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ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「Keiichiro Shibuya Playing Piano Plus」@寺田倉庫(12/4)

森山未來 音楽 舞台

 あらためまして。

 やっと風邪も治まってきたところで、行ってきました寺田倉庫。1日通し券を買ったので、マチネの菊地成孔さんとのセッションから拝聴してきましたよ。何て云うか…素晴らしく非日常的でスペシャルな1日だった…ずっと反芻しながら記憶の底に沈んでいたい…。

 寺田倉庫という場所が、もう既に非日常的なところで、コンテナもリフトごと運べるくらいの巨大な搬入用エレベーターで会場の5Fまで搬入されるところから始まるのがもう。暗い業務用エレベーターの扉が、ゆっくり上へゴゴゴゴゴ…と上がっていくと、向こうに広がるぼんやりと薄暗い、がらんと広い空間、そこが会場でした。ほんと、不思議なスタートだった…。

 会場は無機質なコンクリート打ちっぱなしの壁に囲まれた、床は薄いグリーンに塗られたこれもたぶんコンクリートで、縦長の空間に四角い柱が3本×2列並んでいて、高い天井はやっぱりむき出しの配管やエアコンが雑然と配置され、その3本×2列の柱に囲まれた内側の長方形のスペースが、所謂プレイングエリア? アクティングエリア?という感じ。そこを囲むように四方に椅子が並べられ、柱ごとに裸の蛍光灯が縦に1本ずつ、あと床にも直に置かれた蛍光灯が並べられて、照明になっていました。そしてプレイングエリアの真上には巨大なファンが2基。このファン何の為にあるのか(まぁ換気だろうけど)、よくわからなくて、わからなくてもめちゃくちゃときめいてしまった…。ちょっとヘリのローターに似てるよね…こんなにないけど。

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 プレイングエリアの奥側に、蓋を外したスタンウェイのグランドピアノとその他PCとかの機材がセッティングされていて、ピアノと向き合うように譜面台とスツール、ソプラノサックスとアルトサックスがスタンバイ。自由席で、比較的早めに入れたのだけど、どこが正面とかどこからが観やすいとかそもそも観やすいとは??とか、さっぱりわからないのでしばし途方に暮れ、見知ったお顔のお隣にするりと入れて頂きました*1。が結果的にソワレではとても良席だった…!

 ひとまず席を確保してから、奥のカーテンに仕切られたブースを覗いてみると、物販やケータリングのフードやドリンクのスペースになっていました。あとお手洗いの長蛇の列…。ドリンクはクラフトビールやノンアルコールのものも少し、フードは手作り感満載のおにぎり+粕汁のセットがワンコインで、美味しそうだったけどお腹空いてないタイミングだったので見送ってドリンクだけ。レモングラスティー美味しかったです*2

 10分押しくらいでマチネスタート。6本の柱に取り付けてある蛍光灯が消え、足元に置かれた蛍光灯が瞬きながら順に灯り、足元から白く照らし出された倉庫の空間の静寂に、最初に響いたのはソプラノサックスの微かな音色でした…。


 ふたつの楽器が生み出す音の作用・反作用が目に見えるような、濃密な「音」の立ち上がりでした。絡み合い、もつれ合い、反発し合い、煽り合い、押し合い、かと思うとすっと引いて、そこに乗っかってぐいっと出てくる瞬間も、呼応するように遠ざかる時もあり、丁丁発止なのだけど、ぶつかり合うのではなく。激しくなっても殴り合いの激しさではなくもっと濃密な方の。サックスの音ってセクシーと表されることが多いですが、もちろんせくしーというか官能的でしたが、ピアノもそうとう官能的ですよね。そして奏でられる音のほとんどが即興という…クラシックしか知らない身には即興ってほんと、何の手がかりもなくコンパスもなく大海原の真ん中に「泳げるでしょ」って放り出されるようなもので、いや泳ぎ方は知ってるけどだからって!的な、下手したら音すら出せずに立ちつくして終わりそうな恐怖しかない、ので、何と云うか、信じられない。菊地さんを後ろから眺める形になっていたので、あまり表情とか、お二人がアイコンタクトを取られてるのかどうかとか、見えなかったのですが、あんまり関係なさそうな、そんなレベルではない、もっと深いところでやりとりし合っているような、そんな印象を受けました。即興演奏って、どこで終わるかも演奏者次第だし、終息に向かっている…かと思うともうひと波大きいのが来たりして、本当にスリリングですね…慣れていないのでずっとドキドキしていた(笑)。

