ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

柿喰う客フェスティバル2017@赤坂RED/THEATER

 大盛り上がりのうちに終わってしまいました柿フェス、今年もちょろりと参加してきました。ちょっと時間が経ってしまったけど覚書程度でも。4作品中3作品しか観られなかったけどとても楽しかった…楽しい? でいいのか?(笑)いやめちゃくちゃ楽しかったんでいいんだな! 新メンバー大量加入で全然まだ把握できていないけど楽しかったからいい!!

「極楽地獄」(10/22)

 今回のフェスで唯一の新作でした。一足先に仙台で初演された作品で、仙台の友人が観に行ってとても、何というか悩ましげな感想を抱いたようだったのが気になっていたのですが、うん…これは…初演が仙台なのも計算の上だよな…。

 とある高級ホテルの新人研修、その最後に語られる奇妙な事件、それを新人ホテルマンたちと一緒に追体験していく60分。東北の山奥にひっそりと続くある「伝統」、そこにあの震災が重なり、密やかな「お得意様専用サービス」は白日の下に晒されていく。

 上演時間60分という相変わらずのコンパクトさに、3時間分くらいの台詞量を怒涛の勢いで流し込まれるのがむしろ快感になってくる柿らしさは全開。めちゃくちゃ面白かった、って云っていいのかどうかちょっと躊躇うのだけど、まぁぐいっぐい引き込まれるのは確か。若干、露悪趣味的というか*1、ひとによってはうっ、となる要素はあれど、わたしはとても好きだし全然大丈夫だった(笑)。柿の醍醐味がぎゅぎゅっと詰まった、正にメインディッシュにふさわしい作品でした。

 個人的に、ちょっとまだ…そこにフィクションで触れられるのは若干のしんどさがあるのだけど、これを敢えての(だった)仙台公演に持っていった中屋敷さんの心意気は伝わる…仙台での反応も様々だったそうで、こういうのを待ってた!ってとても面白がるひともいれば、二度と中屋敷の作品は観ないと激怒するひともいたそうな*2。それはそうだろう…それでいいんだろう…。逆に、そこじゃない部分の所謂ショッキングな部分、は、わたしは全くノーダメージというか、むしろありなんじゃないかと思う方なのでした。そしてわたしの周りで「極楽地獄」を観た友人ほとんど同じだった(笑)。自分だったら何がいいかなーとか考えてしまうなぁ、何はやだ、はすぐ出てくるんだけど。

 終演後はとてもお腹が空きました。肉屋の少年とても輝いていた。そして永島敬三、演劇化け物だなぁ最高。あのお辞儀のタイミングと角度とスピード、音楽と照明と完全に一体化したラストのお辞儀最高でした…好き…。あっあとおばあちゃん可愛かった。

「流血サーカス」(10/22)

 「極楽地獄」に続けて観てきました「流血サーカス」。こちらは2011年初演のリメイクとのことで、ベーシックな柿のエッセンスが凝縮されたような作品でした。

 食糧難でサーカスに売られた兄と、金持ちの家に引き取られた妹の、数奇な運命と再会の物語を、ビートの効いた音楽とノリノリダンスに乗せて60分で突っ走る、わたしが柿を見始めた頃はこういう感じだった!な雰囲気が懐かしくも心地よかった(笑)。

 おとぎ話が残酷劇へ色を変えていく恐ろしさと、そこからのひとひねりがじわじわと客席の首を絞めていくような、こちらとむこうの境界が徐々に浸食されていくような。舞台の上で飛び交っていたナイフは実はこちらの眉間にもひんやりと突き立てられていて、気づけばこちらの手の中にも小さなナイフが握らされているような。初演の時期*3を鑑みるに、その当時観たらまた、今とは違ったぞわりとする感覚が立ち昇ったのではないか。今は今で、当時とはまた少し変化した、怖さやヤバさや焦燥感、背徳感、後ろめたさ、そんなものが背筋を這い上がっていたのだと思います。

 加藤ひろたかさん演じる「ふしだらな女」がとてもツボでした。良すぎる。狂言回しのような、客席と舞台の境界線で文字通り綱渡りするようなたたずまいが絶妙でした。七味まゆみさんは流石の屋台骨って感じ。兄役の北村まりこさんも女体で拝見してたけど、もうすっかりしっくり柿の女優さんでした。

 あっ久々に、物語はクライマックス宣言を聞けたのも嬉しかった! 最近なくなっちゃっててちょっと寂しかったのでした…好きなんだクライマックスですよおおっていうの。

八百長デスマッチ」(10/31)

 ちょっと日を開けて「八百長デスマッチ」、これは文句なしに楽しかった!! いつ中屋敷展開に転落するのか若干ひやひやしながら観ていてたけど大丈夫だった(笑)。こんな爽やかなのもできるのね!!

 永島敬三と大村わたる、化け物vs怪物って感じの二人芝居、まさにデスマッチでした。30分という小品ながら、汗だく汗以外もだくだくで繰り広げられる死闘、クセのあるリズミカルなセリフを畳み掛けるように繰り出しながら、舞台狭しと躍動するピッカピカの小学1年生ふたりの、こぶしとこぶしで語り合う友情の物語の濃厚なことと云ったら(笑)。いろんな小ネタをこれでもかと挟み込んで、途中、えっこれどーするの…??ってなりながらも、せーの!できちんと戻すお二人、流石です。スペシャルゲスト?のマリオ&ルイージとわたる君のお姉様の登場もお得感増し増しでした(笑)。

 ストーリーは単純明快で、他愛もないのだけど、他愛もないことを化け物と怪物が全力でやりきる説得力というか、力技というか。ある意味、予想を裏切る結末で、柿の感想としては本当に珍しく、躊躇いも戸惑いも一切なく面白かった!!って云える清々しさです。楽しかった…。

 この日はちょうどハロウィンだったので、アフタートークもちょっとスペシャルバージョンだったり*4、永島・大村両氏によるお見送りがあったりしました。ハッピーハロウィンでお菓子頂いたよ! エリーゼ!!

*1:そこも柿の魅力のひとつだけど!

*2:アフタートークより

*3:東日本大震災

*4:無差別女優陣も参加したよ