ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「死刑執行中脱獄進行中」11/27夜

 水曜ソワレ、木曜マチソワと欠席(?)して、丸一日半ぶりの死刑でした。すごい、すごい変わってる! 水曜マチネまでとは全然違ってる!! その変化がいつからなのかわからないのがもどかしいけど、とにかく今日観たら全体的な印象がずいぶんと変わっていて、コンテンポラリーダンス色の強い作品という印象が、だいぶ演劇寄りになったというか、芝居的な色が重ねられてきたというか。セリフが追加されたシーンもあったり、身体表現の上にさらに演劇的な、芝居の表現が肉付けされた感じがしました。知ってるはずの作品なのにエッヂが立ってるというか、すごい鮮烈だった! びっくりした!! 2日目ソワレからほぼ安定して毎回、すっげー面白い!と観ていますが、中でも今日はめちゃくちゃ面白かったです。初めてじゃないのにすっごいドキドキした!
 東京公演残り3回で*1こんなに変えてくるなんて、ほんと芝居は生き物なのだなぁ。日々変化進化成長してる、息づいてる。昨日のマチソワでカメラが入ったそうですが、収録の時はどうだったんだろう…キニナル。
 変更点とかここがこんなだった!をさくっと。

  • 開演前のパタパタはあんまり聞こえなかった。1回くらい?
  • やっぱり幕が上がってからドラム入るのね。その方がバンドに注目できるし見せ場になっていいな!
  • もう、冒頭のお部屋シーンから、何か違う感が漂ってた…ソファに座って背もたれに両腕伸ばして「…あー…」って息吐いたり。
  • コップ出現シーン、出てきてすぐにコップが倒れた?のかな? ちょっと良く見えなかった。
  • お風呂の水漏れをキュッキュッと止めて舌打ちしたり。お水のボトルを倒して舌打ちしたり。何か、そういう細かいお芝居が増えてる。
  • ソファの背に置いたコップは動いた。で、コップを取ろうとして置いた位置にコップがないのに気づいて、すごくびっくりしてた。そういうリアクションがいちいち、わかりやすく見てとれて、その辺がすごくお芝居っぽさを感じた。
  • とにかく水ぽたぽたやらテレビやらにめっちゃイライラしてらっしゃるのが伝わってきました…ソファの肘掛部分にコップ置いてまた「あ゛あっ!」ってイラついた声出したり。
  • で、イライラしながらバスタブ、ボトル、リモコン、を確かめるように睨み付けて、何も起きてなくてため息ついて、コップを取ろうとしたら動かない。
  • コップ吹っ飛ばした後も一瞬、…どういうことだ?って感じに固まってて、何か変だぞ?感がすごく増してる。
  • ボトルが落ちるとビクッ!として、テーブル動くとビクビクッ!てして、リモコン落ちてテレビ点くのにビクビクビクッ!!てして、観てるこっちもその度に何だか、いつもよりびくついてしまうのね。面白い。知ってるのにめっちゃドキドキしちゃった(笑)。
  • あれですね、ホラー映画とかで、怖がる人の顔をアップで映したり、すごくキャーキャー怖がらせたりするのは、観てる方にそのドキドキ感を伝播させる効果があるんですね。
  • おかしなことが次々に起こって、すごく不安で怖くて、追い詰められてる感がすごかった。前回の数倍怖かった(笑)。
  • でもビックビクに怯えてる男すっごい面白い。楽しい。怪異が始まるのがすっごい楽しい。
  • 煙草吸いながらの貧乏ゆすりがとても激しい(笑)。
  • 看守を呼ぶ声も、いつもは憤りとか怒りがメインだったのが、恐怖というか狼狽えてる感じが強くて、切実に訴えてるように聞こえました。それまで全然思ったことなかったのに、看守ちょっと見てあげてよ…って思った…。
  • そして家具に襲われる。いちいち、表情が大きくて、驚愕とか恐怖とかリアクションも大きくて…すごい新鮮に見えた…。
  • 海。キャッキャウフフは相変わらず楽しそうで可愛い。本を取り合うふたり、女が「ちょっともー!(笑)」「やめて!(笑)」って云ってて可愛かった。
  • 丸めた紙で何かささやかれて「ごめん(笑)」って云ってたよ。
