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ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

山川冬樹×表現(Hyogen)黄金の出会い@音楽実験室 新世界(11/28)

 ひと月近くも経ってしまった…。
 山川冬樹さんについては、「4.48サイコシス」とか「金閣寺」観劇時にねちねちと感想を述べたり、ホーメイを堪能できるAlayaVijanaの2ndと3rdアルバムを聞きまくったりしておりますが、なかなか生でその声やパフォーマンスに触れる機会がなくて、行けるライブないかなぁと思っていたところにこちらの情報が舞いこんで来まして。六本木とかライブハウスとか怖いんですが(笑)、でもなかなか行けないし!と一念発起して行ってきました。ら、とても、とっても、良かった…!
 あんまりちゃんと知らないで予約してしまっていたのですが、表現というバンドが、いろいろなミュージシャンをゲストに呼んで、セッションする<黄金の出会い>シリーズの一環、でした。表現がホストだった! 表現、知らないなぁと思いつつ着席形式のライブハウスでスタートを待っていたのですが、その間にちらりと調べると、ヴァイオリン・ギター・コントラバス・ピアノ/アコーディオン・ボーカル、というちょっと不思議な編成のバンドとのことで。確かにステージ上にもコンバスが寝かせてスタンバイしてあって、見た感じアコースティック寄りな音なのかしら??という雰囲気。てっきり、山川さんとセッションするから何かゴリゴリのぎゅいんぎゅいんのハードな感じなのかとどきどきしていたので、ちょっとほっとした(笑)。客席も女性率高めで怖い雰囲気ではなかったので*1、のんびりと開始を待てました。新世界、メゾネットみたいな2層式のフロアで面白いライブハウスだった!
 そしてヴァイオリンケースをふたつ抱えたお兄さんがステージ奥のカーテンの向こうへ消えていったかと思うと、すぐにステージ上に人影が現れて、何だかふんわりとライブスタート。小柄な女性がアップライトピアノの前に座り、ヴァイオリンを構えた長身痩躯の男性と、ふわりと声を重ねて歌い出す…最初の1音で、あっこれ好きな感じだ!とわかるピンと来具合でした。霧の深い静かな森の中、みたいな音だった…すごく静かで、少しひんやりしてて、綺麗なんだけどどことなくちょっと不穏なの。1曲目で、これは完全に当たりだと確信しましたね。わたしラーメン食べて来てネギ臭かったのと、ライブハウスがタバコ臭かったのでマスクをずっとしていたのだけど、マスクの下で満面の笑みでしたね。2曲目はまた曲調ががらりと変わって、疾走感のある、でもどこかフォークロアな香りもする面白い曲、確か「酔いどれ姫」ってタイトルだって云っていた気がする。最後の方はけっこう激しくなったような。パーカッションが楽器編成としてはいないんだけど、ギターやヴァイオリンのボディを叩く音ですごくリズミカルになるのね。
 そしてスタートからずっと気になっていたのですが、ピアノ/アコーディオンの女性、すごく見たことがある。小柄で華奢でほんわりした雰囲気だけどきりりとした精悍さもある風貌に、高く澄んだ歌声、そしてアコーディオン…このひとは。そう、100ねこで魚と一緒にアコーディオン弾いてらした権頭真由さんだ! momo椿*は覚えていたけど、表現は頭に入ってなかったですよ…わぁ。びっくりした! けど嬉しかった! 一方的に、思わぬ再会でした(笑)。
 一応、齧った者としてはヴァイオリンがとても気になったのですが、途中で持ちかえてた5弦ヴィオラが面白かったなぁ。何となく、幼少期からヴァイオリンのレッスンを受けたのではない気がする演奏に思えたのだけど、そうでないからこその音の出し方というか、ヴァイオリンという楽器の使い方というか、が表現方法のひとつとして成立しているのが、すごいなぁと思いました。クラシックしか知らないから、ああいう風に弾いてみろって云われても出来ないもんなぁ。楽器ってもっと自由なものなんだよね…。あと、歌声が、ファルセットだとほんっと綺麗な高音で、でも地声だとすごく豊かな響きの低音で、歌も素敵でした。ギターは素人目にもこのひとめっちゃ上手いよね?って感じだし、ベースもベースというかコントラバスというかですごくカッコイイし、権頭さんは透き通る声もアップライトピアノアコーディオンももちろん素敵だし、ほんと…たまらない布陣(笑)。もっといろいろ聞いてみたいし、音源化された音も聞いてみたいと思うバンドでした。良い出会い!
