ミライ派野郎

森山未來とその周辺を果てしなく気持ち悪い感じに追いかける桐の日々散々。

柿喰う客 女体シェイクスピア002「絶頂マクベス」@吉祥寺シアター(4/18夜)

 女体シェイクスピア。前作「悩殺ハムレット」の頃から名前は小耳に挟んでおり、チラシビジュアルの何と云うか男装イケメンホスト集団みたいな雰囲気に何これちょっと面白そう、とは思っておりました。蜷川御大のさい芸シェイクスピアオールメイルシリーズの向こうを張るが如く*1、登場人物を全て女優で演じるという形式の、オールフィメイルシリーズとでもいえばいいのか、宝塚風というか、でも雰囲気は違うんだなやっぱり「女体シェイクスピア」が一番だよな、という、そのシリーズ2作目が「絶頂マクベス」でございます。ハムレットの次はマクベスなのかーと、やはりメタマク育ち(?)なのでマクベスには興味を(より一層)惹かれるものですが、今年入ってTeZukA除き8本観劇と、ちょっとペース早くない?な感じなので抑えていたところ、視界をよぎった紹介ツイートで、一気に観たい度ガン上がりしてしまいました(笑)。

 何それいいなー観たいなー(笑)と思いながらもぼんやり数日を過ごし、そして17日、「若干お席に余裕があるから」と、「空席よりは値下げでも埋まった方が!」と、ハーフプライスでバルコニー席を当日販売のニュースが。しかし17日はお天気イマイチわたしのテンションもイマイチで踏ん切りつかず、翌18日に再びハーフプライスのバルコニー席が出たのに乗っかり、やっと! 重い腰を上げましたよ!! 行って良かった!!
 同日夜に、その日の公演を撮って出し状態の全編Ustream配信があったのですが、でも生で観たいし…と勝手知ったる吉祥寺へ向かいましたよ。無事に半額チケットをゲットして*2、いよいよ初・女体シェイクスピアでございます。初・柿喰う客でもございます。恐らく初・中屋敷法仁演出作品でもあるはず。
 これまた初の吉祥寺シアターバルコニー席はステージを見下ろす形ではあるけれど全貌が見渡せてなかなか快適でしたよ。あの劇場好きだなぁ通り道にホストクラブとかキャバクラとかたくさんあるけど(笑)。そして暗闇から三魔女が現れるお馴染みオープニングから幕が上がった「絶頂マクベス」、そのままノンストップ90分を駆け抜ける疾走感とハイテンション、迸るエネルギーに圧倒され高揚させられずーっと顔がニヤニヤしておりましたよ…ちょうたのしかった…! 眼鏡執事白手袋の美形マクベスは何かもう漫画のキャラクターみたいにかっこいいし、古風なメイド服にやはり眼鏡白手袋のマクベス夫人も美しくしかしその美しさをぶん投げ捨てるようなテンションで突っ走り、おかっぱバンクォーはチャラいけどかっこいいし、魔女たちはランジェリー姿でえろえろだし、門番はヤンキーでマクダフはホスト系イケメン、そしてどうしても注目してしまうジュニア様…じゃなくてマルカム王子は、激キャワちょい黒?美少年でした…ありがとーありがとーマルカムちょうかわいかったーそれだけでもう胸いっぱいですー。
 そもそもシェイクスピア、というかマクベスの入り口がメタマクなので、アレがベースになるとどんなアレンジでも何の時代に置き換えられても、別に何とも思わない耐性がついているのですが(笑)、でも「絶頂マクベス」はかなりベーシックというか、衣装やキャラクター造形がイマ風だからすごくとっつきやすいけど、台本自体はすごく、そのまんまのシェイクスピアだったように思いました。まっとうというか、きっちりシェイクスピアだった。アフタートークで中屋敷さんがものすごいシェイクスピアオタクだということを知って、なるほどなぁといろいろ納得しましたが、男装イケメン執事たちのハイテンションなやり取りだから一見、うっひゃぁ(笑)てなるけど、セリフそのものはすごーくシェイクスピアそのまんまだった。シェイクスピアに対する愛とレスペクトが詰まってた。逆に云うと、クドカンがメタマクをあそこまでああできたのは、シェイクスピア初めて読んだよ!な方だったから、じゃないかしら、なんて思ったり。
