ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「血の婚礼」ストッキング1足目

 透かしが入ってて絹で出来てるんだって! バラの柄が入ってるんだって!
 初日でした。初回でした。ギリギリまで全然、まっったく、実感のカケラも緊張感もなく、開演を迎えてしまいました。休憩なしで2時間、時間にしては短く見えるけど、実感としては…重さと濃密さで、これ以上長いと無理、という気分でした。重い…重かった…。
 ネタバレるかも知れないのでフタしておきます。


 初日なのでさらっとした感想しか出てきませんが、とりあえず。個人的に、芝居の力と脚本の力、あと演出は素晴らしかったと思います。特に演出…舞台装置の極端に少ない、シンプルな構成の中で、幕や照明の美しさが際立っていました。幕綺麗、すんごい綺麗〜*1。舞台奥から上方に張られた長い幕の端が、最初は床の上に落ちているんだけど、場面が変わるところでその端が天井近くへ引き上げられて、舞台奥から客席近くの天井まで、天の川みたいに渡らせられるのです。でその幕がレースみたいな柄で*2、ライティングによって赤や白に色合いを変える…布一枚であんなにドラマティックな情景が作れるなんて! すごい素敵でした。
 俳優陣も、ベテランの安定感と若い未來さん・ソニンちゃんの魂ぶつけ合うような芝居で、緊迫した雰囲気を緩ませることなく最後まで走りきる、走り抜ける感じで。江波さんはさすがの存在感というか、ほぼ主演じゃない?(笑)と思いました…カッコイイ、けどキャラクターはスゴいな(笑)。個人的に目を奪われたのは、予想通り「黒い男」の新納さんと、あと少女/月役の尾上紫さん。新納さんの不思議な動きはめちゃくちゃかっこよく不気味で得体が知れなく、舞台後方の壁に大きく映し出される新納さんの影が、その先に待ち受ける悲劇、悲しみに支配される場、そんなものを予兆しているように見えました。黒い男と月のシーンは圧巻。セリフがあるけどコンテンポラリーダンスを見ているよう…エロティックなんだけど冷たくて、無機質。濃厚なのに熱のない感じが、尾上さんのポエティックなセリフと相まって、幻想的で尚かつ不吉な雰囲気を醸し出していて、それでいて大変、美しかったです。すごい好きなシーンだ。
 オープニングの現代舞踊みたいな演出と、一番最後の…血、もすっっごい好き、鳥肌立った。ついでにオープニングの未來さんの衣装がすごく好きです。ずるずるしてて重厚で長いの〜。
 レオナルドを演じる未來さんは、前半の抑えた低めの声がちょっと新鮮でした。あと、ぞんざいな態度と口調が…耳慣れない、見慣れない(笑)。どろどろした感情を抑え込んで、って云ってたけど、イメージとしてはかなり直情的だなぁ。正に体当たりの演技でした。迎え撃つ(?)ソニンちゃんは、そういえばお芝居でソニンちゃんを見るのは初めてですが、滑舌いいし声は良く通る可愛い声だし可憐で清楚だしでも情熱的だし、すごかったです。とにかくこの二人の、ぶつかりあう肉体と魂が、見てるとこっちの魂も吸い取られてしまうような、もの凄いエネルギーを発していて…とても大変なんです。見てるのが。未來さんはセリフというか言葉が流れてしまって、ちょっと聞き取りにくい部分がなきにしもあらず、なのが少し気になりました。感情と滑舌がうまくかみ合わないもどかしさ、みたいな。本番始まってからもガンガン変わっていくだろうし、本番始まってからの成長がいつも著しい(笑)未來さんなので、きっとこれからも…とそこは期待します。周りみんながかなり達者だったからねーどうしてもね。しかしレオナルド、思ってたより熱い男*3なのね〜。もっとドロドロでひねくれてクールな感じかと思ってた(笑)。浅見れいなちゃんは、役柄がとにかく気の毒で可哀想で、可愛いのに、何も悪くないのに、という感じ。最後の悲痛な叫びが耳に残ります。
 フラメンコは、本当に、未來さんの言葉通り、メインではなくあくまでも味付けのひとつ、という使われ方でした。かっこよかった…! サッシュベルトに白いシャツ、ブーツの格好も素敵。あの、会見で披露されたメンコでしたが、あれ…馬を駆るレオナルドのイメージだったんですね。…と勝手に思ってるんですが違いますかね。会見で見た時は、飛び立とうとする本能と戦い地に留まろうとする白い鳥、みたいなイメージだったんですが…今日見たものは、もっと地に根ざしたような、地を蹴ることによってより深く地に在ろうとするような…「土着的」って言葉は間違っているかも知れませんが、そんな印象を受けました。地を蹴るレオナルドの踵は、馬の蹄と同化する。そして疾走感。逃げ出すような、逃げ出したいけど捕まってしまうような、捕まることをわかっていながらのがむしゃらな疾走。そんなイメージでした。イメージですが。
 濃厚キッス(笑)は、さすが「好き勝手」なタイミングだけあって、丁々発止のぶつかり合いの中でとても自然発生的にありました。濃厚…なのかも知れないけど、濃厚であるべきシーンなので、特にこう…ひゃっ!とか、わぁ!とか、は全然感じませんでした。綺麗だった…でも二人ともアレじゃアザとか打ち身とか絶えないだろうな…ケガには気をつけて下さい、本当に。
 で、芝居としてはとても満足なのですが、正直なところ、わたくし個人的には、登場人物の誰にもあまり感情移入の糸口を見つけられず、レオナルドの焦燥感や苛立ちも、花嫁の選択も、花婿の母の言い分も、何かもう…理解は出来るけど共感はできないわ、と思ってしまったのでありました。ごめん、ラテンの感覚はちょっと遠いみたい(笑)。
 原作も読まずの初回印象なので、今日はこの位で。この「ラテンはよくわからんのぅ」な感覚が、この後もしかしたら大化けする可能性もないわけではないので、その辺の自分の気持ちの変化もちょっと楽しみにします。セリフがもっと入ったら、ひとつひとつの言葉の意味とか色合いも違って見えて(聞こえて?)くるだろうし。何か、今まで以上に「見込みたい*4」舞台です。
 カーテンコールで、みんなでフラメンコ!大会みたいになって、それはとっても楽しかったです! 拍手(パルマ? って云っていいくらい出来てたかなぁ/笑)しながら見られたのも、未來やソニンちゃん、岡田さん、江波さん他出演者の、かげりのない笑顔が弾けたのも、嬉しかった。弾けるような、解き放たれた後みたいな、メンコでした…劇中とは全然違うの!
 しかし、趣と余韻のあるエンディングの演出が個人的にかなり好きだったので、わーカテコでそんな楽しくなっちゃったら、余韻が楽しくなっちゃうよー!とも思ったのでした…重苦しいまま、どよーんと帰るのもいいかもしれない、とかね。思わなくもないというか嫌いじゃないので。でもカテコメンコは…あった方が嬉しいんだけど…両立できないなぁ困ったなぁ(笑)。

*1:っていうか好みです

*2:勝手にストッキングかと思ってた

*3:内面が、じゃなくて表面温度も

*4:「じっくり聞き込む」的な意味で