 サックスに関しては見たことあるよ触ったことあるよくらいのド素人なのですが*3、聞いたことのない音がたくさん聞こえたのも面白かった…これは楽器がっていうよりは演奏法というか、ジャンル的なことなのかもしれないけれど。フリージャズとか、ほとんど触れたことのない世界だし! 初体験が今回で本当に幸せというか贅沢なことだなぁ。あの、サックスのキーのパタパタ云う機構音がとても好きです。あと、時たま、サックスなのに和音が聞こえて、どういうことだろう…と思いました。倍音? いや和音だよなぁ。そういう技もあるんだろうなぁ。キーなのか、キー以外の場所なのか、を左手で叩くようなのも見えて、美しい音色を奏でる以外の奏法が楽しくて仕方なかった。楽しいなぁ自由だなぁ何でもありだなぁ、でもその「何でもあり」をアリたらしめているのは確かな技術の土台であって、ただの「何でもあり」とは違う、というのは、即興演奏自体にも云えることだなぁと。ただやみくもに音を出すだけでは「即興演奏」にはならない、その違いを納得させるに足りる「何か」が確かにある、そんなことを考えてしまうのでした。

 間に休憩を挟み*4後半も、荒々しくも繊細な、密な音の絡みに浸る贅沢を味わいました。倉庫という空間の音の響きがまた不思議で! 天井が高いので上から反響が降ってくるような、でも上方で一度集束して降ってくる教会みたいな響き方とはまた違う、もっと渾然一体となった渦が上から太く降りてくるような。天上の音楽ではない、正しく同じ地表で創られて滝のように流しこまれる音というか。とてもそこにある、実在するリアルな音だった。音なのに実体がある感じ、触れそうな感じがするの不思議だったなぁ。前情報で、ボウイのカヴァーをやると小耳に挟んでいたので、いつ来るのかと待ちかまえていましたが、最初のピアノの和音でわかったね! あっ来た!ってなったね! 「STARMAN」やって下さいました…嬉しかった…素晴らしかった…ボーカル曲の器楽アレンジって、歌詞が乗る分音符だけにしてしまうとわりと平坦だったりして、あまり面白くなかったりすることが多いのだけど、ボウイの楽曲が良いのかアレンジが素敵なのかどっちもか、そういう「あれっ?」が皆無だったのが流石。星になってしまった人にしばし想いを馳せる、せつないけれど素敵な時間でした。これで終わりの予定だったのだけど、と急遽アンコール演奏して下さったのですが、渋谷さんに菊地さんが「キーはどこ?」って(笑)。渋谷さんがコード鳴らして「これで」って(笑)。当たり前だけど、そういうレベルで即興なんだ!! すごい!! あと最後に1曲、渋谷さんのピアノと菊地さんのスキャットのセッションがあって、これがもうもうめちゃくちゃ格好良くて! 手が乙女握りになってしまううっとり感で! もちろんそれも即興で…すごいしか言葉が出てこない。すごい。そして素敵。ちょっとロマンチックな冬の1日になりました。あれもう1回聴きたいなぁ、ができないこのスペシャル感と少しのもどかしさよ……。

 譜面台に楽譜が乗っていて、あんな即興演奏は一体どんな譜面を見てするもんなのだろうかと、大体のメロディと即興何小節分的な指示?とか、譜面じゃなくて図形みたいな方かな?とか、いろいろ想像していたのですが、休憩中に覗きに行ってびっくり。まさかのカタカナ! これで演奏あーーできなくはない。ないけど!(笑) これはこれですごいなぁと思います。確かに、おおまかに頭に入ってれば充分なんだけど!

