ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「SONAR」@赤レンガ倉庫1号館3階ホール(9/29)

 あっという間に、ってばっかり云っていますが、でも本当にあっという間なんだもの仕方ない、5日目の千秋楽公演です。また雨になっちゃったねー横浜は今日も雨だった…。そんな中でもオクトーバーフェストはにぎやかに盛り上がっていました(笑)。終演後にちょこっと立ち寄って何だかんだで大盛り上がりに参加して楽しかった! 味見程度にしか飲めない*1けど!

 前楽公演は何となく、ちょっと人口密度的に薄めだったかな?という印象で、あんまりぎゅうぎゅうしないで観られた気がしたのですが、楽日はさすがに…あれっ昨日より混んでる…?って思ったけど気のせいかな。定員あって完売してるから気のせいかもしれないけど、何となくね。でも別に危険とかそういうのではなかったので。とても良い千秋楽だったので!!

 公演期間は短いし、再演もあんまり…そう気軽には出来なさそうだし、これで最後か、と思うとなかなか寂しさの募る開演前でしたが、始まってしまえばもう、そんな感傷が頭をよぎる隙などあるはずもなく。濃厚で濃密で重くてすこし息苦しい、至福の60分を体験、堪能するだけです。ああでも、あの深い深い水の底みたいな場所にもう一度行きたいなぁ。暗い深海の底を自在に泳ぐ美しい2頭のクジラに会いたいなぁ。

 千秋楽公演メモとか感想を。最後まで新しいSONARだった!

 

