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ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「sutra」@オーチャードホール(10/1夜)

 観たいなーどうしよっかなーと保留しておいたら未來さんアフタートークが決まってよっしゃ!と背中押されたスートラ、観てきました。トレイラーなんかは観て、すごいなーとは思っていたけど、実際生で観ると迫力が! スピード感が!! すごい!! めちゃくちゃ面白かっこよかったです…終始圧倒された70分でした…。

 嵩山少林寺に暮らす実際の僧侶たちによる、少林拳*1が、シディ・ラルビ・シェルカウイの手によってコンテンポラリーな舞台作品に生まれ変わる、というか、舞台作品として再構築される、というか。武僧たちの技術は基本的にそのまま、所謂ダンスの要素はほとんどなくて(胡坐で手を動かすパートは振付なのかな? あれも太極拳なのかな??)、彼らの動きは武術そのままなんだけど、そこにラルビさんの演出…美術や舞台構成、作品の構成、音楽、あとラルビさん自身、が加わると、途端に「舞台作品」という芸術になる、その変容が面白い。これはダンスではない。ないけれど、武芸である少林拳法を、ダンスの文脈で読み込んでアウトプットしたもの、という感じ。僧侶たちの動きは少林拳そのままで、だけどそこにコンストラクティブな舞台や装置を配し、舞台上演というレイヤーを1枚乗せてみると、不思議な程に純度の高い芸術作品になる、そんなマジックが目の前*2で展開されている感覚が不思議でとても素敵でした。極めた技が演出によって芸術の域に引き上げられる様を目の当たりにした感…。

 ラルビさんの演出は、音楽もピアノ・ヴァイオリン・チェロといった西洋楽器がほとんどで(銅鑼や打楽器は鳴ったけど)、所謂「西洋から見る東洋」みたいな、偏ったオリエンタリズムや先入観は全然なくて、丸ごとそのままを新鮮な驚きと喜び、若干の戸惑いなんかも一緒に包み込んで、舞台上にそっと広げる、みたいな。敬意や憧憬をとても感じるけれど、だからといって変に持ち上げたり神秘化したりもしない、「そのまま」な感じがしました。少林拳の卓越した技術は舞台上に乗せればきっとそのまま見ごたえのあるひとつのものとして成立するだろうけど、そこにラルビさんの持つ、ある種のロマンチシズムやどことなく漂う寂寥感、好奇心とそっと寄り添う感じ*3、少しの物語性、が加わると、一気にひとつの世界観が出来上がる。「技術を見せる」ことと「舞台芸術」の差ってそういうところから生まれるのかもしれないな…。奏でられる音楽もどちらかというと西洋音楽寄りで、「いかにも」じゃないのがまた良かった。し、ヴァイオリンのもの悲しい旋律や、ピアノの美しいメロディをバックに観る少林拳法の、僧侶たちの身のこなしの、また美しいこと! 技の速さやキレやジャンプの高さや、そういうところに目を丸くする要素もたくさん、ものすごくたくさんあるけれど、技術的なところから離れても、舞台全体がとても美しい作品でした。

 舞台下手側に、舞台全体の縮図みたいな、ミニチュアの箱があって、ラルビさんと少年僧がふたりでその箱を動かし、その上で手指を動かすと、その動きに連動して実際の舞台の箱上で僧侶が同じように動き出す、という始まりから、その全体と縮図の対比も面白くて、どっちも同時に見たいけど目が追いつかない状態に。チェス盤の上で駒を動かしていたのがリアルになって、その中に迷い込む、みたいな…ちょっとアリスを思い出したり。やがて少年僧を案内役のようにして、僧侶たちの中にそっと踏み出していくラルビさん。拒絶されたり、追い返されたり、しながらも、一緒に混ざって少林拳の形をやったり。少年僧*4がとても可愛らしくて、可愛らしいけどもちろん動きはキレッキレだし演舞*5もばっちりだし、身体めちゃくちゃ柔らかいし、すごかった…ちっちゃくて凄いのって凄いし可愛いね…*6。そしてラルビさん! あまりご本人が踊ったり動いたりしているのを観たことがなかったのですが、いや流石ですね。めっちゃ柔らかいしこんなに動ける方だとは…もともとダンサーだから当然なんだけど知らなかったからびっくりです。少年僧とひとつの箱の中に入っていろいろ動く場面があって、一人用ロッカーくらいの狭い箱の中で、少年と同じ動きをしたり、アクロバティックに支えたり、何か…凄かった…あと終盤に、僧侶たちの中に混ざって一緒に演舞したり、僧侶のひとりと一対一で対照的に動いたり、するシーンもあったんだけど、完全に全部の手をやっているわけではないけれど、ほぼ全部動いてたし、スピードにもついていってるし…すごい…。また面白いのが、動きというか振りというかはほぼ同じなのに、やっぱり僧侶たちが「武術」なのに対しラルビさんのは「ダンス」なんだよね。ちゃんと違って見える。空気を切り裂くのと空気を孕む、みたいな…何だろう、上手く云えないのだけど全然印象が違うし、混ざっていてもひとり浮き上がって見える。面白い。

 幅60センチくらい、高さ180センチくらいの細長い木箱を僧侶の人数分使って、そのパフォーマンスも圧巻の迫力でした。クライマックスのドミノとか! 下手で少年僧がミニチュアの箱で形作るフォーメーションが、僧侶たちの手で実際の舞台上に出来上がるのを見ているだけでもわくわくするし、倒した時の音や、棚になったり寺になったり床になったり中に人が隠れたり、ギミックにもなって面白い。ひとつ30kgあるから動かすだけでも大変、と聞いてびっくりするくらい、流れるように移動させて組み上がっていくの…あの上から飛び降りるのもちょっと怖いと思っちゃうのにまぁ飛び降りるよね6歳もね…(笑)。

 少林拳法の荒々しさ、力強さを損なうことなく、それでも受ける印象は繊細で優美で、ひとつの舞台上にプリミティブさと洗練がこんなに溶け合って並存できるのか、という驚きも新鮮でした。カテコでばんばん宙返りを決める僧侶たちに、あれでもセーブしてるのか!とまた口ぽかんになったり(笑)。本当に、観て良かったです!

 パンフは1000円、未來さんのインタビューも掲載されていました。ラルビさんの印象とか、クリエーションの方法とか、未來さんから観たスートラの印象とか。あとEXILEのNAOTOさんのインタビューというか対談も。そうか、何かいつものコンテンポラリーダンス系と客層の雰囲気が違うと思ったらそういうことなの…か?(笑)

 アフタートークは別エントリにします。

*1:所謂「少林寺拳法」とは別ものです

*2:いや席は遠かったけどさ

*3:ラルビさんの作品の、異文化や未知に触れるスタンスって、寄り添う、って気がするんだ…取り込むとか、取り入れるとかじゃなくて。何となくの印象だけど

*4:今回の座組み最年少の6歳だそうで!

*5:っていうの?

*6:語彙力