だけ後半のヤマ場でがつんとクるんだ…!
 悲惨で壮絶な軍隊生活だけど、笑えるところも多々ありまして、けっこう笑いましたよ。可笑しかったよ。鐘下演出でここまでストレートに笑えるとは思っていなかったかも知れない(笑)。青春群像劇って可笑しくて悲しいものですものね。
 演出の鐘下辰男はTHE・ガジラで毎回ガツンと頭を殴って下さる大好き演出家さんなのですが、さすがに若手人気俳優たくさんの青春群像劇では…いつものガジラのアレっぷりは控えめで。吐瀉も流血もなく(笑)。でも食事シーンのアレは…サトリュがんばったね…アレは演出なのかなぁサトリュのアイデアなのかなぁ(笑)。観てるこっちがオエエエェとなりましたよ! そうかそっちで吐瀉か! でも、場面転換時の格好良さはいつもながらやはり、という感じでした。セットも最小限*10で、大きなセットと云えば電車の窮屈な座席くらい、ベッドを動かしながらの行軍訓練シーンとかは面白かったです。
 が、やはり鐘下演出としては…物足りなくなってしまう(笑)。いや、求めるものが全然違うし、このキャストでこの話でガジラなアレだったらそりゃもうびっくりしてしまうのですが! なのでアレなのは次のガジラに期待しておきます☆ そりゃもう何か…すっごそうだから…無言で帰るっぽいから…わっくわく(笑)。

*1:近くはあったけど!

*2:セットのテーブルがかなりの視界を遮っていたからな…

*3:えーと、客の前で生でって意味です

*4:それは…云っても仕方ないよね…

*5:で忍成が噛んでた

*6:荷物だとしか思ってなかった…網棚で寝てるんだもん…

*7:…胃腸が虚弱だそうで…

*8:残念な方向に

*9:たんだろうなーと思います

*10:基本的にベッド6つと下手端にライティングデスクひとつ