ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「マーキュリー・ファー」@シアタートラム(2/14昼、2/18夜、2/21昼)

 東京公演が2/22に閉幕して、数日経ちますが、依然として頭の中はだーいぶちょうちょが飛んでいる状態です。都合4回観ましたが、キャスト目当てでない舞台でこれだけ*1リピートしたのは初めてです。公演期間がまだ続いていたら確実にもっと増えてた…(笑)。
 2/5に初めて観て、間に大阪プルートゥやら女体シェイクスピアやらを挟みつつ、でもプルートゥ終わったらもう歯止めが効かなくなった! 暴力と退廃と絶望と恐怖がぎゅぎゅっと詰まった2時間ちょっと、観るたびに苦しくて辛くて、すでに知っている結末もとても胸苦しくて、号泣を無理やり飲み込むみたいにしながらやっと観終えると本当にぐったり、虚脱してしまうような舞台なのだけれど、翌日…はさすがにちょっとしんどいかな(笑)、でも2日後にはまた観たい、あの濃密な2時間を過ごしたい、と思ってしまう。酷くて汚くて壊れたものばかり見せつけられるのに、その向こう側に朧に透けて見える美しいものが、美しくてたまらなくて、それをまた見たくなる。どん底の世界で、それが本当に美しかったのか、確かめに行きたくなる。そして観てまた打ちのめされる、その繰り返しでした。つらい、けど何ものにも代え難い、得難い時間を体感できる、「体験」できる。わたしが演劇を観に行くのは、これがあるからだ、と改めて感じた舞台でもありました。生身の人間が、同じ空間の空気を震わせて、目の前に立ち昇らせることによって体験できるリアルな「非日常性」。2時間半のあの空間はまぎれもなくリアルで、終演して劇場を出て、リアルな非日常性から解放されたと思ったら、実は現実世界のすぐ隣にもそれがある、恐怖。そんな経験をさせてくれるこの作品を観ることができて、心底幸運だったと思うし、こんな作品に出会えて、お芝居観るのが好きで良かったと本当に思うのです。こういうものに出会えるから、芝居通いはやめられないのね…。
 そんなマーキュリーファー、まだ神戸・福岡と地方公演はこれからですが*2、いろんなところでちびちび書き殴っていたメモをちょっとまとめておこうかと。各回感想と考察・推察と妄想が混ざってるメモですが、少しでもわかるように…できたらいいな…わたしの為に…。もちろんネタバレ全開なので、これから観られる方(うらやましい…!!)がもしいらっしゃったら、観劇後にお付き合い頂けるとありがたいです。基本ぐにゃぐにゃした戯言ですが!
※長くなりそうなので、日毎メモと作品・設定等のごにゃごにゃは別エントリーにします。↓は観た回のメモです。


2/14のメモは特に残っていなかったので割愛します。それどころじゃなかったし、比べてどうこう云えるほどの記憶も蓄積されていなかったというか。初見の友人と一緒に観て、終演後から6時間以上に渡って語り合ったのが良い思い出です(笑)。

2/18メモ

  • 戯曲*3に各キャラクターの年齢設定が書いてあって、きっとこのくらいだろうと予想していたよりも5歳くらいずつみんな若くてびっくりした。それを考えながら観ると、エリオット・ダレン・ナズ・スピンクスはああ…ってなるけど、ローラも幼いんだなっていうのがわかる。絶対残らないっていうのも、ナズやダレンに見せる無条件的な優しさも、プレゼントの言葉を聞きたがらないのも、同じところから発してるものなんだろうな。まだ幼い、優しさでもあり甘さというか。
  • 一生さんの声がちょっと引っかかるというか、ちゃんと出てるしかすれたりもしてないんだけど何というか…艶がない? かさっとした声になってたような気が。あんだけ喉使う芝居ずっとやってるんだもんね…。
  • 3列目(実質2列目)下手通路から2番目でとても良く見えました。パーティ中はゲストがそこまで来てぎゃー来るなー!!って感じだったけど(笑)、ラストの暗転中にすぐそこに瀬戸くんが膝を抱えるように座ってて、その少し上がって落ち着かない呼吸をそっと聞いていたよ。
  • ああでも、ナズの「ステイシーをファ××してコークを飲む」連呼の時もちょうど顔が真正面向いてて瞳孔開いた目がこっちを見ているようで見ていなくて正視するのが辛かったなぁ…。