 まんまマクベス、だからといってかったるさとか難解さとかはさすがに皆無で、その辺のアレンジの軽快さ・スピード感はさすがです気持ちいいです。超ハイテンションでぐいぐい引っ張っていかれるジェットコースター的快感。舞台セットというものはほぼなくて、会話と歌と踊りと曲と照明で途切れることなく、グラデーションのように変わっていく場面転換も心地よかったし、曲はいちいちカッコイイし歌も耳馴染み良くてキャッチーで今でもお鍋の歌とか頭回ってるし、女優さん方みんなそれぞれ美しくて個性的でキャラ立ってて面白くて…ほんと楽しかった〜かぁっこよかった〜。
 まずマクベスが、眼鏡白手袋に燕尾服の執事スタイルで、とにかくずーっと敬語。マクダフ君!とかどういうことですか一体!?とか云ってるの。マクベス以外の他の臣下たちもバーテンぽかったりスーツだったり、みんな「執事」系なのね。で、ダンカン王はパジャマにガウン、という、王とその臣下たち、という構図がそのまま、御主人さまとそれに仕える者たち、に置き換えられてる。なので、ダンカン王を殺して王位についたマクベスは燕尾服じゃなくてガウンにパジャマ、夫人もメイド服じゃなくてネグリジェにガウン、になる。そこはちょっと面白かったです。マクベス夫人はクールビューティ系眼鏡メイドさん、なんだけどめっちゃハイテンションで、堅苦しく生真面目なヘタレ旦那をぐいぐい犯罪へ押しやる感じ。なのですが、メタマクでマクベスに入った身としましては、マクベスと夫人の関係というか、ラヴをもうちょっと観たかったなぁ、と思いましたよ…別にバカッポーやれとは云わないんだけどね、夫婦というよりは職場の同僚の執事とメイド、みたいな、ちょっとドライな感じに見えたので。いやドライな使用人御夫婦もストイックで素敵ですけどね!
 ストーリーはまんまなので割愛しますが、国王暗殺のシーンでも、手の汚れが取れないシーンでも、バンクォーの幽霊も、血糊とか血塗れ描写が全くなくて、血が出てこないマクベスってちょっと珍しいよね、と思っていたら、その辺もアフタートークできっちり解説して下さいました。そしてとってもなるほどーーーだった! 女性が演じて、衣装もスタイリッシュで、とにかく美しいというか清潔感に満ちたマクベスでした。ほんとキレイだった…キレイでセクシーだった…でもオモシロかった…。
 マクダフさんもイケメンで嬉しかったし、何と云ってもマルカム王子が〜。ちょうかわゆい〜(笑)。あほっぽい子かと思いきや若干腹黒系だったけどとにかくかわゆかったあざといほどかわゆかった。というかかわゆさがあざとかった(笑)。開門シーン(?)も美味しく頂きましたありがとうございましたー! もちろんあんな濃厚なべったりシーンはありませんけどね!!*3圧巻だったのは暗殺されたダンカン王をマクダフが見つけたシーン…メタマクでもグレコがなんてこったあああってやってた、あそこが…そう来るか!!というまさかの演出で…やだかっこいい(笑)。もちろんラストの対マクベス戦もかっこいいですよ!! ここはマクベスもかっこいいんだ武器がアレで(笑)。あとシーワードさんが眼鏡キャラで、フェルナンデス…!と思ってぶるぶるしてしまったのだけど考えてみたらマクベスも夫人もマクダフ夫人もマクダフの息子も眼鏡/グラサンキャラでした(笑)。眼鏡率高いな!
 帝王切開オチ*4への持って行き方や、そこからエンディングへの流れが斬新というか…そういう着地点かー…と、ちょっと意外に思ってしまうところが結末だったのだけど、でもこの「社畜マクベスにはここしかないよね、という落とし所で、その着地がすごく気持ちよかったというか、哀しくてキツいんだけどすごく爽快というか…良かったです。大団円からカーテンコールへの一連も、ストイックなまでに潔いカーテンコールも鳥肌立つかっこよさでした、いきなり明るくなる客電まで完璧な演出ですよかっこいいいい!!
 その後アフタートークもありまして、中屋敷さんと魔女役の七味まゆ味さんのお二人が質疑応答形式でトークする、という内容でした。中屋敷さんのテンションが若干おかしくて、質問に答えるのに何か立ち上がっちゃうのとか面白かった(笑)。でもすごく深く考えられた上で作られてる作品なのだなぁというのがわかって、すごく興味深くなるほどなぁの連続でしたよ。覚えてるのをちょっとメモっておく。このような内容のことを話してらしたんだよ、程度の精度です。( )内はわたしの感想。