 そしてそして、本命というか本日のお目当ての山川さんは、圧巻のソロパフォーマンスでした。ステージセットが既にね、裸電球5つくらいスタンバってるしね、これはアレよね! 照明が暗くなり、上半身裸に腰まである長い髪を下ろした山川さんがシンバルを低い位置にセッティングなどして、そのままふらりとステージ前方へ出てくると、静まりかえる会場内には低く、何やら有機的なノイズが響き始め、そこにコカカカカ、と不思議な堅いパーカッションのような音が。ドラムも太鼓も何も叩いていないのに。…そう、これが骨伝導パフォーマンス。山川さんは眼鏡のブリッヂだけ、みたいなパーツを鼻筋の付け根に取り付けていて、頭蓋骨に伝わる振動をピックアップして増幅する…のかな? ふんわりそんな感じ? 自らの頭蓋骨をパーカッション化してしまうのです。額を指や手で叩いたり、(恐らく)歯を噛み鳴らしたりの振動が頭蓋骨に響く音を、アンプから出す。有機的なノイズに聞こえるのは、心臓の位置に取り付けたマイクから伝わる鼓動と内臓の音。その鼓動は電気信号化されて、裸電球を鼓動に合わせて明滅させる、という…全身が、っていうか生きていることそのものがパフォーマンス化された生命、みたいな感じで、その独特な風貌も相まってすごく、シャーマニックな場に感じました。しかも山川さんは自分の鼓動を操れる。心臓、止められる。止められるんだけど、すごく苦しそうというか観ていて苦しくなる。頭蓋骨パーカッション化して心音が電球点滅させて通奏低音が内臓音で、って何かもうそれだけで充分いろんな意味で圧倒されるんですが、真骨頂はさらに重なるホーメイ倍音を自在に操る独特の歌唱法(?)です。山川さんのホーメイは、何度か生で聞ける機会があったのだけど、こういうパフォーマンスとしては初めてだったので、本当に…息を詰めてぎゅうっと集中して見聴きしてしまった。
 …これだけ書き連ねると多分、とても前衛的で何かよくわかんないけどすげぇことしてるパフォーマンスなのね、って感じになってしまうと思うのだけど、音楽としてめちゃくちゃかっこよく、緊張感ものすごいけどとても心地良い、というのははっきり申し上げておきたいところです(笑)。骨伝導マイク越しのホーメイは、宮本亜門演出の舞台「金閣寺」でも披露されてちょっとした物議(笑)を醸したりもしていましたが、確かにノイジーなんだけどわたしにはものすごく良い音なのです。大好き。骨伝導なしのホーメイは純粋に不思議で良い音。もちろん、山川さんご自身の声が良い、っていうのは大前提ですが。低くて響きが良くてしっとり静謐なの。パフォーマンスがかなり、全身を使うというか、見ていて心配になるくらい激しいので*2、演奏後にお話しされてるところを見るとギャップに驚きます。がそこも良い。
 曲というよりパフォーマンスで、インプロだと思うので、何曲演奏、という感じではなく1パフォーマンスという単位でした。心臓何度も止めるから、も、もういいです怖い怖い!ってなった…けど電球の明滅は本当に美しかった。で、1ステージ後に、表現のメンバーも加わって、セッションになりました。正直、この山川さんのパフォーマンスと、表現の深い森みたいな音が、どう重なるのか、重なったらどうなるのか、想像もつかないけどでも何となく似合う気もすごくする、という感じだったのだけど、これがまた。絶妙なマッチングで。すごくかっこ良かったーポジパンだったー。山川さん曰く「ルーも死んじゃったしね」と、ヴェルヴェッツの「Venus in furs」カヴァーを演奏してくれたのですが、ヴァイオリンのふよふよと漂うような音がほんとそのまんまで痺れた! 山川さんの声はルーとは似ていないけど、深みと響きが良くてすごく素敵だった。素晴らしいものを聴けて感激です…。歌いながら低くセッティングしてあるシンバルを蹴って鳴らす山川さんが、演奏後に佐藤さんに「シンバル蹴ろうとしたら佐藤くん蹴っちゃった、ごめんね」って云ってたの微笑ましかったです(笑)。
 あとは、山川さんが二十代の頃に作っていた曲を、表現の佐藤さんが「やりたい」と云ってくれたので、とお披露目してくれました。これがまた…とても美しい曲で…音源ほしいCD化してほしい! 二十代の頃はけっこう作曲をしていた、と山川さん、「でも日本語の歌詞をつけるのが恥ずかしくて、うーんって唸ってるうちにホーメイにいきついた(笑)」なんて茶目っ気あることを、美しい声で静かに話してくれるのたまりません。あと、久しぶりに弾くから…とギターを抱えて、ものすごい勢いで手のストレッチするから、えっそんな? ギター弾くのにそんな水泳の準備運動みたいな手首ぶん回すストレッチ必要なの?と思っていたら、演奏開始したらこれがもう、表現のギターさんと早弾き合戦みたいになっている曲で(笑)。そりゃあ準備運動必要だわ…素人目には超絶技巧でしたよ…それ久しぶりのひとが弾くアレじゃないよ…。歌詞がないのでスキャッドで歌われた曲は、飛翔感とでも云うか、スピード感と高く舞い上がる感覚が心地よい、などと思っていたら、鳥が大空を飛ぶようなイメージの曲と聞いてなるほど。ことばなんかいらないその声があれば、なんて思ってしまいました。あの曲もう一度…と云わず何度でも、聴きたいなぁ。もう印象しか思い出せない…。
 最後に、ジェフ・バックリィの「Hallelujah」のカヴァーを、じんわりと滲み渡らせるように聴かせてくれて、山川冬樹×表現の黄金の出会いは終了しました。六本木のライブハウスなんて行ったことないし何か怖いよーと躊躇したけど、思い切って行ってみて本当に良かった! 黄金の出会いだった! やっぱり山川さんのホーメイ素敵だよー表現もすごく良かったよーどっちももっと聴きたいよー。
 とりあえず手持ちの音源がアラヤヴィジャナのアルバム2枚しかないので、ホーメイ聴きたくなったらこの2枚をリピるしかないのです。表現のCDも欲しくなっちゃうなぁ。

Alaya VijanaII

Alaya VijanaII

Alaya VijanaIII

Alaya VijanaIII

*1:ほんと怖かったらどうしよーってなってたんですよ…

*2:でもめちゃくちゃカッコイイ