  • ゲストの服や荷物を漁って何か情報ないか探すエリオットが、途中でビールの缶もピーナッツの皿もひっくり返して床に散らばって、何か…すごかった…。そこからぐったり椅子に座り込んだ背中とかね…。あの背中で、エリオットの心が折れちゃってるのわかるものね…。

  • 死んだゲストの足を持って!ってダレンに云われて、バスルームに運ぶ途中でダレンが星の話を始めちゃって、ゲストの両足抱えたまま上体折ってずっと泣いてるエリオットがすごいつらいけどあそこ好きだなぁ。わたしもめたくそ泣くけど。
  • ナズが傷の手当てを受けてから、スピンクスとローラを出口まで案内する時、ローラに支えられて立ち上がろうとしてふたりとも倒れ込んで、倒れたナズにローラとエリオットが「ごめん!!」て云ってたの、前も云ってたかなぁ。すごい謝ってた。

  • 姫が発作を起こして倒れたとき、姫を抱き締めながら大丈夫、大丈夫、って繰り返すダレンの頭をくしゃくしゃとなでるエリオットの手が優しくてつらくて可哀想で良い。し、その後ローラにあなたも大丈夫?みたいに云われて大丈夫だってローラの手さすさすにぎにぎするエルもたまらないし、それ見て「いちゃつくな!!」って怒るスピンクスも何かたまらない。
  • ↑これさっきテレグラム紙の劇評読んで初めて知ったんだけど、ローラはドラァグなのね…兄としては弟と男がいちゃつくのはわかっていても目の当たりにしがたいところもあるのやも知れぬ。エリオットが母とスピンクスのキスから目をそらすように。
  • エリオットが最後にダレンを撃とうとする時に、ずーっと、向き合って拳銃突きつけて下ろさせられてしながらずーっと、ぜんぜんダレンのこと見ないのね。ずっと視線逸らせて銃を向けるのね。で、最後に、ものすごく愛してる、て云われて、やっとダレンのこと見ながらその脳天に銃口当てて、でも引き金は引けなくて、今日は最後の爆撃の閃光が明るい時間が長くて、爆撃の音の中でエルがダレンを撃ってないのがちゃんと見えたので、今回は撃ってない。日によってどう見えるか違いそうなラストだなー。

  • カテコの最後に、上下に分かれて舞台を降りる時、上手ハケの一生さんが下手ハケの瀬戸くんにちょっと気にするような視線を送っていて、あああまだ弟心配する兄さんのままだ…とぶるぶるしながら可愛かった。瀬戸くんは気づいてなかった。

2/21メモ

  • 当日券で初のトラムシート*4でした。役者の出入りで最後列通路をたくさん使うので、度々目の前をみんなが通る、ファンには美味しい席かもしれない。でもその度にちょっと避けたりして集中力は途切れるかなー。バーにお尻引っ掛けていられるので、普通の立ち見に比べたらものすごく楽だったのは確か。
  • 通路を歩きながらの細かい芝居が観られるのもちょっと良かったところかな。ナズが「お姫様、こっちですよ」ってエスコートしてたり、エリオットがプレゼント取りに行く時、通路トーチで照らしながら歩きつつ腕時計を確認してたり。
  • 初めて上手から見たら、寝室の中で椅子に座らされて化粧ケープかけられてぐったりしてるプレゼントが見えた。
  • 冒頭でダレンが部屋に入ってきた時、役に立たないとかそれで手伝ってるつもりかとか罵りながら、ダレンが上手で転けるとトーチで照らしてあげる兄。口で罵りながら。

  • あの辺の口喧嘩がすごい兄弟感で。ああいうひどいこと云う云う!ってなる。だいぶやったなああいう喧嘩。
  • その後の仲直りの感じもすごいわかる…。
  • 部屋のシュッシュは?って云ってたっけダレン。ファブリーズ的なやつ。

