ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

観劇感想まとめて

 また溜めた!! すぐやらないからこうなる!! わかってたごめん!! ツイッターで観た後すぐにとりあえず吐き出したいことを呟けてしまうので、それで気分が足りてしまうところはあるんですよね…そうしないようにって気をつけてるんだけど。なのでツイッターと重複していたりむしろコピペ再構成だったりするんだけど残しておくのが重要なの…。
 あと「レディエント・バーミン」もあるんだけど、あれはちょっと長くなりそうなので別エントリにしますね。

柿喰う客「フランダースの負け犬」(6/23夜)@花まる学習会王子小劇場

 ちょっともう時間経ち過ぎて…すみません…柿フェスの最後の方で観に行ったんです…とても良かったのは覚えているのだけど…玉置玲央くん演じるクルックが美し過ぎたのは鮮明よ…。第一次大戦時のドイツによる西部戦線、フランス侵攻作戦である「シュリーフェン・プラン」という実際の作戦計画とその失敗・敗走を、ご存じ「フランダースの犬」と絡めて見せるある種のミリタリー群像劇です。男性キャストのみで上演される濃密な人間ドラマなんだけど、あんまり柿っぽくないなぁと思っていたら、中屋敷さんが19歳の時に書かれた脚本とのことで…びっくりした。謀略と裏切り、人を信じること、裏切ること、そんなものが渦を巻いて昇華していくラストが壮絶でした。冒頭におふざけのように繰り返された「フランダースの犬」の例の場面が、終盤でほぼ同じように再現されるのだけどそれが与える印象や意味の違い、あと天使たちだったものの動きの違い、がすごく印象的でした。テンポ良く進むコンパクトな作品だけど、重厚感はさすが。散りばめられる笑いがだんだん不穏な空気に塗り込められていくのも中屋敷作品でした。裏切りを聞いている時の玲央くんの美しさったら彫像のようでしたよまったく…。
 アフタートークで、後ろの席に並んでいた学生さんたちが、高校演劇コンクールか何かでこの作品を演じた演劇部の部員たちで、質問者の女の子がマイクを渡しに行った玲央くんの役を演じていたとのことで、ハイタッチしていたのがとても可愛らしかった。女子高生がこれを演じるとまた違う雰囲気になるんだろうなぁ。

「BENT」(7/13夜、7/23昼)@世田谷パブリックシアター

 発表時は佐々木蔵之介さんと北村有起哉さんでベント!?とはわわっとなりましたが、うん、はわわっと観られるような芝居ではないことは重々承知の上、でしたが、承知の上でもなお、それ以上に、つらい。これはつらい。2回観るのもつらかったけど、途中休憩でロビーに一旦出てから、また座席に戻るのがつらかった…1幕で充分につらいことになっているのに、この先つらい展開ばかりなのわかりきっているのに、あの席に戻らなくてはならないのがまぁつらい。芝居観て老けたのは「万獣こわい」以来ですよ…あれもキツかったけどこれはまた違う重さだわね…。
 ナチスドイツ台頭下のドイツで、ユダヤ人と共に捕えられ収容所へ送られた同性愛者たちの、過酷な運命と愛の物語です。リアルに写真や映像で目にしたことがある光景を思い出してしまうと、本当にきつくて無理になってしまうので、敢えて舞台上に現わされていない事象は思い起こさないようにして観ていましたが、それでも…充分だよ…つらい…つらいしか出てこない…。絶望的どころじゃない、絶望しかない状況で、それでも軽口に聞こえる会話を交わせるマックスとホルストの精神的な強さが逆に際立って見えてくるのでした。視線を交わすことさえできず、ただ石を運びながら会話を重ねていくだけの交流が何と情感豊かなことか。そして演劇史に残るラブシーンは何でかよくわからないけど涙が出て仕方なかった…濡れ場で泣くのなんて初めてだよ…。終着点はわかっているし救われる術も絶望的なのだけど、だからもうただただ哀しみに満ちているのだけど、それでもその…息詰まるラストへの流れが凄い。伏線を回収してこれでもかと畳みかける、静寂な終盤が凄い…つらい。凄い。本当に観るのつらかったけど、でも観られて良かった作品でした。観るべき作品。
 それにしてもあんなシーンで笑いが起きるとは。何が可笑しかったんだろう。ゲイのセックスは笑いの対象なんですかね。ちょっと理解できなかった。