  • マクベスのお芝居を観るとほっとんどのマクベスは、見るからに「こいつ絶対王様殺すだろ!」て顔してる(笑)から、そうじゃなくて、絶対に殺しそうにないいかにも実直でヘタレな人物が、「やってしまったー!」感とその悲劇を出したかった。だから執事で敬語。(執事系衣装の中でもマクベスの燕尾服はTHE 執事!て感じの一番のガチガチ執事だったもんねー)
  • マクベス演劇と云えば血みどろ描写で、「手が真っ赤だ!!」て血糊まみれの手を見せるのが多いけど、芝居でセリフで「手が真っ赤だ!」って云いながら血まみれの真っ赤な手を示す、というのは演劇じゃないんじゃないか、その「手が真っ赤だ!」てセリフは説明の意味も為していないし、誰に対して云っている言葉なのかもわからない。演劇のセリフとして機能させるには、全く真っ赤でも汚れてもいない手を差し出しながら「手が真っ赤だ!」とやるべきじゃないかと。汚れていない真っ白な手袋が、「手が真っ赤だ!」というセリフによって、観客の目に真っ赤に見えてくる、それが演劇というものなのではないかと。だからマクベス夫妻には真っ白い手袋で、白いままの手袋で「手が真っ赤だ!」と云わせた。(これすっごく納得というか、エウレカ!というか)
  • 会場から「いろんな翻訳があるけど、誰の訳を一番参考にしたか」という質問に、待ってましたとばかりに立ち上がる中屋敷さん。とにかくシェイクスピアが好きで、同世代の演劇人の中でも多分一番シェイクスピアを好きです!と仰ってました。すごいテンション上がってた!
  • 国内で出版されている訳は全て読んでるし、もちろん原語でも読んでるから、誰訳を参考に、ていうよりはもう全部です。でも、日本語訳だとどうしてもニュアンスが違うとか、音のイメージが違うところが出てくるので、そういうのはもうそのまんま原文で。例えばあした、とかあす、と訳されてるところ、サ行の音の抜ける感じが何か違うなーと思って、そのままtomorrowをセリフに使った。ダンカン王の「グレイトグレイト!」も原文から。
  • ただ、冒頭の魔女の「おめでとうマクベス」というセリフ、原文はなんだけど、これを「ヘエエエイ、マクベース!」と訳したのが安西徹雄訳で、これを読んだ時に「ああ、何でもいいんだ!」とすごく勇気を貰った(笑)ので、そういう意味では安西徹雄さん訳が参考というか、支えになっています、と。(これアマゾンの解説にも載ってて吹いた→マクベス (光文社古典新訳文庫)
  • そういえば魔女の歌う歌の歌詞にあった、「晴れ晴れしいは禍々しい、禍々しいは晴れ晴れしい」も、「きれいは汚い、汚いはきれい」の安西さん訳バージョンみたいです。
  • 三魔女のセクシーランジェリーは「男子が引く女子テンション」がコンセプトとのこと。老婆の魔女が「ヒッヒッヒ…」と出てきてもハァ?てなって終わっちゃうけど、押しの強いセクシー美女が露出高めに迫ってくると男子は割と引いちゃうんです。そういうのを狙ってるとのこと。たまにノリノリで電話番号とか聞いちゃうやつもいますけどね(バンクォーはこっちタイプ)。
  • マクベス夫人のハイテンションも男子どん引きラインなのだそうです。うん、男子じゃなくても「来て〜来て〜!!」とかは…面白いよね(笑)。
  • ラストの晴れ晴れと繰り返される「おめでとうマクベス」、は祝福ではなくて呪いの言葉。魔女の「おめでとう」という呪詛に惑わされてのっぴきならない状態にまで来てしまって、最後の瞬間にやっと、誰かの言葉に従うのではなく自分のしたいことをして生きればよかったことに気づいたマクベスに、それに気づいてよかったねおめでとうでももう死んじゃうけどね、という皮肉。(これはねーほんとにねーキツかったねー観てて…それがまたタマラナイんだけどねー)