  • あれほんとにバラの香りがする。
  • ローラがドラァグだって思って観たけど、そんなに印象変わらなかった…どっちでもローラはローラだった。
  • バタフライご褒美シーンが大変…良かったです…。ダレンが口開けて待ってるところにエルがバタフライ近づけて、近づけてるけどなかなか乗せてあげなくて、ダレンが舌突き出して早く早くって待ってて、そこに本当にゆっっくりと、そおおおっと、エルがバタフライ乗せて、乗せられたダレンがだいぶ長い間舌の上にバタフライ乗せたままとろんとした顔してて、その間がかなり長くて、それをまたゆっっっくりと口の中に納めて、夢見るようなうっとりした顔で食べて、それを見下ろすエルの顔は醒めてて、でも抱きついて「ばっこん、ばっこん」て笑う弟に「何の真似だ?」っていうのはとても優しくて、何かもうすごかったです。ごちそうさまでした。見せつけるように舌に蝶乗せたまま呆けた顔してるダレン強烈でした…。
  • パーティの準備中に、ナズが寝室に鞄持ってけって云われて持ってったら取っ手が取れて中身が落ちて云々、のところで、肉用フックを拾い上げたナズが、「えっ…これ…?」みたいにちょっと引き気味に戸惑い笑ってた。フック強調されてた…ナズ…。
  • 姫が歌う時に最上手でうずくまるダレンと、頭を撫でたり首をさすったりしてあげているエリオットが良く見えた。なでなでさすさすから結局、肩に置かれたエルの手をずっと握ってたダレン。

  • だんだんスピンクスに感情移入してきてつらいったらない。ほんとスピンクスすごいがんばってみんなで助かろうとしてるのに上手く行かないし、みんな悪者扱いするし、スピンクスだって二十歳ちょいくらいの子だろうにでかいのは声と態度と図体くらいなのに(喧嘩弱いし)「みんな俺のことなんかどーだっていいんだろ!」てなるところ、わたしはスピンクスおうえんしてるよ!!ってなるわ…。器じゃないのにそうならざるを得なくて大物ぶってる中身が露呈しちゃっててつらいなぁあそこ…。

  • プレゼントが10歳って思うと…ものすごくつらいですよ…プレゼントのセリフがすごく明瞭になっててさらにつらさが増す。

  • スピンクスがエリオットを看病していた時の思い出話しながら、「お前は特別だよ、なあエリオット!!」て肩をバシバシたたくところのエルが、首がっくんがっくんなってるのが可愛い。
  • 今日はビールはこぼれなかったけどピーナッツはぶちまけた。
  • 手がかりが見つからない辺りからのエリオットの、完全に心折れちゃってる感と、それに反比例して冴え渡ってくるダレンの逆転もたまらない。つらい。
  • パーティに関してはダレンとナズの意見がだいたい冴えているのが何だかすごいな。キャンドルも姫の世話も、具合悪いプレゼントのシチュエーションも姫をナズの部屋に連れていくのも、エルと片付けてから行くから外の車で待っててっていうのも、ゲストの始末もガソリンも、パーティに関して建設的なことはナズとダレンが云い出してる。エリオットもスピンクスも、どーするんだよやるんだ無理だしか云ってない…。
  • ダレンはバタフライやってなければ(あと頭殴られなければ?)かなり聡い子だったろうと思います。ミノタウロスのところもだけど、木の銃で撃ち合う遊びの最後、「おれは3万キロもからみついてるへその緒になんかなりたくなかった〜」とか。あれ聞いてはっとなる兄もたまらん。
  • 今日はラスト、どっちかわからなかった。閃光時には銃口がダレンの頭に当てられていた。暗転が明けた誰もいない、煙の漂う部屋で、何が起きてたんだろうね…。
  • そこで流れるクライム・エブリ・マウンテンが無情というか非情。あの状況であの歌詞は酷すぎる…高くても低くてもすべての山に登れ、夢を掴むまで虹を追いかけろ、だよ。夢をかなえるには与えられる限りの愛を与えろ、生きている限りずっと、毎日、だよ。ひどい。
  • カテコの時、一生さんがズボンのウエストに挟んでた拳銃をシャツの下にしまい忘れてたみたいでグリップがはみ出てて、整列してから気づいてしまっていました。拳銃出し入れの時におへそがちらっと見えるのがレアだよねっていう(笑)。
  • しかしトラムシート、階段通路の真ん前位置で、カテコ時に役者さんが真正面から階段昇ってくるんだけど、色んな汁で顔面崩壊してて顔上げられなくて何も見えませんでした…靴しか見られなかった。

*1:っつっても4回じゃん〜って思うのは、基準値がおかしいです。ハイ。

*2:でも各1公演って少なすぎるよ…

*3:アマゾンで中身をチラ読みできます

*4:劇場最後列の壁沿いにあるバーに凭れて観られる半立ち見席