「キンキー・ブーツ」(7/30昼)@新国立劇場

 当初は三浦春馬くんのドラァグ姿をニュースで見かけて「ごついな…」と思ったくらいだったんだけど、何となくやっぱり観に行こうかな~と追加席が出た時にうっかり取ってしまいました。が、うっかり取って正解だった! つらかったりキツかったり重いため息つくような観劇が続いていたので(笑)、ああー観劇って楽しかったんだね! エンターテインメントって素晴らしい!!という気持ちになれましたよ…ほんと救われたわ…。小池徹平くんもすっかりミュージカルが板について、相変わらず小柄で可愛らしくて声も高くて、春馬くんの迫力ドラァグと良い対比でした。徹平くんの方がきっと可愛らしい女装になるんだろうけど、そうじゃないんだよねードラァグの魅力は。春馬くんはわざわざ身体作って来たのかな?ってくらいの筋肉量で…そこが良いんだよね…女性らしさとは別ベクトルの魅力なんだよね…歌声も迫力あってとても良いドラァグでした。
 ヒロインになるのかな? ソニンちゃんも可愛かった! ガチで歌えばガチウマなのにコミカル側に振り切っていて…それでも上手いっていうか上手いからこそコミカルができるんだよね。すごく良かった。とにかく派手でノリノリで楽しかったです…両隣がリピーターさんっぽくてラストめっちゃ振付け踊っててアウェイ感すごかったけどでも楽しかった…(笑)。
 そんなとても満足度高いエンターテインメントを楽しめるキンキーブーツでしたが、観てからちょっと経って、何となーく残った違和感とまでもいかないくらいの引っかかりなのだけど。主人公はあくまでヘテロセクシャルで婚約者やら彼女やらがいて、そういう意味でのヒロインはローラではなく、彼女はあくまでビジネスパートナーであり友人であり、なのが…あーそうなんだー、と。いや、ラブに発展するべきと云うわけでは全然ないのだけど。っていうか、そもそもローラはゲイなのかどうかが観ていてわたしにはあんまり、曖昧にしか感じ取れない印象だったのが何だか不思議でした。むしろ女性と踊っている時の方が格好良かったし堂々としてたし男と踊るシーンは少なかったし、ローラは異性装だけどゲイじゃないのかなーと思うくらいで…ストーリーの中でセクシャリティに関してはほとんど触れられないし、ラブストーリー要素は主人公周りにしかないから、よけいにわかりづらくて。台詞の中に一応ゲイって単語は出てきたけど、出てきて初めて「あっそうなの?」って思ったけど、あっそうなの?程度にしか…何というかその、恋愛対象が男性っぽさがなかったというか描かれなかったというか。ストーリー上そこは特に必要でもない要素と云えばそうなんだけど…ビジネスの話だし。敢えて出さなかったのか、云わずともわかるでしょってことなのか、描かないことによる効果とか、描かない信念があるのか…逆に、敢えてそこにスポットライトを当てないことで、別に特別なことでもないしふつうのことだからスルーだよ、なのかなぁ。でもドラァグに対する田舎の風当たりの強さとか古い保守的な考え方に正面から対峙して理解へ変えていく、のがテーマの根幹だと思うのだけど…ドラァグとゲイはとても近しいものだけどイコールではないんじゃないかな…というか別々に見えてしまったのでした。その、別に見える感じが、作品そのものに由来するのか、日本版演出や台詞の訳に由来するのか、それとも役者さんに由来するのか、も気になるところで。BW版を観るとどういう印象を受けるのかもちょっと気になります。下ネタほとんどなかったからなのかなぁ…下ネタないとそういうの感じ取れないとしたらわたしがやばいんじゃないかなこれ…。
 でもまぁそういうのも置いといて、素直に楽しかったのは本当なので! もう少し…チケ代がお手頃だったら、凱旋公演にも行きたかったなぁ。