ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

SISTERS@PARCO劇場

 絶賛五右衛門カルマ祭り実施中な上に中島ショックの痛手も醒めやらない感じですが、とみくろさんや高田聖子さんのブログなど眺めて、やっぱり見逃したら後悔しそうだなー…と、ちょっくら行ってきました。
 容赦ない。
 長塚圭史、留学前の置き土産に一切の容赦はない。ちょっくら、とか云ってる場合ではない。
 ストーリーにはほとんど触れてませんが、一応畳んでおきます。あと、帰りの電車で携帯から打ったまんまなので、かなりとっちらかってるというか散文化しているというか(笑)。
 あ、カメラが入っていたので、そのうちWOWOW辺りで放送しませんかね。何度も観たい!というタイプのものでは決してないけれど、…でもやってほしいな。


 凄かった、壮絶というか凄絶だった。上演時間2時間少しと、そう長いわけではないけれど、身動ぎはおろか瞬きも呼吸もさせてもらえない程の、ぎっちぎちの緊迫感には、これ以上耐えられない、そのギリギリのところまでは、あった。凄かった。
 先日ベニサン・ピットで、哀しくて優しくて美しく、そしてこの上なく愛おしい物語を紡いだ同じその手が、頭が、次に描いた情景の何と醜悪なことか。舞台美術の美しさには毎度のことながら息を呑むのだけど、その美しい舞台の上に描き出された絵の、何と残酷で醜怪なことか。
 古びたホテルの二つの部屋で描かれる、奇妙な絵画の数々。それらが重なり合う時、そこに浮かび上がる情景の醜悪さに、目を背けたくなりながら、視線を動かすことはできない。醜く恐ろしく、なのに絶対的な引力を放つその絵は、希望も救いも何もなくただ絶望的に悲しく、そして何故か美しい。
 凶器と血飛沫を封印した長塚圭史が、挟む笑いも最小限に抑え、その残酷さと凶暴性と狂気を全て言葉に託し、投げつけ突き刺し切り刻む。一切の容赦なく最深部まで抉り込み、切り開き、ぶちまける。さらけ出された内情は、血の色をした花になり、揺れる水面に広がり続ける。終わらない、止められない負の連鎖。どこまでも醜く、あくまでも美しい、悪夢のような光景。壁に走る大きな亀裂は、心と身体に刻まれた、決して癒えることのない傷痕のようで。ぬらぬらと、赤く、ぱっくりと口を開け、ふさがることなく、いつまでも血を流し続ける。自分が、自分である限り。どんなに閉じ込めて蓋をして厳重に鍵をかけても、それはいとも簡単に開けられる。誰かの手で。ちっぽけでちゃちな鍵ひとつで。まるで部屋のドアのように。
 女が観るには辛く、男が観るにはまた辛く、子が観るには辛くて、親が観るのもまた辛い。そんな物語。
 演じる俳優陣がまた、一切の妥協なしの布陣で。松たか子の達者ぶりは重々承知の上だけど、ランダムスター夫人のさらに上を行くギリギリな不安定さ、何度も向こう側へ行きそうになりながら何とか踏み留まろうともがく様、豹変っぷり、倒れっぷり、とにかく凄かった。前半、鈴木杏に食われ気味かと思わせておいて、そこからの反撃逆転そして完膚なきまでねじ伏せる*1、この人も容赦ない。対する鈴木杏は、コケティッシュな可愛らしさでは覆い隠すことのできない毒々しさを振りまいて、これも凄かった。個人的に、ドラマ「青い鳥」でランドセルしょってハモニカ吹いていた頃から見ているので、…微妙にショックも受けつつ(笑)。吉田鋼太郎さん*2も、理性とそれをかなぐり捨てた後、の劇的さに鳥肌が立った。
 とにかく、容赦ない脚本演出を、容赦なく演じられてしまう、その容赦のなさにひたすら打ちのめされる、そんな2時間少々でした。

*1:いやファイトじゃなくて芝居でね

*2:先日道元木場勝己さんと間違えましたスミマセン