ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

音楽朗読劇「HYPNAGOGIA」@シアタークリエ(8/28夜)

 月をまたいでしまいましたが備忘録程度にでも。
 北村有起哉彩吹真央米倉利紀出演の朗読劇でしたが、開演前のアナウンスでも「バックグラウンドミュージックではなくフロントグラウンドミュージック」とあったように、ある意味主役は生演奏のピアノ&チェロとも云える、正しく「音楽朗読劇」でした。舞台の中央にピアノとチェロの席が設えてあり、演者はその両脇と手前に。情景描写であったり、心理描写であったり、効果音もピアニストが奏でる音楽もすべてピアノとチェロが受け持つのね。芝居のセリフ以外全て、という感じ。すごく贅沢で素敵な舞台でした。
 かつての親友と久々に再会した医者、親友は天才ピアニストとして脚光を浴びているが心身ともに疲弊しきっていた。心配する医者に、ピアニストは夢の中で会う女の話を打ち明ける。彼女が夢の中で作る曲を弾いて、彼はピアニストとして認められたのだと。命と引き換えるように新しい曲を得るピアニストを、医者は何とか救おうとするが…。
 という感じのサイコサスペンス?風ストーリーでした。医者が米倉さん、ピアニストが有起哉さん、夢の中の彼女が彩吹真央さん。また衣装がどちらも素敵で、フロックコートみたいな丈長めのジャケットにベスト、シャツの襟元には大きなリボンタイでゆっきーとても可愛らしかったです。ゆるいウェイブがかった長い前髪が目元を隠すような髪型も、初期未來マークをちょっと思い出してしまったり。とにかくピアニストなゆきやさんの可愛らしさ爆発で…かぁんわい!となりながら、申し訳ない頭の片隅では、いつかみらいさんでも見てみたいなピアニスト…なんて思ってしまっていたり。すみません。
 とにかく観ながら、いや聞きながら?、「贅沢だなぁ」というのが一番の印象でした。ゆっきと米倉さんの深い響く声に生演奏のピアノとチェロが重なって、本当に…贅沢な時間だった…。米倉さんの歌声まで堪能できて、しかもクリエで、何かねぇ色々ねぇ思い出さないわけにもいかなかったりねぇ(笑)。ストーリー的には、もうひと捻り欲しかったというか、いくら何でも〜じゃないよね、と思ったらいくらなんでもだった、みたいな(笑)。あっそれでいいんだ、と次の捻りを待ちかまえていた身にはちょっと肩すかしかな。でも捻ったらガチのサスペンスっていうかスリラーになってしまうからいいんだろうな…好みはスリラー方面なんだけどな…。
 舞台セットもすごくシンプルだけど大変好みで美しかったです。いくつも並んだ三叉の燭台、下手に大きなシャンデリア、上手空中にふわりと浮いたカフェチェア、両脇に紫色の重そうな天鵞絨カーテンが弧を描き、センター奥にはぼろぼろの布や流木みたいなオブジェが吊り下げられて、そのくらい。だけど、スモークや照明や風で表情がまるきり変わって見えるのがすごく良かった。とても素敵な空間で、素敵な声と音楽で、素敵なお話でした。金色の麦畑のシーン、実際目に映っている光景は変わらないのだけど、音と光で風景が広がるようで、美しくて涙出たなぁ。
 二日間しか公演がないのがもったいない、素敵な作品でした。香りの演出は、何となーく、しかわからなかったのがちょっと残念だったかな。マチネの残り香が、劇場に入った時点でうっすら漂っていたからね…。