ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

勝本みつる展「a field, a home[野と家]」@銀座ガレリア・グラフィカ bis

 ちょっと精神的に大ダメージ受けてお腹の調子が悪くなったりしましたが、ぐるぐるする内臓なだめつつ、仕事後に銀座まで行ってきました。
 もともと、箱モノと云いますか、ジョゼフ・コーネルWebMuseum: Cornell, Joseph)とか、鉱物標本とか*1、ガラス扉の小さい戸棚とか、チョコレートの空き箱とか、何かそういうものにトキメくようなのです。閉じこめられた小さい空間、の中は異世界、的なモノとか。あと、扉や窓の向こう的な絵や写真も好き。ドアで隔てられた向こうは異世界、的な(笑)。何だろう、向こう側にあるかもしれない異世界、が好きなんですかね。奥行きとかもポイントかもしれない。以前見たベジャールのバレエ「シェラザード」の冒頭、幕の降りている舞台の手前で踊っていたダンサーが、幕が上がると同時にステージ奥へ、まるで観客を千夜一夜物語の世界へ誘う様に、ふわりと駆け出していった、その幕の向こうに広がるサーカスのリングのような舞台、という一瞬に鳥肌ぶわーっとなったんですが、アレも…向こう側感、だったんだろうか。
 そんな箱庭系好きなわたくし個人的にたまらない、勝本みつるさんの個展を覗いてきました。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~calico/05-rocaniwa/rocaniwa01-top.htm

 銀座の画廊なんていかにも貧乏くさい童顔小娘*2にはさぞ入りにくかろうと恐れおののきつつでした。…正直、恐れていた通りな感もりもりでした(笑)。だってーいかにも買い付け!みたいなスーツのおじさんとかさー偉そうなセンセイみたいな作務衣のおじさんとかさーそんなのが名刺交換とかビジネストークとかしてるんですもの! 怖い! いてごめんなさい!!
 でも勝本さんの作品はどれもうっとりでした。ギャラリー自体もこぢんまりしていて、白い壁と白く塗られた木の床が心地よい、素敵な空間でした。…誰もいなければなぁ…。
 今回の個展には、額縁や箱に閉じこめられた写真や木片や布が織りなす、ノスタルジックでちょっと…何故かちょっとだけ凄惨というか、うっすら怖い雰囲気も併せ持つ、オブジェと、あとは木の隙間や木目の間、箱の蓋の裏、からもこもことわき出るように生えている緑色のモコモコオブジェ、の勝本作品2本柱が展示され*3ておりました。モコモコはねーユーモラスなんですけど、やっぱりちょっと怖いの。静物なんだけど生物的というか、あやしい生命力に溢れていて、ちょっと目を離した隙にモコモコの侵食は進んでいるんじゃないかと思える。可愛いんだけど、部屋にあったらいつの間にか成長してそうな感じがたまりません。古びた木製の、子供用椅子の板の隙間から、もぞもぞと外を覗いているモコモコたち。あれきっと個展終わる頃には伸びてるよ。
 額になっているものは、どれも…過ぎ去った過去を懐かしむような、古い端布やレース、赤ちゃんの靴*4や帽子、セピア色の写真、積み木みたいな木片、そんなものたちが閉じこめられて、それ以上風化しないように標本にされているような…何だろう。ノスタルジックで可愛らしいんだけど、温度はとても低いのです。暖かくはない。この低温度っぽさは一体何なんだろうか。誰か他人の思い出を、標本箱にしまって保存するような…? 何だかよくわからないのですが、勝本作品の「ノスタルジー」には、過度の思い入れがない、というか…どこか俯瞰で見るような、突き放した感覚があるというか…感傷的じゃない。そうだ。感傷的じゃないノスタルジーなんだ。で、その突き放した感が低温度っぽさを醸していて、冷たさが微かな陰惨さ・怖さに繋がっていて、それが心地よいのです。きっと。べたつかない感触が。
 数年前、銀座のペーパーハウス紙百科*5で開かれた個展「秘密の手帖」展で、初めて生で勝本作品を目にしたのですが、その時も…うん、ちょっと怖い感じがあった、気がする。メインが手帖だったので、陰惨な…とは思わなかったけど、何かこう、「可愛い!」だけじゃ終わらない、肌に引っかかる感が…。
 その時買った小さな手帖、全て一点物の手作りの手帖は、やっぱり使えなくてまっさらなままです。この手帖に見合った中身を記す自信がない! ていうかもうこれはひとつの作品だから!! でも使ってこその手帖、とも思う…けど使えない…。


使えない秘密の手帖


中を開くとやっぱり異世界が

 今回の個展では、月兎社さんから刊行された初期作品集が販売されておりました。普通版と特装版! うううう、ほしい。ほしかった。でもね…普通でよんせんさんびゃくえん…うううう。特別はいちまんごせんえん……ううううううう。指をくわえて眺めてきました。そしたらサラリーマン風のお兄ちゃんが特別版買っていったんだよ…いいなぁわたしもそのフォークとかスプーンとかの缶入りのやつがほしかったんだよ…うううううう。あと鳩山郁子センセイの豆本も欲しいんだよううううう。
 帰りに、松屋銀座の地下で、塩キャラメルワッフルを買おうかどうしようか悩んで、やめました。ひとりでどうにかできるサイズじゃなかった…。

*1:昆虫はダメです

*2:ぱっと見

*3:てついでに即売もされ

*4:が何故か全部靴裏を表に見せて置かれてる

*5:大好きです。素通りできない!