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 マチソワ間はお外に出て、素敵なベーカリーカフェでキッシュなど頂いて、ソワレに備え。街路樹が電飾ついてて綺麗だったなぁ12月だなぁ。再び搬入用エレベーターで搬入されて、おにぎりセットを味見させてもらったりしてから、ソワレの開演を待ちます。外に出ている間に、スツールやサックス用の譜面台は撤去され、ピアノの向かいは広い空間になり、空間の隅には白い椅子が1客、ボクシングのリングコーナーみたいに置かれていました。あと謎のスプレー缶が1本。

 そして渋谷さんと未來さんが登場。肩掛けカバンをぶら下げて、ふわふわのフレーダー*5パーマ頭にネイビーのパーカーとジョガーパンツ、靴下に紺色の紐じゃないスニーカーにミックスグレイのネックウォーマーなのかヘアバンドなのかを首元に垂らした出で立ちで、まずはまっすぐに白い椅子へと歩み寄ると、椅子の下にカバンを置いて、カバンから水のペットボトルを取り出して2口飲み、そしてそれを置くと、今度はスプレー缶に手を伸ばし、靴の裏にスプレーした! 滑り止めか! 靴裏の滑り加減を確かめるように何度か床を足で擦ると、そのまま…もう、始まってる。微細な体重移動だけで、そこにもう動きが生まれてる。ピアノの音が鳴る前から、その場の空気に身体を馴染ませるように、緩やかに小さく、でも確かにそれは所作ではないムーヴメントだった。その先はもう、断片でしか覚えていない…。重心を低くして、腰を落とし膝を曲げ、上体を捻るように肩を開く格好とか、手の先だけ後ろに置いていって前進するような動きとか、床の上を全身を撓らせて跳躍しながら移動したりとか、俯せから腕で立って揃えた爪先を引き寄せるように上半身を逆さに持ち上げ、爪先を上げて倒立…になる前に倒れる繰り返しとか、空中の何かを指先で摘むようなのとか、竜巻みたいなターンとか、跳躍から音もなく床に転がるのとか、仰向けに倒れ込んで開いた腕の先で微細な動きを始める指とか、横向きに胎児みたいに丸く転がって、床から浮かせた足指が蠢くのとか、顎の先と髪の先と鼻の先から丸い雫が滴り落ちる度に輝くのとか、こめかみから頬を伝って顎の下へ滑り落ちる汗の軌跡とか、仰向けに寝ころんだ顔に細く貼り付いた髪の一房とか、横臥した脇腹が激しく波打つのとか…ほんと、一瞬の欠片が残っているだけ。連続した動きとして覚えていられないのが流石というか残念というか。途中、わりと早めの段階で、スニーカーを脱いで脇にきちんと揃えて置いて、さらに靴下も脱いでスニーカーの中に入れて、裸足になっていました。靴下脱ぐときに正座になっていたの、ちょっと可愛かったな。

 正直、ピアノとの即興セッション、という意味では、たぶんサックスとの方が、音対音できちんと成立してはいたんだと思う。ダンスっていうか、身体表現という、音はないわけではないけどほとんど無音のもので、ピアノの奏でる音と、音対音のように向き合って絡み合うのは無理というか、音同士とはまた違う、別次元での向き合い方になるというか。わたしがそれを、対峙としてきちんと受け取れていなかったような気はします…どうしても、目の前の肉体の動きに脳のリソースのほとんどを持って行かれてしまって…ピアノまでたぶんちゃんと意識を傾けられていなかった…。未來さんの動き*6は、渋谷さんのピアノの音に合わせて踊るのでは全くなく、何だろう、音に反応するとか、音に対して動きで応える、もしくは反発する、音を引き出そうとする、そういう印象で、だからこそ、ピアノの音は全く、伴奏ではなかった。もっと、音に合わせて踊る感じになるのかな、とか想像していたところもあったのだけど、むしろ対立項としてあるように感じた。それでも、瞬間的にすごくぴったりはまる時があったり、美しい音に合わせて…はいないのかも知れないけど、美しい音と合って、両手をふわりと広げ、少しスタンダードな雰囲気のある綺麗な動きを見せてくれたりもして、最中に渋谷さんと未來さんが視線を交わす様子は見受けられなかったので、きっとそういうアイコンタクト的なものは皆無だったんだろうと思うのだけど、やっぱりそうういうレベルではないところで探り合ったり、読み合ったり、ぴたりと重なったり、するものなのだろうか。