 それくらい、というかそれくらいしか覚えてないというか。とにかく中屋敷さんハイテンションで早口で饒舌でアツくてとても楽しかったです。
 そして、アフタートーク終了後慌てて帰宅して、今さっき観てきた公演をまるっとそのままUst配信でもう一度観る、という(笑)。バルコニー席から見下ろしていたので、正面から観るとこんなだったのかーとか、役者さんのアップの表情とかが見られてとても良かったです! あと是非見て欲しいと思った友人達に押しまくっておいたらけっこう見てくれて、それも嬉しかった(笑)。
 さらに翌日19日の夜には、「絶頂マクベス」乱痴気公演*5もUst配信がありまして! もちろんこれも拝見しまして!! いやぁ誰がどの役になるのか、あの役は誰がやるのか、面白かったなぁ! 眼鏡執事マクベスはアフタートークにも参加された魔女役の七味さんでした。こちらのマクベスは本痴気マクベスさんよりさらに一段とカタブツっぽくて面白かったです。マクベス夫人は本痴気でやはり魔女役の、歌手で女優の新良エツ子さんが巨乳エロメイド夫人になられておりました。本痴気夫人はクール知的美女系メイドさんでしたが、乱痴気夫人もまた素敵だったわ〜。そんな本痴気マクベス夫人、乱痴気ではまさかのマクダフでこれまたかっこいいの何の…ここまで美形なマクダフは初めて見たわ…。本痴気で美形眼鏡ストイック執事だったマクベス役の深谷さんは、乱痴気ではセクシー魔女に大変身、そして巨乳なのが明らかになる(笑)。いや燕尾服でも隠れてなかったけどね…さすがにそこに目が行くって感じではなかったけどさ。魔女はそこばっか目が行く衣装でしたよ!! 我らが本痴気マルカム王子・我妻三輪子嬢は、乱痴気ではダンカン王になられて、でも国王になってもきゃわゆくてきゃわゆくてのぉ…これはこれで違和感ないよね。腹黒っぷりが際立っておられた。本痴気のマクダフさんは乱痴気ではバンクォーに、これがまたイケメンバンクォーで…イケメンで小顔なバンクォーでした(笑)。メタマクじゃじゅんさんだったし、バンクォーはオモシロキャラになりがちなのはなぜかしらね(笑)。乱痴気のマルカム王子は本痴気のロス役かな? 本痴気の腹黒キラキラ美少年王子とはまた違うアプローチで、すっかり…アホの子王子になってらした(笑)。それはそれでおもしろかったです…が王子は本痴気一択だわ(笑)。乱痴気マクダフと本痴気マルカムも見てみたいなー!
 と、とにかく丸二日間3公演分、すっかり楽しませて頂きました「絶頂マクベス」。こりゃーハマるわ面白カッコイイわ。女体シェイクスピアシリーズ、次作は「発情ジュリアス・シーザー(仮)」だそうです。あーあ、また追っかけたくなる人たちが増えちゃったよトホホ…*6
 東京公演は23日まで吉祥寺シアターで、その後関西公演があります。これね、面白いよ。色々割引制度もあるよ。
柿喰う客 女体シェイクスピア002「絶頂マクベス」

*1:というつもりなのかどうかは知りませんが

*2:チケットが映画の前売り券みたいでかっこいいの!

*3:あれはメタマクもしくはクドカンがどうかしてるんだ

*4:っていうか…

*5:全ての配役をシャッフルして上演するお祭りみたいなの。ちなみに通常キャストは「本痴気」と呼ぶそうです

*6:満面の笑みで