  • でも帆の上で捕まえられそうになる女は本気で怯えてる顔してるんだよなー。
  • 帆のてっぺんでどーん!ってなるの、嵐だとばかり思ってたけど、あれ座礁ですかね。もしかして。今更だけど。
  • 漂着した先があの…本当に…目の前で…何かすみません…でも目をそらしたら負けな気がしたからがんばった。
  • 枠を押すダズルの影が幕に大きく写って、それがだんだん小さくなって、現実に現れるのがすごく不思議で好きです。枠に押し込められてそのまま部屋に戻される男も好き…あのシーン静かで綺麗で音楽も美しくて大好きだなぁ。
  • バスタブの中のダズルが顔を出すの、異様な感じがすごいよね。顔がある、ということのなんというか、強さというか、顔を晒すことによって存在感の大きさというか、生き物がそこにいる感の強烈さって凄いんだなと思う。
  • それが無機物であるはずのところに生じる違和感とか。
  • 顔が出る=「気配」が生じるってことなのかな、と思ってる。異様な気配に満ちた部屋だよね…可哀想。めっちゃ怖がってた(笑)。
  • ソファの底が抜けるのとか、影と入れ替わるのとか、表情豊かに驚いて怖がってて…前がそんなに無表情だったわけでは全くないんだけど、何だろうこの表情の豊かさ。それですごく演劇っぽさが上がった気がするんだ。
  • 猫がボトルをすごく見せびらかしてから部屋を出て、それを凝視して喉元押さえて追いかけ始めたので、ああこれはボトルを奪いに行ったんだな、ということがわかりました。脱出じゃなくて水よこせなんですね。
  • で、ボトルを追いかけていった先がボトルの水の中、という。
  • ボトルに閉じ込められてる映像がすっごい綺麗で大好き。あの浮遊感たまらない。
  • ヨット2度目、映莉子ちゃん猫に向かって男がしゃべった!!「なぁ、水どこにやった? ふたりで乾杯しようぜ、仲直りの乾杯だ。なぁ、いつまでもこんなところにいるわけにもいかないだろ? ほら、こっち来いよ、ほら」みたいなことを…原作の後半冒頭って感じですね。猫のご機嫌とるみたいな感じで、そろりそろりと追いかけながら云ってたよ!
  • で、捕まえ損ねたら白い猫が出てきてそっちを追いかける、のは今までどおり。
  • ボトル争奪戦、目で追ってるとほんとに見失うから面白い。さすがにもう慣れたけど。あと途中で一瞬ボトルを宙に浮かすトリックはどうなってるんですか(笑)。
  • 喉の渇きに倒れる男、上手で小さく丸くなって「俺は悪くない、俺のせいじゃない」って云った後もずっと、目を開けたままだった。いつも目閉じてたのに。そして相変わらず視線は動かないしまばたきはしないし…どうなってるのその目…。
  • 目を開けたまま倒れる男、の背後でダズルたちの合間を女が歩き回り、お部屋でくつろぎ、階段を登りする。目を閉じてたから、海のシーンは男の夢なのかな、なんて前回思ったけど、これはやっぱりそういうんじゃないですね。怪異なのね。起きてるけど巻き込まれる摩訶不思議なのねわかった!
  • ジョジョ立ちの壁の下から男に向かって這い出てくる女が笑ってるの、すごく気持ち悪くて素敵でした。
  • 抱き起こされて「わたしを招待して…」って云われる男の表情は目を開けてぼんやりしたまま。そのまま食われる。
  • 女の腰の辺りからダズルが繋がって伸びてて、その先端に男が食われてるの最高ですね!! キモい!! 大好き!!
  • この辺からあの、わっしょいわっしょいまで、ニヤニヤが止まらないですわたし。たぶん満面の笑みで観てる。好きすぎて。
  • ダズル布に包まれる映莉子ちゃん、顔面だけ出てるのが気持ち悪くて最高なんですが、今日は顔面じゃなくて頭が出ててちょっと惜しかった…あの妙な物体に顔が付いてる感がたまらなく気持ち悪くて良いのだ…。
  • ふと気づくと鉄枠の中、って感じの切り替えだった。鉄枠にふと気づく、というか。
  • 「いつか脱獄してやる」と云う男、それを許さないと示すように鉄枠を引き止める女。
  • 女に怯えているように見えるんだけど、鉄枠に座らせた女を移動させるところはほんと、良い雰囲気なんだよなー。いつもより頬を寄せるように、寄り添うようにしてて、とても良かった…。
