ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

「苦役列車」完成披露試写会(6/14)

 試写会で観た映画の感想をざっくりと。公開前なのでネタバレなしに努めます。…多分。
 観る前は、あっちゃんが「だんだん可愛くなってきた」とか、雑誌記事で「貫多がにくめない」とか、すごく…半信半疑というか、いや多分無理なんで(笑)、って感じだったんです。いくら演じてるのが未來さんでも、いかにもダメっぽいというかダメを体現しているような感じだし、ルックスはあんなん(笑)だし、キャラクターもアレで、ああもう…楽しむべき部分はあっちゃんだけだわ…という気分と覚悟で挑んだのです。映画作品としての期待値はまぁ…だけど、わたしが楽しめるかどうかは最低ラインで。
 なのですが、うん。思ったより…いや、ダメだけど、やっぱりダメなんだけど、でも、それでも観ながら、貫多がんばれ!とか、貫多良かったねー!!とか、ああっ貫多違うよそうじゃないよ!!とか、あーばかーー…とか…ええ、見事に乗っからされてしまいました(笑)。あっちゃんが「愛しくなる」って云ったのもわかるわー。でもダメだけど。という、せめぎ合いの2時間弱でした。いっそ、完全に「ああこいつダメだ」と切り捨てられれば、その方が楽だったかもしれない。のは、あっちゃん演じる靖子ちゃんも、高良くん演じる正二くんも、同じだったのかもね。でも、捨てきれない、思わず見てしまう何かが、貫多にはあって、それを魅力というのか、どうなのか…。
 自分と同じ日雇労働者を見下すプライドと卑屈な劣等感のねじくれた、複雑な感情が、ただただ面倒臭くて扱いにくくて苛立つんだけど、ある瞬間突然貫多側にシンクロしてしまったり、正しいのは貫多の方だと思ったり、むしろ貫多の側にいたいと思ったり。観てる側の価値観をぐらぐら揺さぶられる映画でした。また貫多さんが、あんなにきったないナリで、空気読むとか一切できないというかしないのに、罵詈雑言は文学的な言葉で、一人称はあくまで「ぼく」なんて…ずるいよ(笑)。貫多が「ぼく」って云うたびにはうぅっ…って胸押える気分だったわ…ありゃあずるい。
 露悪的なほど汚い部分を隠さずに出して、全然綺麗じゃないし、バッチくて醜悪だけど、でもものすごく健康的で絶対的に健全な映画でした。金もオンナも友もないかもしれないけど、健康的な生命力に満ち溢れてて、それが眩しくて仕方ない映画だった。どうしようもなくてどん詰まりで底辺だけど、力いっぱい、全身全霊で生きてる、そこに一切の迷いも揺らぎもない。だから、これだけどん底生活を描いていても、決して暗くならないんじゃないかしら。むしろ眩しすぎて、その眩しさや迸る生命力がわたしにはちょっと…直視するのがつらいほど強いんだ(笑)。それを「動物的」と称してしまえばそれで終わるんだけど、でも生き物として間違っていない姿ではある、よな。
 あっちゃんが凄く良かったです。ドラマの印象*1しかなくて、あまり上手なイメージがなかったからどちらかというと心配だったんだけど、全然、まったく。自然体で凄く雰囲気が良かったです。いそうでなかなかいないけど、すごく自然に古本屋にいて、風呂なしアパートから銭湯通ってた。海のシーンも尿瓶(笑)のシーンも可愛かった〜! 体当たりの貫多とのシーンもヒリヒリでした…でもあの後どうしたんだろう…べちょべちょでさ…。高良くんもね、ふわふわしたキャラが良く似合っていました。高良くんと未來さんのアップが交互に映るシーンでの、端正っぷりときたらまぁ…未來さんの御面相がアレな分余計に際立って…美人さんだった(笑)。居酒屋のシーンで、ああこいつもしょーもないなーと思ってしまったんだけど、でもそのしょーもない部分があるから、貫多のことも柔らかく受け止められてきたんだなぁと思うと、ううん。悪人は出てこないんだこの映画。ただちょっとずつ欠けてて、ちょっとずつ残念で、欠けた部分がかみ合わなくなっていくんだ。マキタスポーツさんすごく素敵でした。テレビのシーン好きだ。あと覗き部屋で覗かれる女の人とか、サービスする人とか、のキャスティングの絶妙さが本当に絶妙で…よく見つけてくるなぁ。
 後半というかラスト近くというか、けっこう予想外な展開でびっくりしましたが、でもラスト良かった。うまれたばかりのひよこみたいだった。友達は天使って云った(笑)。でも、本当にうまれたばかりなんだもんね、間違ってないよね。

*1:も大して見てはいないけど