  • やっぱり開演前のゆっくりぐるぐるしているふたりを眺めている時間は、水族館っぽさを感じる…ヨンさんのジャージのシルバーが、ちょっと有機的というか、水中で鱗が銀色に輝くような光り方をしていて、どうしても…大きな魚とかサメがゆったり回遊しているように思えるんだ…。
  • いつも対角線上くらいの位置関係でぐるぐるしていたけど、今日は1mくらいを挟んだ前後になって歩いていたりして、あれっ近いの珍しい!っていうか初めてだ!ってなりました。
  • でも近くにいるからといってお互いの姿を気に留めるでも視界に捉えるでもなく、ただゆったりと歩いている。…のも、水族館の魚同士みたいなんだなー。
  • 最初のんーーーは、お互いの姿を目視できた時に発する? のかな? むこうとこっちでちゃんと見えているような。
  • 差音が聞こえる瞬間とそうでない時って何が違うんだろう。ふたつの音の波形が安定しないと出ない、のはあるだろうな。あっ今出始めた!って瞬間が訪れる。
  • それにしてもふたりともほんと…良い声で…鼻を通す音が良くて…好き…。
  • スピーカーから音が出始めて、ゆるり、と体重が中心から移動し始め、同時に身体の軸が変わり出す。ゆっくりと床に倒れて、でも低周波音がぶわあんと鳴り出すとそれと一緒に蠢き始め、音が治まるとまたふ、と力が抜けたように床に伏せる。音が鳴り出すとまた動き出す。音そのものが蠢いているみたい。
  • ゆったりとした音の波形を身体で形作るように、腕をくねらせ高く低く波を描き床をゆったりと這い回転しながら移動していく。
  • 走り出してジャンプ→空中で身体をぶつけたり、飛び込んでくる相手を受け止めて弾き飛ばしたり、飛び込んでくる相手の下を転がって通ったり、背中越しに反対側へ着地させたり、をしたり、せずにすれ違ったり。すれ違う時と何かやる時って回数とか順番とかちゃんと決まっていたのかな…。
  • 昨日は走ってる時に照明がぐるんぐるん動いてたけど、今日はそんなに派手じゃなかった。毎日違うよな…気のせいじゃないよな…?
  • ぶつかり組み手から、ふたりで両手を絡ませるようにしたまま引っ張り合うような、繋いだ両手を離さずにぐるんと引きずり回したり。いろいろ。やがて引っ張り合う手が外れてふたりとも倒れ込む。今日はヨンさんが観客側に突っ込みそうになって倒れ込まずにそのまま歩き出した。
  • 雑踏の中を彷徨い呼び合うふたり。昨日と同じ感じの、苛立ったような、焦燥感を滲ませた声を大きく張って、空気を震わせる未來さん。対するヨンさんは冷静に声を返す。
  • ふたりが対面するところを始めて近くで観られたのだけど、ヨンさんの目は未來さんを見ていなくて、未來さんの目もたぶん、ヨンさんを捉えていなかったと思う。真正面に対峙しているのに、見えない、探している相手。やがてまた雑踏の中に紛れて探す。
  • 高いモールス信号みたいな音と、無線のノイズみたいな音、ノイズ交じりの呼びかける声に、彷徨う未來さんがぴくっ、と反応する。ガビガビのノイズの向こうから聞こえる声。さっき生の声では反応しなかったのに、電波を伝って届く信号には反応するのかな…声はソナーじゃないのかな…。
  • でも声の音では重なれてたから、問題は声じゃなくて「ことば」「言語」なんだろうかやっぱり。
  • 水の底に沈みこむような。ぐるんとかき混ぜる手足、重い水を掻く指先。未來さんが回ると、周囲の水が渦を巻くような錯覚を覚える。
  • 水底を泳ぐように、床を滑っていく。位置が低くてすぐ見失うし、同じく床を這うヨンさんの姿も見えないから、突然脚の真横に現れたりしてなかなか…びっくりするよね(笑)。どっちに動くのかも予想できないしね!
  • 水を掻き分け水底を這い泳いで、出会えた場所で折り重なる。ふたりが床にゆっくりと倒れ込んだ時に、白いストロボがビカビカ光ったの初めてだった…びっくりした眩しかった。
  • 儀式に挑むようにシンメトリックに両手を掲げてから、鼻・口元を覆った手のひらをそっとくっつけて、静かに深く息をする。命の交換をしているような。
  • 水の底で酸素を共有するならそれはイコール命の共有だよね。
  • レクッカラ、これまで大体未來さんの背中側から観ることが多かったけど、初めてヨンさんの背中側から観られて、どの音がどっちから発されているのかが思っていたのと違っていたかもしれない…わからないけど…。
  • お顔が苦しそうなのと、際限なく汗が滴り落ちるのと、あと何の均衡なのか加減なのか、ヨンさんがぐぐっと未來さん側に体重を乗せたりそれを押し返したりするの、がとても記憶に残っている。
  • そして重なる、スチームパンクっぽさも感じる音がやっぱりめっちゃかっこよくて大好きです。器官にして機関。
  • 重なる声の音、が暗闇に消えて、ふたりのレクッカラだけが残るのもすごく良い…レクッカラの息遣いが闇の中で終わった時、思わず詰めていた息を吐き出してしまう…。
  • エコーロケーション、スピーカーから発されるカランコロンした可愛い音とか、ゴーン…と余韻を残す鐘みたいな音とか、あとクリック音とか、でふたりとも目を閉じていて暗闇でも、ある程度位置を把握できるんじゃないかしら。どうかしら。エコーロケーションはできているのかしら。人がいるかどうかくらいはわかるのかしら。人が動けばその衣擦れの音とか足音とか気配が動くのとか、はわかるよね。
  • あと音を発することによって相手に対して自分の位置を知らせることになるから、避けやすいとも思う。とりあえずわたしは近くでクリック音が鳴ったら避けてた(笑)。
  • ヨンさんのソロ、めちゃくちゃかっこよかった…身軽でアクロバティックで、あと手や足をぶん!と振ると風切り音みたいなブウウウン!って音が出て(笑)、スターウォーズビームサーベルみたいな勢いだった。四肢が空気を切り裂いていた…衝撃波出てた…ソニックブーム…絶対強い…。
  • ちょっとうらやましかった。わたしも出したい。
  • 雲を斜めに分断して、駆け抜けぶつかり合い弾き飛ばしすれ違う。ぶつかる時にあっ干渉した、とか思ってしまう何となく。
  • 未來さんのソロ、今日は解き放たれた感じだった! 自在だった…ここいつも、音との関わりを聞かなくちゃって思ってるんだけど実際に始まるとすっかり意識が目にしかいかなくて音が耳から入ってこないというか、耳から入ってくる音を脳が分析処理しないというか。わーんちゃんと聞きながら観たかった…!
  • クライマックスで高いクリック音が高速で鳴り響くような感じだったかな…カカカカカカカカって…あれ聴くとやたら高揚感というか焦燥感というか何かあわあわするんだ…。
  • この後毎回見失って、いつの間にか光の道が斜めに出来ているので、なにがどうなって未來さんとヨンさんが対角線上に立つのかわかりません(笑)。観られていない場面けっこうあるんだよな…撮影してる日もあったし映像公開されないかな…。
  • 対角線上で両手を絡めて引っ張り合い、ぐるんと回したり、同じ動きを重ねるように同時にしたり。やがて一度離れて立ち上がり、両側からあの声が重なって響く。
  • 綺麗にぴったり重なったり、絶妙にずらして新しい音が生まれたり。数ヘルツ分くらいの微かなずれだったり、四分音くらいのはっきりしたずれだったり。
  • 次第に近づき、そっと額を合わせて振動を伝えるように、相手の振動を感じ取るように。どんな振動を感じているんだろう。目を伏せる未來さんの顔がとても静かで美しい。
  • 暗転、してまた詰めていた息を吐く。こんなに呼吸を意識させられる作品もこれまでなかったような、でもダンス観てる時って大体、呼吸をコントロールされるような状態になっている気もする。
  • 及川さんも並んで3人でお辞儀、奥の扉の前でまたお辞儀。手を繋いで上げたり、オペレーションチームに拍手を送ったり。3人ともとても良いお顔をされていて、ヨンさんにっこにこしてたし、未來さんもとても充実した良い表情で…楽しかったですありがとうございました、の思いを込めて拍手してきました。大好きですもっと観たい、も込めて(笑)。

 うっかり5連勤してしまった横浜でしたが、一度として同じ回はなく、全く見飽きることもなくて、本当に濃厚で密度の詰まった、五感が幸せ*2な、最高の60分を過ごしました。終わって会場を出ると、あっ地上の空気だ、みたいな気になるのも楽しかった。あの中は海の底だったり水中だったり、やっぱり異空間だったんだな…。

 彼らのソナーに消化や神経を複雑化させられることがもうないのが、ちょっと…だいぶ、寂しい気持ちになります。本当に稀有な体験だった…楽しかった心地よかった苦しかった美しかった…。またどこかで、クリック音や重なる鼻音に会えますように! それまで、また遠くて広大な海をゆったり回遊していて下さい。地球のどこかでまた、あの振動を感じられる日が来るといいな。

*1:から酒呑みの友人が買い求めたのを横からひと口ふた口もらった

*2:あっ味覚はないけど