 たぶん1曲終わったんだろうな、って曲間でも、未來さんの動きは止まらなくて、その静寂の間の微細な動きに息を詰めていると次のピアノの音が鳴り始めて、結局何曲あったのか、よくわからなかった。かと思うと、白い椅子に座って休憩…なの? かな??という時間もあったりして、でも1曲まるまる座っていたわけではなく、座ってパーカーを脱ぐと*7、首にぶら下げていたヘアバンドも外し、少しの間座っていてから、じきにじわりじわりと椅子から床へ、ゲル化したみたいに滑り落ちていったり。ある曲では、ふいに椅子の下のカバンに手を伸ばしたと思ったら中から五線紙の束を取り出して、それに目を落としながらゆっくりと、会場内を一周する間に、読み捨てるようにはらり、はらり、とその五線紙を落として行ったり。休憩時間に、足下に落ちたそれを拾い上げてみると、白紙かと思った五線紙には青い文字で、一言だったり少し長めだったりの、日記のような、もしくは誰かに宛てた短いメッセージのような文言と、古い日付がありました。2009年~2011年あたりの日付だった。それを撒いた時の曲が果たして何だったのか、きっと曲とそれは何らかの繋がりがあるというか、呼応しているはず…なのだけど、それを覚えていない・理解できない己の脳味噌の残念さをただ悔やむのみです…あの場であれらを処理できるほどまったく冷静でいられなかったしそんなことその時は考えつきもしなかったよ…何だったんだろう…。

 マチネは1曲ごとに拍手ができたのだけど、ソワレはそんな感じで曲間も途切れずに空気が連続して張りつめていて、ふ、と弛む瞬間が皆無で、わたしはずっと呼吸が苦しいままただただ堅く両手を握り続けていて、とにかく苦しかった…。休憩になってやっと息がつけた感じでした。休憩中は、ええと、紙片を写メる旅に出ていた…(笑)。

 後半も、出てきてそのまま動き始める感じで。あ、Tシャツお着替えしていました。前半はグレイでフロントに大きめのプリントがあるやつだったけど、お着替え後は薄い綺麗な水色に、赤い三角帽子をかぶったいろんなおじさんの顔が散らばっている可愛い…?のになった。足下は裸足のままでした。やっぱり、音楽に乗せて踊るのとは違う、音に弾かれて動くようなのとか、音の先を身体で示すみたいな印象だった。あ、1曲わりとビートがわかりやすい打ち込み系の曲があって、その時にちょっとロボットダンス的な、機械的な動きをしていたのを覚えている。そこはとてもイメージがわかりやすくてホッとした…(笑)。椅子に向かって、近づこうとする片足を浮かせたまま、進みそうで進まない、とかもあったなぁ。ほんの1センチくらいだけ、床から浮かせた右足が、自由に前後するのが不思議だった。後半も椅子に座っている時間もあったような気がする…気のせいかな…もう、記憶が飛んでしまってほんと覚えてないんだけれど。セコンド誰かタオル持ってきて!って思った…。そういえば、マチネからのセッティング変更があっても譜面台は脇に置かれたままで、撤去されていなくて、どうして残してるのかな、残してるってことは何かに使うのかな、とうっすら思っていたのですが、後半の最後近くで、未來さんがまたゆっくりと場内を一周して、拾われずに残っていた紙片を少し回収して、またそれらに目を落としながら歩いていたので、あっ使うものだったのかな?と一瞬少し焦ったのだけど、手に持っていたけど回収されなかった方もいたので、全部回収する前提ではなかったんだろうきっと、と。で、譜面台を真ん中へ持ってきて、回収した数枚の紙片をそこへ乗せました。これもきっと…きっと何か関連性があったんじゃないかな曲とか内容とかに…なかったのかなぁ。なくても別にかまわないのだけど、もしあってそれに気づけてなかったら残念です…。3枚の紙片を譜面台へ置いて、それを読むでもなくただ置いて、そして終わった…ような気がする…けど終わり方も覚えていない。終わりなのかどうかもわからない、空気が弛む瞬間が、渋谷さんが立ち上がって「ゲスト、森山未來」って云ったところで初めて、拍手が出来た感じ。未來さんはぐるりと一周お辞儀して、渋谷さんと握手して、退場していきました。最後に渋谷さんのソロでアンコールを2曲弾いて下さって、奇蹟の夜は終わりました。長かったような、一瞬で終わってしまったような、でもすごく消耗もしていて、時間の感覚があやふやな夜だった…。

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 終演後、残された譜面台の上の紙片。あと、記念に「セイジ」のサントラCDを買いました。渋谷さんにサイン頂いてしまった!

