ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

映画「Vision」

 公開と談ス公演ががっつりかぶっていてしばらくおあずけしていた「Vision」、遅ればせながら観てきました。何となーくZIP!とかでうっすらネタバレされちゃって、どうやら未來さんは踊るらしいぞ??とか、でも予告見てもスチール写真でも同じような場面しか出てこないし、きっと出番ここくらいなんでしょ…?くらいの心構えで挑んできましたが、うん、出演時間は少ないけどなかなかこう…印象的な役どころでしたね…? 謎多きな雰囲気はむんむんしていたけど、観たところで謎は謎のままであったけど、でも…印象にはとても残る…。

 完成披露の時に永瀬正敏さんが「神話のよう」と云ってらしたのを思い出して、なるほど…となりました。奈良の森の奥深くでのお話だけど、何というか神話的な普遍性を感じるというか。世界各地に似ている神話やモチーフが同じ伝説が残っている、みたいな感覚があって面白かったなぁ。役者さんの演技はとてもリアルというかドキュメンタリー的に撮影するという話を聞いていた通り、セリフをしゃべっている感がすごく薄くて、フランス語と日本語を行き来する美波さんの言葉なんかとても、リアルタイムで今訳してる感じである意味生々しいんだけど、でも全体の空気感はとても…神話というか寓話というか伝説というか…不思議な空気だった…。

 奈良の森がまたね、色が深くて、季節によって顔が変わるんだけど、とにかく人の気配がない森で。緑の色が深くて青に近いのが印象的でした。わたしが知っている森とか山って関東のそれなので、やっぱり何か…違う気がする。樹木の種類なのか空気や気温や湿度なのか何なのかわからないけど、知らない森だった…綺麗だけどちょっと怖いというか、恐れ多い感じがする。うかつに足を踏み入れたら戻れない感。

 ジュリエット・ビノシュさん美しかったし夏木マリさん存在が凄かったし美波さんの自然な愛らしさはもっと見ていたかったなぁ。永瀬正敏さんの佇まいは「山で生きる人間」だったし岩田剛典さんの無色透明な感じはちょっと浮世離れしていて納得の展開でした。未來さんはね。未來さんはあれでしょ森の精霊役でしょ?とか勝手に云っていたけど、あながち間違いじゃなかったですね。精霊というか、追憶の…って感じか…とても素敵でした。声がまた良いから…台詞が日本語じゃないのもさらに良くて…耳目にとても滋味でした。あんなに森に溶け込んじゃうんだものそりゃあ田中泯さんも……するよ。ある意味仕方ない…きっと気配が動物だったんだよ…。

 劇中の「今」が「いつ」で「どこ」なのか、目眩がくらりとしてくるような感覚は、山の中で高い樹木を見上げた時に似て、足元がおぼつかなくなるようだけど、それが少し心地よい。目眩のような螺旋を辿り、また巡り合う、破壊と再生の輪廻の先を一瞬だけ垣間見せてもらえる、そんな感触の映画でした。

 あとコウが可愛い。とても可愛い。