ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

柿喰う客「天邪鬼」@本多劇場(9/17夜)

 久しぶりの柿本公演、劇団員のみ総出演のとても柿らしい中屋敷さんらしいものを観られました。総出演なんですが、たいたいこと深谷由梨香さんがおめでたい理由で降板されたので全員舞台上に上がったわけではなく、でも深谷さんも物販にいらしたりしてほんとオールメンバーな感じでしたよ。お元気そうで何よりだったよたいたい〜!
 子供の想像力が現実に力を持ったらそれは何より強い武器になる、のを実際に武器にしてしまう、という、虚と実の境界線がどんどん曖昧にされていく感覚がとても不思議で気持ち悪くそこが面白い作品でした。「想像力で現実を乗り越える」って、わりとプラスの意味で用いられる概念だと思うのだけど、そこを敢えて怖い方向から見せるのが、中屋敷さんだなぁと。演劇という虚を実にしてみせる力を持つ表現方法を、生業*1にしているからこそ、その力の強さと恐ろしさを引きずり出してみせることができる。ある意味、露悪的でもあるような気もするのだけど、だからこそその恐ろしさをきちんと掌握しておかなくてはならない、のかなぁとか。演劇を愛するからこその所業であり挑戦である、というのを勝手にすごく感じたのでした。
 キャラクターはみんな可愛らしくて、私立小学校のちょっと古風な制服みたいな衣装がたまらなく好み(笑)なんだけど、まぁ展開的に怖く見えてくるのは仕方ないよね。マントというかケープというかな外套すごく可愛かった…。中屋敷さんが俳優として舞台に立っているのは、いつぞやの女体での代役以来だけど、相変わらず…ええと滑舌が(笑)。発音発声良いのに歯切れが悪いというか。そこ込みで笑えるのは柿ファンだからかもしれないが(笑)。
 「放射性物質」とか「内部被ばく」とか、ちょっと身構えてしまう単語がセリフの中に織り込まれていて、かといってそれに関するメッセージ性は特に感じられず、どういう意図なのかなーと思っていたら、アフタートークで中屋敷さんが、「耳にすると反射的に身構えてしまう言葉」として挟んだ、リズムの良い流れの中に、ちょっと敏感に反応してしまう言葉があると、そこで流れが一度止まる、その効果がほしかった、みたいな説明をされていたのが印象的でした。個人的には、メッセージ性抜きにその辺りの単語を挟まれるとどうしても、軽々しく…って感情を持ってしまうのを抑えられないのですが。でも、効果のみの為にその言葉を選んだとは思えないというか、思いたくないというか、表だって云わないけれどきっと思うところはあるのだろうと、まぁ希望ですけどね。中屋敷さんが「効果」の為だけに選ぶはずないよね、と勝手に思っています。勝手に(笑)。…ってそこで引っ掛かってるあたり、中屋敷さんの手腕にまんまとはまってる感…。
 アフタートークではやはり深谷さん降板の話が出て、わたし個人的には観ている間に「たいたいいたらどうなってたんだろう」とは全く思わず、頭に浮かばずだったんですが、実際稽古中でも誰がどの役、みたいなのはあまりはっきりしておらず、深谷さんがいてもいなくてもあんまり変わらない、っていうと何かアレだけど(笑)、でも降板によって大きく変わったものはない、とのことでした。それもまた何というかすごく柿っぽいなぁ。何となく、集合体としての「柿喰う客」が確固として成立しているから、その内側の構成が変わったところであまり影響出なさそうなイメージがあるのです。すごくフレキシブル、役も役者も、そういう印象。なので、お話聞いてそうなんだろうなぁとすんなり思いました。
 想像力の弾丸が胸を貫く。そんな芝居でした。オモチャの戦車に片足を牽き潰されるシーン、これだよこれ!ってなるよね…。玉置玲央くんの半ズボンごちそうさまでした。

*1:っていうと云い方悪いけど