 未來さんが目の前で蠢くのを観ながら、もうずっと昔に、いつか誰かの振付じゃなく、彼自身の内から出る動きで踊るのを観たいと願ったことを思い出して、今、わたしはずっと観たかったものを観ているのだなぁという実感に、胸がいっぱいになって涙が出たのでした。わたしはずっと、これが観たかったんだ。その一片はこれまでも、垣間見る機会はあったのだけど、ここまでそのまま、むき出しの、一切の混じり物のない、エッセンシャルな森山未來の動きを観るのはたぶん、初めてのことだと思う。最初にそれを願ったのは、それこそミリィの公演をやっていた頃で、演出はするのに振付はしないのかなぁと思ったところからだったから、もう10年来の願望がこんな形で結実したわけですよ。そりゃあ涙も出るわ。またその、10年願って目の当たりにしたものが、とてもとても美しく、10年前にそれを最初に願った頃とは比べものにならない充実した心身を以てそこに存在していて、何かもう感慨なのか感動なのかよくわからないままにただただ、それを見つめるだけでした…。そして10年前、体重も重力もないもののように軽やかに舞っていた身体は今、確かな重みと引力を引き受け受け止めながら、それを跳ね返すだけの力強さを身につけてそこに在り、リアルな存在感を纏いながら確実にそこに存在する肉体として、床を蹴りのたうち跳ね転がり撓り蠢き走り回転し静止して、いたのでした。ひとりの人を見続けてきて得られる、最高の幸せを、味わっているのではないかと、そんな気さえする、本当に贅沢な時間でした。

 と同時に、即興というものによって表層化されるものも確かにあって。それは、ちょうど阿部海太郎さんとの対談を読んだから感じたものかも知れないのだけど、「即興は手癖」というのをとても、それはそれで感じるものがあったなぁと。未來さんの動きはどれも本当に美しくて、可能な限り息を止めて見入ってしまうのだけど、やはり「ああ、この動きよく見かけるよね」とか、「そのポーズあるある」みたいなものもないわけではなく、今回のセッションで未來さんの持つ引き出しのどのくらいを使ったのかはわからないけれど、けっこう…全開に近く開かないとこの時間を動き続けることって難しいのではないかと思うのでありました。もっと、もっといろいろ出来るよね!と思うところも正直、あった。その、「もっと」の部分を引き出し、広げてくれるのが、他人による振付というもののひとつの役割であり、そう考えると結局は、海太郎さんが云うように、即興で出てくるものは手癖で、その手癖は蓄積によって手数を増やしていけるもの、になるのかな、とか。蓄積は振付で積み重ねられて自分の物になっていくものなのかな…とか。まったくの素人考えだし、ただの「と思いましたまる」なんだけど、でもそう考えると、誰かの振付で踊るのじゃないのが観たい!って思っていたけれど、誰かの振付で踊ることが廻り回って本人の内から生まれる動きの幅を広げることに繋がってくいくのかも知れない、と、振付に対する感じ方がまた変わっていくように思えるのです。つまり無駄なことは何もないってことね。

 …と、ぐにゃぐにゃいろいろ感慨に浸ったり考えてみたりしましたが、とにかく寺田倉庫での数十分は本当に奇蹟を目の当たりにし続けるとんでもない時間だったのであります。帰宅してから気づいたけど、わたしがどれだけ力を込めて手を握りしめていたのかがわかる傷がこれです。右手の人差し指の付け根に、組んで握っていた左手の人差し指の爪が刺さっていたー。

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 この傷があるから、あの晩は夢じゃなかったと思えるのです。じゃなかったら本当に、何かとても素敵で苦しい夢を見ていたように思えてしまう。苦しいけど、この上なく幸せな時間でした。このひとを好きで本当に良かったし、このひとをまだまだ好きでいられるし、この先も絶対素敵なものが待っていると、改めて確信できる一夜になりました。だーいーすーきー!

*1:nさんaさんありがとうございました!

*2:でお手洗い列にぼんやり並んでいたら、衝立のような壁のような…壁の向こうから、ソワレのゲストさんがドリンク片手にふらりと姿を現して、ふーんと辺りを見渡してからすぐ戻った(笑) 

*3:ピアノにしたって何も知らないけど!

*4:休憩明けに再登場された時の菊地さんがひやっとしたけど何事もなくて本当に良かった…楽器近くにあると怖いよー

*5:巻きは無し

*6:あれを「ダンス」と呼ぶのに何だか違和感を覚えてしまうんだけど何なんだろう。ムーヴメント。

*7:つまり最初の方だな。パーカー脱いだら肘下にパーカーの裏地のもろもろがいっぱい汗でくっ付いていたよ