ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

くちびるの会「くちびるの展会」@新宿眼科画廊スペース地下(11/9夜)

 せんだい卸町アートマルシェ(通称おろシェ)で「猛獣のくちづけ」という作品を観たくちびるの会、東京で公演があるとおろシェのアフタートーク的な時間に聞いたので、調べて行ってみました。「猛獣のくちづけ」と、過去の短編作品2本をセットにした、3本立てのお得な感じの展会です。新宿眼科画廊、小劇場界隈では良く耳目に入るけどまだ行ったことがなかったので、行ってみたかったのもある(笑)。

www.kuchibirunokai.jp

 くちびるの展会では、未発表作品「ごうわん」と過去作品「ネクラホマ・ミキサー」におろシェ新作の「猛獣のくちづけ」がセットになった3本立て上演です。「猛獣のくちづけ」はおろシェで観てとても…胸が熱くなって、是非他も観てみたかったのでありがたい企画。しかも客演に柿喰う客の加藤ひろたかさん参戦でとてもわたしに優しかった(笑)。会場はL字形の客席配置で、四角いスペースがアクティングエリア、仕切りのカーテンには過去作品の紹介が照射されていました。あと客入れ時の音楽は過去に上演した作品に使われた曲だそうです。って代表の山本タカさんが仰っていた。

 「ごうわん」「ネクラホマ」を続けて上演、休憩をはさんで「猛獣のくちづけ」というお品書きでしたが、創作順の上演になっていて、それが何というか、テーマに対する進化の過程というか、だんだん踏み込んでいっているのがわかる感じで興味深い順番だった。3本とも、閉塞感とか先の見えない不安、モラトリアム、このままじゃいけないとわかってはいるけどどうにもできない焦燥、そんなものたちで進みづらくなっている人、を描いた作品で、ベースになっている状況としては近い設定でした。でも、作品ごとそれぞれに、「その先」の選択が違っていて、その中でも最新作の「猛獣のくちづけ」がああいう形を選択するのが、とてもわたしには胸熱に感じられた…。おろシェで単独で観てもとても胸が熱くなった(笑)けど、今回3本通して観るとより一層、熱さが高まるというか…「ごうわん」があって「ネクラホマ」を経ての「くちづけ」なのね…!!と、勝手にその踏み込み具合に感慨深くなるというか。あのラストの前に、こういうものたちがあったんだな、と思うと、よくぞここまで…!みたいな謎の…何だろう、感慨、かなぁ。ハグしたくなるような気分(誰を、かは謎)になれました。何だろうなこれ(笑)。

 「ごうわん」は閉店取り壊しが決まったショッピングモールのフードコートで、行き先を失った若者たちの会話と顛末が描かれる、ちょっと…ビターな会話劇でした。誰にも取られることなくケースの中で古びていくUFOキャッチャーの景品のぬいぐるみに自身を重ねるのが哀しい。彼があの、どうしようもない閉塞感から抜け出すには、あの選択しかなかったのか。ショッピングモールの閉店時間を知らせる音楽が、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」なのがまた。加藤ひろたかさんの若者感とても良かったです。

 「ネクラホマ・ミクサー」は高校の同級生3人の青春時代とその後、3人の道が別れていく様を3つの時代で描いた作品。教室の隅っこにいるタイプの3人が、体育祭で脚光を浴び損ねた後の後夜祭で、オクラホマ・ミクサーを踊るシーンのカタルシスが美しかった。女子が人差し指だけ差し出すの、しんどいですね…。同じ部活で青春を共有した3人が、時と共にその道が分かれ離れていくのが、当たり前なんだけど残酷で悲しい。でも、そこで手を離さない優しさが、とても染みました。でもなぁじゃあどうして、何をしてあげられるんだろうなぁ。

 「猛獣のくちづけ」はおろシェぶり2度目でしたが、客席配置やセッティングの違いで見え方が変わって、あとちょっとした演出変更もあって、やっぱり良かったです。うーんやっぱり一番好きだし面白かった最新作。おーちゃんの腰痛が、ちょうどわたしの腰もだいぶアレな感じなのでとても…ジャンプとか勘弁して下さい…って他人事じゃない感もりもりで観てしまった(笑)。ひとがひとであり続ける為に必要なもの、ひととしての在り方を保つ為に必要なもの、を考えるのに、「手をつなぐ」はとてもアリなんじゃないか、と実感する作品です。やっぱりペヤング食べたくなるよね~。そして加藤ひろたかくんの社員がまた良い風情であった。おーちゃんとこっすーがどうか幸せに、ひとであり続けられますようにペヤングに祈っておく…。それにしてもあの町もどうなるんだろう。

 アフタートークもありまして、俳優全員+作演出の山本タカさんという豪華メンバーでした。「猛獣のくちづけ」の話題になるとついおろシェの話になってしまって、おろシェ不参加*1の加藤ひろたかさんが静かになってしまうという(笑)。昔の山本さんはもっと厳しかったとか、喫煙所の灰皿にまつわる秘話(笑)とか、ワニが届いて喜ぶ山本さんとか、最初に台本読んでワニどうするんだって思ったとか、ワニを身体表現でチャレンジしてみるとか、いっぱい笑った! ワニと人とのシンクロ加減(?)もとても豊かな表現になっていたと思います(笑)。

 くちびるの会、次回公演も決まっているようなので、次も観に行きたいです。こうして観たい劇団や役者さんがどんどん増えていく…。

*1:おろシェでは山本さんが加藤さんの役を演じていました