ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「半神」@銀河劇場(7/16昼)

 お久しぶりの銀河劇場、代アニ傘下(?)になってから初めて行ってきました。死刑執行中以来かな? 内装が特に変わった感じもなく、そのまんまで懐かしかったですが、フラッグがとっても代アニで…ああもう代アニなのだな…ってなった…。

 そんなお久しぶりの銀河劇場by代アニで、中屋敷版「半神」を観てきましたよ。半神と云えば夢の遊眠社とか野田地図とかですが、実はどっちも未見です。そして柿喰う客の劇団員さんと乃木坂の子?と日本舞踊の子が出るんだよねくらいのうすらぼんやりさで当日を迎えてしまった。

 醜いけれど高い知能を持つシュラと美しく天真爛漫だけど会話もできない知能のマリアは結合双生児。世間の目に触れぬよう、双子が世界を知らぬよう、両親は双子を岬の灯台へ閉じ込め、双子はふたりだけの世界で生きてきた。そこへ若い家庭教師がやってくる。彼は低血圧の数学者だった祖父が追い求めていた「1/2+1/2=2/4」という【らせん方程式】の謎を、シュラと共に解き始める。バスタブの栓を抜いた時、北半球では左回り、南半球では右回りになる、その渦にらせん方程式の謎の手掛かりを見つけるシュラ。しかし9歳を超えた双子の身体は限界を迎え、10歳までは生きられない、と双子を切り離すことを医者は勧める。双子は心臓を共有しており、シュラかマリア、どちらかひとりしか助けることはできない。「孤独」に憧れ、お荷物のマリアを切り離せるかも知れない可能性を喜ぶシュラと、そんなシュラを無邪気に抱きしめるマリア。「人間ではない」双子を神話の世界へ引きずり込もうとする化け物たち、お芝居を演じる学校の教室、4時限と5時限の間にある給食の次元、六角形のバスタブの栓を抜いてできるメエルシュトレエムの渦の底、その向こうの化け物たちの住むベンゼンの国、謎解きのハテ?は世界の果て、謎を孕んだ少女が産むもの、白いゴムまりの風、さまざまな次元がレイヤーのように重なり合って、言葉遊びの連想ゲームで連なっていく不思議なジェットコースター。双子のどちらが助かるのか、助かった方はどうなるのか、【らせん方程式】の謎とは、いろんなワンダーに溢れためくるめくノンストップ2時間でした。面白かった!

 正直、野田作品は観ればすごいおもしろい!ってなるんだけど、どうにも台詞量の膨大さとスピード感に途中で振り落されてしまうことが多くて、観ている最中は面白いんだけど後から何も思い出せない…すべて流れ去ってしまった…っていう感じになってしまってちょっと苦手意識があるのですが、今回はわりと…覚えてるほうじゃないかな…? 中屋敷演出がわたしにはちょうど良いフックになって引っかかったのかな。ストーリー的にはもちろん(?)置いていかれたというか、途中で筋道を立てて考えることを放棄したのだけど、何かわけわかんないけどとりあえずすっごいな…って感じの感動はすごくした。そしてラスト近くで涙が出た。ちゃんと理解なんて全然できてないのにね、それでも心がふるえる気がするのは、積み重ねられた、そして流れ去っていった膨大な台詞たちの、欠片や雫がそれでも美しいからなのかな。それがこの戯曲の力なのかな。なんてことをぼんやりと思いました。やっぱりぼんやりなんだけど。

 前半はシュラ役の桜井玲華さんの鬼気迫る演技、後半はマリア役の藤間爽子さんの伸び伸びはつらつとした美しさ、双子どちらも見事でした。桜井さん綺麗なのにその綺麗さをかなぐり捨てるような醜い役でかっこよかった。藤間さんは流石の動きの美しさで、天真爛漫な笑い声も可愛らしくてこれは天使…愛される…。後半の見せ場が本当に良かった! やわらかい声が耳の奥にずっと残ってるような。家庭教師役の太田基裕さんも素敵でした。柿メンバーは鉄壁の化け物たちで…風呂太郎ユニコーン永島敬三さんキレッキレだしマーメイド淺場万矢さんセクシィこの上ないしハーピー加藤ひろたかさんはもうずっと観ていたい可愛さだしガブリエルで右子さんな田中穂先さんはすごい色っぽかった。穂先くんは色っぽい。スフィンクス牧田哲也さんは登場シーンが流石の中屋敷演出って感じで…スフィンクスはかっこよかったです!! とっつぁん!! 七味まゆみママは何か途中すごいことになっていた…すごかった…。福田転球パパは転球さんだった。そして松村武さんの数学者と医者、は、激流の芝居の途中途中に楔のようにポイントを打ち込む感じ。トランプカードを使った演出とか、学校のお芝居が挟まるのとか、どの辺が今回オリジナルなのかわからないけど、どれもわたしにはとてもうまく効いたなぁ。DEDE MOUSEの音楽がまたすっごく素敵で、2/4はタンゴのリズム、双子の心臓が奏でるタンゴ、ってちゃんと四拍子-二拍子のタンゴが流れてくるのとか鳥肌立った。サンプリングボイスみたいなのが織り込まれた曲も可愛かったなぁ。

 双子の白いネグリジェ&ドロワーズという衣装がとてもとても可愛らしくてツボでした。何となく頭の片隅に、ビッグTシャツみたいな1枚のワンピースをふたりで着ているイメージがあるんだけど、あれは野田版のふたごだったのかな…高校の昼休みに誰かが部室でVHSを観ていたのを覚えている*1。今回の双子はくっついてないけど動きでくっついて見せていてそれも良かったです。家庭教師が袴に編み上げ靴でとても良い感じだったり、あと化け物たちの衣装もねーみんな可愛くて! 蝶ネクタイとかサスペンダーとか帽子とか、トラッドな雰囲気で素敵でした。真っ赤な手術着とか…だいたいひろたかくんを目で追ってしまっていた(笑)。舞台が八百屋から急斜面(なむはむみたいな)で急斜面にブロック状の足場が飛び出ている形状で、そこを駆け上ったり駆け下りたり飛び乗ったり渡り歩いたり、化け物さんたち凄かったなぁ。 

 意味とか、理論的な筋道とか、もう全然掴めないまま、ただただイメージの奔流にぐるぐると流されていただけなのだけど、それでもメエルシュトレエムの渦に飛び込もうとするマリアのシーンはめっちゃわくわくしたし、先生が1/2の遺伝子の螺旋階段を下りる途中ですれ違う、懐中電灯を持った男が未来の/かつての自分なところは、だよね!!!ってなりながらぞびぞびっとしたし、イメージの奔流にぐるっぐるに巻き込まれて北も南も右も左もわからなくなったけど、メエルシュトレエムの渦から最後は霧笛が岬の灯台へ導いてくれた気がして、何だか涙が出ました。霧笛がベンゼンの化け物たちの遠吠えみたいだったのも良かった…素敵だった…。結局どうなったのとか、あんまりちゃんと理解はできていないんだけど、それでも圧倒的フィクションの渦にもみくちゃにされまくった挙句にふ、とすくい上げてもらえる、そんな演劇的快楽のかたまりのような作品でした。わたしには。でも戯曲も読んでみたいな!

spice.eplus.jp

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*1:その時は演劇まっったく興味なかったんだよねー人生って不思議ねー