  • 鉄枠の中に寝そべる女に手を出そうとするところも、左手が女の腿の辺りを撫でてとてもエロチックでした。すごく良い。
  • でも手には入らない。し、女は枠の内も外も自在に行き来できる。何となく、女の自在感も上がった気がする…表情かなやっぱり。出られない男をからかうように笑いながら鉄枠の上を歩くのとか素晴らしいです。
  • ダズルにエスコートされてひらりひらりと舞う女、それを凝視しながら何とか枠から出ようとする男。スタイリッシュジャングルジム最高です。ここのベースラインめっちゃ気持ちいいし。
  • 出るも入るも自由な彼女。どうにもままならぬ男。
  • 鉄枠の中=牢獄・部屋の中。たとえ一時的に出られたとしても、それすらも女の思惑でしかない。
  • 二人で鉄枠の中で見つめ合って顔に触れ合うところ、今日はもうすぐキスしそうな感じですっごい良かった! すっごい良かった!! しないで離れるけど!! 大好き!!
  • そういうのもきっと、女の思う壺というか、意のままなんだろうな。手玉に取られるばかりなんだろうな。
  • たとえ女を沈めても、自分も沈められることになる。勝ち目ないなぁ。
  • 抵抗を止める=死刑執行完了、ってことか。だから女は転がった男から鉄枠を外すのか。
  • 抵抗をやめたら執行完了すなわち死、だから男はダズルに手を伸ばすのか。まだ死んでない、まだ抵抗する意志。
  • 今日は、枠を外されて起き上がった男が、すごく戸惑ったように周囲のダズルの顔を見上げて、すがるように手をかけていた。生にしがみついているように見えた。
  • 怪異の牢獄に連れ戻される男、椅子とテーブルに戻されて、テーブルに手を伸ばすまでの男の表情がすごく虚ろで、感情が剥離したような顔で、すごく印象的だった。あとめちゃくちゃ美人だった。
  • で、怪異と闘い始めると表情豊かに戻る。
  • 怪異に晒されてそれと闘い続ける限りは生きていられる、けどそれに抗うのを止めた瞬間、男の死刑は執行完了する、それが女が男に科した罰なのかな、なんて思いました。
  • 女が消え、波の音が消えると共に、バンドの音も止まる。
  • がらんどうになった舞台上で、照明が客席に向かって当たっているから、もしかしたら彼から観たら、客席からの視線が無数の怪異みたいに見えてるのかも、なんてちょっと思ったり。
  • ひとりで闘い始めるのも、息遣いとか声とかがすごく出てた。暗転後もその、かすかに漏れる声とか、呼気とかが暗闇の向こうから聞こえて、その気配がすごく強烈で、部屋の深呼吸とか、ダズルの気配とか、そういうのに近い強さを感じた。
  • 強いのか弱いのかよくわからないな彼。存在感は強烈なんだけど、存在としてはすごく弱い、儚い、もしくは脆い気もする。
  • カテコは3回。最初と2回目どっちも、センターで映莉子ちゃんと顔を見合わせてにっこり。
  • 2回目はにっこり、お辞儀の後に自分で軽く拍手してた。
  • 3回目はわりと早く出てきて、笑顔でお辞儀、軽く両手を合わせてうなずいて、軽やかにハケていきました。満足そうなお顔してらした!

 何となくな個人的な感想ですが*2、完成形が見えた手応えを感じられた回、のような気がしました。掴んだ、っていう満足感を得ていそうな気がした。それくらい、前回観たものよりぐぐっと力を増してるし、動きの圧倒的さにさらに人間的、感情的な厚みが出て、血肉と心が通った動きになってる、ような。コンテンポラリーダンスから、一歩ぐいっと芝居の方へ重心が移動したような、でも動きは変わっていないから、コンテンポラリー的満足度はまったく下がってはおらず、芝居的満足度が上がったというか。何かとにかくすっげー面白かったんだよこんだけ回数見てるのにさらにもっと!! 一段と!! という回でした。すごく満足した…大好きな人が作ってる大好きな作品がすっごく面白く進化してるなんて、わたし何て幸せなんだろう…という気持ちでモノレールにゆられて帰りましたよ…。
 東京は残すところあと3回、悔いのないようにがっつり見届けたい所存です。

*1:今日から変更かどうかは知らないけど

*2:っていっつも全部そうだけどさ