ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

柿喰う客 こどもと観る演劇プロジェクト2018「にんぎょひめ」@北とぴあペガサスホール(7/14昼)

 柿喰う客が、こどもとおとなが「劇場空間で観劇体験を共有し、互いの理解を深めることを目的」として上演を続けているプロジェクト、ちょっと行きづらい地方公演とかが多くて生で観る機会がこれまで持てなかったのですが、念願叶って(笑)やっと観られました。「ながぐつをはいたねこ」とか、「へんてこレストラン」とかも生で観たかったなぁ。

 今回は新作の「にんぎょひめ」、会場に入るとさっそく?メイド服姿の可愛らしい劇団員さんが迎えてくれました。出演は大村わたる、原田理央、今井由希、永田紗茅の4人。わたるさんはもうおなじみ、原田さん永田さんも柿フェスや本公演で拝見していて、今井さんだけ初めてだったかな? 開演前から会場内のアテンドをしたり、しりとりが始まったり、始まったしりとりが途中からポケモン縛りになったり(笑)、ずっと楽しかったです。会場内はこども2割おとな8割って感じだったかな…もうちょっとおとな多めかな…。自分が子供の頃に、演劇とほっとんど接点がなく、ごく少ない接点でも特にこう、心を奪われるようなことがなかったので、柿みたいなのを観ていたらどうなってたかなぁとか考えてしまいます。会場にいるこどもさんを羨ましく思う反面、演劇に心を奪われるわたし側のタイミングというか準備というか環境というか、もあるので、単純にあの頃観ていたらもっとこうなっていたのに、とも思えないところもあってむづかしいね…。まぁ少なくとも、生きているうちに出会えてるから良いことにしよう。現世は。来世に期待しよう。

 「こどもと観る」と銘打ってあるので、内容はとてもわかりやすく、でもテイストは中屋敷演出で、でもやっぱりドロドロとか毒っ気は抜いてあり、とても純粋に楽しめる作品になってしました。オリジナル要素も結構含まれていたような…でもそもそもアンデルセンの人魚姫をちゃんと読んだことがあるんだかないんだか、お話のディティールも良くは知らないんだな…童話あるある。人魚姫三姉妹がみんな可愛らしくて、お姉さんふたりが末っ子をとても大切に思っていて、それでも末っ子は人間になりたくて、王子様への想いを断ち切れなくて。人魚と云いながら3人ともメイド服で、このメイド服がまぁ可愛いわけで、正直ただ可愛いの為のメイド服なのかとずっと思っていたわけですが、このメイド服のにんぎょひめ、というものが物語の途中からぐいぐいと抉ってくるわけです…なるほどこのためのメイド服…。可愛らしい、いわゆる「萌え」の象徴みたいなメイド服が、本来の隷属し従属する役割を取り戻し、にんぎょひめを苛むような作りになっていて、中屋敷さん…!!!ってなりました。いやぁ可愛いのにしんどくなったわ…。

 王子様も決して悪人ではないし、自分の思いのままに自分の人生を生きられないことを悟って受け入れている哀しみが強く伝わってきました。わたるさんの笑顔だけど目が笑っていない感じとか、表情だけで心は動いていない笑顔とか、ほんと…胸の奥がシン…ってなる。コミカルな役どころが多いしオモシロいからこそ余計にね。魔女役とかお子さん喜びそうなキャラクターでした。

 確か元のお話では人魚姫は泡になって消えてしまうエンドだったと思うのだけど、そこはちょっとこう、こちら側に委ねてくれる作りになっていて。こどもがどう考えるか、どうしたいかの余地を残しておいてくれるのも、素敵だなと思います。どんな考えも思いつきも、全部正解にしてくれるのもね。

 とても暑い昼間に観たけれど、蒼い海の底でゆらゆら揺れる影越しに観たような、清涼感のある素敵な作品でした。せつないねぇ…永野さんの末っ子ツインテール姫がまぁ可愛らしくて、痛みを裏に隠した笑顔が胸に刺さるのでした。今井さんは声がやわらかくて耳に心地よかったなぁ。原田さんはもう、かっこいい。かっこいい。わたるさん八面六臂の大活躍で、魔女もやるけど王子様の時はちゃんとノーブルで素敵でした。こどもさんにもっといっぱい観てほしいしこれからもまた観たいシリーズです。ドロドロの柿も大好きだけどね!

natalie.mu